二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
76層《アークソフィア》
「キリト、転移門のアクティベートは済んだぞ」
「試してみたが、ここには転移が出来るみたいだ」
アルブスとアヤメさんがやってきて、キリトさんに報告をする。
「そうか。もしかすると、75層以下の階層のアクティベート情報が消失したのかもしれないな」
「なら、この先以降のアクティベートした場所なら、また転移が使えるってことですね」
「恐らくな」
「一応これから先、新しい階層が解放されるたびに調べた方がいいかもしれないがな」
「とりあえず、俺は武器のメンテしてくる。NPCの鍛冶屋だから、あまり期待はできないけどな」
アルブスはそう言って鍛冶屋がある通りへと向かう。
向かう途中「NPCの店でメンテしたって言ったら、怒るだろうなぁ……」とボヤいていた。
「俺も、知り合いたちと情報交換してくる。それに、下層にも情報を流さないといけないしな」
「ああ、頼むよ、アヤメ」
「任せとけ」
キリトさんに手を振り、アヤメさんも移動する。
そう言えば、キリトさんとアヤメさんって結構仲いいよな。
「キリトさんってアヤメさんと仲いいんですか?」
「ああ、まぁな。一時期、一緒に組んでたこともあるぞ。その時、同い年って知ってさ。それから、なんかお互い砕けた態度でいる感じだ」
ちょっと意外だった。
まさか、キリトさんとアヤメさんが組んでいたなんて。
「ちょっと、キリト君。その話、私初耳なんだけど?」
「え?いや、別に話すほどじゃないと思って………アスナ、もしかして怒ってる?」
「怒ってないわよ!」
「いや、怒ってるじゃん!」
キリトさんとアスナさんが、痴話喧嘩を始めたので、俺はシリカを促し、その場を離れる。
「なんて言うか、そこまで怒るほどかな?」
何気なく、先程の出来事をシリカに尋ねる。
「怒るに決まってるでしょ?」
「そう言うものなのか?」
「そうなの!女の子ってのは、自分の好きな人のことは何でも知っておきたいものなの!」
「何でもか………でも、男としては好きな相手でも、知って欲しくないこととかもあるんだがな」
こう言う所は、やっぱり男と女は分かり合えないんだな。
そんなことを思ってると、俺の肩にいたフィーと、シリカの肩にいたピナが急に鳴き声を上げて、どこかへと向かった。
「あ!フィー!」
「ちょっ!ピナ!」
慌てて、二匹を追いかけると、二匹は入り組んだ路地を抜け、袋小路に辿り着いた。
「ピナ、急にどうしたの?」
「フィーも、いきなり飛び出すなよ」
二匹を抱えるように抱き上げ、辺りを見渡す。
特に何かあるようには見えないな。
「とにかく、戻ろう」
来た道を引き返そうとした瞬間、突然、行き止まりとなってる先で眩い光が起きた。
「な、何これ!?」
「シリカ!」
咄嗟に、シリカを庇い、しゃがむ。
光は大きくなり、俺たちを包み込む。
何秒がそうして、恐る恐る目を開けると、光は収まり、辺りは何も変わらない風景だった。
「今のは一体………」
「れ、レイン………」
「どうした、シリカ?」
シリカが口を振るわせて、指をさす。
その先には、一人の少女が居た。
その少女を、俺とシリカは知ってる。
《
「ユウナ……」
久しぶりに口にする、彼女の名前を呼ぶ。
少女は、その声に反応して、ゆっくりと目を開けて、こちらを見る。
「………お兄……ちゃん?」
ユウナは、俺を見て、次にシリカを見る。
「お姉ちゃん……?」
「「ユウナ(ちゃん)!!」」
「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」
俺とシリカはユウナに駆け寄り、ユウナも俺たちに向かって駆け寄り、飛びついてくる。
「本当に、本当にユウナなんだな!」
「ユウナちゃん、会いたかったよ……!」
「私も……私も会いたかったよ、お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
再開を終えた俺たちは、ひとまず落ち着くために路地裏を出て、近くのベンチに座る。
「それで、ユウナはどうしてここに?」
「確か……死んじゃったんだよね?」
「うん、そのはずなんだけど………なんか暗闇で誰かに声をかけられて、気が付いたらあそこに居たの」
「これもバグなのか?」
「でも、一度死んだはずの人が、蘇るバグなんてあるの?」
実はユウナは死んでおらず、なんらかのバグで一時的に意識が何処かに飛んでいたってのか自然だが、それはなんか違う気がする。
「でも、あの時聞こえた声、凄く温かくて優しい声だったな~。フィーとピナと一緒に寝てる気分だったよ、えへへ」
……ま、いっか。
「どんな事情があるにせよ、またこうしてユウナと一緒に居られるんだからな」
ユウナの頭を撫でて、俺はシリカを見る。
「うん、そうだね」
「だね!」
ユウナも元気にそう返事を死、俺とシリカは自然と笑みになる。
とりあえず、キリトさんに今回のことを報告するために、もう一度転移門広場に向かう。
すると、そこにはユイちゃんが居た。
「キリトさん、その子って………」
「ああ、ユイだ。実はな」
キリトさんからの説明によると、今、SAOの制御を行ってるカーディナルシステムが、今このSAOに起きている予期せぬ事態の処理に追われており、処理速度の大半をそれの処理に使っているため、エラー訂正機能の低下により、システムから切り離したユイちゃんのプログラムが、こうして活動できる様になったらしい。
「それで、その子は誰なんだ?」
「キリトさん、そのことで俺も話が」
俺は余すことなく、キリトさんにユウナのことを話した。
《メディキュボイド》のこと、そして、ユウナが亡くなったこと。
全てを伝え終わると、キリトさんは何か考え始めて、口を開く。
「確かに、医療用に開発されたナーヴギア、《メディキュボイド》の話は聞いたことがある。だが、どうしてユウナちゃんがSAOに来たのかはわからない。それに、一度死んだはずのプレイヤーが、蘇るなんて信じられない」
「でも、俺もシリカも、ユウナが亡くなるのを見ていたんです。それに、ユウナが嘘をついていたとも思えないんです」
「………ま、ひとまずこの問題は置いておくことにしよう。それに」
そう言ってキリトさんは、ユイちゃんと遊んでいるユウナを見る。
「あんなに楽しそうにしてるんだ。今は、それだけで十分だろ?」
「まぁ、そうですね」
楽しそうにしてる二人を眺め、俺もそう答える。
「おーい、キリト」
「お、アヤメ。情報の方はどうだ?」
アヤメさんが戻ってきて、キリトさんに声を掛ける。
「ああ。さっきアルゴに情報を送った。これで、これ以上下層からここに来るプレイヤーは抑えられるだろう」
「76層が解放されたことで、観光に来る中層プレイヤーもいるからな。ともかく、これ以上被害を押さるようにしないとな」
「おーい!みんなー!」
すると、聞き覚えのある声が聞こえ、俺たちはそっちを振り向く。
そこにはリズさんが居た。
「り、リズ!?」
「良かった~!みんな無事だったのね!あ、ところでアルブスの奴は何処?まさか、NPCの鍛冶屋に武器をメンテなんかさせてないわよね」
「リズ、どうして来ちゃったの!?」
「ど、どうしてって、随分な言い草ね!こっちは心配で見に来たって言うのに!」
「情報は聞いてないのか!?」
「情報?なんの?」
どうやら、情報が流れる前に来た感じだな。
アスナさんはリズさんが来てしまったことに取り乱し、キリトさんも頭を抱えていた。
「アヤメ、悪いけどアルブスの奴を呼んできてくれ………」
「もうやってる………」
数分後、アルブスが息を切らせながらやってきた。
「リズ!お前、どうして来たんだよ!?」
「ちょっ、アスナもアンタもなんでそう言うこと言うのよ!アンタたちが心配で様子を見に来たって言うのに!」
「それは素直に嬉しいが………はぁ~」
アルブスは溜息を吐き、リズさんに説明をした。
「いいか、リズ。76層に来た以上、もう75層以下には戻れない」
「………え?」
アルブスの言葉に、リズさんは固まった。
「じょ、冗談よね?」
「事実だ。転移門からの転移も、転移結晶での転移も、階段を使って直接下層に降りることも無理だ。それに、スキルの方にも変化が出る」
「え?………そ、そんな!?鍛冶スキルが全部下がってる!?片手棍スキルも!?」
自分のステータスを見て、更に驚くリズさん。
「そ、そんな……私の店が……私のスキルが………」
とうとう崩れ落ちて織り込むリズさんに、アルブスが近づく。
「そう落ち込むな、リズ。スキルと店は残念だが、ここは最前線だ」
「……それがなによ?」
「75層以下に転移が出来ない以上、ここには攻略組が留まることになる。そうなったら、俺たちはNPCの店で武器のメンテや強化をしないといけない。だが、お前が居ればメンテも強化もお前がやることになる。それは、お前にとってもいいことになるんじゃないか?」
「…………言われてみれば、そうね」
「だろ?それに、上層なら下層ではドロップしないレア金属や素材も手に入る。いいこと尽くめだろ?」
「……それもそうね。そもそも、攻略組が帰って来られない以上、私の方も商売あがったりよね。こうなった以上、前向きに考えるわ!」
「それでこそリズだな。それに、下がったり、消えちまったスキルのスキル上げなら手伝ってやるよ」
「本当!?ありがとう、アルブス!」
「これぐらい当たり前だろ。とにかく、さっさとスキル上げて、俺の刀のメンテを頼むぞ」
「ええ、もちろん!任せておきなさい!」
リズさんは笑顔になって、アルブスの手を取る。
「それじゃあ早速!《リズペット武具店 二号店》のための、空き物件探しから手伝ってよね!」
「お、おい!引っ張るなって!」
アルブスは、そのままリズさんに引っ張られる形で連れてかれる。
その様子を見て、俺たちは笑っていた。
早く付き合わねぇかな、あの二人…………