二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
アークソフィアに来て、一週間が経過した。
一週間もたてば情報は完全に広まり、アークソフィアに来るプレイヤーはいなくなった。
現在、アークソフィアにいるのは、攻略組のプレイヤーと、解放初日に誤って来てしまった中層プレイヤーぐらいだ。
「せいっ!」
そんなことを思いつつ、俺は手にした両手剣を振り、目の前のモンスターを倒す。
「シリカ、スイッチ!」
「はいっ!」
シリカとのスイッチが決まり、モンスターを倒す。
「うーん、やっぱ武器が弱くなったのは困りものだな」
手にした両手剣、《エクソロサイス》を持ち上げて俺は言う。
「スキルの方もだけど、当面の問題は武器かもね」
シリカも自身の短剣、《エンシェントクリス》を見つめて言う。
「スキルは地道に戦ってあげるしかないけど、武器ならドロップやオーダーメイトで作ってもらえば何とかなる。けど、武器が作れるのは、この層だとリズさんだけ。そのリズさんも鍛冶スキルは大半をロストしてるか下がってる状態。となると、ドロップ品だけが当分の目当てになるか」
「まぁ、性能が下がっていても戦えるだけマシだよね」
「だな」
剣を背負い直し、レベリングを切り上げて、迷宮区を出る。
一週間で迷宮区のマッピングも7割近くは終わった。
早ければ明日、遅くても三日以内にはボス部屋を見つけられるだろう。
アークソフィアへ戻ると、キリトさんとアスナさんも戻って来ていた。
恐らく、二人もレベリングと迷宮区攻略の帰りだろう。
「キリトさん、アスナさん、お疲れ様です」
「おお、レインにシリカ。二人も、今終わったのか?」
「ええ。スキルも少しだけ上がりましたし」
「こっちもだ。もっとも全盛期にまで戻すにはまだまだ時間が掛かりそうだがな」
俺とキリトさんはレベルやスキルの話をする。
「あ、アスナさん。さっき迷宮区で変わった食材アイテムドロップしたんですよ」
「本当?私の方もいくつかドロップしたし、今日はこの食材で料理作ろうか」
「はい」
シリカとアスナさんは、料理スキルのスキル上げの話をしてる。
まぁ、この辺も男と女の差って感じだよな。
「お~い、キリト!それにアスナさんとレインに、シリカちゃん!」
すると、遠くからクラインさんが手を振ってやってくる。
その後ろにはアルブスもいた。
「クライン、どうしたんだ?」
「それがよ、面白い情報を聞いたんだ!なんでも、76層の東の森で妖精と出会えるって話だ!」
「「「「妖精?」」」」
その情報に、俺たちは思わず声を出して、頭に疑問符を浮かべる。
「モンスターや異種族NPCって訳じゃないらしい。どうも今までのNPCとは感じが違うらしい」
アルブスも腕組をして言う。
「何かのイベントか?ちなみに、その妖精ってどんな姿なんだ?」
「なんでも、金髪の長髪で、碧眼に、緑色の服を着てるって話だ。背中にも半透明の翅があるって話だ」
「クライン、それ本当か?俺が聞いた話だと、黒髪の長髪で、蝙蝠のような黒い半透明の翅って聞いたぞ?あと、服装も紫にって話だ」
「え?それマジか?」
クラインさんとアルブスの情報に違いが現れ、俺たちはさらに考える。
「もしかしたら本当に何かのイベントかもな。それなら、姿形の違うNPCが出てきてもおかしくはない」
「けど、今までのNPCとは違うんですよね?」
「う~ん、ちょっと気になるな」
「ねぇ、キリト君。折角だしちょっと調べてみない?」
「レイン、私たちも調べない?」
アスナさんとシリカに言われ、俺とキリトさんは、顔を見合わせる。
「そうだな。もしかしたらボス攻略に必要なイベントかもしれないし、調べる価値はあるな」
「ですね。それで、アルブス。他に情報はないか?東の森以外での目撃情報とか」
「ああ。俺が聞いた話だと、紫の妖精は東の森でよくモンスター相手と戦ってるらしい。戦闘音が聞こえる方に行けば、紫の妖精とは会えるかもな」
「緑の妖精はこれといって情報はねぇな。本当に東の森で会えるってのしかねぇぞ」
「それだけあれば十分さ。アスナ、レイン、シリカ、行こう」
頷きあい、俺たちはもう一度街を出る。
歩き出し、東の森に着くと、俺たちは二手に分かれて妖精の捜索を開始する。
「しかし、妖精か。エルフなら、第3層のキャンペーンクエストの時あってるけど、妖精は初めてだな」
「そう言えばそうだね。ここに来て、なんか一層ファンタジー感が増して来たよね」
「とにかく、今は妖精の捜索をしよう。案外、レアアイテムとかボス攻略に必要なキーイベントかもしれないしな」
「そうだね」
森の中を捜索していると、どこから戦闘音が聞こえてきた。
「戦闘音!」
「紫の妖精か!」
俺とシリカは走り出し、戦闘音がする方へ向かう。
その場所に向かうと、そこでは数体のモンスターに囲まれながらも、善戦している紫の妖精が居た。
「あの妖精……凄い……」
その光景に、俺はそうとしか言えなかった。
動きもそうだが、特に戦い方。
無駄がなく、全てが的確だった。
そして、動くたびに揺れる黒髪。
まるで宝石のように輝いていた
俺はその動きと、輝きに目を奪われていた。
「うわっ!?」
だが、妖精はモンスターの攻撃に足を取られ、転んでしまう。
その時、手にしていた剣を離してしまい、無防備になる。
その瞬間、俺は茂みから飛び出して、その妖精に攻撃しようとしていたモンスターの攻撃を受け止める。
「え!?き、君は……?」
「自己紹介は後回しだ!早く武器を拾って!」
「う、うん!」
その妖精は素早く武器を拾い直し、構える。
モンスターの攻撃を弾き、その妖精の隣に立つ形で武器を構え直す。
「もう!勝手に飛び出したりして!」
シリカも慌てて、俺の隣に立ち、短剣を抜く。
「悪い。でも、この人が襲われてるのを見たら、居ても立ってもいられなくてさ」
「分かってるよ。ひとまずは、この窮地を乗り越えなくちゃ!」
「ああ!頼むぞ、シリカ!妖精さんも、それでいいか?」
「うん!もちろんだよ!」
妖精は笑顔で頷く。
「よし、行くぞ!」
モンスターを倒し終え、一息入れてると、先程の妖精が興奮気味に近寄ってきた。
「君、凄いね!」
俺の手を掴み、ブンブンと振り回す。
「僕が知る限り、君以上の両手剣の使い手は知らないよ!それに、僕を助けようと飛び出して来た時なんか、凄くカッコよかった!ありがとうね!」
笑顔でそう言う妖精に、俺は思わず顔が赤くなった。
よく見たら、この妖精、女の子じゃん!
「わ、分かったから!ちょっと落ち着けって!てか手!手を放してくれ!」
「わっ!ごめん!僕つい興奮しちゃって、アハハ……」
妖精もとい彼女は困ったような笑みを浮かべて、手を離す。
「レイン……」
その時、後ろから掛けられた声に、思わず背筋が凍った。
「女の子に手を握られて、なにデレデレしちゃってるのさ!」
「し、してないって!ちょっと恥ずかしかっただけだよ!」
「本当に?」
シリカが疑いの目を向けてくる。
正直な話、手を離されたときは、ちょっと名残惜しかったです。
「本当だよ!それで……君、名前は?」
俺はシリカから目をそらしつつ、彼女に名を訪ねる。
「僕はユウキ!改めてだけど、さっきは助けてくれてありがとうね!」