二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
空から落ちてきた女性を連れて、俺たちは76層にある宿屋へと来た。
ちなみに、この宿屋はエギルさんの店で、買取なども請け負ってくれる。
現在、落ちてきた女性は、アヤメさんが借りてる部屋のベッドに寝かせている。
この部屋には、部屋の主のアヤメさん、そして、あの場にいた俺、シリカ、キリトさん、アスナさん、ユウキにリーファさん、そして、話を聞いて駆けつけてきたアルブスとリズさんがいる。
「それで、コイツは誰なんだ?」
アルブスが腕を組みながら、訪ねる。
「分からない。いきなり空から落ちてきたのを受け止めただけだからな」
「空からって、転移でもしてきたのかしら?」
「ううん、それは違うと思う。転移にしては発光の色が違ったし」
「あの~、それについてなんですけど」
俺はアスナさんの言葉に、口を挟み、話す。
「実は、前にもこういう経験を、俺とシリカはしてるんです」
「それは本当か?」
「はい。ユウナと出会った日、あの時と、状況が全く似てるんです」
「空に急に穴が開いたように、ユウナちゃんが落ちてきて……考えてみると、よく似てるんです」
「そうか……となると、彼女もユウナちゃんと同じ、《メディキュボイド》の使用者なのか?」
キリトさんがそう言うと、隣にいたユウキが反応した。
「ユウキ?どうかしたのか?」
「え!?う、ううん!なんでもないよ!」
誤魔化すように手を振って、否定するユウキに疑問を感じたが、今は些細なこととした頭の隅に追いやる。
「……ん……あれ?私………」
すると、ベッドに横になっていた女性が目を覚まし、体を起こす。
「お、目が覚めたか?」
「!?」
目を覚ましたその女性は、目の前のアヤメさんを見るなり、驚くように退いた。
「落ち着け。別に捕って食うつもりはない」
「………目が覚めて、目の前に知らない男が居たら、誰だって警戒するわよ」
女性は、キッと言う効果音が付きそうな眼差しで、アヤメさんを睨む。
「そりゃごもっとも。一応これでも、空から落ちてきたアンタを助けた恩人なんだがね」
「ま、圏内じゃダメージ判定はないから、HPが減ることはないがな」
「あのねぇ、いくらダメージが無くても精神的なショックとかあるでしょ?本当に、アルブスってそう言う所がダメよね」
「うっ……悪かったよ……」
リズさんに怒られ、アルブスが申し訳なさそうに謝罪する。
「圏内……?HP……?なに?ゲームの話?」
その言葉に、全員が止る。
「てか、なんで貴方たち剣とか槍とか持ってるのよ?通報されるわよ?」
その言葉に、俺たちはある確信が持てた。
「なぁ、ここが何処かわかるか?」
「え?どこって………そう言えば、ここ何処?」
辺りを見渡し、訪ねてきた。
「76層の《アークソフィア》だ」
「なんじゅう……ろくそう……?」
「アインクラッド。ソードアート・オンラインって言えばわかるか?」
「……なにそれ?」
その言葉に、また驚いた。
リーファさんやユウキも、SAOのことは知ってたし、デスゲームのことは知ってた。
少なくとも、現実じゃSAOの事件は大々的に報道されてるはずだ。
なのに、知らない。
いくらなんでもおかしい。
「ねぇ、まさかこの人、記憶喪失なんじゃ……」
リーファさんの言葉に、アスナさんが女性に近づく。
「ねぇ、貴女の中で一番新しい記憶ってあるかしら?」
「えっと………思い出せない……自分でも信じられないけど、ここに来た経緯が分からないの……それ以前のことも、まるで頭の中に靄が掛かったようで………」
「えっと……とりあえず、聞け」
アヤメさんが、女性に位置から説明をした。
SAOのこと、デスゲームのこと、そして、75層以下に降りられないこと。
「ここがゲームの世界だなんて………そんなの信じられるわけ……」
まぁ、いきなり言っても信じてはくれないか。
「右手を振ってみろ。こんな風にだ」
「……こう?」
言われた通り、右手を振ってもらい、メニュー画面が出たらしく、驚いていた。
「これを見れば、ここがゲームの世界だって信じられるか?」
「………そうね。信じたくないけど、信じるしかなさそうね」
女性は溜息を吐き、そう言う。
「それでだが、さっきも説明したが、今は75層以下には降りることができない。つまり、お前はここ76層に留まることしかできない。こんな上層に一人でいれば、確実に危険だ。そこでどうだ?俺たちと行動を共にするってのは?」
「貴方達と?」
アヤメさんの提案に、女性が問い返す。
「ああ。少なくとも、一人で戦えるぐらいになるまでは俺達と一緒にいた方がいいと思うんだが。それに、女性プレイヤーの数も多い。男だらけのパーティーにいるよりは安心できると思うが、どうだ?」
「………そうね。この世界のこともよくわからないし、ひとまずは貴方達と一緒にいるわ」
「なら決まりだな。俺はアヤメだ。アンタの名前は?」
「朝田詩乃よ」
「それはリアルネームだろ?キャラネームが、メニュー画面にあるはずだが」
「キャラネーム……シノン?これかしら?」
「多分そうだろうな。じゃ、改めてよろしくな、シノン」
そう言って、アヤメさんはシノンさんに手を差し出す。
「……ええ、よろしく」
シノンさんもその手を握り返す。
こうして、俺たちは新たな仲間を迎え入れることになった。