二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
一応、この話が終わったら、ロスト・ソング、ホロウ・リアリゼーション、フェイタル・バレットも書きます。
お楽しみに
ユウキとリーファさん、シノンさんの三人が来て五日が経った。
現在、攻略のスピードは下がっており、迷宮区はまだ突破できていない。
それもそのはず。
攻略組の要と言うべき存在のキリトさんは、暫く攻略は休んでリーファさんの特訓に付き合っている。
リアルでも兄妹らしいから、教えるなら兄のキリトさんがいいだろうってことで、そうなった。
続いて、アヤメさんもシノンさんの特訓に付き合っているため、攻略を休んでいる。
アルブスも、暫くはリズさんのスキル上げの手伝いの為、攻略よりも鉱石アイテムの採掘をメインにしており、攻略はあまりしていない。
そして、俺もユウキの特訓に付き合っており、攻略を休んでいる。
自慢ではないが、俺は攻略組でもそれなりのハイレベルプレイヤーだと思っている。
それはキリトさんやアヤメさん、アルブスも同じで、たった四人とは言え、ハイレベルプレイヤーが抜ければ、それだけ攻略の進行度は下がる。
本当だったら、今頃76層を突破できていたかもしれない。
「ちょっとレイン!また上の空になってるよ!」
「ああ、悪い。ちょっと考え事してた」
ユウキに怒られ、俺は頭を掻きつつ謝る。
「ほら!続き続き!」
今、俺とユウキは街の、人目につかない場所で対人戦の特訓をしている。
万が一と言うこともあるし、ある程度対人戦を想定した戦いを教えておこうと思ったが、正直驚いた。
ユウキは対人戦においてかなり強い。
対人戦に慣れているのかって聞いたら、ALOで辻斬りならぬ、辻デュエルをしていたらしく、対人戦は慣れっこなのだそうだ。
だが、それはALOでの対人戦であって、SAOの対人戦じゃない。
ALOではHPを全損させてもプレイヤーは本当には死なないが、SAOではHPを全損させたら死んでしまう。
だから、相手を殺さず制圧する戦い方を教えることになった。
「それじゃ、最初から今までのおさらいするぞ」
「うん!」
頷くと、ユウキは長剣を中段に構え、自然な半身の姿勢を取った。
俺も刀を構え、踏み込む準備をする。
両手剣を使わない理由は、刀のスキルも上げないと、俺のユニークスキルの《大太刀》が真価を発揮できないからだ。
そして、踏み込もうとしたその瞬間、路地に誰かがやってきた。
「おい、レイン!」
やってきたのはアルブスだった。
「アルブス、どうした?」
「攻略組からの報告だ!76層のボス部屋が見つかった!」
「本当か!?」
「ああ!これから攻略会議だ!急いで来い!」
「分かった!ユウキ、そう言うことだから続きはまた後でな!」
「ちょっ!レイン!?」
ユウキをその場に残し、俺は急いで会議場所に向かった。
転移門前に向かうと、既に他の攻略組のプレイヤーたちも集まっており、全員が神妙な面持ちでいた。
そんな中、アスナさんが前に出て、話し出した。
「《血盟騎士団》のアスナです。これより、76層ボス攻略会議を始めます」
指揮はアスナさんが執るみたいだ。
「74層、75層と結晶アイテムが使えなかったことから、76層、延いてはこれ以降の層も結晶アイテムが使えないと予想されます。そこで、回復アイテムはポーションを使用します。それと、各自一つずつ転移結晶を持ってください。ボス部屋に入り次第、結晶アイテムが使えるかの確認をし、もし使える様ならボスの行動パターンを見極め、その後、転移結晶で撤退。後日再挑戦します。もし、使えないようなら、苦しいですがそのまま攻略を続行します」
アスナさんの言葉に、全員が頷き、不安そうな表情を浮かべ、覚悟を決める。
「それでは、攻略を開始します」
その言葉を最後に、俺たちは迷宮区へと向かった。
マップを頼りに迷宮区を進み、とうとうボス部屋の前に辿り着く。
「それでは皆さん。私から言うことは一つです。勝ちましょう。そして、生きて戻りましょう」
その言葉に、全員が武器を握り直す。
そして、扉がゆっくりと開かれた。
部屋の中央に居たのは、巨大な目玉だった。
その目から生えている触手は、蛇のようになっており、まるでメデューサを彷彿させる出で立ちだった。
ボスの名前は《ガストレイゲイス》。
それを確認した直後、ボスは悲鳴の様な声を上げた。
「戦闘開始!」
その声を合図に、アスナさんが戦闘開始を宣言する。
タンク隊が隊列を組み、《
その横から、俺達アタッカーが攻撃を仕掛ける。
25層を始め、50層、75層はクォーターポイントと言うことで、通常のボスよりレベル設定が高い。
それと比べれば、今回のボスはまだやりやすい方だった。
攻撃も触手による叩きつけや薙ぎ払いなどで攻撃パターンも見切りやすく、全員が旨く回避や防御をしている。
三本あるHPバーの一本目を削りきる。
その瞬間、ボスの目が光りだし、動きが止る。
「まずい!散開しろ!」
キリトさんが何かに気づき、全員に呼びかける。
全員が慌てて散らばる。
その瞬間、ボスの目からレーザーが放たれ、直線状を焼き払った。
幸い回避が間に合い、死者はいなかった。
「ボスの目が光ると、レーザーが来る!威力はやばいが、攻撃の動作が分かりやすい!目が光ったら、奴の視線上に立つな!」
キリトさんの言葉に、全員が返事をし、戦いを再開する。
攻撃パターンを見破り、攻撃、防御、回避、そしてポーションによる回復にHP管理、どれもうまく行ってる。
…………うまく行き過ぎじゃないか?
「レイン、どうしたの?」
後ろから、HPを回復させて戻ってきたシリカが声をかけてくる。
「いや、なんかうまく行き過ぎてるなって思ってさ」
「何か問題でもあるの?」
「そう言う訳じゃないけど、75層のボスより弱いからって言っても、いくらなんでも攻撃パターンが単調すぎるし、奴の大技とも思えるレーザーも攻撃の動作が分かりやす過ぎるからさ。ちょっと心配になっただけだよ………」
「言われてみれば、そうかも………」
「一応、アスナさんかキリトさんに相談してくる。シリカ、こっちは任せたぞ」
「うん、分かった」
シリカにその場を任せ、俺は前の方で指揮を執ってるアスナさんに声をかける。
「アスナさん!」
「レイン君!どうしたの?」
「今回のボスですけど、いくらなんでも攻撃が単調すぎるって思って」
「………そう言われると確かに」
アスナさんはそう言って、ボスの方を見る。
ボスはとうとう三本目のHPバーも削られ、あともう少しでラスト一本になる所だった。
「アスナ、俺もレインの意見に賛成だ。いくらなんでも攻撃が分かりやす過ぎる。ラスト一本になったら、一度前を引かせて様子を」
「三本目削り切ったぞ!」
「よし!残り一本!」
「このまま押し切るぞ!」
キリトさんの提案が終わる前に、とうとうボスのHPバーは残り一本となってしまった。
その直後、ボスは目を閉じ、そして開いた瞬間、強烈な光が起きた。
何事かと思ってると、ボスの目がまた光出し始めた。
「レーザー来るぞ!回避!」
キリトさんが大声で指示を出す。
「なっ!?か、体が!」
「動かない!」
「なんでだ!?」
ボスの放った強烈な光を前で受けた、殆どのプレイヤーがスタンになり、動けなくなった。
「まずい!スタンだ!」
「レーザーが!」
この事態に気づいた、タンク隊は慌てて、スタンして動けなくなったプレイヤーの前に出て、盾を構える。
しかし、視線上にいたタンク隊と、スタンしたプレイヤーはレーザーを直接くらい、そのまま部屋の隅まで吹き飛ばされる。
HPは全損してはいないが、全員がレッドにまで落ち、殆ど虫の息だった。
「HPがレッドにまで下がったプレイヤーはすぐに回復を!無事なものは、ボスに攻撃!ボスが目を閉じるとスタン攻撃の前兆!ボスが目を閉じたら、回避を!」
「だが、あの閃光は広範囲に効果がある!回避は難しいぞ!」
「背後なら食らわないだろうが、目を閉じてから開くまでの時間が短すぎる!」
アヤメとさんとアルブスが武器を構えつつ、叫ぶ。
どうすれば………
「部位破壊だ!」
すると、キリトさんが叫んだ。
「部位破壊で奴の目を破壊する!そうすれば、一時的だがレーザーとスタン攻撃は防げる!」
部位破壊とはフィールドボスやフロアボス、もしくは大型モンスターで、極稀に破壊できる部位があり、そこを破壊するとレアな素材や特殊攻撃と言った技を一時的に封じることができる。
だが、本当に極稀だ。
あのボスに、それも目の部分に部位破壊があるのかわからない。
「でも、キリト君!部位破壊は極稀にしかないし、仮に成功しても精々一分程度しか……」
「だとしてもやるんだ!斬撃属性の武器持ちはボスの目に集中攻撃!」
キリトさんの言葉に、全員が頷き、一気に、片手剣や両手剣、刀と言った斬撃属性の高い武器持ちが一斉に目に攻撃をする。
ボスの触手攻撃を掻い潜り、目へと攻撃を繰り出す。
最後にキリトさんが《ローカス・へクセドレ》で七連撃を浴びせ、アルブスが《空閃一刀》でに真一文字に切り裂く。
「うおおおおおおおおお!!」
俺も両手剣を握りしめ、目に《ライトニング》を当てる。
HPも半分近く減った。
だが、目の部位破壊にまでは至らなかった。
その時、ボスの目が光り出した。
「まずい!レーザーが来るぞ!」
「レイン!」
このままじゃ直撃する!
両手剣を引き戻し、防御態勢を取る。
「せやああああああ!」
すると、俺の脇をすり抜けるようにシリカが通り抜ける。
そして、手にした短剣をボスの目に突き立てる。
そのまま《ダーティーダンス》を繰り出し、七連撃がボスの目を切り裂く。
その直後、パキンッ!と言う音と、赤いライトエフェクトが現れ、ボスが悲鳴を上げる。
「部位破壊だ!」
「レーザーと閃光が封じられたぞ!」
「全員、全力でソードスキルによる攻撃開始!」
アスナさんの声を合図に、全員が一斉に走り出す。
そして、最後にキリトさんの一撃がボスにあたり、ボスが消滅する。
辺りが静寂に包まれ、その数秒後、獲得経験値と分配されたコルが表示された。
その瞬間、周りから溢れんばかりの歓声が響き渡った。
「ふぅ……」
勝てたことに安堵し、俺はその場に座り込む。
「レイン!大丈夫だった?」
シリカが短剣を鞘に戻し、駆け寄ってくる。
「ああ。シリカが守ってくれたお陰でな。守るつもりが、守られちまったな」
「何言ってるのさ。相棒なんだから、当たり前でしょ」
そう言って手を差し出してくるシリカの手を取り、立ち上がる。
「レイン、大丈夫だったか?」
アルブスも駆け寄ってきて、俺の安否を聞いてくる。
「ああ、シリカのお陰でな」
「そうか。このまま77層に向かうらしい。お前たちも来るか?」
「いや、宿にユウナを待たせてるし、俺とシリカは帰るよ。悪いけど、後は頼むな」
「分かった。しっかり休めよ」
77層に向かうアルブスを見送り、俺とシリカは76層へと戻った。