二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
今回はアヤメが語り手です
76層を攻略し一週間が経過した。
攻略組も最初こそは動揺があったが、いまではその動揺も落ち着き、76層にやってくる中層プレイヤーも居なくなったこともあって、攻略の進行速度も上がった。
そのお陰もあり、一週間の間に77層をクリアし、78層へと到達した。
「さて、シノンの奴はどうしてるかな……」
一緒に行動しようと言った手前、シノンのSAOでの面倒は俺が見ているのだが、ここ最近は攻略を優先した為、シノンの相手をしてやれてない。
一応《Immortal object》の木に向かって短剣のソードスキルの反復練習をさせているが………
「おっ!やってるな」
いつもの練習場所に向かうと、そこではシノンが何度もソードスキルを木に当てていた。
「お疲れさん」
「ああ、アヤメ」
「調子はどうだ?」
「それなりにスキルが上がったわ。あと、ソードスキルを確実に撃てるぐらいにはなった所かしらね」
「ほぉ、この短期間でそこまで出来るようになるとはな。結構素質があるみたいだな。こりゃ、独り立ちも近いかもな」
そう言って地面に座り込む。
「休憩にしようぜ。飯買って来たからよ」
「そう……ありがとう」
若干俺との距離を開けて、シノンが隣に来る。
買って来たサンドイッチと飲み物を渡し、食事を摂る。
「そう言えば、記憶の方はどうだ?」
「……まだ何も思い出せないわ」
「そうか……ま、気長にやって行けばいいさ。時間はたっぷりとあるんだからな」
「それより聞きたいことがあるんだけど」
「ん?」
唐突な質問にシノンの方を見ると、シノンはステータス画面を開き、可視モードにして見せてくる。
「おいおい、自身のステータスはあまり他人に見せるもんじゃないぞ」
「そうなの?」
「そりゃ自分の情報がたっぷり入ってるからな。レベルやHPだけじゃない。スキルや所有アイテム、能力値。それらが他人に知られるってことはデュエルでも不利になるし、PK相手なら文字通り命取りだからな」
「アヤメは私にデュエルとか仕掛ける気あるの?」
「いや、無いけどよ……」
「ならいいじゃない。口で説明するより見せた方が早いでしょ」
そう言ってシノンは半ば強引に、ステータス画面を見せてくる。
(ちょっと不用心じゃないか?)
そう思いつつステータス画面を見る。
「ん?《精密動作》に《命中補正》?」
聞いたことないスキルに俺は首を傾げた。
「その二つなんだけど、それってどう言うスキルなの?」
「………知らない」
「は?」
「こんなスキル、俺は知らない。そもそも、既存するスキルにも、こんなスキルは無いんだよ」
そう言いつつスキル一覧を見ていく。
そして、俺の指はある一文を見て止まった。
「《射撃》だって?」
「え?なにそれ?」
シノンが近寄りスキルを確認する。
「なにこれ?昨日見た時はこんなの無かったわよ」
「なら、今日の特訓で取得可能になったんだろう。てか、《射撃》って一体………」
「まさか………銃、とか?」
少し声を震わせて、シノンが恐る恐る聞いてくる。
「いや、それはないと思う。SAOは剣の世界なんだ。その定義を壊す《銃》なんて代物、茅場が組み込むなんて考えられない。少なくとも茅場はそう言う人間だ」
そう言ってしばらく考え込む。
すると、隣でスキル習得の効果音が鳴る。
「ちょ、シノン!まさか習得したのか?」
「あ、いけなかった?」
「いや、そう言う訳じゃないがもしシステムエラーによるバグスキルとかだったら、何かしらの異常が起きるかもしれなくてだな」
「ん~~~、特に体に異常はないわよ。それにステータス画面も変わりはないし」
異常や変化がないなら、ひとまず置いておくか。
それにしても……………
「《射撃》か………投擲系の新スキルかもしれないな。シノン、ちょっと試しにこの投剣を投げてみてくれ」
投剣用のナイフを一本取り出し、シノンに渡す。
シノンは受け取ったナイフを木に向け投げる。
投げられたナイフはそのまま木に当たり、地面に落ちる。
「どうだった?」
「どうって言われても……別にって感じね」
「投擲系のスキルじゃない。とすれば…………」
《ユニークスキル》
その単語が頭に浮かび上がった。
「どうしたの?」
「…………いや、なんでもない。《射撃》スキルの詳細が分かるまで、この事は誰にも言わないでくれ。練習再開しよう」
そう言って練習を再開させる。
もし《射撃》が《ユニークスキル》だった場合、他の攻略組はシノンを放ってはおかないだろう。
ただ巻き込まれただけの人間を、デスゲームにに付き合わせるわけにはいかない。
そう思い、俺はシノンの練習を見守った。
次回もシノンとアヤメの回になります