バハルス帝国の贄姫   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

書いては消して、書いては消して悩んでこうなった。これでいく。長くなりそうだからいいとこで切った。


エルフの国の最悪ルートは、もちろん妊娠もあるけれど、もっとヤバいのは姉が死んだ状態で蘇生が無理からの、姉に似た遺児だけが残ったパターン。




おかえり

 

リスがいなくなったことに関して、怒りがわいたのは確かだった。

 

 

 

アインズは、正直、色々と上手く行かないなあと落ち込んでいた。

本来ならば悪魔討伐にはリスも連れて行き、自分の株を上げる予定だったのだが。

もちろん、そんなことを本人が知れば、死ねという一言と共に決別の一発を貰っていただろうが。

けれど、残念ながらアインズの思うとおりには行かなかった。

 

「私の魔法は広範囲のものが多い。モモン殿の手伝いをするのは難しいだろう。ならば、遊撃隊や、他の部隊の手伝いが一番だ。」

 

アインズとしては自分のできることについてしっかりと意識できているのだなあと好感度がまた上がった。

 

(・・・なぜ、ついて行くのがあの少女なんだ。)

 

何故かやたらと自分に張り付いてくるイビルアイというそれが自分に同行することになり、肩を落としたくなった。

 

(・・・・あのイビルアイというのも、人が冒険者と挨拶をしている時に割り込んできて面倒だったしなあ。)

 

おい、イビルアイ。一応、モモン殿が他者と挨拶してるときに割り込むな。迷惑だろうが。

む、いいじゃないか。

はいはい、あのな、他者が会話してる最中に割り込むのは、相当の理由とかじゃ無い限りは失礼なの。ほら、行くぞ。

 

そう言ってイビルアイを引きずって行ったときの感動は今でも覚えている。

なんて自分のことを理解して、価値観が合うのだろうか。

 

ないはずの心臓がとくとくと鳴る気がした。

 

アインズは、正直るんるんとしていた。というのも、悪魔騒動が終われば、リスに是非とも約束を守って貰おうと思っていた。

 

(・・・同じパーティーになってもらう、だと。モモンとアインズの生活の兼ね合いがな。だが、是非とも側に置きたいんだ。側に。)

 

アインズは、正直、黒い騎士の格好の男がするにはあまりにも気色悪い、もじもじとした動きをする。

 

(こういうのは、やっぱりもっと仲を深めて。そうだ、顔を見せて貰うとかでもいいな。どうもやけどの跡が酷いらしいから、治す魔法があれば好感度も上がるぞ!)

 

るんるんとしていたアインズはすぐに、彼女がいるだろうクライムたちの元に向かった。彼女が悲しむだろうと、人的な被害も、不自然だと理解しても出すことなく物資だけを奪ったのだ。

きっと、安堵の様子の彼女が自分を出迎えると、そう思っていたのに。

 

リスという女はそのまま姿を消していた。

 

どうも、助け出した存在たちに紛れて姿を消してしまっていたのだ。一応は置き手紙を残していたのだが。

 

自分の雇い主に呼ばれたため、帝国に向かう。

 

それだけの内容だった。

 

「・・・・そのまま姿を消したと?」

「は、はい!」

 

目の前でクライムがひどく怯えていたのを覚えている。何せ、周りには人質になっていた市民もいるというのに、それこそ殺気混じりのモモンを目の前にしているのだ。その態度も当たり前だろう。

 

(何故だ?)

 

きぃと、アインズは苛立ちを表すように己の着ている鎧をひっかいた。

 

自分から逃げる理由はない。だって、彼女も自分のことを気にしていたのだ。ならば、何か、何か、理由があるはずだ。

やけに爽やかな甘い匂いが鼻を突いた。

 

「・・・・何か、おかしな様子はありませんでしたか?」

「え、ええっと。でも、見たことがないような魔法を使われていて。リスさん、ドルイドだったんですね。」

「・・・・ドルイド?」

「はい、花に関する魔法を使われていて。」

「花?」

 

アインズはそれに思わず大きく反応してしまう。クライムはひとまずは怒りが収まったらしいことにほっとした顔をした。

 

「はい、咲いた花の匂いを嗅ぐと人質の皆さんも落ち着かれて。精神が落ち着く効果があると。確か、百合の花を。」

「ゆ、り・・・・」

 

がちゃんと、何かが繋がっていく。

 

「杖を。」

「え?」

「杖を、使ってなかったか!?」

 

叫ぶようなそれに、クライムは驚いた顔をした。

 

「え、ええ。木製の杖、ああ、でも。先端に宝石でできているらしい百合の花の彫刻がついた、見事な杖を、使われて。」

 

それに、フラッシュバックが起る。

 

は?神器級!?いいのか?

え、まあ、確かに植物系の魔法には憧れてたけど。それで?

・・・・そうか。

ありがとう。

 

姉が好きだった、百合の花。現実世界では匂いを知ることもできない、似合わないだろうがと苦笑する可憐な、花。

 

「あの、モモン・・・・・」

「ふ、は、あはははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

周りからどんな目を見られているかなんてどうでもよかった。

ただ、ただ、胸に沸き起こる歓喜。

 

ほら、ほら、ほら!!!

 

胸の奥で、鈴木悟であった誰かが、幼い子どものように飛び跳ねるように喜んでいる。

 

姉さん、姉さん、姉さん!

なんだ、そんなところにいたのか!そんな、そんな、そんな!

とても近くで、当たり前のように自分と共にあったのならば。

 

やっぱり、俺と姉さんは運命なのだ。だって、わかりもしないのに、自分はこんなにも姉に惹かれていた!

今までの言葉を思い出す、言動、在り方。

それは、やっぱり姉だった。

 

無愛想で、口が悪くて、強情で、けれどいつだって鈴木悟のことを慮ってくれる人。

 

「あ、あの。」

「ああ、すまない。」

 

歓喜がすっと消えていく。けれど、それさえも関係ない、気にならない。

消えたとしても、歓喜は変わらずわいてくるのだ。

 

「とても、いい気分なんだよ。」

 

その、兜の下で、一人の化け物は笑っていた。骸骨であれど、それでも、その下を見ればどんな人間だって理解できただろう。

 

ニタニタと、ニヤニヤと、寒気がするような、そんな風に笑っていることを。

 

 

 

その歓喜がしぼんでいくのは早かった。

王国での諸諸については自分に化けることができるパンドラズ・アクターに任せることにした。それ以上に姉を迎えに行くことを優先させたかったのだ。

 

(俺のことがわからなかったんだろうなあ。)

 

まあ、マジックキャスターが前衛をやっていたりする時点でわからないのも納得だ。けれど、それを抜いても姉は自分のことを気遣っていたのはわかった。

自分と同じなのだと、アインズは嬉しくなる。

けれど、女の行方を探らせた先で、全てに失望した。

 

(バハルス帝国の、城?)

 

姉のいるはずの場所に、アインズは疑問に思う。

 

現在、姉の状態について予想できるのはいくつかあった。

 

バハルス帝国に雇われている、というのが一番だろうがそれについてアインズは疑問に思う。元々、姉は人見知りではないが、それはそれとして煩わしく思うタイプだ。

帝国に仕えるというそれ自体が想像しにくい。

 

(姉さんがこちらに来たのはいつだ?俺たちと同等、いいや、リスとして活動していた時間はもっと長いようだ。)

そうして、思い出す。

 

彼女は、兄がいると言っていたことを。

兄?

 

姉の性格からして、兄なんて関係を築くのは容易ではないはずだ。

けれど、姉の象徴足るマジックアイテムは存在している。

 

それから、導き出されるのは、一つだけだ。

 

(・・・・姉さんの、子孫、か?)

 

それに全てが繋がったような気がした。

元々、バハルス帝国の皇女の話は知っていた。

 

人では到達できない魔法の階位に至ったという、伝説。もちろん、第八位階魔法程度ならば恐るるに足らないが、それはそれとして後日、接触は考えていた。

けれど、姉という存在の子孫であるのならば繋がる気がした。

 

元々、自分と同じプレイヤーらしき存在が自分よりも以前にやってきていたらしい痕跡は存在していた。

姉も又、自分よりも前にこちらに転移してきたのではないか?

そうして、その過程で家庭を持ち、子をなして、その末が才を覚醒させたというのならば。

マジックアイテムを受け継いでいるというのならば、全て、納得が出来た。

 

「・・・・不愉快だ。」

 

憎々しげに吐き出したその後に、アインズは、人払いした部屋の中で叫んだ。

 

「姉さんが、俺以外と家族になるなんてあり得るはずがないだろう!!!!!」

 

まるで癇癪染みた声を吐き出して、アインズはだんと辺りに八つ当たりをした。

 

ずっと、自分だけの姉だった。

無愛想で、厳しい人ではあったけれど、面倒見のいい人だった。

キツめの鋭い顔立ちをしていたけれど、伸びた背筋と、さらさらとした黒い髪は人目を引いて綺麗だった。

交際相手がいたこともある。けれど、いつだって、姉は自分のことを優先しては、別れてを繰り返していた。

そのたびに、弟である彼は、それを申し訳なく思うと同時に、誰よりも愛されているのは自分だと思っていた。

 

そんな人が、自分がいないどこかで家庭を築いて、誰かを愛していたというのか?

それに、腹の奥底で何かが暴れる。

 

不快だ、不快だ、不快だ、不快だ。

 

吐き気がするほどに、不愉快だ。

 

なんだ、くそが、まがい物か、がっかりした、騙した、嘘つき。

 

腹の中で、ぐるぐると、憎悪染みたものが回る。けれど、精神がまた安定していく。

それに不快感に炙られるような感覚がした。

けれど、そのおかげでふと思い出す。

 

あの、真っ黒な髪を。

 

そっくりだった、そうだ、そっくりなのだ。

あの、女は、とても姉にそっくりで。

 

いや、そうだ、確かに不愉快ではあるけれど、それ以上に惹かれる感覚がある。

 

(・・・・顔を、見て、そうだ、顔を見てから。それから決めよう。)

 

まがいものでも、心の慰めになるのならば価値があると思ったのだ。

 

 

 

ニグレドからの知らせで女が聞いていたとおりにナザリックにやってきたリスにアインズは抱えた杖を早く回収したくてたまらなかった。

姉に贈った物を他人が使うことがたまらなく不快だった。

 

(・・・・はあ、リスの件で、デミウルゴスから上がってきていた王国の人材の件も話が止まっているというのに。ひとまずは、これを終わらせてから、その辺りも処理するか。)

 

リスの件が終わらない限り他のことに集中できそうにないと、出来るだけの計画は止めてしまった。

そう思っていたアインズは、遠くから近づいてくるそれに目を細めた。

変わらず、女はフードを被り、そうして仮面を付けていた。

 

ユリたちからはそんな無礼は赦されないと意見が出ていたが、その時のアインズはどうしても自分の目の前で仮面をひっぺ剥がしてやりたかった。

 

今でもさえも、指先が、女の、仮面の下を暴きたくて溜まらなかった。

 

その場にいるのは、驚くことに守護者全員、といってもガルガンチュアなどを除いての話なのだが。

本来ならば、人間種への差別感情を考えれば会わせない方がいいのだが。

それはそれとして、その人間だけは傷つけないようにと示すためにその場に呼んだのだ。

事前に、デミウルゴスとアルベドからアインズが飼いたがっている人間が来ると教えられている。

ただ、皆が皆、勝手な思い込みで納得をしたらしく、今回のことに素直にはせ参じた。

今は、その勘違いがありがたい。

その勘違いを嘆く前に、欲しい物が目の前にある。それこそ、プレゼントを前にした子どものように舌なめずりをしていた。

 

まあ、そんな諸諸は建前で、アインズ、いいや、モモンガというそれは自分の持つ力を自慢したいのだ。

好きになった少女に、自分の在り方を自慢する少年染みた幼稚さを持って。

なんてことを自分が抱えているなんてそのアンデットは気づかない。

何せ、それの頭は、死んだ時の執着に支配されてしまっている。

憎悪と、苛立ちと、執着と、リスという女への渇望で頭なんてとっくに可笑しくなってしまっているのだ。

アインズは、自分が冷静であると信じているけれど、勝手に失望した女を殺すか生かすか未だに判断にふらついているのだ。

 

(ああ、だが、俺がいらなくてもアルベドは欲しがるかも知れないな。)

 

なんてことを考えていると、いつのまにか女が目の前にやってきていた。

 

「アインズ様、旅人、リーリエ殿がお目通りしたいとのことです。」

 

アルベドの声が響く。それにアインズは改めて言葉を発する。

 

「ようこそ、リーリエ殿。私はこのナザリック大墳墓の主人、アインズ・ウール・ゴウンだ。」

 

アインズはそれに女が何と答えるのかと、その目的を待つ。けれど、女は、何も言わずに予想だにしないことをした。

それは、ふらふらと、夢遊病者のようにアインズに更に近づこうとしたのだ。

その、行動に八肢刀の暗殺蟲が女を取り押さえた。

 

アインズはそれに不思議に思う。

何故、わざわざ近づこうとしたのだろうか?

記憶の中のリスというそれは、そこまで距離が近いわけではなかったはずだ。

それは、何も言わずに、はあはあと短く息を吐いてじたばたと暴れている。そうして、なおもアインズに近づこうとしている。

 

「・・・・頭でもおかしゅうなってるでありんすか?」

「大体、アインズ様がお声をかけているのに反応しないってどうなの?」

「・・・アインズ様。」

 

アインズはそれにほっとした。

どんな行動をしても、それこそ敵対行動では無い限り、けして手を出すなと言う厳命は聞いてくれていたようだ。

 

デミウルゴスの不機嫌そうなそれにアインズはああと頷いた。

 

「そうだな。ただ、どうするかを決める前に。仮面の下を見せて貰おうか。」

 

そうだ、その顔、その、顔。

 

どれだけ姉さんに似ているのだろうか?

欠片でも、目元だとか、口元だとか、そんなものが似ていて、面影を辿ることができれば生かす価値は十分ある。

 

(どうしようか?最初の予定通り、モモンとして囲えるようにするか。だが、ユリぐらいとだけ交流させるならナザリックに置いてもいい。)

 

八肢刀の暗殺蟲たちがアインズの言葉に女のフードを取り去る。そうすれば、真っ黒な、アインズのお気に入りの黒い髪がばさりと広がった。

 

そうして、からんと、女の仮面がその場に転がった。

 

それに、アインズは大きく顔をわななかせた。

 

「っああ・・・・・・!」

 

アルベドの、驚愕の声がした。

 

だって、その顔は。

 

 

もう、姉さん!ゲームするなら俺に言っていっただろ?最初の設定間違えただろ?

・・・・やっぱりだめか?

ダメに決まってるだろ?アヴァターの設定、自分の顔そのままスキャンしちゃったんだろ?個人情報ダダ漏れになるよ?

いや、人じゃない種族にするから関係ないと思って。人間にした後も、仮面被ってるからいいかと。

ダメに決まってるだろ。もう、課金アイテムに確か見た目の設定変えられるのあるからそれ使おう。

 

ああ、覚えている。

ゲームに疎い姉が、間違えて設定してしまったアヴァター。

姉の見た目を美化したような、見慣れないような、そんな見た目。

 

ああ、それは、確かに姉の顔、そのもので。

 

がたりと思わず椅子から立ち上がったアインズのそれに守護者達に驚きが広がる。

顔をさらされた女は、はっはっと息を短く吐いて、そうして、アインズの顔を凝視して、泣きそうな、けれど、嬉しそうに笑った。

 

「・・・・さとる?」

 

とても、幼い声だった。リスとして聞いていたときと、比べものにならないほどの、幼い声だった。

アインズは、己の精神が一気に静まっていくのがわかる。けれど、また一気に驚きで精神が揺れる。

アインズはじっと女を見つめる。何を、すればいいのか、いいや、現状がまったくといって良いほど思いつかなかった。

 

けれど、女はそれに気づいていないのか、拘束されてなおじたばたと暴れながら掠れた声で言った。

 

「さとる?」

 

それにアインズは一気に覚醒した。

 

「その人に触れるなぁあああああ!!」

 

アインズの怒号に、その怒りに、八肢刀の暗殺蟲は女の拘束を解き、距離を置いた。そうして、守護者達は、アルベドを除いて、その怒りに怯えて震えた。

拘束を解かれた女はよろよろと起き上がり、そうして、蟻の歩みといえるような動きでアインズの元に歩き出した。

 

女には、何も見えていなかった。

 

そこにいる、化け物と言えるそれらのことも、何もかもが遠くにあった。だって、目の前にずっと求めた奇跡があるのならば。

殺されたって、どうでもいい。

ただ、考えているのは、そこにいるのが自分の可愛い弟なのかどうかに尽きる。

だから、女は、のろのろと弟に近づく。

 

「悟?あの、えっと、私な、お前に会いたかったんだ。」

 

かつんと、足音がした。

 

「この世界に来て、いきて、それでもずっとお前に会うために、遭う方法を探してたんだ。」

 

すり足のように、そろりと、前に進む。

 

「ほら、お前に貰ったこれもさ、お守りみたいで心強かったんだ。」

 

ぎゅっと抱えた、百合の花を模した杖を握りしめる。

 

「生かしてくれる人がいて、そいつの元にいる。だから、会えたんだ。ここまで来れた。」

 

数段の、短い階段を上る。それに、さすがに守護者達が動こうとする。けれど、それよりも先にアルベドが叫んだ。

 

「やめなさい!」

「アルベド、でも!」

「あの方のことを傷つけてみなさい!殺す!!」

 

怒気に塗れたそれに、守護者達は動きを止めた。アインズは椅子から立ち上がりかけたような、そんな半端な体勢のまま目の前の女を見つめている。

 

「あのね、悟。私、お前に会いたかったんだ。会いたくて、ここまで来たんだ。」

 

かつんと、女はその不死者の目の前に立った。

アインズは女のことを見る。その、顔!

 

確かに、細部は細かくどこか整えられたように美しい顔になっている。けれど、確実に、姉だとアインズにはわかる。

 

少しだけ険のある顔立ち。アーモンド型の、つり上がった瞳、薄い唇。真っ黒な、美しい髪がまるでマントのように揺れいている。

 

その女は、不死者を前にしてなお、その人でなしを前にしてなお、これ以上無いほどに優しい笑みを浮かべていた。

己の子を前にした、母のように、柔らかくて、穏やかな笑み。

普通ならば、ありえない。けれど、そんなものは女には関係ない。

女にとって、その怪物は、この世で誰よりも可愛い弟であるならば。

 

ああ、ああ、ああ、ああ!!!

 

アインズの中に歓喜がわき上がる。

その笑み!

険のある顔立ちで、その人は笑うと少しだけ目尻が下がって、これ以上無いほどに優しい顔立ちになる。

 

いつも、鈴木悟に向けられていた笑み。

幼い頃に手を繋いだ、見上げた先にあった笑み。

 

精神が、すっと静まっていくのがわかる。それに苛立ちを覚えて、けれど、そんなことはすぐに収まる。

 

「悟。」

 

目の前に立ったそれは、あの日、あの時、帰ってきた鈴木悟を出迎えるはずだった女がその人でなしに微笑んだ。

 

「・・・・ただいま。」

 

きっと、あの日。それを言うのは自分だった。そう言って欲しかったのは、目の前の人だった。

けれど、遠くに行ってしまったのはその女の方で。

だからこそ、女は、言ったのだろう。

帰還を意味するその言葉を。

 

「姉さん?」

 

掠れた声で、そう言った。それに、女は、ああと泣きそうな顔で微笑んだ。

 

「うん、悟。ただいま。」

 

その言葉とアインズは、わき上がる歓喜のままに女のことを、己の懐に引きずり込んだ。

女は当たり前のようにその怪物を同じように強く、強く抱きしめた。

 

女は、弟がどんな風に笑っているのかとんと見えてはいなかった。

 





エルフの国の最悪ルート。

姉が出産→姉死亡→姉によく似た子どもだけ残る→アインズ発見→狂って過去に閉じこもっていた姉の話を聞いていた子どもから全てを理解するアインズ→姉を蘇生させおうとするが失敗→姉に似てるけどクソ野郎の子どもに愛憎を抱えてそれでも側に置く

パターンが最悪かな。
もっと最悪なのは、産まれた子どもが複数いて、その体の負荷に耐えきれず姉が死んでてももっと最悪かな。
ちなみに、子どもたちは嫌になるほど姉に似てるともっと最悪。
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