バハルス帝国の贄姫   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

守護者と会うまで行かなかった。アルベドとの初対面です。


色々最悪のルート考えてたけど、これ、普通に弟来る前に政略結婚してて、王国の長男とかに嫁いでても最悪だなあ。あんまり綺麗じゃないから夫に冷たく当たられて、魔法の勉強もできなくて、唯一心のよりどころだった子どもをナザリックの誰かに殺されるとか最悪だなあと考えたりしてる。

お題箱作ってみました、何かあれば
https://odaibako.net/u/fujineko56


乱入

 

ふかふかで、溺れるほどに寝心地がいい。

半ば覚醒した思考の中で、リリーは更に眠りを続けようと丸まるが、残念ながら二度寝は叶わなかった。

寝起きはさほどのいい方ではない。ぼんやりとした思考のまま、リリーは起き上がる。

 

(・・・・なんだっけ。領地関係の書類の承認は、溜まった分はしたし。でも、学校のほうの授業内容は。)

 

そこまで考えて、リリーは自分が天蓋付きのベッドの上にいることがわかった。そうして、改めて、自分がどこにいるのか理解した。

 

「そーだ、悟のギルドにいたんだった・・・・」

 

眠気を振り払うように軽く首を振り、そうして、ともかくは弟に起きたことを告げるために天蓋を開けて外に出ようとする。

 

「・・・・おはようございます。」

「っん!?」

 

突然かけられた声にびくりを体を震わせた。そうして、視界の隅に立つメイド数人がいた。

 

「驚かせてしまい申し訳ありません。」

「ええっと、いいや。あーユリさんだっけ?」

「・・・はい、戦闘メイドプレアデスがリーダー、ユリ・アルファです。さんづけなどせずにユリとお呼びください。」

「あ、はい。」

 

リリーはぴんと背筋を張るその様に思わず頷いた。昔、礼儀作法を叩き込んでくれた教師のことを思い出す。

 

「後ろにいるのが、私と同じプレアデスのシズ・デルタ、そうしてルプスレギナ・ベータです。お風呂が沸きましたので、お入りください。」

「あ、はい。」

 

リリーは首振り人形のごとくそれに従った。

 

 

 

(メイドって聞いたときは、予想はしてたけれど。)

「・・・そう、それ。」

「これっすね。」

 

現在、リリーはやってきた三人に丸洗いされている。

けして乱雑ではないが、それはそれとして非情に淡々と体の隅々まで洗われている。皇女生活も長いおかげで、他人に裸を見られようと平気である。いいことなのか、悪いことなのかはわからないが。

それにリリーは疑問に思う。

 

(・・・・なんか、悟と話したときは、てっきりユリって子はこういうことしないのかと。)

 

メイドと言っても一応は種類があるのだ。

主人の側に侍り秘書のようなことをするものと、世話全般をするもの。

 

(悟に近い立ち位置だったから、てっきり地位の高い子なのかと思ってたけど。風呂の世話とかの肉体労働なんてもっと地位の低そうな。いやゲームで作った部分だし。そこら辺の取り決めはもっとざっくりしてたのかな?)

 

そんなことを考えながら、リリーとしては何か話すかと決める。いや、ずっと黙り込むのもなんだかなあであるし。

 

(悟がどうやって過ごしてるのか気になる。)

 

弟曰く、元々ギルドに配置されていたNPCはギルドのメンバーに絶対的な忠誠を誓っているらしい。

 

(確か、NPCには自由に設定なんかを書き込めるフリースペースみたいなとこがあったっけな。)

 

ギルドに入っていなかったリリーには関係ないことだったためあまり知らない。

 

(でも、悟はいいよな。私も、自分の部屋が持って来れればよかったのに。)

 

リリーはギルドには所属していなかったが、自分専用の部屋は持っていた。ユグドラシルでは、町に配置された建物に部屋を借りられたのだ。ギルドを持たなかったり、専用の建物をもたないギルドはそう言った場所で部屋を借りていた。

 

(借りられるのも限定的だし。小さかったけど。部屋はなあ、家具とかは惜しかったけど。やっぱりペットがなあ。)

 

そういった部屋を借りていると、お楽しみ要素としてペットを飼えた。連れ歩きや冒険に連れてはいけないが、愛玩用としてガチャがあった。リリーもまたそのガチャで当てた小さなドラゴンを飼っていた。

そんなことを考えていると、声がかけられた。

 

「あのぉ。お聞きしたいんですけど。リリー様ってアインズ様のお姉様なんすか?」

「ルプスレギナ!無礼よ!」

「ああ、いいよ。ええっと、君はルプスレギナ、だっけ。あの、様付けとかもいらないんだが。」

「いいえ、いけません。アインズ様より、お姉様にはそれこそ、アインズ様ご自身よりも丁寧に扱うようにと申し使っております。」

 

(・・・・さすが我が弟よ。姉の敬い方をわかっているな。)

 

などと一瞬考えて、ふと、思う。

ユリがそう言った瞬間、何か、三人の視線が鋭くなった気がした。

それにリリーは少しだけ考える。

伏魔殿で生きてきた身だ。ある程度は、隠された悪意やら敵意については察せられるところがある。

 

(・・・・忠誠心、敵意、そう言えば、悟が前に言ってたな。自分のギルドは、悪役ロールプレイを好んでるって。)

 

そこから導き出されるのは、ぽっと出の女が自分たちの主人に大事にされているのが気にくわないという所だろうか。

 

(めんどくせえ。昔、兄上の信者に絡まれたことを思い出す。)

 

リリーは少しだけ憂鬱になりながら三人の女達の様子を探ることにした。

 

「・・・まあ、姉って言っても血は繋がっていないよ。あの子の親が、身寄りのない私を引き取って育ててくれた。そのまま、共に育ったんだよ。」

「へえ!そうなんすかあ!あと・・・・」

 

ルプスレギナが更に口を開こうとしたとき、ユリがそれを叱咤する。

 

(今は黙っておいた方がいいかな?)

 

リリーはそう思い、そのまま口をつぐむことにした。

 

 

(つ、疲れた・・・・)

 

長時間、風呂に入れられたリリーはそれこそ髪の毛の先から足の指までピカピカに磨き上げられた。

それこそ、髪の毛なんて今まで一番のコンディションな気がしている。

素肌にバスローブを羽織っただけの姿で、よたよたとモモンガの寝室まで帰ってきた。

 

「それでは、これからドレスを選ばせていただきますが、ご要望は?」

「え、何か晩餐でもあるのか?」

「アインズ様が守護者の方々と改めて顔合わせの場を設けてくださいました。」

(守護者って言うと。)

 

それにリリーは一気にそわそわと落ち着かなくなる。なにせ、守護者というのはギルドの防衛のために置かれた、ギルドのメンバーたちが直々に作った存在だ。

その中で、リリーが知っている存在も数人いる。

 

(と、いうことは、デミウルゴスに、シャルティアに、エルフの双子ちゃんにも会えるってことか!)

 

リリーは他人の作ったNPCの設定を聞くのが好きだった。

 

(おっきいギルドとか、NPCの設定公開してるとことかもあって。人気だとファンアート作って貰ってたりするんだよなあ。)

 

そんなこんなで弟と共に遊んだギルドメンバーが作ったNPCのことはもちろん知りたがった。特に、弟と仲の良かったメンバーはNPCに思い入れがあり、リリーに頼まれて熱心に話していたものだ。

 

(楽しみだなあ。いや、でも、デミウルゴスとか、結構、コワめの設定だったような?)

 

そんなことを考えていると、何か、神妙な顔をしたユリが話しかけてくる。

 

「リリー様、少々よろしいでしょうか?」

「あ、ああ、どうかしたのかい?」

「それが・・・・」

 

ユリが口を開こうとしたとき、勢いよく扉が開かれた。扉の方を見ると、そこには目が潰れそうなほどに美しい女がいた。

 

漆黒の、夜のような髪。宝石のように輝かしく蜜のように甘い金の瞳、なめらかな雪のような肌。神が造形したかのような理想的で完璧な顔立ち。

腰に羽ばたく黒い羽だとか、ヤギのような角だとか、そんなことも気にならない。女が人でないことを示しているそれは、その美貌の理由を示しているようだった。

 

「アルベド様!入室の許可をした覚えはありません!」

「アルベド?ええっと、ここの人?いや、人か?でいいのかな?」

「この方は守護者統括のアルベド様です。アルベド様、無礼です!この方の世話は私が!」

 

ユリが牽制するように立ちはだかるが、アルベドは夢遊病者のようにふらふらとリリーに近寄る。

 

「・・・・百合。」

 

アルベドは、リリーをじっと凝視しながら歩み寄ってくる。

 

「なんで・・・・」

「いや、違う。私に用があるのか。」

「え?」

「私も、本当は百合って名前なんだよ。」

 

苦笑交じりに一歩前に出て、リリーはアルベドに向かい合う。

 

「その名前を知ってるって事は、私に何かようかな?」

 

リリーよりか、幾分か背の高いアルベドはじっとその顔を見下ろして、そうして、その美しい黄金の瞳から涙を流した。

 

「へ?」

「百合。」

「あ、ああ、えっとそうだけど。どうか。」

 

アルベドはその場に座り込み、そうして、リリーの片手をきつく握って己の額にこすりつける。

 

「ずっと、ずっと、お会いしたかった・・・・!!」

私の、愛しい、百合!!

 

はらはらと、それこそ、その顔を見ればどんな男だって願いを聞き入れたくなるような美女のその様に。

リリーの脳裏には、げらげらと自分を嗤う兄の姿がフラッシュバックした。

 

リリーよ、皇帝である俺よりも、お前は本当に女難だな!!

 

(・・・・私、前世で何かしたっけ?)

 

 

 

(なーにしとるんだろ、私は。)

 

現在、リリーはモモンガの私室に置かれていた椅子に座っている。そうして、その膝に縋り付く形で、アルベドがべったりと張り付いている。

そうして、それを困惑したような目でユリが見つめている。

 

リリーはともかくアルベドを落ち着かせようと、椅子に座るように促した。けれど、アルベドはリリーから離れるのを拒否して、今の形に落ち着いている。

 

(・・・女の支度には時間がかかるからって、結構時間を用意してくれてたからいいけど。)

 

リリーはユリにアルベドのことを伝えないでくれるように頼み、一旦、女の話を聞くことにした。

リリーは子どもをあやすかのようにその頬を撫で、頭を撫でている。

 

「それで、ええっと、どうしたんだろうか?私は君に会ったことがないはずなんだけど。」

「はい、あなたとお会いしたことはありません。ですが、私の、百合への愛は真実なんです!」

 

女難!!

 

リリーは自分の頭上に燦然とそんな言葉が浮んでいるのを幻視する。が、こんなことではへこたれない。

こちとら、この女難と何年の付き合いだと思っている?

 

「どうしてそんな風に思ってくれるのかな?一目惚れとか?」

「いいえ!我が主、アインズ様がそうされたからです!」

(アインズは悟のことだし。そうされた?でも、あいつのNPCってパンドラだよな?こんな子作ったなんて言ってなかったし。)

 

そこまで考えたとき、アルベドはようやく顔をこすりつけていたリリーの腹から身を離した。床に座り込み、それはまたはらはらと涙を流す。

 

「・・・・だから、だから、あなたと、もう二度と会えないと、そう、思っていたから。」

だから、会えて、うれしくて。

 

それに、美人への耐性があると言えども、美しい女が健気にそうやって泣くからリリーも少しだけほだされてしまう。

 

「だから、勝手に入ってきたのかな?」

「・・・・我慢ができませんでした。」

「そっか。今度から、事前に言ってくれると嬉しいな。さすがに、こんな格好で出迎えるのははしたないしな。」

 

そういってリリーはバスローブの端をつまんだ。そうだ、現在、リリーは素っ裸にバスローブを羽織っているだけだ。今だって、アルベドをあやしていたせいで、肌色の割合が大分多い。

 

(ともかく、アルベドのことは愚弟が関わってるのは確実だな。話を・・・・)

「それで、その。百合?」

「え、なに、が・・・・・」

 

そこで気づく。目の前の女の、文字通り目の色が変わっていることに。

 

「その、私と、そんな姿で、いるという、ことは。ですよ?それは、もう、色々と、わかって、許してくださるということ。なのよね!?」

「へ?」

 

その瞬間、気づけば、リリーはいつの間にか床に組み敷かれていたし、着ていたはずのバスローブは脱がされ、遠くに転がっている。

 

「アルベド様ご乱心!!」

 

目の前の美女の目にリリーが思い出すのは、捕食前のモンスターのそれだった。

 

あ、死んだ。

 

リリーはそんなことを目の前の女に思った。

 

 

 

 

 

「どういうことだ、愚弟?」

「あ、はい、その・・・・・・」

 

モモンガの真っ白な頭蓋骨を眺めつつ、リリーは大きくため息を吐いた。

 

捕食もかくやという状態であったリリーは他の僕と、そして怒り狂ったモモンガによってなんとか助かった。

アルベドは、というとリリーの助言のおかげで処罰は今のところは免れている。

 

自分のものであるはずの姉に手を出されてモモンガが怒り狂わなかった、というわけではない。

もちろん、最初は怒髪天をついた。

 

死のオーラをまき散らして部屋の入り口に立ち、アルベドを怒鳴りつけた。幸いだったのは、リリーが離れた場所におり、そこまで被害に遭わなかったことだろう。

 

「アルベドォ!!貴様!私の姉に何をしている!」

 

その怒りようにアルベドは恐れ戦き、そうして、リリーから離れたのだが。さらに激高して、アルベドに近づこうとしたモモンガは見てしまったのだ。

茫然としながら起き上がった、姉の真っ裸というものを。

色々と混乱しており、隠すなんてことも考えておらず、おまけに足を立てて起き上がったせいで普通なら見えないだろうところ全てを、弟分は見てしまったわけで。

モモンガは、イルミネーションもかくやというほどにぴっかぴかに輝きまくった。

 

「・・・・悟。」

「え、あ、な、ね、姉さん、ふ、ふく・・・・」

「ちょっとこっちに来なさい。」

 

 

そんなこんなでリリーはバスローブを拾った後、人払いをして、二人っきりになった。

最後の理性で、さすがに部下の前で叱ってやるのは悪手であると理解してのことだった。

アルベドには、怒っていないことと、弟と少し話をすると言っておいた。

 

だって!アインズ様だけずるいです!もう、味見ぐらいはされたんでしょう!?

おま、ば、あ、んな!しとらんわ!!

 

アルベドと弟のやりとりに何を言っているんだろうと不思議に思いつつ、リリーは弟に人払いをするように頼んだのだ。

 

現在、リリーはベッドに腰掛け、その前にモモンガが自主的に正座をしている。

 

「正座をしてるって事は、今回のアルベドの件については自覚があるようなことが、ある、と?」

「・・・・はい。」

 

モモンガは、姉と視線を合わせることができずにいじいじとしながら、訥々、話をし始めた。

 

 

「・・・・・つまりは、何か?ゲームのサービス終了時にかき込んだ設定がそのまま反映されて、何をとち狂ったのか私のことを愛してると?アルベドが?」

「・・・・はい。」

 

それにリリーは大きくため息を吐き、そうして、モモンガを怒鳴る。

 

「こんのあほ!!人の作った設定を勝手に変えるな!!というか、お前のそれで私は女難にあってるんだぞこの愚弟!!!」

「だからごめんって!!だって、その時はそんなこと思わなかったし!こんなことになるなんて予想できるはずないじゃん!!!おーれーは!わーるーくーなーいー!!!」

 

モモンガは子どもがするように耳を手で覆い、そうしていやいやと首を振る。

子どもか、そんなツッコミをしたくなったが、それはそれとして弟の言い分も納得だ。確かに、ゲームが現実になるなんて誰も思わないだろう。

 

(というか、なんでわざわざ私のことを愛してる設定に?)

 

そんな疑問が頭を擡げるが、改めて思い出せばモモンガ自体ゲームが終了時は自分が死んだことで相当ナイーブになっていたようだ。

 

(・・・・精神的にばらついてて、そんなことをしたのか?)

 

自分のことをちらちらと見ながらそわそわとする弟とみていると、胸の内で少し罪悪感も湧いてくる。

 

「・・・・あの、姉さん。」

「なんだ?」

「その、もうちょっと、服、なんとかならない?なんか、露出がすごいんだけど。」

 

それにリリーは自分の服装を見る。

適当に羽織ったせいで袷が緩くなっており胸の谷間ががっつり出ており、おまけに足を組んだせいで太ももが見えてしまっている。

それにリリーは申し訳なくなる。確かに、身内のセクシーショットか気まずかろうなあと。

 

「あ、でも、聞いてくれよ悟!」

「え、なに?」

「前世よりも胸がデカくなったんだ!ほら!」

「なんの報告!?」

「いやあ、昔は鶏ガラだったけどさ。こっちに来てからある程度メシ食わせて貰っててさ!」

「よかったね!?お礼しないとね!それで、なんでそんなことを俺に教えるの!?」

「・・・・まあ、気まずい空気を打破したくて。」

「打破できてないからね!?」

 

リリーはふざけているのか、自分の胸をわざわざ持って大きさを保持する。モモンガは元々、下ネタなど言った覚えさえないような姉のそれに動揺を隠せない。

というか、さっきからちらちらと見えている谷間やら太ももを見てしまっている男の悲しい性もあり、気まずさが倍増する。

そうして、沈静した後、モモンガはふうと息を吐く。

 

「・・・・それで、アルベドのことは。」

「処罰はしないで欲しい。」

「でも。」

「誰のせいだ?」

 

ぴしゃりとそう言われたモモンガは、気まずさの余り黙り込む。そうして、リリーは改めて息を吐いた。

 

「愚弟のやらかしだ。責任は取るよ。」

「せ、責任って!?」

 

慌てた様子のモモンガに、リリーは無粋にチョップを入れる。

 

「そりゃあ、文字通り愛してやるさ。ただ、異性愛者の私には、同性のあの子に性愛は抱けない。」

娘か、妹でも増えたと思うよ。

 

そう言って、リリーは多くため息を吐いた。

 

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