バハルス帝国の贄姫   作:藤猫

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ルプスレギナへのお叱り。もうちょっと、アルベドとかシャルティアとかお怒り描写いれればよかった。

お題箱作ってみました、何かあれば
https://odaibako.net/u/fujineko56


叱責

 

 

「・・・・それで、あの時にいた僕達は全員集まったわけだな?」

 

リリーが疲れたようにそう言えば、アルベドがはいと頷いた。彼女がいるのは、アルベドが私室として使っている部屋だ。その部屋のソファにリリーが座り、それを取り囲む形でセバス、ユリ、シャルティア、アルベド。

そうして、リリーの前で正座をしているルプスレギナ・ベータがいた。

 

 

 

ルプスレギナのやらかしについて、アインズ・ウール・ゴウンことモモンガの怒りが収った後、リリーはぐずる弟をあやして、落ち着かせた。

そうして、時間を見た後に、あの場にいたNPCたちに集まって貰ったのだ。

 

「・・・・それで、言ったとおり、あの場でのあー、アインズの言ったことは誰にも言ってないんだよな?」

「ええ、確かに。でも、いいの?」

 

リリーはアルベドたちに、あの場での弟の言葉について口外禁止であるとキツく言い渡した。

アルベドはぎろりとルプスレギナを見た。彼女はどこか、うろんな目で床を見つめている。

 

「・・・・この愚か者にはあまりにも甘い!」

「殺気押さえてくれるかな!?やっぱ、あいつの言ったことって君らにとっては相当堪えることなのかい?」

「その程度ではすみません!!」

 

アルベドの怒鳴り声に、他のNPCたちは同意なのか、隠しきれない怒気と、そうして悲壮さを感じさせる。

 

「私たちは、至高の御方々のために創られたのです!御方達がいるからこそ、我らは生き、生を謳歌できるのです!現在、他の方々はお隠れになられております。ですが、アインズ様だけは、我らのことをお見捨てになられなかった慈悲深い方!それをそれを・・・」

 

アルベドが憎悪を込めた、それこそ寒気がするようなまなざしでルプスレギナをにらみ付ける。

 

「この愚か者の行いで!かの慈悲深き方が、方が、我ら・・・・・!!」

「わかった!わかった!理解できた!!」

(日本人の私からするとあんまりピンとこないが、西洋的な神に見捨てられるかもしれないって感じなのかね?いや、そうか、確かに。私も、悟や、兄上に切り捨てられる瞬間は確かに辛いだろうな。)

 

アルベドをなだめつつ、少しだけ納得した。

ナザリックのNPCたちの結束は固い。今回だって、弟の態度はまあそうなるだろうという予想はあったが、彼らがここまで怒り狂うとは思っていなかった。

 

(いや、アルベドとか、私よりの存在は置いておいても。他のは、なあなあにするかもなあと思ってたけど。)

 

普段、温厚なユリさえもここまでルプスレギナに軽蔑の視線を向けていると言うことはそれだけの意味を持つ言葉だったのだろう。

ちらりとリリーはルプスレギナを見た。

 

普段、朗らかで、明るい彼女はその面影はない。

表情はなく、目に光はない。がらんどうの瞳で床を見つめている。

 

「・・・・それで、これは?」

「アインズ様に捨てられたのです。創造物としては当然でしょう。」

 

リリーはそれに呆れた顔をした。そうして、息を吐きながら声をかけた。

 

「ルプスレギナ、顔を上げてくれるか?」

 

けれど、ルプスレギナは微動だにしない。他のNPCたちが不快そうな顔をする。アルベドとシャルティアが口を開くその前にリリーが声を発した。

 

「ルプスレギナ、お前は最後に命じられたことさえも守れないのかい?私はお前の主だ。」

 

冷たく発せられたそれにようやくルプスレギナは顔を上げた。

がらんどうの目に、リリーはため息を吐いた。

 

「ルプスレギナ・ベータ。お前の主は私だ。最低限の礼節を取りなさい。」

 

それにルプスレギナは迷うような顔をした。それにリリーが威圧感のある低い声で命じた。

 

「礼の一つもとれんとは、至高の身に仕えるなど笑わせるな。」

 

その言葉にルプスレギナの目に確実な光が宿る。殺気混じりにリリーをにらみ付けた瞬間、人影がルプスレギナを制圧する。

床に引き倒され、這いつくばる駄犬にリリーはため息を吐いた。

 

「いい加減にしなさい。」

「はあ・・・・こうなる。」

「離して、アルベド・・・・・」

「アインズ様に命じられたでしょう!リリーがお前の仕える主だと!だというのにその態度は何!?」

「そ、それは・・・・」

 

リリーは立ち上がり、そうしてルプスレギナの顎を掴んだ。

 

(あんまりレベル差もないし。こういうとき、前衛職に憧れる。)

 

反抗的に己をにらみ付けるルプスレギナにリリーは目線を合わせるようにして吐き捨てた。

 

「・・・なあ、駄犬よ。」

「貴様にそんな!」

「私の可愛い弟の顔に泥を塗って置いて駄犬以外の何があるというのだ!!??」

 

ばしんと、ルプスレギナの顎をひっぱたくように弾き、リリーは立ち上がる。

空気を震わせるほどの、怒気に塗れたそれに部屋にいた者たちは少しだけ驚いた顔をする。その時、部屋にいた者たちは確かに、その圧倒的強者の振る舞いに主の面影を見る。

マントのようになびく黒い髪は、まるで主人の羽織るローブのように揺れている。

十数年、皇族として振る舞い続け、そうして圧倒的強者に揺るがない胆力を持つ女は確かに支配者としての風格を持っていた。

 

「よいか、従者として一流というのならば、主の言葉をくみ取り、最低限のやりとりで最高の結果を出すのが基本であろう。だがな、お前はどうだ?貴様の主は、私を同等として扱えと言ったはずだ!だというのに、数々の無礼を見るがいい!お前は、言われたことさえも遂行できん、三流以下だと自分で示して見せたのだぞ!?」

「人間風情が!」

「そうだ、人間だ!?だが、それが何だというのだ!?私はアインズ・ウール・ゴウン、いいや、モモンガの姉だ。あれがそう言い、そう定義した。そうして、命じたのだ!貴様は、主人の命よりも、己の私心を優先した!これが対外的にどう見えるかわかるか!?あの子は、従者の一人さえ御しきれない程度の存在だと宣伝したようなものなのだぞ!?いいか、従者の格は、主の格と同一視されることもあるのだ!」

お前は、アインズ・ウール・ゴウンというギルドに、そうして、弟の名に泥を塗ったのだ!!

 

叩きつけるようなそれにルプスレギナは、目に大粒の涙を溜め、そうして、がたがたと震え始める。

 

改めて言い尽くされて、ルプスレギナの脳裏に、怒り狂った主のことを思い出す。

高々、人間だから。

それを大事にする至高の御方。

 

きっと、いつか、あっさりと、さっさと、捨ててしまうのだ。

だって、それはナザリックのものでさえもない、ただの人間だ。

姉?

 

(アインズ様のお姉様が人間なんてあり得ない。)

 

主に気安く接する女。主にたかる、害虫。

 

お前らしくもてなしてやりなさい。

 

そんなことを言われたから。だから、そうだ、そうだといいことを、思いついたと。

そうだ、死にはしない程度に。生意気な、主の寵愛を得るそれに。

己よりも強者である存在を前にしてなお、揺るがない女の怯えた顔を、見てやろうと、ただ、そう思った。

 

(なのに!それだけなのに!!)

 

捨てられた。

その事実に、ルプスレギナは自分の主人が吐き捨てて、自分から顔を背ける瞬間を。この場所から放り出される不安感を。

それは、まるで氷でできた刃のように、ルプスレギナの心臓に突き立てられる。

それだけで、息ができないと、そう思ってしまうほどに。

サディスティックで、他者を踏みつけて笑う獣はそこにいない。

そこにいるのは、主人から切り捨てられた惨めな捨て犬でしかない。

 

神に見捨てられる瞬間というものをリリーは理解しない。ただ、その怯えようと、絶望しきった惨めな姿に、これがそうなのだろうなあと思った。

 

「ルプスレギナ、こっちを見なさい。」

 

それにのろのろと、ルプスレギナは、最後に主人に命じられた通り、人間の女の言うことに従った。

 

「・・・・私が今回、お前を助けたのは、お前のためではない。あの、優しい弟のためだ。ゆえに、だ。助けるのは、この一度きりだ。」

 

変わること無く、凍えるような、冷たく威圧感のある声がする。己を見下ろす、深い紫の瞳をルプスレギナはのぞき込む。

 

「貴様は、私の弟の信頼を裏切った。他の僕の忠義に泥を塗った。今度こそ、言われたことをしかとこなして見せろ。」

 

女は、また、ルプスレギナの顎を掴み、そうして顔をのぞき込むような仕草をした。

 

「私はお前を甘やかすつもりはない。主に無礼を働く駄犬に飴をやるほど暇ではない。だからこそ、だ。ルプスレギナ。」

アインズにひれ伏すように私に媚び、アインズに敬意を示すように私を愛せ。お前の私への忠誠を見れば、いつか弟も一度だけならば慈悲をくれるだろう。

 

人の女が、何故か、至高なる主人によく似た目で、ルプスレギナを見下ろした。

 

「さて、飼い犬として、やることがあるだろう?」

 

その言葉に、ルプスレギナは屈辱と怒りが沸き起こり、それ以上に女の言った言葉で己を恥じた。

主が言ったことさえもできず、捨てられた己をただ、恥じる。

そうして、恐怖する。

 

その、女に見捨てられるその時こそが、本当の意味で神に捨てられるその時なのだと理解して。

 

ルプスレギナはするりと、人の姿から、獣の姿に変わる。大きな、赤毛の狼はその場に伏せり、そうして女の足を舐めた。

 

今、ルプスレギナがそれでも、なんとかナザリックから追い出されないのは、女の慈悲によるものならば。

 

獣は吠えた。

今度こそ、主人の命にしかと答えるために。

 

 

(・・・・・あのバカ、マジで足舐めやがった。服従の証?にしても、怒り慣れてないから疲れた。)

「あの、お姉様、一ついいかしら?」

 

ルプスレギナへの詰問が終わった後、部屋にはアルベドとシャルティア、そうしてセバスが残った。

ユリはルプスレギナを連れて一旦退室させた。

 

「なんだい、シャルティア?」

「その、ずっときになっていたでありんすが。どうして、アインズ様がルプスレギナに言った言葉をナザリックのものに漏れないようにといわれたんですか?」

「シャルティア、お前にはわからないの?」

「あんたには聞いてないんだけど!?」

「あらあ、ごめんなさいね、それぐらいわかってるものかと?」

「何を!」

「・・・・・ルプスレギナを追放すること自体、弟は望んでいないからだよ。」

 

二人の喧嘩に疲れ切ったリリーが口を開く。

 

「でも、あんなにお怒りに。」

「頭に血が上ってんだろ。たぶん、時間が経てばやってしまったって大慌てするだろうからさ。それに、今回は私もまいたタネの部分があるからね。」

 

リリーは凭れていたソファに預けていた背を離した。そうして、背中を丸めて、床を見つめる。

 

「元々、メイド達。下手をすれば、ユリからも軽んじられてる空気感は感じてたよ。」

「申し訳ございません。」

「セバスの旦那が謝ることでも。いや、上司なら当然の謝罪か。私も、このギルドはそれが当然だし、危害を加えられないならそれでいいと思ってたから。弟に負担をかけたくなかったし。でもなあ。」

 

リリーはまた大きくため息を吐いて、そうして、気だるそうに言った。

 

「ここってさ、あの駄犬並のバカって他にもいる?」

 

暴言も暴言だが、今回は事が事だけに、他の三人は気まずそうな顔をした。

 

「プレアデスのものでしたら、ルプスレギナと、あと、もう一人、暴走しそうなものが。他のメイド達は人を軽んじる性質や、また、人を捕食するものもいますので。」

「・・・・そういうのって、人を、食べたりとか。」

「ご安心を!人以外も食べられますので、それで!あ、ああ、でも、その、夜盗などの犯罪者に関しては、その。」

「ナザリックには人間を軽んじるものは多いですが。アインズ様のご命令に背くような愚か者は、その。」

 

ルプスレギナの前例があるため歯切れが悪い。

 

「・・・・一般人でないなら目をつぶるよ。それで、三人に残って貰ったのは頼みがあるんだけど。」

「なんでありんすか!?お姉様の望みならば、いくらでも!」

「私も!私も、やるわ!」

「そんなにやる気になってもらわなくてもいいよ。ただ、今回、ルプスレギナが私に譲渡されたこと、あと、それが私を軽んじた結果だって事。それと、さっき私がルプスレギナを手ひどく叱ったことをナザリック内にできるだけ広めてくれ。ただ、今回のことで、弟が出て行くとか、そういうことを言ったことは口外禁止だ。ユリにも伝えておいてくれ。」

「それは、かまいませんが。全てをお伝えにならないでよろしいのですか?」

「どうして?」

「全てお伝えになられた方が、アインズ様のお怒りようが伝わります。そちらのほうが、リリー様の影響力が増すかと。」

「そんなことしたら、ルプスレギナがナザリックに居にくくなるだろうが。そうしたら、悟が、ルプスレギナを許しにくくなる。ギルドの外の、人間の女に手荒に扱われているのなら、弟を怒らせたことに関してもヘイトが私に向いて丁度良いだろう。今回のことで、他の奴らにも牽制になればいい。それでもわからないなら。今度はもうかばわないだけだ。」

 

その言葉にセバスは深々とリリーに頭を下げた。

 

「・・・・今回、ルプスレギナの愚行に慈悲をくださり、感謝申し上げます。」

「感謝なんてするな。言っただろう。私は、弟に傷ついて欲しくないだけだ。慈悲も何もない。」

 

苦々しく吐き捨てれば、ずどんと何かが自分の胸に飛び込んでくる。

 

「そんな!お姉様は誰よりも慈悲深いです!本当なら、私があの駄犬をしつけたいぐらいなのに。」

 

ずももと最後になるにつれて殺気混じりになる銀髪の女の頭をリリーは撫でる。

 

「いい、自分のケツは自分でふくさ。気を遣ってくれてありがとな。」

「お姉様・・・・!」

 

シャルティアは感動して、リリーの胸に縋り付く。

 

「え、えへへへへへへへへ、お姉様の、お、お胸。」

(いや、ダメかな。)

 

アルベドに引きずられていくシャルティアを見送りながら、リリーは改めてセバスに目を向けた。

 

「それで、弟に聞いたんだけど。ツアレ、元気?」

「・・・・はい、あの時は真にありがとうございます。」

「感謝されるいわれはない。普段なら、無視してた。」

 

疲れたようにそう吐き捨てるリリーに、セバスは少しだけ楽しそうな顔をした。

 

「そうですか。ですが、あの時は確かに助けてくださいましたから。」

 

リリーがそれに不機嫌そうに顔をしかめるのを見て、セバスは笑みを深くした。リリーは反抗するように吐き捨てた。

 

「・・・・私は、昔から、できることとやりたいことしかしていない。」

「そうですか。」

 

理解するようにセバスが頷くのが癪に障りながら、リリーは聞きたかったことを口にした。

 

「それで、どうしてあの時、私のことを執拗に誘ったんだ?私のことは、あの時知らなかったはずだろ?」

「・・・あの時は情報収集のために王都にいましたので。あの時のリリー様は王国の情報を知っていそうでしたので。」

「なるほどな。」

(悟の言ってたとおりか。でも、何故わざわざ私に隠していたんだ?情報収集に動いていただけなら別に隠す必要はないだろうに。)

 

セバスはなんとか誤魔化すことができたことに、胸の内で安堵する。

そうして、リリーはようやく今回の本題に入った。

 

「・・・そういえば、セバス。アダマンタイト級冒険者のモモンとも親しくなったのか?」

「・・・ええ、あの共闘の時に。ただ、あれ以来会ってはおりません。」

「報告はしてるよな?」

「ええ。」

(・・・・ばれてる!!!!)

 

リリーは手を組み、そうして、それに顎を乗せて考える。

今回の、セバスのことを知ってできた懸念は、モモンと自分との関係が弟にばれていることだ。

 

(あいつなら絶対突っ込んでくるはずだ!でも、それをしないのは気にしていない?いいや、もしかして、裏で何かしてる可能性!?)

 

リリーはモモンのことを突っ込むことを決めて、ため息を吐いた。何よりも、ヤルダバオトの件を聞いて、いったい何をやらかしたのかを聞かなくてはならない。

 

(弟の管理外の伝手は手に入れたけど。あの子が完璧な隠密ができるわけじゃないから、兄上との伝言鳩にするのは悩ましいな。心配性な悟のことだから、監視してる可能性もあるし。ある程度の時間は大人しくしてから、連絡は取った方がいいか。)

 

リリーはそんなことを思いつつ、自分が飼うことになった駄犬を迎えに行くために腰を上げた。

 





兄上。前に言ってた王国との縁談どうするんだ?まじで私輿入れか?花嫁としてはどべだぞ、私。
あれか?断るぞ?
そうなの?結構長考してなかった?
一応、長考する振りは必要だろうが。まあ、少し考えはしたが。お前があのうすのろに嫁いだ後、子どもを産んで、すぐに長男を暗殺。子どもを傀儡にして、王国を乗っ取るというプランを一瞬考えたが。
・・・まあ、あっちの貴族で取り込んでるのもあるし。次男を担ぎ上げるよりも、幼い子どもを担ぎ上げて甘い汁を吸いたい奴は多そうだけど。でもさあ。
ああ、お前にそんな腹芸はできんし。お前の価値を考えたら釣り合わん。普通に戦争しかけて取り込んだ方がいい。

まあ、私は兄上に従うけど。私、結婚できるの?
まあ、お前と価値の釣り合う奴は早々いないからな。相当の地位でもなければ、好きな奴と結婚しても良いぞ?
・・・・・・なんか、それしたら一生こき使われそうでいやなんだが。
安心しろ、結婚しなくてもこき使ってやる。
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