バハルス帝国の贄姫   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

デミウルゴスとのお話。次回、パンドラを出します。

お題箱作ってみました、何かあれば
https://odaibako.net/u/fujineko56


悪魔との契約

 

 

ルプスレギナ・ベータは枕に適しているらしい。

それは、ルプスレギナを飼うことになった女の感想である。

 

(毛はさらさらでふかふか、それに加えて体重を全部預けても大丈夫な安心設計。腹を上下するのも丁度良い。まあ。)

「うー・・・・」

「駄犬。」

 

リリーがぴしゃりと言い捨てれば、ルプスレギナは、その大きな赤毛の狼は気まずそうに唸るのを止めた。

ルプスレギナは一応は、リリーに従う仕草はするが、元来の性格的なものか不服そう、というか反抗的な仕草をする。

 

(犬科には上下関係を叩き込めと言うが。)

 

そういうときはどうするかというと、ルプスレギナに徹底的にマウントを取るようにした。アルベドに引きずり倒して貰うだとか、叱りつけるだとか。

反抗的な仕草をする度に、弟の名前を出して逆らえないことをたたき込みを繰り返している。

本当に、反抗的な態度を取った場合は、ルプスレギナが自分に行ったいたずらと同等の行いをやり返せば素直になった。

 

少々の時間が経った今、一応は反抗的にならず、こうやってふれあいをしても抵抗などはしなくなっている。

 

(時々、不満そうではあるが。)

 

それでも、一応は、自分に懐くような仕草をするからいいだろう。

リリーはその日、ルプスレギナを枕にして図書館で借りてきた本を読んでいた。無料で配布されていた古典的なものだが、なかなかに面白い。

 

(・・・・悟の奴にも避けられてるし。)

 

女の弟は、彼女がモモンについて突っつくと少し黙った後に、首を振った。

 

「・・・・面白くはないが。だが、アダマンタイト級冒険者についてはあまり突きたくないのが本音だ。姉さん、そんなにモモンのことが気になるのか?」

 

ひどく冷静な答えが返ってくる。

それにリリーは疑いの目を持つ。

 

(私が帰ろうとしただけで、あれだけの狂乱しておいて。私に粉をかけてきた男にあんなにも冷静な態度が取れるのか?と、いうか。思えば私みたいに皇族の下積み時代のない悟が支配者ロールできてるのも可笑しいような。)

 

支配者然としてそれっぽい本だとか、仕草だとかを頑張っているらしいとは聞いているが、それはそれとして冷静に立ち回りすぎている気がする。

 

(アンデッドになってから、三大欲求も消えたって言ってたな。)

 

他に、種族自体が変わることで変化したことが他にあるのだろうか?

リリーはぐりぐりと狼の頭を乱雑に撫でた。そうすれば、義理なのかはわからないが、尻尾がばたばたと揺れる。

 

弟のそれに、リリーは一瞬ではあるが、多くのことが流れ、そうして答えた。

 

「・・・・彼は、素晴らしい戦士だ。人間種としてはひどく頼りにされている。私も、世話になったしな。」

 

そういうしかなかった。いや、本当に、理性とか諸諸がなければ、弟がモモンを殺しに行くならやったあ!!と諸手を挙げて同行するぐらいにはキモいし、苦手なのだが。

さすがに理性であかんやろうと、ストップが来ている。

 

素直にキモい、嫌いと言えば殺しに行きそうだし。かといって全面的に好意を押し出すとそれはそれで殺しに行きそうだし。

 

「・・・・姉さんはモモンに会いたいのか?」

 

今、この世で最も答えたくない質問が来た。それにリリーは表情を覚らせないように視線を床に向けて思い悩むような仕草をした。

 

「・・・・生きていてくれれば、それだけで十分だ。」

(あってるのか、この答えは!?)

「・・・・そうか。」

 

リリーとしては、意味深に残していった弟の言葉が気になって仕方がない。伊達に、鈴木悟という存在を数十年育てていないのだ。

強制的なポーカーフェイスといえども、空気感で何かしらを画していることはわかる。

追及しようとすれば、そのままモモンガは用事があるからとナザリックから出かけてしまい、おまけになかなか連絡も付かない。

そこで、ふと、考え込む。

 

(あの子は、人を殺したのだろうか?)

 

暖かな生き物が、頭の下で脈打っている。それに、どこか、目をそらすかのように頭の位置を変えた。

 

結局、問えずにいる。

 

(殺したんだろうな。)

 

何となしに理解している。これだけの規模の戦力を抱えて、情報収集に精を出していたりする時点で。

こんな世界で、誰かを殺さずに生き抜くのは難しい。

だから、誰かを殺したんだろうなあと、わかっているのだ。

 

(わかっているのに、なあ。)

 

それでも、リリーは聞けずにいる。それが事実で、あの優しい弟の手が血に濡れているとして。

 

(あの子は、それを・・・・)

 

そんなときだ。誰かから〈伝言〉が入った。

 

 

 

「・・・・失礼いたします。」

「ああ、なにかようかい、デミウルゴス?」

 

リリーはベッドに座った状態でデミウルゴスを迎え入れた。現在、リリーはモモンガの寝室の住人である。

ルプスレギナの件で、どうも不安感がましてしまったようで自分はリリーを避けるくせに姉が寝室からあまり出ないように部下に命じているのだ。

 

「少し、ナザリックの僕を教育しますので。」

 

そのため、この頃、リリーはルプスレギナと共に寝室に軟禁されている。ルプスレギナに頼んで借りてきて貰った本を読んだりしている。

 

(食っちゃ寝で太りそう。)

 

ちなみに姉が太ったことに弟が喜んでいることはリリーは知らない。それを知った姉にド突かれることもまた弟は知らない。

寝室に入ってきたデミウルゴスはリリーに深く礼をした後、女の足下にいる狼に殺意と怒気混じりの視線を寄越した。

それにリリーははあとため息を吐き、そうして、怯えるルプスレギナのケツを叩く。

 

「ほら、散歩にでも言っておいで。」

 

デミウルゴスの怒気に震えていたルプスレギナは見事に尻尾を巻いて部屋を出て行く。それを見送ったリリーにデミウルゴスは吐き捨てる。

 

「なぜ、あれがここに?」

「私のペットだからね。側に居ても不思議じゃないはずだ。」

「アイ、ンズ、様が。あれを手放されたのは、真なのですね。」

「ああ、まあ一時的なことだよ。あの子が返して欲しいと言うなら返す気だしね。それで、お前さんがどうしてここに?」

 

リリーは少しだけ、からかうように言った。

 

「お前も、私の飼い犬とそう変わらないと思っていたのだが。」

 

それにデミウルゴスの顔が強ばった。

 

(・・・挑発、あんまりよくないんだがな。ルプスレギナのこともあるし、釘は刺しておいたほうが。)

 

そんなことを考えていると、デミウルゴスが焦った様子で跪く。リリーが目を白黒させていると、デミウルゴスが口を開く。

 

「・・・・今までの、態度のことを、謝罪させていただきたくはせ参じました!」 

 

ぽくぽくちーんと、リリーの頭の中で音が響く。

 

「私も、ルプスレギナと同様に!人であるリリー様を、その、軽んじてる部分がございました!ですが今後はそのようなことがないように勤めます!周りの僕達にも必ずや・・・・・!!」

「デミウルゴス。」

 

リリーは座っていたベッドから降り、デミウルゴスのことを見下ろした。そうして、彼の普段では考えられない焦った様子に声をかけた。

 

「貴様、あの場での弟の発言、どこで知った?」

 

その言葉にデミウルゴスは少しだけ黙り込んだ後に、観念するように口を開いた。

 

「・・・・申し訳ありません。」

 

別段責めようとは思っていないが、デミウルゴスの深刻そうな顔を見ていると聞く気は失せてしまった。

 

「お前のほかにそれを聞いたものはいるか?」

「いいえ、誓って、私以外には漏れておりません。」

「そうか。」

 

リリーはため息を吐きながら頭を乱雑に掻いた。そうして、デミウルゴスを見下ろした。そうして、無言でデミウルゴスに近づき、乱雑に頭を撫でた。少しだけ乱れた髪にデミウルゴスがまた、驚いた顔をした。

リリーは多分、これはそんな顔をすることは滅多にないんだろうなあと思った。

 

「すげえな、オールバックだから整髪料とか使ってると思ったのに。さらさら、だと?」

「リ、リリー様?」

「まあ、いいか。それで、デミウルゴス。立ちなさい。ウルベルトさんの理想の悪魔ならもう少ししゃんとしなさいよ。」

 

その言葉にデミウルゴスはのろのろと立ち上がる。

リリーはまたベッドに腰掛けた。そうして、少しだけ情けない顔をしたデミウルゴスを見た。不安に満ちた、子どものような顔は、女の弟がここから出て行くと、そんなことを言ったときの他のNPCたちによく似ていた。

 

「そんな不安にならなくてもあの子はここだとか、君らを捨てたりしないよ。」

「・・・・ですが。」

「なあ、デミウルゴス。お前は、今、寂しいかい?」

 

考えてもみなかった言葉なのか、デミウルゴスは困惑したようにリリーを見た。それにリリーは苦笑し、そうして肩をすくめた。

 

「私と弟はね、子どもの頃はそう恵まれた立場ではなくてね。二人ぼっちで生きてたんだ。そんなとき、あの子が嬉しそうに友達ができたって、アインズ・ウール・ゴウンのことを話してくれたよ。あの子は、とても寂しがりだからねえ。ここには、君達が、君がいる。大好きな友人達の忘れ形見が。それだけで、あの子がここを離れる理由はないんだよ。」

 

リリーはデミウルゴスの顔を伺う。その言葉に、デミウルゴスはやはり、どこか不安そうな顔をする。

 

「・・・・ですが、アインズ様が出て行かれる理由が、確かに存在します。それが!愚かな僕の犯した愚行で!アインズ様に、あの、あのような!!至高なる御方々の殆どがお隠れになってしまわれました!アインズ様だけが!アインズ様だけが!我らをお見捨てにならなかった!その慈悲を!あの愚か者が!あの方に見捨てられたら我らは!!」

 

憤怒、そう似合うほどの激高ぶりにリリーはどうしたもんかなあと思う。一人の悪魔の激情は確かにすさまじいが、弟のねっとりとした薄ら寒いあれよりは怖くはない。

リリーはデミウルゴスの顔の前で手を叩いた。それにデミウルゴスは正気に戻るようにリリーを見上げた。

 

「よし、ならデミウルゴス。君と一つ、約束を、契約をしよう。」

「け、いやく、ですか?」

「そうさ、ウルベルトさんに聞いたんだ。悪魔ってのは、何よりも、契約ってものを重んじるんだって。」

「それは、はい。それで、何に契約されると?」

「もしも、あり得ないだろうけど。弟がここを出て行くなんて言い出したら、私が全力を持って止めるよ。」

「そのようなことが。」

「おや、信用できないかい?でもね、君?マーレとアウラの関係を見てみると良い。いいかい、弟というのは姉に勝てないものなのさ。」

「・・・・それは。そう、ですが。」

 

至高の御方に創られた関係性はデミウルゴスに信頼を与えたのだろう。リリーはそれに苦笑し、そうして、アイテムボックスからとあるものを取り出した。

 

「まあ、なかなか信頼できないだろうから。契約の証にこれを君にあげるよ。」

 

そう言ってリリーは、銀色に輝く簡素な指輪をデミウルゴスに渡した。簡素なそれは黒曜石がはめ込まれており、よくよく見ればヤギの紋様が彫り込まれている。

 

「これは?」

「ウルベルトさん印の指輪。言って、悪魔の気配限定で探索出来る、君にはいらない奴だろうけどね。」

「ウルベルト様の!?」

「そうそう。私が弱いからっていらないアイテムを何個かくれてね。そんなに嬉しい?」

「至高の御方の、創造主たるウルベルト様のものです!ですが、よろしいのですか?」

「いいよ。ウルベルトさんから貰ったものは他にもあるし。それに、君が持ってる方があの人も嬉しがるだろうしね。友人のウルベルトさんの名前にかけて、約束は守るからさ。」

「・・・・それなら、あなたは私に何を求めるのですか?」

 

それにリリーは黙り込む。なにせ、デミウルゴスをなだめるための言葉なのだから、そこまでのことを考えていない。

そうして、ふと、思い立つ。

 

「・・・・なら、あんまり人を蔑まないでくれ。私だけじゃない、他の人間の話だ。難しいか?」

「リリー様は、アインズ様の姉君。人であることなど関係ないはずです。ならば、何故、人間という矮小なものを愛でるのですか?」

 

ばりばりの差別発言、と思いはすれど、リリーもまあなあと考える。

このギルドにいた人たちは、心のどこかで人間というものにうんざりしていたのだろうなあと思う。

一種、嫌なタイプの変身願望だ。

人を矮小というのは否定しないし、愚かであることだとか、弱いことも深くリリーは頷いてしまう。

それでも、女は淡く笑う。

 

「・・・・私は、昔、とても弱くて、矮小な生き物だったんだ。弟を背負って、子どもだけで生き抜くのはそれ相応に辛くてね。でもねえ、それでも、そんな弱い私を助けてくれたのも人間だった。」

 

リリーはとても、穏やかに目を細める。暗がりの中で、ゆっくりと細まる深い、紫の瞳は、どこか、悪魔の主が自分を見つめる慈しみに満ちた目に似ていた。

 

「人の醜さは知っている。でも、人に助けられて、生かされたことが私にはあるんだよ。だから、私は人の味方であると望む。与えられた恩義には報わなくてはいけない。少なくとも、私はそう教わったし、弟にもそう教えたからね。」

 

満足かい、とデミウルゴスを見れば彼は少しだけ硬い表情で頷いた。

 

「・・・・アインズ様のご命令であるのならば拒めませんが。できる限りの対応はさせていただきます。」

「それでいいよ。」

「取り乱してしまい申し訳ありませんでした。」

「いいよ。契約、覚えておいてくれな。」

「リリー様は、何故、ルプスレギナを助けられたのですか?」

 

デミウルゴスは部屋から出る前に、そう問うた。それにリリーは呆れたように息を吐く。

 

「あの時は、頭に血が上ってたけど。我が弟は優しいからね。いらないと言ったとしても、後でどうしてあんなことを言ったんだと後悔するのは目に見えてたから。だから、悟の頭が冷えるまでの間、預かっているに過ぎないよ。ルプスレギナもまた、あの子にとって、可愛い奴であることには変わらないよ。」

「ルプスレギナが、あなたに危害を加えるかも知れない、のにですか?」

「あの子が傷つくぐらいなら、私は、傷つかない選択肢をするだけさ。あと、少しぐらいは周りへの釘刺しというのもあるけどね。満足かい?」

「ええ、お答えくださり、ありがとうございます。」

 

デミウルゴスを見送りながら、リリーは指輪を持って帰ったことを考えて一応は頭に止めておいてくれるだろうと考える。

 

(・・・・デミウルゴスに伝えたの、アルベドだろうなあ。)

 

リリーはため息を吐きながら考える。

あの話を聞いたNPCたちにはキツく口外を禁止した。それは、弟にだってそうである。

 

(セバスとユリに関しては弟にも言わせたから漏らすことは考えられない。シャルティアは根が素直だから、漏らしたらすぐに謝罪に来る。消去法的にアルベドだろうなあ。)

 

弟の話を聞く上で、このナザリックの頭脳と言っていいのはアルベドと、そうしてデミウルゴスなのだろう。

リリーというそれを抹消するのならば、まず、弟にばれないというのが絶対条件だ。その中で、そんな完全犯罪が可能なのはデミウルゴスぐらい。

 

(デミウルゴス、悟のぶち切れの時ぐらいから外に出てるって聞いたし。帰ってすぐにアルベドに聞いて、そのまま焦って部屋に特攻してきた、が一番確かかな?)

 

モモンガにとって、リリーがアキレス腱であることが知れ渡れば守らざるを得ないと、そう釘を刺すために。

だから、リリーもまた放っておくことにした。

少なくとも、デミウルゴスはルプスレギナほどバカではないだろうと考えて。

 

「・・・・さて、そろそろまじで悟のこと捕まえないと。パンドラにも会いたいしなあ。あと、モモンのこととかも探らないとなあ。」

 

リリーはそう言って、ぐっと背伸びをした。

 

 

 

「どうだった?デミウルゴス?」

「アルベド。一つお聞きします。何故、ルプスレギナを処分しなかったのですか?」

 

デミウルゴスの私室を訪れたアルベドがそう言えば、ぎらぎらと普段は閉じられた宝石の瞳を輝かせて悪魔は怒鳴る。

それにアルベドは軽く首を振る。

 

「彼女がそう願ったからよ。」

「それだけですむと本当に思っているのですか!?あの愚か者は、アインズ様がお隠れになる可能性を、欠片でも作ったのですよ!?」

「でもね、デミウルゴス。ルプスレギナを処分したとしても、アインズ様はお優しいわ。あとできっと後悔され、お心を痛められるのは本意ではない。それに、ルプスレギナの行いによってアインズ様がそう言われたことがナザリックに広まれば。ルプスレギナへの非難に覆い尽くされて、この問題の本質が覆われてしまう可能性の方が高いわ。」

「リリー、様がアインズ様にとってどれだけ重い存在かということですか?」

「ええ。」

 

アルベドのそれにデミウルゴスは考える。

リリーというそれがナザリックを去れば、モモンガは最悪な選択をする可能性があるというのならば。

 

「ねえ、デミウルゴス。私の言いたいこと、わかるでしょう?」

「リリー様が、ナザリックにおられる限り。アインズ様もまたそうである、と?」

 

その言葉に、アルベドはゆっくりと微笑んだ。

デミウルゴスはルプスレギナの犯した蛮行についてをアルベドに聞いたとき、血の気が引いた。

 

アインズが、この、ナザリックにたった一人だけ残られた至高の御方が。

この、ナザリックを捨てる可能性がある。

 

それは、デミウルゴスにとってどれだけの恐怖であるのか、言葉にできないだろう。

そうして、それと同時に、アインズにとってリリーという姉がそこまで比重を占めていると理解していなかった己にあきれ果てた。

 

「アルベド、あなたには何か考えがあるのですか?」

「・・・・あの方はね、もともとバハルス帝国の皇女なのよ。」

「皇女?アインズ様の、姉君が?」

「元々、彼女は一度死んでいるのよ。蘇生魔法も上手く行かなくて、そのまま亡くなられたそうなの。だというのに、よ!?あの方は、ここで、バハルス帝国の皇女として生まれ変わっているのよ!?」

 

興奮気味のアルベドにデミウルゴスは考える。

 

(蘇生魔法が上手く行かない?だというのに、生まれ変わって。)

 

デミウルゴスはそれにぞくぞくと、己の主の偉大さにしびれるような興奮を覚える。

 

「アインズ様は、死の理さえも!?」

「ふふふふ、そうね。あなたも私の気持ちがわかるでしょう?」

 

アルベドの楽しそうな声にデミウルゴスは同胞に視線を向けた。

 

「それで、あなたがわざわざ私にだけこの話を漏らした理由を聞いても?」

「彼女はね。バハルス帝国の方に残してきた仕事だとか、色々が気になるそうでしきりに帝国に帰りたがっているの。」

「あの方が、ここから?」

 

ダメだ。あの人にここに居て貰わなくてはいけない。ここで、ずっと、己の主の安寧のために。

唯一残った至高なる御方のために。

自分たちの、ために。

 

デミウルゴスはそこで、女の紫の瞳、慈悲深い主とよく似た瞳。

あの時のまなざしが、妙に好ましくてたまらない。主に、よく似た、あの瞳。

 

「正直ね、バハルス帝国のほうも皇女がずっと行方がわからないのなら捜索ぐらいはするでしょう?」

「罠にはめる、と?」

「お姉様は、とても優しい人よ。だから、帝国を加害すれば怒り狂ってここから離れてしまう可能性があるわ。」

「魅了等での洗脳は?」

「アインズ様が望まれないわ。」

「それは、そうですね。」

「だからね、あの方が帝国から離れる理由と、ここにずっといる理由を用意するのよ。あなたも考えてたでしょう?王国を完全に掌握する上で、国を作る、という話。それなら、近くの強国から花嫁を貰うのは同盟関係に繋がると思わない?」

 

デミウルゴスは少しだけ考えた後に、アルベドに問いかける。

 

「アインズ様にはこのことは?」

「だからこそよ。アインズ様は、姉だからとそういったことに忌避感を持たれるわ。だから、一緒に説得をして欲しいのよ。」

 

その言葉に、デミウルゴスは考える。そうして、ちらりと手に持ったヤギの刻印がされた指輪を見つめる。

 

思い出すのは、敬愛するウルベルトの話を、心の底から嬉しそうに語る、アインズによく似たまなざしを自分に向ける女だった。

ただの女だ、平凡な、どこにもいそうな矮小な人間。

けれど、それと同時に、ウルベルトという存在を共有できる数少ない存在で、どこかアインズに似たところがある人間。

それに、デミウルゴスは何か、素直に、子どものように思った。

 

あの人と、もっと、話をしたいと、そう。

 

「ねえ、デミウルゴス。どう思うの?だって、あの人は、アインズ様がここに残る、強力な楔になる。」

あの人が、欲しいとは思わない?

 

きらりと、黒曜石が光を反射して、デミウルゴスに目を眩ませる。

 

「・・・・アルベド。」

「なに?」

「少し、話をしましょうか?」

 

それにアルベドは、ゆらりと心底楽しそうに微笑んだ。

 





・・・・なあ。兄上。
なんだ、妹。
私ってさ、なんでこんなに女にもてるんだろ?
それは、お前の社交界での友人枠だった女に告白されて自分を連れて逃げてと駆け落ちを頼まれたからの発言か?

そうだけど!!??なんか、これで何人目だろうな!?考えたくないんだが!?
お前がやたらと令嬢たちの中で男らしく振る舞うからだろう。それぞれある程度の教育は受けているとは言え、女同士という気楽さからなる疑似恋愛関係に嵌まる奴が後をたたんな。

(だあああああああ!女同士のコミュニケーションが苦手だからって、女子校の王子様ムーブに逃げすぎた!!?でも、今更、これを崩すの難しいし!)

お前、いつか本当に嫁にすると女を連れてくるなよ?
安心してくれ、私はしっかり異性愛者だ!
はっはっは!お前に見合うような大物を釣れてきてくれることを願っているぞ?
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