どうして転生させるのに、衣食住と安定した職業をくれないんですか。
私はしがないサラリーマンだ。
安定した職につき、安定した生活をして、普遍的な家庭を築いていた。
といっても、ここまで来るのは苦労した。
安定した職なんて、あまり見つからない上に就職は割と苦労する。
大企業で務めているが高くもなく、低くもない地位にたどり着いた。
ある日の帰宅途中の事だった。
空は少しどんよりとしていた事は覚えている。
大きな音と共に意識は消える。
目を覚ますとそこは、いかにも「神様の国」と言うとこだった。
マジで雲の上にあったのか。
そして目の前には1人の女がいる。
見た目的には女神のようだった。
目の前の女は頭を下げてこう言う。
「本当にすまない!」
「え?どういうことですか?なんか、大きな音がしたのは記憶にあるんですが、それと関係あるんですか?」
男は頷く。なんだろう。落し物とかか?
しかし、イマイチ反省の色が見えない女だ。
まぁ、それほどの事ではないから、とやかく言う必要はないだろう。
「音と関係は大きくある。神の雷というのを君の上に落としてしまったんだ。」
専門用語で言われても分かるわけないだろ。
「つまりどういうことなんですか?」
「君は死んでしまったのだ。私のうっかりでな…。すまん。」
は?何を言ってるんだ、この女は。
少しヘラヘラしてるのを見ると、冗談にしか聞こえない。
「はは、冗談はやめてくださいよ。」
「いや、冗談ではない。すまない。」
怒りが込み上げてくる。
こんな事があって溜まるか。
女の胸ぐらを掴み、言う。
「ふざけるな!うっかりで済ますな!お前の不注意なんだろ!俺の人生を返せ!どれだけ苦労してあそこまでたどり着いたと思ってるんだ!
誠意を込めて謝罪しろ!土下座だ!ふざけるな!」
怒りのあまりでこんなことを言ってしまった。
掴んでいた胸ぐらを離す。
女は途端に泣き出す。
1番面倒なタイプだ。
「そこまで言わなくたっていいじゃないか…!うぅ…、私は神様なんだぞ!」
「神ならなんでも許されるのか!?あ?」
理性なんてクソ喰らえだ。
思ったことをここぞとばかりにぶつける。
とりあえず女神とやらを正座させる。
今思ったが、誰かのお説教なんて久しぶりだった。
「まず、こういう場合はどうするか〜とかあるのか?」
女神はモジモジしながら、涙目で答える。
「マニュアルではぁ……別世界に転生とぉ……なってるんです…」
何かに似てると思ったら、客に叱られてる新人バイトだ。
てか、マニュアルあるんだ。誰が作ったんだよ。
「ただ、転生する訳じゃないよな?勿論、こちらの要望も聞いてくれるんだよな?」
「あ、はい。転生特典を付けさせてもらっています。
例えば強力な魔剣とか、ハーレムとか。」
よくある奴な。
でも、正直そんなのは要らない。
最強の勇者的なのになったら、毎日がめんどくさい。
週2日で休める程度の生活で十分なんだ。
魔剣とかチートが許させるなら、ある程度の環境はセーフだろう。
「なら、要望を言ってもいいか?ちょっと多いんだが、そこまで強力なものでもないからな。」
女神がコクリと頷く。
まるでクレーマーと新人バイトだ。
まぁ、近い状態ではあるんだが。
とりあえず俺は要望を言う。
要望はまず、そこそこの金銭だ。
この転生はこのままの年齢で行くらしい。
なら、金銭はそこそこ必要だ。
何があるか分からないし、面倒事も金銭で解決しやすい。
職に就くまでの生活費も欲しいしな。
次に頼んだのはそこそこの武装だ。
どうやら行く世界は、昔ファミコンでやった「ド○クエ」のような所らしい。
だからそこそこの武具を要求した。
いかにもな騎士的なの鎧と兜。
そして、無難な剣だ。
これで何とかなる。あとは弓だ。
子供の頃、アニメとか漫画で憧れて西洋剣術や弓をやった。
大人になってからは、さっぱりだが役に立つかもしれない。
あとは家を頼んだのだが、それは向こうで買ってくれとの事だった。どうやら、その辺は無理らしい。
転生先に降り立つ街は平和でのどかだが、そこそこの城下町だそうで、住み心地は良いそうだ。
最後にこう頼んだ。
「最後は無病息災を頼む。重い病気なんてゴメンだからな。」
女は首を傾げて言う。
「「むびょうそくさい」??なんですか?それ。」
知らないのか。困ったな。
「わかりやすく言うと、病気にならないように健康な体でって事かな?」
女は納得した顔で言う。
「では、そのようなスキルを付与しておきますね!」
これで完璧だ。
とりあえず前世と変わらない人生を送ろう。
チートもハーレムも強さも魔剣も要らない。
こうして、異世界へと旅立つ。
目の前が真っ白になっていく。
普通の人はうっかりで殺されたら怒ります。
異世界系の人達はなぜ怒らなかったんでしょう。
きっと、心が寛容かいい人なんですよね。