漸雷くんの生活   作:人生脇役

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起動

フレームアームズ・ガール。

いわゆる美少女プラモデルとして、フレームアームズというロボットのプラモデルの機体たちを擬人化したデザインで発売されている。

プラモデルなのだから色々な人が好きに作っているものなのだが、これがかなりの人気になっているらしい。

設定は基本的になく、背景はすべて想像に委ねる、とされている。

また、アニメ化もされており、アニメにおいては、プラモデルでありながら、間接などはすべて人と変わらないように見える構造で、またAIによって自我を持っている、という設定となっている。

 

………と語ったが、さてここで聞いておきたい。

自分がそんな存在になっていたら、どう思うだろうか?

しかも。

「………あれ?この感じは………」

ただのフレームアームズガールではなく。

「男だ、この体………」

男の娘、というものだったら。

 

 

 

 

 

僕は、特段大したことのない普通の人間だと思っている。

ロボット好きでなおかつプラモデルの趣味はあるけど、それだって人並みだし、他にあまり言えることもない。

そんな僕が、ある日いつも通り就寝して、目覚めたら。

「………んー………?」

何か、とても小さくなっていた。

ここはどうやら机の上らしい。僕が寝ているのは、固いベッド。

固い割にはけっこういい心地だなぁ、と考えながら上体を起こす。

「………ぁふ」

小さなあくびが口から漏れた。両手を上げてぐぐーっと伸びをしながら、まわりを見渡す。

「んー………」

まだ眠いのか、視界がぼやけている。閉じた両目を軽くこすり、もう一度目を開く。

「………むむむ」

状況がヘンすぎるので、ちょっと信じたくなかったけど、どうも本当に自分は小さくなっているらしい。

それにこの部屋、僕の部屋じゃない。机や、その他もろもろ、見覚えのないものが部屋にある。

「うーん」

とりあえず自分の体だ。

両手を見てみると、黒い手袋のようなものをしている。けっこう長くて、二の腕のほうまである。

胴体のほうを見ると、胸になんかついてる。これは………なんだろ、ロボットの胸パーツみたいな。

体のほうは、特徴的な模様でノースリーブの、黒と灰色のボディスーツのようなものを来ている。ハイネックで、下はホットパンツくらいの丈。足はハイソックス。この丈だと………ニーハイってやつ、かな?

正直、男の僕にはけっこう恥ずかしい格好だ。首や、胸や、背中、腕。ところどころに機械的なパーツがついてるのが気になる。これは………なんかなぁ。見覚えが………。

「………あ、え?そんな、まさか、まさか」

ふと思い当たることがあった。自分の姿をもっと確認したくて、きょろきょろと見回す。鏡があった。写真立てサイズ。

ちょっと上のほうだけど、いけるかな。座っていたベッドから立って、移動しようとして、後ろから引っ張られた。

「うわっ!?」

なんか背中についてる。紐かな、と思って振り返ってみると、ケーブルがベッドから自分の背中に伸びていた。

「………」

よく見たら、このベッドも見覚えがあるし。

とにかくケーブルをお尻あたりのパーツから引っこ抜いて、上の棚の鏡へ。だいたい自分の二倍くらい。

跳べる、かな?

「えいっ」

ひょい、と跳び上がった。普通に届いた。鏡の前に着地して、自分の姿を見る。

「………うわぁ」

果たしてそこにあったのは、フレームアームズガールそのものとなった自分の姿だった。ところどころ違うし、顔立ちは僕そのものの顔の面影があるけど、もっと可愛い感じになってる。というか、これ体の基本は轟雷ガールだよね?髪型なんて黒い以外は変わらない。

「えー………どうしよう………」

ってことは女になってるんだろうか?

そう思って胸を触ってみたりするけど、平たい。いや、なんか柔らかい感じするけど、ちゃんと胸板って感じ。

何より、悩む僕の頭のなかで、僕じゃない何かが答えを返してきた。

───当機は男性型である───

「そ、そう………そうなんだ………」

男性型なのはいいけど、フレームアームズガールでそれはどうなのさ?

───当機はマスターの発注によって男性型として作られた───

らしい。というか、どうもここはアニメ版みたいな世界らしい。でも、アニメ準拠だとしたらマスターとやら、何者?

というか、僕は何タイプなんだ?

───ベースタイプ:漸雷───

漸雷か。漸雷はフレームアームズの中でも好きだった機体だ。

MSGとかで色々とイジったっけ。

ガールは買ってないしアニメも見てはいなかったけど、漸雷のガールはいなかったことは覚えてる。

この世界にはあるのか、それともそれも含めての特別製なのか………。

───当機の通常型との違いは性別設定のみ───

そうなんだ。………性別かぁ。体を捻ったりして背中とかもみてみるけど、基本的な違いは胸と尻かな?お尻、もうちょっとボリュームあった気がする。

あ、そういえばスカート状のパーツもあったな。それに、轟雷はしましまパンツみたいな特徴的な腰だった。僕のはスパッツみたいな感じだ。あ、横に白いラインがある。股間は………少しだけ膨らみのある造形かな?フレームアームズガールだから中身はないけど。

「………はぁ」

とりあえず、自分のことはわかった。でも、けっこう不安だ。

これからどうなるか。マスターとやらがどんな人か。考えるとより不安になる。

その場に座り込んで、足を伸ばす。

「ちくしょー、なんでこんなことに」

上を見ると、普通の室内照明になんだか巨大感を感じて、怖い。

膝を抱えて、顔を伏せて、まわりを見ないようにする。

あーあ、戻ってくれないかな。

とか考えながら、しばらくそうしていたら、足音が聞こえてきた。

「マスター、かな」

ドアノブがまわって、ドアが開く。

姿を見せたのは、ラフな格好の女の子だった。

「あ、漸雷!起きたの!?」

「………うん、起きたよ」

「あれ、なんだか元気ないね」

「ちょっと、ね」

本当はちょっとどころじゃないけど、言えないかな。

「一つ聞いていい?」

「なに?」

「何で男性型?」

それを聞くと女の子は、ニヤリと笑った。

「………聞きたい?」

「うん」

「それはねぇ………ぐふふ」

ちょっと気持ち悪い感じで笑って、女の子は言った。

「私が男の娘大好きだからなのだよっ!!!!」

「うわっ気持ち悪っ」

「酷いっ!?そんなこと言う悪い子はこうだっ」

「えっ、ちょっ」

女の子に捕まれる。潰され………ないか。案外優しい手つき。

「ふふふ………うりうり」

女の子は左手の上に僕を立たせて、何をするのかと思ったら人差し指で僕の頭を撫でた。

「うぅ」

けっこう気持ちいいのがなんか悔しい。というか………胸元、近い。

女の子の服がタンクトップ、というかキャミソールだろうか。なので、素肌が近いのだ。肌、きれいだし。

「………」

とりあえず目をそらしておこう。なんか頬が熱いし。

「おお?照れてるの、可愛い~」

「いいから、降ろしてよ」

「もう、仕方ないなぁ~」

とりあえず、机の上に降ろしてもらう。

さっき寝ていたベッド、というか充電くんに椅子っぽく形を変えてもらって、座る。

「………ふんっ」

腕と脚を組んで、怒ってます、と言う感じにする。女の子が椅子に座って見つめてくるので、顔をそらして、目を閉じる。

「あは、怒ってる。可愛いなぁ」

「………」

「ところで聞いていい?」

「………?」

片目だけあけて、女の子を見る。

「漸雷って、なんか普通のフレームアームズガールとは違う感じするんだけど」

「………」

心臓なんてないはずだけど、ドキッとした。普通と違う?というか、普通のフレームアームズガールってどんな感じだよ。

「………マスターが、注文したんでしょ」

「そうじゃなくて、何だか人みたいに感情豊かだなぁって。起動したばかりなのに」

………そうなんだ。起動したばかりだと感情豊かじゃないのか。

話すべき、だろうか?まさか人が入ってるとは思われないだろうけど、かといって不具合だと思われて返品、人格リセット、なんてことも考えられる。嫌だな、それ。ぞっとしない。

話すか。

「ねぇマスター、一つ信じられない話をしていいかな」

「え?いいけど………」

「実はさ、僕………」

気づいたら、漸雷になってたんだ。




漸雷くん
気づいたらフレームアームズガール(?)
になっていた子。
もとは普通のオタクな高校生だった。
ロボット好き、フレームアームズ好き。プラモデル作りはゲート消しとか塗装は普通にするくらい。
本人は平凡なつもりだが、もともと女性寄りのかわいい顔立ちをしており、さらに面倒がって散髪の頻度も低い。ぼっちなわけでもなく、友達やクラスメイトの間では密かに人気だった。
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