「完成っ!」
そして漸雷は完成した。というか着てる。
最初はパーツのゲート処理とか手伝おうとしたけど、なまじ体が小さいので上手く出来なかったから、途中から見てた。
それを見て唯はにやにやしてて、これが残念な美少女か、って思ってしまった。とりあえずマントは着ないでおいて、ダブルバレルガン装備。
いろいろと追加装備があるみたいだけど、まずは基本的なのから。漸雷だけど、滑腔砲と履帯はつけておく。ローラーダッシュはいいものだ。
唯はどうも僕と同類のロボ好きらしく、セッションベースは必須だよねー、とふたつ揃えていた。でもまだFAガールは僕だけらしい。
一体でもテストプログラムがあるらしいので、それを使う。
「フレームアームズ、セッション!」
唯がスマホのアプリでプログラムをスタートさせる。
セッション開始………しない?
「あれ?………ああそっか。ライ、ちゃんとガールってつけなきゃ」
「ガールじゃないし」
「セッションプログラムがそういう風になってるんだって」
「えー。仕方ないな。フレームアームズ・ガール、セッション」
今度はセッション開始した。
フィールドはだだっ広い平原で、動き回る的が複数。
腕とかを動かしたりして準備運動。そして、とりあえず歩いてみる。続いて走る。
「こんな感じか」
次に履帯を下ろす。この辺は考えるだけで操れる。
「よし、行くぞ!」
履帯が回りだし、足裏のローラーも回って発進。
「………けっこう速いな」
気持ちいい。左旋回、右旋回。ブレーキ。履帯だから、わりとすぐ止まるけど………。
「ターンピックが冴えないな」
『ないじゃん』
唯がツッコミを入れてくる。
「作って?」
『もっと媚び媚びにしたら考えたげるっ』
「えぇー、迷うなぁ」
それはさておき、射撃してみよう。
まずダブルバレルガン。*1
単射モードで銃口を的に向けて、トリガー。
反動はそんなにないのでよく当たる。
よし、次は滑腔砲だ。
右足を後ろに下げて、右肩の砲を構える。トリガー。
ドン、と言う音と反動が来て、弾が的にあたる。
よし、次。
ローラーダッシュで左に走りながら、右の的をダブルバレルガンで狙う。
『さすがに動いてると当たりにくい?』
「だね」
滑腔砲は………腰がフレームアームズほど回らないし、真横はキツいな。
左の履帯を逆転させて、急旋回。いったん的から遠ざかり、向き直る。
的に向かって走りつつ、滑腔砲発射。
「けっこう安定するな」
『さすが轟雷ベース』
「よし、スラロームだ!」
蛇行を始める。上半身と滑腔砲のアームで的を捉え続ける。
射撃すると、やはり外れるときは外れる。
かなり近づいたのでいったん止まって、格闘用のほうの的を探す。
「あれか」
左手にスタンナックルを持つ。ダブルバレルガンにはもともとレーザーバイヨネットをつけている。
格闘用の的に近寄り、直前で右履帯を逆転させて一回転、勢いをつけてナックルを叩きつける。
次。近くの的にダッシュ、レーザーバイヨネットですれ違い様に叩き斬る。
『手慣れてるねぇ』
「このへんの動作はプログラムされてるっぽいんだよね」
ダッシュの急旋回とか、基本は。
ある程度、射撃や格闘、機動に慣れられたかな。
「よし、いったん終了しよう」
『おっけー』
セッションフィールドが光の粒子になって消えていく。僕はセッションベースからおりて、唯を見る。
「どうよ」
けっこう動けた自信がある。
「動きはいい感じだったよ~!でもね」
「むせた?」
「そうそう!なんかス○ロボ的なむせ方した!」
「でしょ?だからさ、お願い、ターンピック、作って?」
ローラーダッシュしてるとやっぱりターンピックは欲しいものだ。だから僕は媚びることにした。
「よぉし!お姉さん頑張っちゃうぞ!あ、でもとりあえずしばらくは待ってね」
「いいよ、作ってくれるなら。ただし何もせずぐうたらしてたら蹴っちゃうよ」
「ご褒美かな………?大丈夫、何より私がターンピック付けたいから!」
「なら僕媚びなくてよかったじゃん………」
「やる気が出たからよし」
「あ、そう………」
唯は鼻歌まで歌いはじめてご機嫌だ。僕は装備と装甲を外して素体に戻る。
「あ、そうそう。ライ、充電は大丈夫?」
「え?」
充電か。電池はどれくらいかな、と考えてみたら、60%、と返ってきた。
「あれ、わりと減ってる」
「充電が終わる前に起きちゃったんだね」
「そうみたい。充電しておこっと。ええと、コードは………」
呟きながら充電くんの胸の蓋を開ける。ケーブルを伸ばして、端子を背中の端子に挿そうとする。
「………あれ、ささらない」
「ずれてるよ」
「そうなの?うーん、あんまりわからないな」
「挿したげる」
「お願い」
唯にケーブルを渡して、背中を向ける。
「いくよー」
合図と共にケーブルを挿される。その瞬間………。
「ひにゃっ!?」
ぞくっ、とした感覚がお尻の辺りに走って、思わず声が出る。
「びっくりした。大丈夫なんだろうね、これ?」
そう言いながら唯の方へ振り返ると、すごく緩んだ顔をしていた。
「今の声、もう一回」
何を言うかと思えば。
「ダメ」
背中、ケーブルの刺さっているパーツを唯に触られないように体で隠す。
「ライがあんな声出すのが悪い」
「挿さったときにお尻の辺りがぞくっとしたら誰だってああいう声出るよ」
「ほんとかなぁー?」
「本当だって。FAガールのそういうとこ、なんか知らないの?」
「実は聞いたことあるんだよね」
「あるんだ」
「FAガールは皆、充電端子の辺りを触られたりすると気持ちよくなっちゃうんだって」
「えぇ………?」
気持ちよくなるって………何?
充電くんに座る。
「誰から聞いたの、それ?」
「友達に色んな子と住んでる子がいてね。その子たちのなかの二人に聞いたんだ」
「二人」
誰だろう?というか、色んな子と住んでる?買ったのかな。
というか僕って、どんな感じでここに来ることになったんだろ?
「その友達のとこ、なんでそんなにFAガールズがいるの?」
「聞いた話だと、FAガールのAIのデータ収集のために製造元のファクトリーアドバンスが色々な人に轟雷を送ったんだけど、起動したのがその子、あおのとこにきた子だけだったんだって。だから他のモデルの子も来て色々とやってるらしいよ」
「そうなのか」
あお?それってまさか、アニメの主人公の源内あお?
ってことはここ、アニメの世界なんだ。というか唯ってあおの友達なのか。
「えっと、僕はなんで唯のとこに?」
「轟雷ちゃんが学校まであおについてきてるときがあってさ。それがかわいくてかわいくて………。で、あおに聞いたら家にもっといるっていうからもう即突撃させてもらったの。さっきの話とか聞いてたら、ちょうど新しいモデルのテスターを探してくれないかって言われてたみたいでね。男性モデルもOKって話を聞いたらもう即紹介してもらったんだぁ」
「そ、そうなんだ………」
唯がどんどん早口になってたけど、そういうことらしい。
「あ、そうだ思い出した。ライもそのうち、あおのとこの子たちとセッションしてもらうことになるよ」
「そうなの?」
「それが条件の一つだったの。あおのとこの子たちとセッションしたり普通に交流したりのデータが欲しいんだってー」
「え、それ大丈夫かな」
僕はたぶん突然変異みたいなものだろうし、データでバグ扱いされてないかな。
「大丈夫大丈夫。うちにももう1人くる予定だし」
「その子のデータは正常だろうから………うん、大丈夫か」
「そういうこと。それよりさ、ライ」
「え?」
「次はこれ使おうよっ」
「それは………」
エクステンドブースター。つまり。
「翔べ、漸雷!ってね」
「よぉし!武器は?」
「ハンドガンからバズーカ、剣からナックルまでなんなりと!」
「イチオシは?」
「やっぱこれだよね!」
そう言って唯が掲げたのはライドカノン。*2
「よしきた。じゃあそれとあと、小さめのマシンガンとリボルバー使いたいな」
「あら堅実」
「ロマン装備はとっておく!」
「なぁるほど。よし、じゃあつけようか!」
エクステンドブースターを4つ、それぞれ両肩アーマーと両足後ろに。
マシンガンを右足横に。リボルバーを左足横に。
そしてライドカノンを右手に持つ。
「けっこう重いな」
これぞフル装備!って感じ。
セッションベースに乗って、セッションスタート。
「フレームアームズ・ガール、セッション!」
セッションベース
ライとセットで来たセッションベース。あおの家のタイプよりやや新型で、装甲を前もって装着してのセッション開始が可能。
従来の方式も可能。