41年式2.8cm重対戦車ライフル、着任しました 作:スツーカ
「逃げる奴は鉄血だ!逃げない鉄血はよく訓練された鉄血だ!ホント戦争は地獄だぜ!フーハハハッ!!」
なんだこのトリガーハッピー。さっきから連続した銃声とヘリのローター音しか聞こえてない。トイレットペーパーの芯を一回り大きくしたような薬莢が回転する銃から滝のように吐き出され、真鍮製の山を作っては旋回の遠心力で外へ不法投棄される。このキチガ…トリガーハッピー、又の名をM61A2バルカン。ガトリング式の機関砲で航空機や対空砲として使われている。間違っても担いでぶっ放す代物ではない。あの科学者達はなぜこんな戦術人形を作ったのか。とは言え強力な攻撃力で着陸地点にワラワラ集まっていた敵の集団が木っ端微塵になって制圧出来ているのは事実。そこには感謝するよ。ただもう少し静かに出来ないだろうか。
『着陸地点の掃討を確認した。これより着陸する。準備せよ』
「了解、これより着陸態勢に入る」
『まだ撃ち足りねぇぞ!』
節約って単語を辞書で100万回引いてこい。もうほとんど敵がいないのにバカスカ撃ちまくるバルカンを尻目にケッテンクラートに跨りエンジンをかける。後部ハッチが開いて外の眩い光が差し込み目を細める。多少目が慣れた頃に軽い衝撃が着陸したことを伝える。外に敵がいないのを確認してスロットルを開き、大型ヘリから飛び出した。
今回の任務は鉄血の攻勢で押されてる地区の救援。側面から主に装甲持ちを叩いて援護するのが役割だ。バルカンはヘリから着陸地点の制圧と空からの援護射撃に徹し、私は地区指揮官から借りたハンドガンの子と共に予想進路に待ち伏せして側面を衝く、という作戦らしい。
しばらく進むと通信が入った。
『こちらアドラー1よ、グライフ応答しなさい』
「こちらグライフ2、どうぞ」
妙に間延びしつつも威圧感ある口調。なんか女王様的な感じがする。そういう性格か?
ちなみにアドラーは向こうのコードネーム、グライフは私のコードネームだ。
『ポイントK-4の丘に陣地を設営したわ。目印は大きな木よ』
「了解、到着まであと5分。終わり」
通信を切ってエンジンを吹かす。右へ左へ障害物を避け、歩いていたはぐれダイナゲートを踏み潰し、指定された場所に到着する。茂みにケッテンクラートを隠しさらに偽装用網を被せてから台車と銃を引きずって丘の上にある指定ポイントへ登った。すごい重い。
「あなたがグライフ2かしら?ワルサーPPKよ」
「MP40です。よろしくお願いします」
「2.8cm sPzB 41、sPzBかグライフ2で」
簡単に挨拶を交わしてから設営してくれた陣地に銃を据え付ける。周囲を見渡せる丘の上に浅く掘られた塹壕に、銃身だけ突き出すように置く。そして周りを偽装用の網や布で覆って私と装填役のPPKのダミーが入った。
PPKは観測手として距離や風向きを詳細に伝え、MP40は周囲の警戒を担当する。私とPPK、MP40のダミー合わせて6人で準備を行ったから、かなり早く射撃体制に入る事が出来た。
「本体から通信よ。あと30分でここまで誘導できるそうよ」
「まだ時間はある……よし、ね「まさか寝るだなんて言いませんよね?」や、やだなぁそんな事言う訳ナイジャナイデスカー」
MP40が割り込んできた。クソッ、10分ぐらい寝させておくれよ。仕方がないので目印となるものまでの距離の計測と試射をして万全の状態にしておく。
「北を基準にして+5度の廃屋、距離500mです」
「廃屋まで距離500mっと」
「-10度の交差点、距離700mよ」
「距離700mね。あの枯れ木は?」
「1200mほどかしら。遠くて正確な測距が出来ないわ」
「大体でいいよ。1200mね、もっと手前の目印があればいいけどなさそうだし、あとは待つだけ」
適当な目印への測距をして射撃時の参考にする。ある目印から目印へ移動する時間で相手の速度を、大きさがわかっていれば測距儀に映る大きさと目盛りで距離がわかる。あとは簡単な計算だ。人間なら少し時間がかかることでも人形なら瞬時に算出して正確な射撃が出来る。こりゃ人間に取って代わる訳だ。
「予定が繰り上がったわ。会敵まで5分よ。準備なさい」
こりゃまた随分と早まった。鉄血のクズ共は足が速いらしい。遠くから銃声と足音も聞こえる。早く終わらせるためにサクッと終わらせよう。スコープを覗き鉄血を待ち構えた。
○
「Feuer!」
ドンッ
反動が偽装網を揺らしマズルフラッシュが辺りを一瞬明るくする。1000mの旅を終えたタングステン合金の塊はマンティコアの前足を吹き飛ばし前のめりになって倒れ込む。続いて2発目が中心部を貫いて四つ足装甲機械は奇妙なオブジェに成り下がった。
誘引にまんまと引っかかった鉄血人形共は遠距離からの一撃で足を止めてしまい、それが大きな隙となった。止まった隙に誘引した別働隊は距離を取って丘下の陣地に入り込み、塹壕戦の如く待ち構えて再び動き出した敵を撃っていく。
狙撃位置をようやく把握した頃には既にほとんどの装甲持ちがリサイクル行きとなっており、有象無象の人形共が何も考えぬまま突撃していっては待ち構えたARやMGに薙ぎ倒されていく。
装甲持ちを粗方倒した後は榴弾に切り替えて残る鉄血共を一掃する。
ドンッ
再びマズルフラッシュが陣地を照らし、次に500m先で爆発の華が咲く。破片と爆風がリッパーやイェーガーを引き裂いた。やがて無事な鉄血がほとんど居なくなると下の別働隊は掃討戦に移行してSMGが手榴弾片手に突撃して、文字通り1匹残らず殲滅した。
掃討戦に移行して他に鉄血もいないと判明すると帰還命令が出た。今回の任務はこれで終了だ。短い間だったけど一緒に戦っただけに少し寂しい感じもする。
「支援に徹するのも悪くないわ。また機会があれば一緒にやりましょう?」
「すごい威力でした。またいつかお会いしましょう!」
「そっちの指揮官に具申すればまた会えるかもね。それじゃ、またいつか」
撤収準備を終えて銃を引きずり隠してたケッテンクラートに繋ぐ。手を振って別れを告げて回収地点まで走った。一日中ゴロゴロするのも良いけど、たまにはこう言うのも悪くないかもしれない。そう思いながら戦場を後にした。
なお報酬のほとんどは主にバルカンの撃ちすぎで経費と弾薬代に消えた。あいつめ……