足音の響く先には   作:小鴉丸

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1話目はPと会う直前、こんな感じだったらなぁ……なんて思いながら書きました。

独自解釈タグって大事ですよね(真顔)


1話 変わる日常

 カーテンの隙間から差し込む光はとても眩しくて朝なんだと気付く。

 あぁ朝か、と思うよりも先にわたしは今回見た不思議な夢に意識が集中していた。

 

「……何だったんだろ、あれ」

 

 ──その日、とても笑ってる夢を見た。

 

 わたしがよく分からない場所でよく分からない人と笑いあってる夢。

 別にわたしが普段笑わないわけじゃない、ただあそこまで笑い──喜んでる自分を見た事ないから気になっただけだ。

 

 何やら熱気があった気がする。自分以外に色んな人達がいたと思う。……その中には悲しい表情をしている人もいた、と思う。

 

「ん〜〜……」

 

 考えても分からない。

 それどころか、段々と記憶が朧気になってゆく。思い出そうとすればする度に薄れて消えてゆく。

 

 こういうのは性にあわない。

 

「とりあえず──!」

 

 迷いを振り切るかのように、ベッドから飛び降りカーテンを思いっきり開ける。

 

「天気がいい! これはきっと、何かいい事が起こる……はず!」

 

 毎回外が晴れればこんな事を言ってる気がしなくもないが、それは置いておく。

 

 ただ楽しみを見つけたい、そんな一心でわたし──芹沢あさひは今日も行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 ただ楽しい事を探す。それは家でも外でも学校でも、どこにいても同じだ。退屈な日々なんて嫌い、世界は面白い事に満ち溢れてる、あたしはそれを見つけるのが好きなんだ。

 

 そんなふうに思ってる事もあり放課後などはよく街を歩く。

 歩くと言うよりも足が自然と向かっている、が正しいのかもしれない。ここに来れば常に“新しい何か”に出会えるからだ。

 

「この前さー──」

 

「え? マジ? なにそれー──」

 

 例えばすれ違う女子高生などの何気ない会話から。

 

「よろしくお願いしまーす。協力お願いしまーす」

 

 何かのチラシを配る人から。

 

「…………!」

 

「? …………」

 

 ガラス越しに見える店の中から。

 

 と、こんなふうに自分が考えるよりも外にいた方が情報量は圧倒的と言える。

 まぁそりゃあ、たまに騒がしい人達だっている。それはそれ。その人達が楽しければどうでもいい。

 

 結局のところ、自分が楽しければそれでいいのだ。

 

「(……楽しそうなのはいくつかあったけど……ピンとこないなぁ)」

 

 興味が向かない。というか最近見たものしかない。

 

 下にないなら上を。なんて変な考えで上を見上げる。

 見上げた先にはモニターがあった。最近TVとかでよく流れてるCM、映ってる人は曲に合わせて歌いながらダンスを踊っていた。

 

「(ん。あのモニターの人……)」

 

 最近TVで観る人だ。何だっけ……芸能人?

 

 特段興味があるわけじゃないから名前は覚えてない人。だけどこうしてCMをちゃんと見ると伝わるものがあった。

 

「楽しそうだ」

 

 ポツリ、と呟いていた。

 

 そんなわたしは気付いた時には身体が動いていた。

 

「んー……ここを──」

 

 流石に歌は無理。この場所だと歌えないし、何よりも歌詞を覚えてない。だからダンスだけ。

 見渡すと人の少ないスペースがあったからそこでステップをやってみる。

 

「よっ……ほっ……っと」

 

 モニターの人のように動く。

 

「──ここは……こう?──」

 

 所々微妙な部分はあるが完璧にやろうとしてる訳ではないので繋げる事だけに意識を集中する。

 

「(こう、こう──次は──っ)」

 

 周りの音が遠ざかるのを感じる。聞こえるのは地面を蹴る音とわたしの声。

 

 タッタッ、タタッ──タン!

 

「──っと……うん、決まった!」

 

 思わず小さくガッツポーズ。

 

 そんな小さな喜びに浸るわたしの元に1人の男性が近付いてきた。

 

「君、ちょっといいかな?」

 

「? わたしっすか?」

 

 何だろうこの人。不審者……じゃなさそうだけど。

 

 第一印象は優しそうなお兄さん? な感じの人は会って早々質問をしてきた。

 

「ああ、さっきのダンスって、モニターで流れてたCMのやつだよね? 練習してたの?」

 

「ううん、ちょっとやってみただけっすよ。見てたら楽しそうだったんで!」

 

 質問はさっきのダンスについてだった。

 

 というかこの人見てたんだ……それならちゃんと踊りきりたかったな、と思ってしまう。

 

「え? それってつまり……その場で見て、マネしてみたってことなのか?」

 

 普通のことをしてただけなのに優しそうなお兄さん(勝手に命名)はありえない、といった表情になる。

 

「はいっす!」

 

「…………」

 

 頷くわたしを見て黙り込む優しそうなお兄さん。

 

「〜〜♪」

 

 思った以上に間が空いたので適当に鼻歌を歌う。するとそれから少し経ち、優しそうなお兄さんは1枚の紙と共に名乗り始める。

 

「実は俺、こういうものなんだ」

 

 渡された紙は名刺だった。それをそのまま読み上げる。

 

「『プロデューサー』……っすか?」

 

「ああ──」

 

 聞けばアイドルのプロデュースというのをしているらしい。

 どうしてそんな人がわたしに声を掛けたか、それはわたしにアイドルを勧めるためだった。

 

「アイドルって、どんなことするんすか?」

 

 今まで全く興味を持たなかった世界故か、気が惹き込まれるのは容易かった。

 

 話を聞けば聞くほど惹き込まれていく。

 だって、手を伸ばせば何も知らない(楽しいに溢れてる)世界が広がっているのだ、こんなチャンス、二度と無いだろう。

 

「……! 面白そーっす! わたし、アイドルやってみたいっす!」

 

「そ、そうか! ありがとう! これからよろしく!」

 

「はい! わたし、芹沢あさひっす! よろしくっす、プロデューサーさん!」

 

 お互いに握手を交わす。

 そうしてその日から、わたしの日常は見た事もない楽しみと出会うことになった。

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