「ただいま〜」
「あらおかえり。以外に早かったわね、もう少し遅くなると思ってたわ」
時計の針が19時を過ぎた頃、わたしは家に着いた。リビングにはお母さんが居てテレビを眺めながらお茶を飲んでいた。
「ん〜、プロデューサーさんに送ってもらったからね〜。あ、これ貰った資料」
一通りアイドル活動の具体的な流れ、目標の説明を受けたわたしは外も暗いから、というプロデューサーさんの計らいで車で家まで送ってもらった。
わたしは服を着替える前にお母さんにプロデューサーさんから受け取った資料をお母さんに渡す。
「ふーん……読んでおくわ」
特に興味無さげに受け取られる。そして早く着替えてきなさいねー、と言われる。
適当に返事をしてわたしは部屋に行き服を脱ぐ。そういえば、あの女性優しかったな、なんて着替えながら思い出す。
『えーっとぉ……こちらにご用の方、ですか?』
あの女性は七草はづきさん。
わたしが所属する事になった
「(何というか、不思議な人だったなぁ)」
ああいうのをマイペースというのだろうか、周りに流されなさそうでありのままに生きてそうな……。
「……それはわたしもか!」
自分で自分にツッコム。なんと虚しいのだろう。クラスの男子でもこんな悲しい事はしてないと思う。
頭を振り微妙な雰囲気を振り払う。こんな時は楽しいことを考えよう。そう例えば、今日プロデューサーさんやはづきさんから言われた他のアイドルについてとか……。
目を瞑りイメージをする。
アイドル──可愛くて、可愛い衣装を着て、歌ったり踊ったりして……。
──あれ?
「(可愛いってなんだろ)」
考え始めた矢先に思考が中断された。
それもそうだ。可愛い可愛いと言っても可愛いの意味が分からない。別に
「(ま、いつか会えるんだからいっか)」
それまでに調べたりしてみよう。そして実際に会った時にでも聞けばいい「あなたの思う可愛いは?」って。
着替えが終わったのでさっそく机に向かい調べ物を──。
「危ない危ない」
すっかりお母さんの事を忘れてた。わたしはリビングに戻りお母さんの目の前の席に座る。すると遅かったわね、と。それに対して考えごとー、と返すとまたかといった風に頷かれる。
机に広げていたプリントを一つにまとめわたしに返される。
「一応読んだわ。電話で言ったようにアイドルをすることに反対はしない。でも、途中で投げ出すようなことは絶対にダメよ」
「うんうん、分かってるってばー」
適当な返事だったからかため息をつかれてしまう。お母さんはプリントに一度視線を落とし、こう言った。
「……どうだか。ま、私はそっちについて詳しいわけじゃないけど、W.I.N.G.だったわね。出場出来るように頑張りなさい」
なんて会話を昨夜はしていた。安定というか、やはりというか、お母さんはわたしのする事に興味をあまり示してくれない。
いや、別に示してほしいわけじゃないが、親として投げやりすぎるのもどうかと思うだけだ。
「(その分、自由だからいいんだけどね)」
この親にしてこの子あり。
お父さん曰く、学生時代お母さんは自由気ままという言葉がピッタリの人物だったらしい。
そんな人だったから今の私の行動を妨げないのだろう。
渡れば事務所に着く信号を待つ間に思い返していた。
タイミングよく信号が青に変わり両方向から人が歩き始める。わたしは周りの人よりも少し遅れて足を進めた。
そして目的地である事務所の前に着いたわたし。着いたのだが……。
「──ふふっ、そうなんだね」
何だろう、しゃがんで何かと話してる人がいる。わたしよりもおそらく年上、そんな女の人は優しい笑顔を何か──鳥に向けながら会話をしている。
「…………す」
「ほわっ?」
「すごいっす!!!!」
その姿に感極まりその人に近付く。
「え、え? ……え?」
声を上げいきなり近付いてきたわたしを様々な感情が混じった顔で見上げる。
わたしは興奮を抑えれずにぐい、と顔を近付け今の事について質問をした。
「今、鳥と喋ってたっすか!?」
「えっと……う、うん」
「鳥と! 喋る! うわー、すごいっす! どうやったら出来るんすか? 教えてほしいっす〜!」
「わ、わわっ」
詰め寄っていると事務所の方からプロデューサーさんが降りてきた。そしてわたし達2人を交互に見て一言。
「……下が騒がしいと思えば、何してるんだ二人共」
「あ! プロデューサーさん、こんにちはっす!」
「こんにちは。今日もあさひは元気だな」
「はいっす! 元気っすよー!」
いつも通りに挨拶をする。
「プロデューサーさんの知り合い、ですか?」
「何だ、まだ連絡が回ってないのか。知り合いというか新しいアイドルだよ」
これはきっと挨拶をする流れ。というわけで、先程同様に元気に挨拶をした。
「こほん、わたしは芹沢あさひっす!」
「ほわぁ……うんっ、よろしくねあさひちゃん。私は櫻木真乃だよ、これから一緒に頑張ろうねっ」
「はいっす! よろしくっす真乃さん!」
ほわほわ、そんな言葉が似合う人だ。何気ない話をしてるだけでも心が落ち着いてくる。
鳥と喋れるし、見てるだけで癒されるしすごい人と思う。
そこでさっきの話を思い出した。
「あーっ! そうっすよ! 鳥、鳥の話!」
「あ……それはね……」
「っとと。待て待て、なにも外で話さなくもいいだろ。この後の予定からして、真乃は灯織とめぐるを待ってるんだろ? どっちにしたって事務所で話してた方が楽だろ。飲み物とか置いておくから上がってこいよー」
「了解っすー!」
「はいっ」
手をひらひらとしながら階段を上がっていくプロデューサーさんの後を追うようにしてわたし達も上がったのだった。
家だとこんなふうに普通に喋ってそう(だといいなぁ、なんて)
それと真乃ちゃんですが、違ったらすいません。あまりキャラを掴めていないもので