どうしよう。

このままじゃ海未ちゃんが…
『殺人犯の妻』にされちゃうよ…。

私が闘わなきゃ!
うん、ファイトだよ!



自作品…
【ラブライブμ's物語 vol.4】
オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~
…の追加エピソードです。

上記の連載は1年近く前に終了しておりますが、本編最終話の内容が、今の日本と隣国との状況に酷似しているな…と思い、もうちょっと詳細に書いてみようと思いました。

『ヘイト』のタグを付けるほど、キツい話ではないと思ってますが、念のため韓流ファンの方はご遠慮願います。

なお、中の人をディスるつもりは一切ございませんが、不快に思われた方がいらっしゃったら、ごめんなさい。
予めお詫び申しあげます。


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【ラブライブμ's物語 vol.4.5】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝α~

 

 

 

 

人の命は本当に儚いものだ。

 

ありきたりの言葉だけど、いざ、自分の身の周りでこういうことが起こると、猛烈にそれを実感する。

 

 

でも、過ぎ去った時間を巻き戻すことはできない…。

どうやっても。

 

 

 

 

海未ちゃんの旦那さんが亡くなった。

 

 

試合中、相手選手と交錯して頭を打ち、意識不明になった『梨里』さんは、それから5日後に、あの世へ旅立った。

眠ったまま、再び目を覚ますことはなかったのだ。

私たちがどんなに祈っても『7年半前の奇跡』を起こすことは…ついにできなかった。

 

 

『TAKANO RISATO』の訃報は『ロスタイムの惨事』というキャプションを伴って、その日のうちに全世界を駆け巡り…日本国内はもちろんのこと…移籍することが決まっていたスペイン、いや世界中のサッカーファンが涙を流したのだった。

 

 

そう、隣国を除いては…。

かの国だけは梨里さんの死に、中指を立てていた。

 

 

 

私たちが駆けつけたときには、すでに海未ちゃんの涙は枯れ果てていて

「一晩で目からの汗が一生分出ました」

なんて気丈に振舞っているけど、逆にその姿が痛々しい。

 

こんな時、私は何をしてあげればいいいのだろう。

まったくもって無力だ。

 

歯痒い想いで所在無くしていると

「大丈夫ですよ。穂乃果たちがそばにいてくれるだけで…私は強くなれるのですから」

とか言ったりする。

 

 

違うよ、海未ちゃん。

こんな時まで、強い海未ちゃんを演じる必要はないんだよ…。

 

 

 

葬儀は近親者のみで執り行われた。

正式な『お別れ会』は日を改めて催されるらしい。

 

 

とはいえ、梨里さんは現役のサッカー選手だ。

しかも超が付くほどの有名人。

だから、それを待たずに、自宅には弔問客が押し寄せる。

 

 

私たちはできる限り時間を割いて、海未ちゃんの手伝いをした。

いくら彼女がタフだとは言え、もう心身ともにボロボロの状態。

本当は…立っていることさえ、やっと…だと思うと、隣に寄り添わずにはいられなかったのだ。

 

 

ふとした瞬間に

「そもそも『あの時』私が飲酒などしなけば…」

などと海未ちゃんが呟く。

 

それを聴いたみんなは

「そんなこと言ったら、梨里さんに失礼だよ。梨里さんは『海未ちゃんと出会えてよかった!』って絶対思ってるから」

と諭す。

 

「そうでしょうか…それならよいのですが…」

 

恐らく海未ちゃんは、彼と出会ってから、あの事故の呪縛から、一瞬たりとも解き放たれたことはないのだろう。

そしてこれから先も、一生、それが消えることはない。

こういう形で旦那さんに先立たれてしまったなら、尚更だ。

 

 

…だけどね…それを言ったらさ…私が海未ちゃんの誕生日にお酒をムリヤリ飲ませたのが、いけないんだよ…

 

…あれが無ければきっと、海未ちゃんの人生において、お酒を飲むことなんてなかったんだよ…

 

…だからね…

 

…この事件が起きたのは…元を辿っていけば、全て穂乃果のせいなんだ…

 

 

時が巻き戻せるなら、あの日の私に「調子に乗るな!」って言ってやりたい。

いつまで海未ちゃんに迷惑をかけるんだ!ってさ。

 

 

 

そんな中…私たちの『外の世界』は荒れに荒れてた。

 

 

『梨里さんの死』は『事件』か『事故』か。

 

 

それは『あのプレーが発生した瞬間』から、話題になっていたことだったけど、彼が亡くなったことによって、世間はひとつの結論を出した。

 

 

曰く「あれは事故じゃない。殺人だ!」と…。

 

 

 

 

 

 

 

試合中、空中戦に挑んだ梨里さんは、相手選手と接触し、頭から落下。

結局それが致命傷となり、この世を去った。

 

問題はその接触シーンが、どうやっても『梨里さんの喉元に自分の腕を引っ掛け、地面に叩きつけた』としか見えないこと。

 

つまり、それは『故意に犯した悪質なファール』だと見えた。

 

もちろん、わざとかどうかは、やった本人しかわからない。

そう見えるだけで、違うかも知れない。

でも…それが『通常のプレーでは起こり得ないこと』というは、誰の目から見ても明らかだった。

 

 

ファールを犯した相手選手にはレッドカードが出されて、一発退場になったけど…ファンはそれだけじゃ、まったく納得しなかった。

 

倒れた梨里さんは、そのまま救急車で運ばれ、試合は怒号と悲鳴が飛び交う中、ロスタイム5分を残して、異例のタイムアップ。

 

 

 

こうして、その日行われるハズだった『ホーム最終節のセレモニー』は中止になった。

 

併せて『梨里さんのスペインリーグ移籍に伴う壮行会』も…当然ながら開かれることはなかったのだ。

その式で花束を渡す予定で、スタンドで観戦していた、海未ちゃんは、娘の『みそらちゃん』を抱えて救急車に同乗していた。

 

あと、残りわずか。

たったの5分で差で、梨里さんと海未ちゃんは、真っ暗な闇の中に突き落とされたのだった。

 

 

 

そして…今に至る…だ。

 

 

 

しかし、ここから思いもよらぬ事態へと発展していく。

 

相手選手が『隣国の人』だったことから、すぐに『テコンD』というあだ名が付けられ、彼は激しい非難を浴びることとなった。

その時の映像は世界中に配信され…FIFAには全世界から『永久追放せよ』という嘆願が数多く寄せられた。

 

ちなみに『テコンD』って言うのは『テコンドー』+『ディフェンダー』の意味で、同時に日本の『マジンガーZ』を『模倣』したことで有名な隣国のアニメ『テコンV』をもじってるんだって。

 

 

 

ところが、この選手は

「プレーの最中にアクシデントがあったのは事実だが、お互い全力を出した上の結果だ」

みたいなコメントをしたから「どう見ても、わざとだろ!」「まず、謝罪だろ!」って、火に油を注いじゃって…。

 

 

 

それでも梨里さんが亡くなるまでは、ネットでの批判が中心だったんだけど…

 

 

訃報が流れた瞬間から、この『事故』は『事件』に変わってしまった。

 

そう、これはアクシデントでもなんでもない…立派な『殺人事件』なんだ…と。

それはサッカーファンだけじゃなく、日本中の国民が声高にそう叫ぶようになった。

 

そして、その相手が…このところ関係が良くなくて、色々な問題が燻っていた『隣国の選手』っていうのが、私たちの怒りの感情を、必要以上に高めたのだった。

 

中には政治と文化は別だ…と冷静になるよう諭す人たちもいたけど

「いつだってスポーツの世界に政治を持ち込んだのは、あいつらなんだ!」

って声の方が大きくて…。

 

新大久保の辺りなんて、機動隊が出動して厳戒体制が引かれたして、もう、なんかすごいことになっていた。

 

 

 

その選手に公の場での謝罪を求める声が大きくなる中…でも数日後、彼は自らの命を絶ってしまった。

 

「自らの死をもって、身の潔白を晴らす」という書置きを残して…。

 

 

すると今度は

「日本国民がひとりの『何の罪もない若者』を死に追いやった」

と、あっちから非難の声があがった。

 

むしろ、悪いのはこちら側だと言い始めたのだ。

 

さらには…

「受身が取れない日本猿が悪い」

「あの程度で死ぬなんて、チョッパリは鍛え方が足らない」

「高野は我々を貶めようと画策したが、無様にも失敗に終わり犬死にした」

「殺人というなら、証拠を見せろ!!」

「チョッパリがひとり死んだくらいで大騒ぎするな。おまえらは過去、何十万人にも人たちを虐殺してきたではないか!!」

「高野は試合中『天皇陛下万歳』と言ったのだろう。だから彼は怒ったのだ」

「あれが事件だというなら、裁判所に訴えればよい。そうしないのは、負けるとわかっているからだ」

…などと言う始末。

 

 

当事者でなくても頭に血が上るような言葉を、平然と浴びせてきた。

 

なるべく海未ちゃんには知られないように頑張ったんだけど…これだけの情報社会だもん…それはムリだよね。

 

真姫ちゃんが「大量の睡眠薬を要された」って言っていた。

もちろん、その目的を察して、断ったみたいだけど。

 

 

これを機に両者の国民感情…ナショナリズムみたいなものは一気に沸点を超え、一触即発。

ついには外交問題にまで発展する事態となってしまった。

 

 

 

 

 

「…海未ちゃん…もう我慢できないよ…」

 

「…穂乃果…」

 

「海未ちゃんがやらないならさ…私が代わりにやってくるよ。向こうに乗り込んで行って、ひとりずつ、ぶっ飛ばしてくる!!」

 

「何を物騒なことを言っているのですか!」

 

「『みそらちゃん』を連れて行って『あなたたち、この子の前でも本当にそんなことが言えるのか!』って問い質してやる!」

 

「やめなさい!」

 

「だって…人を殺しておいて『死んだやつが悪い!』って、そんなのおかしいでしょ?ううん、違う、このままじゃ、海未ちゃんが『人殺しの妻』って呼ばれかねないんだよ。そんなの…海未ちゃんが許しても、私が絶対許さないんだから!」

 

「穂乃果…」

 

「海未ちゃんもさ、黙ってないで、あの人たちに言うべきだよ!『間違ってるのはそっちだ』って!!『この恨みは1000年経っても忘れない』って!!」

 

 

 

「穂乃果!!少し黙っててください!!」

 

 

 

「…!!…」

 

 

 

「あ、いえ…すみません…」

 

 

 

「うん…こっちこそ…ごめん…」

 

 

 

「私も内心、はらわたが煮えくり返っているのです。恐らく、目の前で、あのようなことを言われれば、即座に矢で射抜くでしょう…」

 

 

 

「…」

 

 

 

「ですが…幸いなことに、ここに彼らはおりません」

 

「それは海未ちゃんが、家から出てないからでしょ?」

 

「はい。一歩外に出たら…自分を抑える自信がないのです。ですから、このほとぼりが冷めるまでは…」

 

「でもさ…あの国のひとたちは、それが通用しないんだよ!これまでだって、そうだったじゃん。『黙っていること』…それは即ち『認めたこと』になるんだよ」

 

「…それは確かにそうかもしれませんが…」

 

「多分、何年後かには、あの殺人ディフェンダーの像が作られる。人を殺しておいて『英雄』に祀り上げるんだ」

 

「殺人ディフェンダーは言いすぎです!」

 

「じゃあ、海未ちゃんは、あれを不運なアクシデントとして認めちゃうの?…海未ちゃんがそんなんじゃ、梨里さんが浮かばれないよ!」

 

「表現の問題です!中立的な立場で考えて、殺人と言ってしまうのはいかがかと…」

 

「中立である必要なんて、ないじゃんか!海未ちゃんは被害者の遺族なんだよ!」

 

「もちろんわかっています。ですが、過剰な反応をして事を荒立てても…」

 

「いやいや、言うことは言わないと…今度は、日本人から海未ちゃんが攻撃されるよ。『なんで何にも言わないんだ』って!…当事者でもない人たちがさ、あーでもないこーでもないって騒ぎ出すから」

 

「…はい…承知してます…」

 

「私たち、何度もそういう経験してるよね。海未ちゃんが梨里さんに助けられた時だって、もの凄いバッシングがあったじゃん。日本人だからって、100%私たちの見方じゃない。必ずアンチって呼ばれる人たちが出てくる」

 

 

 

「…」

 

 

 

「あとさ…」

 

「まだ何か?」

 

「うん…あんまり言いたくないんだけど…」

 

「はぁ…」

 

 

 

「この騒ぎのドサクサに紛れて…真姫ちゃんに『在日疑惑』が持ち上がってる」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

「これは…知り合いの芸能記者から得た情報なんだけどね…」

 

「何故、真姫が…」

 

「梨里さんが亡くなったことによって、海未ちゃんの名前が出てきて…そこから元μ'sって事が注目されちゃって…」

 

「すみません」

 

「いや、海未ちゃんが謝る必要は全然ないんだけどさ…」

 

「そこから真姫に…どのように繋がるのでしょう?」

 

「名前に『姫』って使うのは、向こうの人の特徴なんだって」

 

「そんな言い掛かり…」

 

「でも、過去にも有名人が結構、こういう『とばっちり』受けてるんだよねぇ。女子フィギュアスケートの元女王で『○○美姫』って選手も、それでやられたし…。世界で活躍する人が出てくると『あの人は実は我々と同胞だ』って…なんの根拠もなく言い張るのが、あの国の特徴だから」

 

「随分と詳しいのですね」

 

「一応、マスコミ関係の仕事をしてるからさ、色々耳にしちゃうんだ…意外と多いんだよね…実は向こうの人。通名使ってたりするから、見た目じゃまったくわからないけど…」

 

「そうなのですか…」

 

「もう私たちの世代じゃ4世くらいの人たちばっかりだから、日本で生まれて、日本で育って、日本の学校行って…っていう人たちが多いけど…でも…国籍は向こうのまま…っていう人も多いし」

 

「それで…真姫は…」

 

「『バカバカしい』って言って一蹴された。『何十代も遡れば、どこかでそういう血が混じってることはあるかも知れないけど…少なくとも曽祖父の代くらいからは、そんなことは無い』って」

 

「そうですか」

 

「ホッとした?」

 

「そうですね…あらぬ疑いを掛けられるのは、真姫にとっても迷惑でしょうし…」

 

「でもさ…」

 

「はい」

 

 

 

「もしも…もしも…だよ…真姫ちゃんが『在日』でないとしても…『ハーフ』だったりしたらどうする?」

 

 

 

「!?」

 

 

 

「そう…お父さんか、お母さんのどっちが、あっちの人…」

 

 

 

「穂乃果…あなた、何を…」

 

「勘違いしないでね?例えばだから…例えば…」

 

「…そういう仮定の話に、答える必要はありません…」

 

「私だったら…どうかな…今の状況でそれを知ったら、これまで通りに過ごせるか自信ないなぁ…」

 

「穂乃果…」

 

「もっとも、そうなったら真姫ちゃん次第だけどね。真姫ちゃんが『どっちの人間』として生きていくのか…。もし向こうを選んだら…その時は…」

 

「…」

 

「まぁ、うちには絵里ちゃんもいるし、ハーフだとかクォーターだとか…っていうこと自体は、あんまり抵抗ないけどさ」

 

「そうですね…遥か昔…私がまだ結婚する前に、梨里さんとそんな話をしたことがあったのを思い出しました」

 

「へぇ…」

 

「確か、あの時は…『日本人って、何を以って日本人というのだろう』というお話だったかと思います」

 

「何を以って…って…日本で生まれ育ったら日本人なんじゃないの?」

 

「それは両親が西洋人であっても…ですか?」

 

「う~ん…日本語を話せるならそうなんじゃないかな…」

 

「近い将来、日本は見た目が『絵里』のような人が大半を占めるかも知れない…と彼は言っていました」

 

「見た目が絵里ちゃん?」

 

「想像してみてください。初詣に訪れた神田明神で、振り袖を身に着けている女性の内、10人に7、8人が西洋人である景色を。しかも皆さん、流暢な日本語を話すのですよ」

 

「あははは…それは違和感があるね…」

 

「日本という国はこれまで他国の血が混じることがあまりなかったけど、国際化が進めば、そういうこともありえるだろう…と仰っていました」

 

「そうだね…少子化も進むし、外国人労働者の事とかもあるからね…移民政策だっけ?」

 

「はい。ですからそうなってくると『その人がどこに住んでいるのか』が重要なのであって『人種』という概念がなくなるのでは…とも」

 

「梨里さんってスポーツ選手のわりには、結構難しいこと言うよね」

 

「ええ…ですが、そこも私が好きなところでして…」

 

「穂乃果じゃ絶対無理!!」

 

「はい」

 

「うわ!そこは一旦、否定しようよ」

 

「うふふふ…でも…もう、そういうお話もできないのですね…」

 

「あっ…」

 

 

 

「…ところで…先ほどの話ですが…」

 

 

 

「…?…」

 

 

 

「穂乃果があちらに乗り込んでいって、暴れまわる…という件についてです」

 

 

 

「あぁ、それ?…」

 

 

 

「嬉しいですよ」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「自分の危険も省みず、私の為を想ってやってくれるのであれば」

 

 

 

「あははは…まぁ、海未ちゃんの為っていうか…まぁ…」

 

 

 

「ですが、誰かを憎んだり恨んだりしたところで、いい結果は生まれないと思うのです。そのことは梨里さん…というより…つばささんから教えて頂きました」

 

 

 

「つばささん?…夢野の方の?」

 

「はい」

 

「そっか…そういえば、あの人もお父さんは…」

 

「…はい…ですから…私は…前を向いて生きていきます。みそらの為にも」

 

「うん、そうだね」

 

 

 

「…穂乃果…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「お願いがあります」

 

 

 

「えっ?何々、改まって…」

 

 

 

「私にもしものことがあったら…あの娘を頼みます」

 

 

 

「みそらちゃんを!?」

 

 

「はい」

 

 

 

「…ってもしものことって何さ。嫌だよ、変なこと言わないでよ。今、前向きに生きていくって言ったばっかりじゃん…」

 

 

 

「そうですね…ですから…もしものことがあったらですと、前置きしたのですが…」

 

「仮定の話には答えません!」

 

「!!…これは穂乃果に1本獲られました」

 

「へへへ…たまにはね!」

 

 

 

 

 

このあと…お互いの政府の必死の介入もあって、さすがに戦争になることはなかったけど、隣国との交流はかなり限定的なものとなった。

 

 

 

そして1年後…。

 

 

 

 

 

梨里さんの命日から1週間後。

 

 

 

すなわち殺人Dの命日の日に、海未ちゃんは勤務先の学校の校門の前で…

 

暴漢に襲われた…。

 

 

彼女の高い身体の応力のお陰で、幸い凶刃の直撃は避けられ、手や腕に軽い怪我を負っただけで済んだが…一歩間違えれば…という状況だった。

 

その場で、取り押さえられ逮捕された犯人は、隣国籍の男で…犯行の動機については「日本で『殺人犯』呼ばわりされている彼の、名誉回復の為だ」と述べたらしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海未ちゃん…」

 

「私は大丈夫です。ほんの切り傷ですから…」

 

「うん…死ななくて本当によかったよ!」

 

「勝手に殺さないでください…」

 

「まぁ、海未ちゃんはしぶとそうだから、簡単には逝かないだろうけどね」

 

「それは…褒められているのですか」

 

「そのつもりだけど…」

 

「そうですか…確かに、私はしぶといかも知れませんね。梨里さんの分も生きなければならないですし、なんと言っても、みそらが大きくなるまでは死ねませんから」

 

「大丈夫!海未ちゃんに何かあったら、私が面倒見るわけだし」

 

「だから、そうならないように頑張らなくてはいけないのです!穂乃果に預けるわけにはいきませんから」

 

「うわっ!ひどい!…1年前は海未ちゃんが頼んできたんだからね」

 

「そうでしたっけ?」

 

「そうだよう!もう、穂乃果、みそらちゃんの面倒見る気マンマンでいたんだから」

 

「それは…私に早く死ねと言ってるのですか?」

 

「ん?」

 

「他人の娘の面倒云々ではなく、先に自分の結婚を考えてくださいな」

 

「あははは…そうだね…早くいい人、見つけなきゃだね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この翌年…北の方にある半島二国はひとつになり、私たちの国は国交を断絶した…。

 

 

 

 

~完~

 

 



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