ヒエヒエの実の能力者が巨人が蔓延る世界に転生した 作:マスターM
王達への説明を終えたギルはついでという事で王都を見て回る事にした。なおキースは今回の壁外調査の報告書作成の為先に調査兵団のアジトに戻った為、エルヴィンがギルの付き添いとなっていた。
「ここが一番栄えてるな」
「王都だからな」
「ふ~ん。後この下は?やけに広いし人の気配もあるが?」
ギルは見聞色で地下がある事がわかりエルヴィンに質問した。
「この下は地下街が広がっている」
「街?だが感じは廃墟だぞ?」
「昔の資料によれば一時期巨人から逃れる為に地下で暮らすことが検討されたが、結局移住は中止され残された廃墟は貧しい者や犯罪者の住み家となってスラム化した。今では憲兵団すら立ち入りを躊躇する程だ」
「へえ・・・少し寄ってもいいか?」
「いいが・・・何かあるのか?」
「強い気配がする。分隊長クラスのな」
「ほう・・・」
ギルが地下街に行く事を提案すると、エルヴィンはその理由を聞くと分隊長クラスの人物がいると聞き興味を持った。
そしてその人物はいた刈り上げ頭と三白眼が特徴の男で、立体機動はエルヴィンの見立てでは調査兵団のベテランを凌ぐレベルだと。エルヴィンはすぐ報告の為調査兵団アジトへと戻った。因みにギルはある程度見学してから戻った。
数日後ギルは立体機動装置に慣れそうと特訓していると、キースに呼ばれエルヴィンと共に総帥に会いに行くと言われ付いて行った。
「ちゃんと自己紹介をするのは初めてだな。私は3つの兵団を総括しているダリス・ザックレーだ」
「ギル・バビルです」
因みにギルはこの世界では名前が先の為『ギル・バビル』となった。Dはこの世界には天竜人がいないため抜いたのだ。
互いに自己紹介を終えてからキースは資料を提出した。それをよんだザックれーの返事は否だった。
「納得できません!!」
キースが提出した資料はエルヴィンが考案した‶長距離索敵陣形〟を使えば壁外調査での死傷者が激減するが、議会の承認が得られない為に次の壁外調査は出来ないと言われた。
しかしその五日後エルヴィンの暗躍(ギルも協力)で、貴族院でも大きな影響力を持つロヴォフ議員が壁外調査の許可を出したのだった。
「総帥。先日お願いした件はいかがでしょうか?」
「ん?ああ。君らが地下街で行う作戦についてだね、憲兵団へ話を通しておいたよ」
「ありがとうございます」
「しかしいくら立体機動に長けていても地下のゴロツキが壁外調査の役に立つかね?」
「はい。先日ギルに言われ地下街に赴いた時、この目で見て侮れない腕前だと思いました。特にリーダーらしき男は調査兵団のベテランを凌ぐレベルだとギルと意見が一致しました」
「ほう。それは凄いな」
「少しでも可能性がある者は全て今期の壁外調査へ投入してみるつもりです。まずは・・・近いうちに接触を図ります」
そう言った数日後エルヴィン、ギル、ミケの三人は地下街に入った。
「左1キロ先に例の三人組を確認。誰リーダーを狙う?」
「私が行こう」
ギルが誰がリーダー格の男を狙うか聞くと、エルヴィンが立候補した。
「分かった」
確認して3人は速度をあげた。なおギルは立体機動装置をつけているが、まだ不慣れの為剃刀を使っている。
「おい追ってだぞ!!」
銀髪の男がギル達に気付き仲間の2人に言った。
「後方50mに3人だ。きょうはずいぶんと少数だな」
「フッ。また憲兵団か、懲りない連中だぜ・・・」
赤髪をおさげ髪の少女がキメ顔で言った。
「このままアジトまで招待するわけにはいかねぇ。面倒くせぇが・・・ファーラン」
「おう」
「イザベル」
「おう」
「いくぞ!」
刈り上げ頭と三白眼の男が合図すると、3人は急降下して橋の下を立体機動でくぐった。
「おい。奴等まだついて来るぞ、しかもさっきより詰められてる」
後を見たファーランがリーダーの男に言う。
「・・・」
「憲兵団のくせにやるじゃねぇの、今日こそ本気出して捕まえようってか」
「地下まで出張してくるぐらい上は暇なのかね。王様の顔色だけ窺ってくれてりゃいいのに迷惑な話だ」
「いや・・・それにしちゃ様子がおかしい(そもそもクズの憲兵団がまともに動くはずがねぇ。人ごみの中でまともに飛べるって事は・・・まさか・・・)奴等憲兵団じゃないかもしれん」
ファーランとイザベルは何時もと同じ憲兵団だと思ったが、リーダーの男は一つの可能性が頭に浮かんだ。
「次の柱で急旋回だ。・・・確かめてやる」
そう言い次の柱に差し掛かった時3人は急旋回をした。リーダーの男はすれ違う瞬間背中の紋章を見た。
「流石は調査兵団、か」
「何!?調査兵団だって?間違いないのか!?」
「ああ。すれ違う瞬間確かに背中の紋章が見えた。あれが自由の翼だ。お前ら分かってるな?」
「もち!」
「はいはい」
3人は3手に別れた。
「真ん中のリーダーは任せたぞエルヴィン。俺は左の奴を追うからミケは右の奴を頼む」
「分かった」
「了解した」
ギル達も3手に別れた。
「へへ、泣かしてやるぜ」
イザベルは地形を利用してギルを巻こうとするが、相手が悪かった。
「マジか・・・ならこれはどうだ!」
更にイザベルは急降下・急旋回を使いながら振り切ろうとするが・・・距離は広まるどころか縮まる一方だ。しかも途中からギルは立体機動装置は使わず剃刀を使っている。
「はあ!?立体機動使ってないのに飛んでる!!?ありかよそんなの!!ッ!!しまった!!」
ギルに気を取られてしまったイザベラは、アンカーがしっかり刺さらず落下してしまう。だがイザベルは地面に叩きつけられる前にギルに捕まってしまう。
「ほい確保」
「畜生はーなーせー!!」
捕まったイザベルはバタバタと抵抗するが両手を後ろで拘束されてる為逃げられなくなっていた。
「お前なんなんだよ!立体機動使わず飛ぶなんて卑怯だぞ!!」
「特殊な訓練を受ければ誰でも出来るぞ」
「マジで!?俺も使えるのか!!」
「さぁどうだろうな?さて、エルヴィンとミケは・・・あそこか。他の2人も捕まえたみたいだな」
ギルは見聞色を使い2人共確保したのを確認してイザベルを連れて行った。
ギルが到着すると、ファーランの首筋にブレードを添えているミケと、リーダー格の男の前で仁王立ちしているエルヴィンがいた。
「こっちも確保したぞ」
捕らわれたイザベルを見てリーダーの男はギルを睨みつけた。
「もう一度お前の名は?」
「・・・リヴァイだ」
エルヴィンが聞くと、リーダーの男・リヴァイは間を開けて名乗った。
「リヴァイ。私と取引をしないか?」
エルヴィンはリヴァイの前に片膝を着けてそう言った。
「取引・・・?」
「お前達の罪は問わない。かわりに力を貸せ、調査兵団へ入団するのだ」
「断ったら?」
「憲兵団に引き渡す。これまでの罪を考えればお前はもとより、お前の仲間もまともな扱いは望めんだろう」
「・・・」
「好きな方を選ぶがいい」
リヴァイはファーランと目を合わせて歯軋りをして口を開いた。
「いいだろう。調査兵団に入ってやる」