楽しく過ごしたい   作:白河城

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一人称って難しい。


第二話

 次の日、シスターマリから連絡があると言われ、私達は中庭の広場に集まった。

 「はーい、皆さん聞いてくださーい!」

 騒いでいた子供たちが静かになったのを確認すると、説明が始まる。

 「この前言ったように、今日から皆さんはお勉強をしてもらいます。」

 えぇ~、と皆がさも嫌そうな声を上げる。

 「文句を言わない!貴方たちは十年後(・・・)、ここを出ていかなければなりません。

ですから、どこへ行っても恥ずかしくないように勉強をするのです。いいですね!」

 「はぁ~い・・・」

 子供たちがやる気のない返事をした。

 「よろしい。では、これから教材を配ります。院長、手伝ってください」

 「は~い」

 

 

 

 

 この孤児院には一つの決まりがある。十六歳になると、ここを卒業するというものだ。その後就職するか教会の運営する学校に入るかを選択される。まぁ、ほとんどの子供は学校に行って宗教関連の仕事に就くのだが。

 

 

 私は学校に入学するつもりはない。

 

 

 私は、ハンターになる。

 

 卒業するのと同じ時期に能力が完成するようにしたのもそのためだ。

 

 そして、ハンターになることができれば主人公のゴン達とも関係を持つことができるし、他の念能力者とも会えて退屈しない日々を送れるはずだ。

 

 当初の計画は能力が戻ってくるまで10年もあるので、ハンター文字やこの世界の共通認識を覚ちゃおうというものだったが、あまりうまくいっていない。共通認識は大丈夫だが、問題はハンター文字だ。この六年間で4割程しか覚えられてない。

 

「・・・ーん、・・・はさー・・・」

 

 その理由としては、ハンター文字が難しすぎたからだ。

 

 

 考えてみてほしい。昨日まで日本語を使ってのに、次から象形文字のような字も覚えようねと言われるのを。

 

 「・・・ずはさーん・・・」

 

 私も努力したが、結果はこの通りだ。書くのも大変だし。非常に面倒くさい。

 「静葉さん!」

 「うおおぉあ!」

 いつの間にか顔のすぐ近くに迫っていたシスターマリの突然の大声に驚いた。椅子から転げ落ちるのを耐えるとその声量のままでマリの説教が始まった。

 

 「何をボケっとしているのですか!貴方は真面目なのに、偶にこういうことあるから困ります!ちゃんと人の話を聞きなさい!いいですね!」

 「は、はい」

 その返事に満足したのか彼女は元の位置に戻り、説明を再開させた。時々自分の方に目を合わせられるのが怖い。

 

 「し、しずはちゃん・・・。その・・・ドンマイだよ!」

 「あ、ううん」

 当たりを見渡せば朱里と同じように、こちらを憐れむような視線を向けている者が多数見られた。

 

 まったく、自分はなぜこんなことになっているのだろう。

 

 能力が帰ってくるまで後十年、この状況に耐えなければならないのか。

 

 「はぁ・・・・・・」

 

 あぁ、速く十年後にならないかなぁ。

 

 

 

 

 

 「つ、疲れた・・・」

 今日の授業が終わり、部屋に戻ろうとしたとき、親友の口からそんな声が聞こえた。

 「朱里、どうしたの?」

 「うぅ」

 今日は初日ということもあり、彼女たちからしても簡単な内容だったはずだが。

 「わたし、こういうのあんまりよくわかんないんだよぉ」

 「そっかぁ」

 なんとなくそんな感じはしてた。

 

 その時、静葉は前世の記憶をふと思い出した。

 学校の問題の解らないところをずっと解らないままそのままにしていた。彼女は自分が困っていることや、悩んでいる時になかなか相手に質問することができずに、不明瞭なまま胸の内に秘めることが多かった。

 

 そして朱里は今、昔の私と同じような道筋をたどろうとしている。

 

 それを見た静葉は

 

 「・・・で、どこがわからないの?」

 「え!教えてくれるの!」

 「うん、朱里がわかるようになるまで付き合うよ」

 「ありがとう!しずはちゃん!」

 

 朱里に勉強を教えることにした。特別な意識を向けたわけではなく、自然とそれが親友に対する正しい態度だと認識していた。

 

 自分が知らぬ内に朱里に影響されたのかもしれない。前世ではこんな行動をとるはずはなかったのに。

 

 しかし悪い気持ちは湧いてこず、むしろ私に充実感を与えてくれた。

 

 

 

 現状としてはハンター文字は難しいし、まだ能力は帰ってこない。

 

 でもまぁ、

 

 「あのね、この問題なんだけど・・・」

 「あぁ、そこはこうすると・・・」

 

 

 この生活も悪くはないかな。

 

 

 

 

 (能力)を放ってから、四年が経過した。静葉が孤児院での生活を満喫している間も、鳥は順調に成長し続けている。以前のような小鳥の姿は見る影もなく、全長3メートル程の大きさになっていた。

 

 煌びやかな街並みの中を悠々と羽ばたいていく。

 

 そして今、新たな宿主のもとに舞い降りた。

 

 「ん?」

 「王子(・・・)、どうかなさいましたか?」

 「いやぁ、なんか不思議な感覚があったようななかったような・・・」

 「?」

 

 宿主はきれいな金髪の青年。その端麗な顔つきは、どこか知的な印象を思わせ、身にまとう有名ブランドの服が彼の特別さをより一層引き立させている。

 

 「・・・気のせいか」

 

 青年は鳥のことに気づかず、自分が所有するホテルに向かって歩を進める。

 

 

 

 その青年の名は、ツェードリニヒ・ホイコーロ。

 

 

 

 カキン帝国の第4王子であり、重度の人体収集家。特に若い女性を解体するのが好きなスナッフマニアのサイコパス。

 

 

 本人はまだ理解してないが、念能力の高い素質も持っている人物でもある。

 

 

 

 そんな危険人物を鳥は宿主に選んだ。

 

 「さ、じゃあ今日もよろしくねー」

 「はい。畏まりました」

 

 

 自分の能力が凶悪なものに変貌しようとしていることに、静葉は知らない。

 

 

 

 

 




最悪の相手。

能力が帰ってくるのは次回になります。
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