楽しく過ごしたい   作:白河城

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少し遅くなりました。


第三話

 鳥が飛び立ってから8年後のある日の夜、院長室の机で一人悩んでいる影があった。

 

(う~ん、どうしましょうかね・・・)

 

 孤児院の院長ことシスターフィレアは悩んでいた。フィレアは先日子供達にかいてもらった進路志望書の1枚を見る。

 

 この孤児院ではほとんどの子供は、用意された進路に進んでいくが、時々別の道を希望する子もいるため、進路志望調査をする。孤児院のシスターや運営者達の一番に望むものは子供の幸せなのだ。

 

 その一枚の紙の進路先を記入する欄には「ハンター」と書かれてあった。

 

 (静葉さんですか・・・・)

 

 

 新目静葉という人物は彼女の中で不思議な存在だった。子供達の中でもどこか浮いていて、優秀で落ち着いているが、時々子供らしい一面も見せることもある。そんな印象だった。

 

 「これをシスター達に見られたら、間違いなく反対されるでしょう」

 シスターマリを筆頭に、シスター達の顔が脳裏によぎる。あの心配性の彼女のことだ。絶対に反対するだろう。ハンターとはそれ程危険な仕事なのだ。

 

 勿論、フィレアも進路相談の時にそのことを静葉に話した。危険な目にあってしまうかもしれない、もっと別の道もあると説明したが、彼女は決して譲らなかった。

 フィレアだって心配してないわけではない。できれば、危険な目にあってほしくない。

 しかし----

 

『ワタシは10年間、ハンターになるために生きてきました。今更諦めることはできません。』

 

 静葉のあのような決意のある表情は初めて見た。まるで、ハンターになることを確信しているような顔だった。

 

「あの子のことを、信じてみてもいいかもしれませんね」

 

 彼女の決意に満ちた表情を思い出し、フィレアは彼女の意思を尊重することにした。

 

 

 

 

 

 早いものでもう8年が経った。ハンター文字は日本語と同じように使えるようになった。他にも友達との交流も増え、退屈しない生活を送っている。

 それに、私の容姿も年相応になっていった。スタイルは胸は小さいが尻が大きいという安産型、長くなった髪は背中辺りで一つに纏めている。本当は短くバッサリ切りたかったんだが、

 

『せっかく綺麗な茶髪なんだから、切るなんてもったいないよ!』

 

 と朱里や女友達から言われ仕方なく伸ばしていたんだが、今は気に入っている。

 そういえば朱里も大分見た目が変わったなー。三つ編みはそのままだが、どことは言わないがある一部がとても大きくなっている。どことは言わないが。

 

 ちなみに今は二人で椅子に座って勉強中だ。

 「しずはちゃんは進路どこにしたの?」

 手を一旦止めて朱里がそんなことを聞いてきた。やっぱりおおきい。

 「しずはちゃん?」

 「え、あぁ、ワタシはハンターって書いたよ」

 「えぇ⁉しずはちゃんハンターになりたかったの⁉」

 

 朱里が身を乗り出して聞いてきた。まぁ当然の反応だろう。

 

 「じ、じゃ今まで体鍛えていたのも?」

 「うん。全部その為だよ。」

 「へぇ~そうだったんだね・・・」

 「朱里は何になりたいの?」

 「え、わたし?」

 

 彼女の口から将来の夢は聞いたことがなかった。この際に聞いてみることにした。

 

 「わたしはねー、お医者さんになりたいんだ。高校を卒業したら大学に行って勉強するつもり」

 「医者か・・・。うん、朱里なら大丈夫だと思うよ。頭も良いし」

 「しずはちゃんが勉強教えてくれたおかげだよ」

 「いやいや朱里の努力が実った結果だよ」

 「えへへ、そうかなぁ?」

 朱里は以前と比べ非常に頭が良くなった。今ではここでも上位の成績を納めている。毎日夜遅くまで勉強してたからな。

 「お互い頑張ろうね!しずはちゃん!」

 「うん。そうだね」

 

 

 

 

 

 

 月日は流れ、2年後。卒業式が終わった夜のこと。

 「しずはちゃん、今日はあっという間だったね」

 「人も多かったから、少し疲れたよ」

 「もー、しずはちゃんたらぁ・・・」

 寝室の布団の中で会話をしている静葉と朱里。どうやら卒業式の様子を振り返っているようだ。

 

 「メアさん凄い泣いてたね」

 「あれは凄まじかったよ」

  普段は厳しいメアだったが、そんな一面を見せることが多く、子供達からの人気も高かった。

 「みんなももらい泣きしちゃって大変だったよ」

 「あはは・・・」

 朱里も酷く泣いていたようだったが余り触れないでおこう。

 「本当、色々あったよね」

 「そうだねぇ」

 

 「明日はもうここを出ていくんだよ」

 「寂しくなるなぁ・・・」

 

 

 「・・・ねぇ、しずはちゃん」

 「なに?」

 布団から少し顔を出し、朱里がこちらを向く。

 「しずはちゃんはさ、ここでの暮らし楽しかった?」

 色々なことがあった。夏は海に行ったり、キャンプをした。冬には天体観測をして、流れ星に目を輝かせた。

時には喧嘩をして、口をきかなったこともあって、でもすぐ仲直りして笑いあった。静葉はそんな生活も楽しんでいた。

 「朱里も皆もいたからとても楽しかったよ」

 「!えへへ、私もしずはちゃんと皆がいたから楽しかったよ!」

 にへら、と朱里が可愛く微笑んだ。やっぱりこの表情は10年前と変わらない。

 「そろそろ寝るね」

 「うん、おやすみ~」

 「おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・そろそろか」

 ついに鳥が帰ってくる日が来た。私は朱里を起こさないように布団から出て、10年前と同じように広場に向かう。この孤児院での生活も楽しかったが、やっぱりこの時をずっと待っていた。

 「よし、着いた」

 広場に立ち、鳥が来るのを待つ。

 

 やっと念能力が使えると思うとこれからが本当に楽しみになってくる。。

 

 それと新聞をみて分かったのだが、ゴン達が受けた287期のハンター試験はまだ行われていないようだ。今は286期らしい。えらくぎりぎりだったが、間に合ってよかった。あと1年あるから、その間に天空闘技場に行って能力の試運転でも

 

 

 ----ドンッ!!!!

 

 

 「な‼」

 

 悍ましいほどの気配がここに降り立った。振り返るとそれは自分がよく知る小鳥の姿ではなく、8メートル程の巨大な影があった。

 

 「ず、随分と育ったな」

 

 内包しているオーラ量も性質も、以前とはけた違いだ。私は思わず倒れ伏しそうになるのを堪え、歓迎するように両腕を広げる。

 

 「さぁ、おいで。ワタシの元に」

 

 震え声が出てしまったが気にしない。

 

 その化鳥はこちらに近づくと、胸の中に飛び込み、ズブリと私の中に入ってきた。

 

 「う‼ぐ・・がぁぁ‼」

 あまりの痛みと圧迫感で潰れそうになり、叫びそうになるのを必死に押し殺す。

 

 

・・・・・・耐えろ・・・

 

 

 耐えろ!耐えろ!耐えろ!

 

 何のためにこの能力を作ったんだ!

 

 ここで拒絶したら全部無駄じゃあないか!

 

 痛みに耐えろ!歯を食いしばれ!

 

 こんなことに耐えられないなんて、これからの人生、生きぬけないぞ!

 

 あの夢は、あの頃からあった非日常への憧れはどうなるなんだ!

 

 「ふうぅぅぅ!!!!」

 次第に痛みも無くなり、能力の知識が頭に流れ込んでいく。

 

 「お、おぉ・・・」

 

 こんな能力になったのか・・・。ここまで成長してくれたのか・・・。

 

 

 「こ、これがワタシの能力・・・」

 

 

 私は能力が完全に馴染んだのを体で実感した。

 

 

 

 

 




一人称で書いている作者さんは凄いなと思う今日この頃。

能力紹介は次回になります。
それと、諸事情により投稿が遅くなります。自分勝手な理由で申し訳ないですがゆっくりと待ってくれたら幸いです。
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