目が溶けた。
『どういうことだー!シズハ選手の傍に巨大な人影が現れたー!あれは一体何なんだー!』
突如にして出現した念能力に会場が困惑の渦に包まれた。
「し、シズハ選手・・・これは・・?」
「これはワタシの人形"兼"武器です。確か武器の持ち込みは許可されていましたよね?」
「こ、これが人形?」
「はい」
それは明らかに人形と呼べるようなものではなく、生物のように見えた。実際に中心の心臓は脈動しており、時々縫い合わせられている二つの口から唸り声を発している。
不気味な生物。悪魔。まさにそれとしか言えない。
「それがアンタの能力か」
「そうだよ。お気に召したかな?」
「ハッ」
審判を無視し、改めてツボサと向き合う。
(あの念獣が出た瞬間、アイツのオーラ跳ね上がりやがった・・・。今までのは実力のほんの一部というわけかよ。)
クソが。内心静葉に対し毒ずきながらも、ツボサは冷静に能力の分析を始めた。
(見たところ能力は具現化系か操作系・・・。ただデカいのを動かすだけならいいが、何かしらの特殊能力がある場合があるからな・・・)
念能力が具現化した物品は特殊能力がある可能性が高い。
これは、彼が今までの経験の中で解った一つの事実だった。
(だからといって攻めないわけにもいかないからな。・・・仕方ねぇ)
ツボサは今の位置からリングギリギリまで一気に後退し、初撃に使ったオーラ以上の量をナイフに込める。
(何もアイツが攻撃するまで待つ必要はなぇ!それに本体の動きは実戦慣れしてるようにも見えない!ここはッ)
そう決断したツボサは足に"理想の柔肌"を発動させ、静葉に向かって急接近する!
『ツボサ選手!シズハ選手に向かって猛スピードで近づいた!』
(発動される前に、この一撃で決める!)
静葉との距離が近くなった時、ナイフから莫大なオーラが飛び出した。
「"
"傷だらけのローラ"を螺旋状に回転させ、相手を包み込むように放出する。その内部はミキサーのようになっており、喰らった者は全身をズタズタに切り刻まれる。ツボサの奥の手の技だった。
不可視の顎が静葉と巨人の念獣を飲み込もうとした瞬間、念獣の拳がそれに触れ、
パンッという小さな破裂音とともに竜巻の刃が消失した。
「・・・・・・は?」
思わず呆気にとられ動きがほんの数秒止まってしまう。その隙を見逃す静葉ではなかった。巨人の剛腕がツボサの腹部に突き刺さる!
「がはっ!!」
衝撃で彼の体は吹き飛ばされ、リングの上で転がり倒れた。
「ク、クリティカル&ダウン!!プラス3ポイン、シズハ!3—1!」
『お、おぉーと!ツボサ選手!シズハ選手の人形に鋭い一撃をもらってしまったー!!形勢逆転だー!』
「あがぁぁ・・・」
(ど、どういうことだ!俺の"鮫蛇"が消え去った・・・?)
会場が熱狂するさなか、ツボサの脳内はひどく混乱していた。なにしろ自身の必殺技とも呼べるものが通用しなかったのだ。無理もない。
「どうかな?ワタシの念能力の味は?」
思考が冷静な状態に戻りつつある時に、静葉が興奮した様子で話しだす。
「・・・最悪だ。そんな強力な
「すぐに使ったら面白みがないだろう」
「違えねぇな・・・・・」
(今ので結構のオーラが持っていかれたな・・・。完全に判断ミスだ・・・)
「畜生が・・・」
己を責し、殴られ鈍痛が響く腹を押さえ次の策を考える。先程の自分の攻撃は、静葉の念獣の拳が当たった瞬間に消えた。奴の能力は"能力を無効化する"能力と見ていいだろう。
「まだまだいくぞ!」
「!」
静葉の声と共に念獣が動きだし、拳が迫る。ツボサはそれを防ぎ攻撃の隙を狙うが、
「ぐうぅ!」
「クリーンヒット!!プラス2ポイン、シズハ!5—1!」
『ツボサ選手!負けじと反撃をするがまたも重い一撃をくらってしまった!これは痛い!』
ツボサの攻撃は念獣に阻まれ、カウンターをくらってしまう。
静葉本体には今だダメージが
「・・・」
ナイフに込めていたオーラを薄くし、自分の体の方に集中させる。念獣が拳を振りかぶるのと同時に跳躍し、体を回転させる。すると、
ズルッッッ!!
拳は当たることなく腕がツボサの体を滑り抜けた。
「!!」
彼は自分の足に"理想の柔肌"を発動させていたのを体の側面に変えることで、体の摩擦係数を無くし攻撃を回避したのだ。
ツボサの"理想の柔肌"は自分の体に使用する際は限られた部分しか使用できないという"制約"があるが今の彼にはそれで十分だった。
そのままの勢いで巨人の体に潜り込み、静葉に近づき切り裂きながら傍を通り抜ける。
「クリーンヒット!!プラス2ポイン、ツボサ!5—3!」
『シズハ選手がツボサ選手の攻撃をくらった!これでポイントは5—3!今だシズハ選手が優勢です!』
(やはりだ!あの念獣の能力は拳が当たらないと発動しない!)
点数差に落胆することより勝利の兆しが見えてきたことを喜ぶツボサに、静葉がナイフで切られた部分をはたきつつ称賛の言葉を贈る。
「凄いなぁ、今のは。流石に思いつかなかったよ、あれ程のスピードで移動するなんてさ。・・・やっぱり念獣を動かすのは体が二つあるみたいで違和感があるな。」
「余裕ぶるのも今のうちだ。次は確実に急所を狙う!」
再度"理想の柔肌"を両足に発動させリング中を旋回し、攻撃の隙を狙う。
(次だ!次もあの念獣をくぐり抜けもう一度"傷だらけのローラ"を当ててやる!)
「いやいや本当に負けるかもしれないから、
—————————————これで終わらせてもらうよ」
何を、と答える前に"心層心理"の拳に大量のオーラが集まり、それをリング上に叩きつけた。
ドガン!!
「うおッ!!」
『シズハ選手!人形でリングを破壊したぁ!』
動きを止め、飛んでくる瓦礫を弾き返しあたりを見回すと、静葉の姿が無くなっていた。
(なんだ!目くらましのつもりか!)
まだ周囲は砂埃に覆われているため、視界は狭まっている。ここから攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。
(落ち着け!相手の気配を感じとるんだ!)
"円"を使いながら、静葉の姿を探す。すると、自分の背後に小さな気配があることに気づく。
「そこだぁー!」
渾身の力でナイフを後ろに命中させる。誰もがツボサの勝利を確信したその時、静葉の人影が
「こ・・・これは・・・?」
ツボサは突然起こった奇妙な現象に頭が混乱し、自身の背後に聳え立つ巨人の動きに反応するのが遅れてしまった。
「し、しま———」
反撃する暇もなくが拳がツボサに叩き込まれる。
「かはぁ・・・!」
(お、おかしい!さっき喰らった時よりも衝撃が重く、内まで響いてくる!それに・・・意・・・・・識が・・)
不意打ちを喰らった体は地面にゆっくり崩れ落ちた。動かなくなったツボサに審判が近づき安否の確認をし、首を振る。
「ツボサ選手、気絶KOとみなし!!勝者シズハ選手!!」
会場が歓声で包まれ、静葉の200階クラスの初試合が終了した。
「・・・・へぇ~♥」
「やりすぎた」
シャワーを浴びながら、今日の試合を思い出す。回避されるのが怖かったからといっても、流石に駄目だったかな?急所は外したし、手加減したから大丈夫、だと思う。思いたい。
けれど私もまだまだだな、と思ったことがあった。折角予知能力である"告死病"があるうというのに体が反応出来ていない。自分では大丈夫だと思っていたが、やっぱり駄目だったようだ。流石200階クラス.今までとはレベルが違う。
「・・・"心層心理"」
念じると自分の背後に巨人が姿を現す。コイツの使い方も何となく解ってきた。実際に試したほうがいいな、やっぱり、うん。
コイツの能力を簡単に言うなら"私の想像したことを現実にする"能力だ。
"心層心理"
・特質系の能力
自分の想像を実現させる能力。
念獣の攻撃が当たったものに想像を反映できる。例:「能力を無効化する」「岩盤が自分と同じ姿になる」「相手が気絶する」
【制約】
・拳からの攻撃でないと反映できない。
・非念能力者からも視認される。
・想像する内容や対象の大きさで消費するオーラが変動する。
・生物に当てる際は、自我が薄い者や自分より心または体が弱い者でないと反映されない。
・自分が具体的に思い浮かべるものしか反映できない。
【誓約】
・自分が転生者であることを話すと死亡する。
・攻撃するまで6秒経つとその想像は反映できず、消費したオーラも戻ってこない。
・"君色に染まる"を使って作成したことを話すと死亡する。
・"君色に染まる"の元とり憑き先に"君色に染まる"を使ったことがばれると死亡する。
この能力は非常に便利だが、想像する内容の具体的なイメージがないとできないのだ。例えば「相手が死ぬ」というものを反映する際は自分が「死」そのもののイメージがないと使えない。それにオーラも大分消費される。
さらにいうとこの能力にはまだ謎がある。
それは私自身がまだ知らない念能力があることだ。いや、「ある」ことは確かなのだが内容も全く分からない。恐らく何らかの開放条件があるのだろう。
「ん?なんだこれ?」
ふと"心層心理"をみるとあることに気付く。しっかりと縫い付けらえれていた瞼の糸の1本が僅かに
「・・・・そろそろ上がろ」
能力を消し、風呂場を出る。能力のことはまだわからないことが多いし、課題点もたくさんある。けれど、自分にはまだ成長できるという事実があったことが非常に嬉しい。
これからも楽しく生きていこう。
イキリ静葉ちゃん。
戦闘シーン難しすぎる。
報告。
私の都合で来週の投稿ができません。本当に申し訳ありません。
日間ランキングに載ったー!やったー!皆さんありがとうございます!
リアルで思わず変な声が出てしまいました(笑)