楽しく過ごしたい   作:白河城

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気づいたら3か月くらい経っていました・・・。スランプだったんです。ごめんなさい。
久しぶりの投稿なので、すごく読みにくいかもしれない。
不可解な点や、誤字脱字などがあればご報告お願いします。


第七話

 200階クラスで初の対戦相手であるツボサを倒した静葉は調子に乗り、そのままの勢いで自分から相手に積極的に勝負を申し込むようになっていった。対戦相手を糧として自身の念能力の使い方を戦闘の中で学び、確実に勝利を収めていく静葉。

 彼女の一見普通な容姿とは裏腹に、不気味な人形*1を使った特異なバトルスタイルとのギャップは大きな反響を呼びいつしか熱狂的なファンが生まれ、相手から勝負を挑まれることも多くなった。

 

 

 そして、とうとうあの道化師(ヒソカ)に本格的に狙われ、勝負を申し込まれてしまった。

 

 

 

 天空闘技場249階。

 血で血を洗う格闘家のパイオニアの一角で本日一番と思える程の熱気がそこにはあった。

 『ご来場の皆さま大変長らくお待たせいたしましたぁ!!只今よりシズハ選手とヒソカ選手の試合を開始いたします!』

 実況の声と共に二人の人物がリングに入場する。それに伴い会場中が盛り上がり、より大きくなった歓声と罵声が共鳴し一つの行進曲となり、これから激闘を繰り広げるであろう戦士達の門出を祝福した。

 

 "人形使い"のシズハと"奇術師"ヒソカ。

 

 異色の念能力者同士がここに初めて対面する。

 「いや~♦今日はキミと会うのをとても楽しみにしていたよ♥」

 「ん?そこまでワタシに期待しているのか?」

 ヒソカはこちらを指さし、いやらしく細められた目で見つめながら言う。

 「うん♥最初はあまり気にしならなかったけど、気が変わったんだ♦キミの念能力はすごくおもしろい♠」

 「・・・・・そうかい。お褒めに預かり光栄だね」

 

 (というか、ヒソカに目を付けられるのは覚悟してたんだけど、やっぱり苦手なんだよなー。)

 これから戦い合う者の空気とは思えない会話のなかで静葉はひとりごちる。

 

 実をいうと静葉はこの試合は受けたくなかった。ただ単にヒソカが厄介で、いろいろ気持ち悪いというのもあるが静葉は彼がなぜそうも簡単に戦った相手を殺すのか理解できなかった。

 

 ヒソカは自分が気に入った相手を見つけてはタイマンを挑み、殺す。実力がまだ成長途中の場合は殺さず生かしておいて相手の力が十分に実るまで待ち、完全に熟した際に狩る。

 

 しかし、静葉は戦うことは好きだが、相手を再起不能にしたいとまでは考えていない。彼女が念能力を使って戦うのは戦闘時に生まれる高揚感と、自分が元の現実とは違う異世界で日常を歩んでいるということを実感し愉悦に浸るためであり、戦った相手を容赦なく殺すつもりなどは全くない。

 

 このような違いから、静葉はヒソカとは関わりを持ちたくなかった。

 だが、こうして彼と向き合っているのはいままでの度重なる戦いの中でうまれた自信があり、挑まれた勝負に尻尾を巻いて逃げるというのはプライドが許さなかった。静葉は生粋の負けず嫌いなのだ。

 

 「まぁお互いが楽しめるようないい勝負にしようよ♥」

 「そんな試合になることを祈るわ」

 互いに軽口をたたき、精神を集中させる。

 

 「シズハ対ヒソカ! ポイント&KO制! 時間無制限一本勝負! 始め!!」

 

 高らかな宣誓がかかり、両者ともに前進する。ヒソカが拳を振りかぶるのに呼応するかの如く静葉も己の"心層心理()"を顕現させる。灰褐色の巨躯が現れ互いの拳が激突し、そこから激しい攻防が始まる。拳がヒソカの顔をかすり、念獣がヒソカを殴り、ヒソカその腕に蹴りを放つ。拳と交差した足にピリピリとした刺激が走る。

 (威力はあちらの方が上♦・・・だったら)

 

 "心層心理"が拳をヒソカに突き出す。しかし彼は素早くかがんで念獣の顎にアッパーカットを打ち込むも念獣はおろか、静葉も傷一つおっていない。

 (彼女がダメージをおっている様子はない♣︎・・・。やはり叩くなら本体か♦)

 念獣を操作する念能力者のなかには念獣がダメージを負うと、術者もダメージを負うという"制約"をしている念能力者もいるのだがどうやら違ったようだ。

 

 そう判断したヒソカは念獣の拳撃を躱す。即座に"心層心理"の右に回り込み、後ろにいる静葉を攻撃するためトランプを投げる。しかし"心層心理"が素早く反応し、トランプを打ち落とす。

 「念獣の操作速度も速い♠いいねぇ♣︎」

 

 ヒソカの称賛をろくに聞かずに念獣は一段と素早い動きで地を蹴り、彼の顔面に拳でぶん殴った。ヒソカの体がよろめく。本来ならば一般人が喰らったら鈍痛に顔を歪め、泣き喚くぐらいの威力は込めたはずなのだがヒソカは恍惚とした笑みを浮かべていた。

 「頑丈だな!」

 「キミの念獣程じゃないよ♥」

 

 静葉は"心層心理(ブレスブロークンハート)"の勢いを殺させず起動を変え、がら空きになっている腹に蹴りをぶち込む。しかし、その丸太のごとく太い脚が鋭く命中したかに思えたが、脚は見えない膜なようなものに阻また。拳の威力は減少し、僅かにヒソカの体がズリズリと移動するだけにとどまった。

 能力越しに伝わってくる違和感。そこに向かって"凝"をすると、ヒソカの両手からうすっらとねばつくような気色悪いオーラがにじみ出ていた。

 「・・・現実で体験すると何とも言えない」

 

 これがヒソカの念能力"伸縮自在の愛(バンジーガム)"。

 自分のオーラをガムとゴムの両方の性質を持つものに変える変化系の能力だ。単純ながらもその使い勝手の良さは作中でも群を抜き、ヒソカ本人の才能も合わさりとても強力なものとなっている。

 

 ヒソカが動きの止まった"心層心理"を軸にしてこちらに飛びかかろうとするが、静葉は焦らず至って冷静に張り付いたオーラを"心層心理"の能力で無効化。"伸縮自在の愛"が解除され勢いが戻った念獣の足がヒソカに迫る。しかし彼は僅かに跳躍し体を翻してこれを回避。行き場を失った足はリングに突き刺さり、岩となって砕ける。

 (あの状態から躱された!やはり一筋縄ではいかない!)

 改めてヒソカに警戒心えお覚えた静葉はねっとりとこちらをまとわりつくような視線と禍々しい粘着質なオーラをまとわせながらこちらの方を見つめているヤツと目が合った。

 「いいよ、キミ♣︎最近見た中でも指折りの逸材だよ♥」

 (キモい) 

 

 ヒソカが動きの止まった"心層心理"の頭に手を置き飛び越えてこちらに向かってくるが、静葉は焦らず至って冷静に張り付いたオーラを"心層心理"の能力で無効化。"伸縮自在の愛"が解除され勢いが戻った念獣の足がリングに突き刺さり、岩となって砕けた。続けて少しバランスを崩したヒソカに追撃を前に出る。

 「————!」

 しかし"告死病"によって齎された予知を回避するために立ち止まり止まりしゃがんだ。その頭上を岩盤が通り抜け、リング外へと飛んでいく。

 

 「あらら、外しちゃった♦」

 おどけた様子でものをいうヒソカに静葉は内心舌打ちをした。

 (砕けたリング盤を"伸縮自在の愛"で引っ付け、"心層心理"を軸にしてこちらを狙ってきたきたのか。本当、器用なまねをする)

 

 純粋にヒソカの技量に舌を巻くがそんなことを言っているひまはない。このままでは殺される確率のほうが高くなってしまう。

 それは嫌だ。死ぬのは困る。

 こうして殴り合っているだけではジリ貧だ。ここはやはり、

 「短期決戦に持ち込むしかない」

 

 

 

 ヒソカは今の状況を非常に楽しんでいた。目の前に自分を満足させてくれる新たな逸材がいるのだから。

 彼女を最初に見たときはそこまで気持ちは高まることはなかった。なんらかの念能力を使い相手の動きを察知する力は凄いが戦闘技術はニ流。ド素人とまではいかないが動きは甘っかた。そんな静葉にヒソカは200階の試合をした後くらいにカマをかけてみよう。それぐらいでしか意識していなかった。

 

 しかし、その認識は間違いだったと痛感する。

 

 彼の知り合いである幻影旅団の一員のウボォ―ギンを軽く超す膨大なオーラ量。この歴戦のヒソカでさえ目を見張る程の力をもつ念獣。それに相手の能力を無効化する能力と自分の分身を作り出す未知の能力。どれも己の好奇心と闘争心を刺激してやまなかった。

 「もっと、もっとだ♠キミの実力をもっと見せてくれ♥・・・!!」

 「・・・・」

 

 その言葉に対して行動で返答するかのように、静葉は念獣を使い、壊れたリング盤を蹴り上げ二段蹴り要領で殴り飛ばした。

 目くらましのつもりか、そう判断したヒソカはあまりおもしろくない行動した静葉に対し若干失望しつつ、"伸縮自在の愛"で受け止めようとする———————が、

 

 (—————!!!)

 

 殺気を感じ途中で大きく後に飛ぶ。その瞬間岩盤がナパーム弾かのように爆発し、爆風がリング上に吹き荒れる。自分が先程までいた場所が粉々になっていることに冷や汗をかくヒソカ。その中から静葉と念獣が現れ、彼に接近すろのが見えた。一先ず追撃を逃れるために体勢を整えながら着地をする。

 

 しかし、その行動が命取りとなった。

 

 ヒソカが地面に着地した瞬間、ズブッッと彼の足がリング上に沈んだ。

 「こ、これは!!」

 (地面が柔らかくなっている!)

 どうにかして足を抜かそうとするが次の時には元の地面の固さに戻っている。両足を固定されたヒソカに静葉は近づいた。

 

 「悪く思うなよ」

 

 その声とともにヒソカの体に全力でラッシュが叩き込まれた。

 「ガァッ!・・・・グッッ!」

 "伸縮自在の愛"で防ぐもすぐに無効化され、容赦ない攻撃が続く。頭部、胴体、足と体全体に拳撃が浴びせられる。肉が潰され、血が流れ、どんどんダメージが蓄積されていく。

 

 (何とか成功したな)

 静葉がやったことは実に単純なことだ。"心層心理"で蹴り上げた岩を爆発が派手な爆弾に変え、爆風に紛れてヒソカに近づき、いち早く彼の着地点を殴り地面を液状化。そして能力を解除し、ヒソカを固定した。

 (コイツのことは嫌いだが、そこまでする必要はないよな。殺す気もないし)

 まだ、殴られ続けるヒソカを尻目に静葉はそう思い、次の攻撃で終わらせることにした。ラッシュを一旦止め、拳にオーラを込めて彼の腹筋に突き刺す。あまりの衝撃でヒソカの足が靴からすっぽ抜け、体がリング外へと吹っ飛ぶばされた。

 

 

 

 ———————かに思えた。

 

 

 「何ッ!!」

 空中に飛ばされていたヒソカの体がピタッ、と不全に静止する。

 「ま、まさか!」

 すぐに"凝"をしてヒソカの方を見ると、腕から伸びた一直線のオーラが"心層心理"の頭に繋がっていた。そしてその直後に"告死病"から送られてきた察知し驚愕する。慌てて解除させようとしたが、ヒソカの行動のほうが速い。

 

 次の瞬間、限界まで伸びた"伸縮自在の愛"が勢いよく縮み、"心層心理"の後ろにいた静葉を殴り飛ばした。

 

 「ガ・・・ハァ・・・!!」

 飛ばされた体が重力に従い地に落ちる。その前にヒソカは静葉の体を蹴り上げた。腹部を蹴られたことで呼吸が難しくなり、激しい鈍痛が静葉を襲う。

 辛うじて"堅"が間に合い致命傷は免れたが、先程の攻撃から静葉の精神が大きく動揺してしまい、オーラの制御がうまくできていないため、"心層心理"を動かす集中力もない

 (お、落ち・・・着け・・・・。落ち着くんだ・・・・・)

 そう自分に言い聞かせ、呼吸を整え精神を集中させる。しかし、ヒソカの連撃は続く。"伸縮自在の愛"で静葉を捕らえ、グッと力を込めて振り回し始めた。ヒソカを中心に回るその姿はさながらメリーゴーランドのようだ。

 

 「う、おぉぉぉぉぉ!!」

 手足が接着されているので抜け出せず、凄まじい速さで体を振り回される。胃から不快感がこみ上げ、脳が揺れ視界が定まらない。そもそもこんな状況では"心層心理"を操作して能力を無効化する余力もない。

 

 そして、これで終いだと言わんばかりに、足を踏ん張ってリングの至る所に何度も静葉を叩きまくり、最後に渾身の力をもって静葉の体を地面に叩きつけた。ドゴッォ!!という石板を砕く重々しい音が鳴り、静葉の体が地面にめり込む。

 「ごほっ・・・・」

 息が詰まり、か細い音が少女の口から零れる。その様子を見届けたヒソカは"伸縮自在の愛"を解除し、静葉のもとから離れた。

 

 

「まだだ・・・・」

 

 バッ!とヒソカが後ろを振り向くと念獣に寄りかかり立ち上がる静葉の姿が。今だ視界が定まることはないが、何とかオーラを練ることができていた。

 (いける、いけるぞ!まだ逆転の余地はある!最初の一発を受けて混乱してしまったがいまからでも"心層心理"の攻撃を当てれば)

 

 「クリティカル&ダウン!!プラス4ポイント!!10-8!TKOにより、勝者ヒソカ選手!!」

 「は!?」

 

 静葉はいままで気づいていなかったが、どうやらポイント換算はちゃんとされていたようだった。審判の試合終了の宣言がかかると霧が晴れるように次第と周囲の観客の歓声も耳に入ってきた。

 

 呆然としてあたりを見つめる静葉を、ヒソカは熱の凝った瞳で見つめ、微笑みながら告げる。

 「シズハ、キミの能力は素晴らしい♥けど、まだまだ爪が甘い♦ここで食べちゃうのも考えたんだけど、やっぱりやめた♣︎」

 「これからキミがどうなるか、とても楽しみだよ♠もしキミが成長してまた逢う時が来たら———————今度は全力で殺し合おう♥」

 

 そう言い残しヒソカはご機嫌な様子でリングから去っていく。

 その言葉からゾクゾクゾクッッ!!!と体に恐怖が這い上がってくる。それに顔を青褪め思わず静葉は両腕で自分の体を抱きしめた。

 

 こうして静葉にとって初めての対ヒソカ戦は、ヒソカの勝利に終わった。

 

 

 

 

 

*1
正確には静葉が念能力で作り出した周囲からも認知される念獣なのだが、本人が「人形」と呼称するため周りもそう呼ぶようになった




まぁ、そりゃ勝てないよね。
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