U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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今回は一人称オンリー、おや?一〇〇式ちゃんの様子が…


第4話・ささやかな変化

走る、走る、走る、壊れたビルの谷間を抜け、路地裏を私に走る。

IOP製戦術人形、一〇〇式機関短銃はロールアウトして間もない新商品。それ故に実戦でのデータは不足している。

私はそのデータ取りのために、この最前線の捨て駒に配属された。

過酷な前線の捨て駒に配属された最新型がどんな変化をするのか、IOPはそれを見たがっていた。

最初は嫌だった、そりゃそうでしょ、人形だって痛いのは嫌いだもん。でも、今はこれでよかったって思う。

 

「FAL姉、今どこ!!?」

 

≪ダウンタウンの東、えーと、カフェの前に向かってる!≫

 

「了解!」

 

少し遠い、この先は入り組んでますから回り込むより上っちゃったほうが早いですね。

壁を蹴ってビルの壁に飛びつき、パイプやつかめるとっかかりを探しながらぐいぐいとビルの壁を上る。

非常階段は使わない、そもそも下まで降りてなかったしさびてボロボロ。こっちのほうがしっかりしてる。

でも上まではいけなかった、しょうがない。思いっきり壁を蹴って、反対側のビルの壁に飛ぶ。よし、こっちはいける。

 

「よっし、到着!」

 

屋上についたらまたダッシュ、障害物は避けるか飛び越えるかしてビルからビルに飛び移る。

これくらい戦術人形の身体能力なら問題ない。この風を切る感覚、昔の私ならきっと怖がってた。

狭い足場、ボロボロの床もなんのその、コンテナを乗り越えて、壊れかけの工事用足場を蹴って距離を稼ぎつつ大通りに沿ってビルの上を渡っていく。

なんか下がうるさいな…って、うわぁ。

 

「いやぁぁぁ!!」

 

「逃げるな!」

 

ハンマーを振り回してデストロイヤーを追いかけまわすミナ。よく見るとデストロイヤーの武器にひびが入ってる、カウンターもらっちゃったか。

しかも接近戦仕掛けられてるから逃げるしかないと、自爆しちゃいますし。逃げないと体の中身がひっくり返る、あれはひどかった。

 

「この肉人形がぁ!なんで、なんで当たらないんだよ!!」

 

「さすが最新型、おぉ、怖い怖い」

 

右手に銃剣付M14、左手にマチェットを持ってドリーマーの猛追をよけるイチヨさん。

マチェットでドリーマーの反撃の銃撃をはじいて、M14を片手で撃ちながらぶんぶん振り回してます。

銃の使い方じゃないよあれ、まるで大昔の槍を使う武者みたい。銃撃してくるから余計に危ない。

 

「未熟、その程度ですか」

 

「あ、がぁ…」

 

サラさんまでいる。エクスキューショナーの逆袈裟切りから飛ばされる飛ぶ斬撃をひらりと交わして接近、迎撃の上段切りをはじいてから高周波ブレードで下から斜めに切り抜く。

すらりと残心して刃についた血を振るい落とし、鞘に納めると血しぶきとスパークを噴き出してエクスキューショナーは倒れた。

サラさんに剣術で勝とうとしちゃだめですよ、前は大剣ごとぶった切られたのに全然懲りてない。

 

「おっとっと!?」

 

気が付くと後ろから忍び寄ってきたスカウターの銃撃をぎりぎりでよけつつ撃ち落とす。いけない、夢中になり過ぎた。

 

「FAL姉!もう少しでつくよ!!」

 

向かいのビルに着地しながら無線機でFAL姉に連絡を入れる。

 

≪こっちも順調。さ~て、狩りましょうか≫

 

FN・FAL、FAL姉は私の姉みたいな存在。FAL姉はもっと優秀なエリート、容姿端麗な本当にできる戦術人形。

本当にすごいの、事務作業も、戦いも、なにもかも何でもできるエリート。

目の前はビルの端、向こう側にいる下には鉄血の人形部隊。リッパーが5、プラウラーが5、ダイナゲートが10、アルケミストが1。

アルケミストはダミーだね、笑ってるけど顔に張り付いてる感じ。見てはいるんだろうけど、まぁいい。いい感じで先回りで来た。

周囲から銃撃されて周りのヤツラが倒れて、アルケミストの意識が銃撃したFAL姉に向く。

 

「ボーナスになれ」

 

FAL姉が挑発してさらに煽る、アルケミストが幻影を作り出してFAL姉に突貫。FAL姉は周りの雑魚を的確に撃ちぬいて、アルケミストを迎え撃った。

プラズマソードの刃を屈むように避けてから発生器をストックで小突いて軌道をずらし、流れるように足払いして姿勢を崩させる。

その隙に私は思いっきりビルから身を投げた。戦術人形とはいえこのまま落ちれば大破は確実の高度。

でも問題ない、100とかでも降りるし私たちにはこれがある。

 

「っ!」

 

ほどほどに落ちたところで腰に付けたツールベルトからフックワイヤーを投げてビルのとっかかりに引っ掛ける。

速度を落としつつ、降りられるところまで降下。途中でワイヤーが伸び切るけど予想範囲内、ワイヤーロープを思いっきり捻ってフックを外して自由落下する。

リールが小さくキリキリと音を立てるけど問題ありません、下はうるさいからまぎれちゃう。

距離は十分、場所はアルケミストの真上。姿勢を整えてFAL姉に刃を向けるその頭に勢いをつけて踏みつける。

 

「!?」

 

おぉ、避けた。でも遅い、地面に着地すると同時に首根っこを銃で引っ掛けて姿勢を一気に崩させる。

私の銃は古いタイプで横からマガジンが突き出てるからうまく使えば鎌みたいにひっかけられる。

壊れる?勝てば問題ない、マガジンがへし折れたけど銃自体は頑丈にできてる。

その隙に心臓部を銃剣で一突き、さらに発砲。人間なら致命傷だけどアルケミストは私を突き飛ばして、右手のレーザーブレードを振り下ろしてきた。

ブレードをよけて、発生器の部分を踏みにじって地面に押し付けつつ小さくジャンプ。アルケミストがすぐにブレードを振り上げようとするけど、その前にM4さんが彼女の腕を撃ちぬいた。

肘を撃ち抜かれて腕の動きが固まる、その間に頭上を飛び越して背後に回り込み、彼女の首筋に予備の銃剣を突き刺した。

 

「…ばかな、対策、してたはず」

 

「あら?」

 

本物?ダミーを演じてたのかな。まぁいい、これもお風呂のため、卑怯とは言うまいな?…あれ、なんでお風呂?

 

「ま、だ、だぁぁぁ!!」

 

私をアルケミストは大きく身をよじって振り払う。さすが鉄血製、頑丈にできてる。

銃剣を首から生やしたまますごい怖い顔で突っ込んでくるアルケミスト、ハイ股座がお留守ですよっ!

 

「――――!!?」

 

思いっきりアルケミストの股を蹴り上げる、俗にいう金的蹴り。一瞬空虚な表情になってから顔を真っ赤にする。

まさかそこを蹴られるとはだれも思うまい、しかも同じ女にこんなところで。指揮官の言う通り、意外と効く。

あれ?でも変だな、なんか違和感がある。そもそもこの市街地でアルケミスト、居た?蹴ったのエージェントだったような。

いや、居なかったはず…ってあれ、なんでいたとか思い出みたいに?さっきM4さんが居たような?あれ、あ、もしかしてこれ。

 

「あ、夢ですね」

 

目が覚める、起き上がって周囲を見回すといつもの自室。なるほど、これが夢ですか。

この前みたいに変に疲れてたり、気持ち悪かったりしません。ちゃんと寝たって感じがして…あれ?

 

「私、何見てたっけ?」

 

なんかドンパチにぎやかだった気がしますが…おぉ、これが、夢。起きたら忘れるというタイプ、不思議な感じですね。

ログをあさっても文字化けしてます、夢は、見てたようですし…不思議ですねぇ。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

U08の事件から四日、久しぶりに私は任務に復帰しました。私がいない間に、U05基地の取り巻く環境は少しづつだけど変わり始めていたみたい。

一つは環境、指揮官の想定通り外地に生息しているミュータントの小型種が少しづつ出現するようになりました。

正規軍の先発隊が対策に乗り出しているせいで、鉄血の占領地域で繁殖していたミュータントがグリフィン区画内に流入し始めているらしいです。

その対策が今回の任務、正規軍の展開を助けるために見慣れないミュータントは見つけ次第排除、というのが大きな目標です。

 

「もぅ、一体どうなったらこんな大きさになるのよ?」

 

FAL姉は撃ち殺したラッドローチを忌々しげににらみながらぼやいた。

今日も鉄血支配地域近くの廃墟にお仕事で来てみれば40センチはありそうなゴキブリが10匹くらいもぞもぞ。

本当にどうやったらあんな大きさになるんですか?そりゃ鉄血兵をたらふく食べてきたんでしょうけども。

 

「さぁ?ゴキブリなんて世界中どこでもいますからね」

 

「動じないあんたもあんたよ…ダミーがあれば楽なのに」

 

「大所帯だと動きが鈍りますし、いろいろと不都合がありますから駄目です。いつものようにはいきませんよ」

 

FAL姉はため息をつきます、FAL姉の言う通り今回の作戦ではダミー人形はお留守番です。

ダミーは脱出地点やセーフハウスの防衛に徹底させて、私たちは身軽な状態で行動したほうがやりやすいから。

私もそれには賛成、U08ではそのおかげでヘリポートを守り切れましたから。

 

「いくらダミーでも目の前で自分と同じ姿の奴が貪り食われるなんて目に毒ですよ、今回なんてこいつですし?」

 

「あー…それもそうね」

 

ワルサーP38のサラさんは元気なラッドローチの頭にケリを入れ、ふらついたら蹴っ飛ばして壁に…うぇ…て、手慣れてますねぇ…

 

「ずいぶん扱いなれてるわね」

 

「この程度小銭稼ぎですよ、町の下水掃除で腐るほど相手にしますから」

 

「小遣いって…」

 

「さ、次です次。下水も見なくちゃなりません。さっさと終わらせましょう?」

 

グリフィン上層部は今回の事件に緘口令を発令、あくまでE.L.I.Dの大規模発生として公表して対策を練ってるそう。

前線部隊にもE.L.I.Dの変異種として発見次第速やかに報告、撃破可能ならば撃破するようにと命令が届いてます。

どうも外地、いや圏外から密輸されたミュータントってことは伏せておくみたい。

おかしいとは思いますけど、これですもんね、こんなのうじゃうじゃいますってなったら…うん、知らないほうがいいですよ。

 

「戻ったよ…ゴキブリだらけで嫌になっちゃう」

 

「下水だっけ、臭くなりそう…ってか私いる?サイドアーム縛りとかしたくないよ?」

 

横の路地を掃討していたゲパードさんとG11さんが戻ってきました。ゲパードさん、諦めてください。0距離射撃、期待してますから。

 

「もちろん、もしかしたら大物がいるかもしれませんからね」

 

「うげ…これ効くかな?」

 

「さぁ、そこらへんは個体差がありますからなんとも」

 

G11さんは持ってきたキメラ製エネルギーライフル・オーガーを指さします。サラさんは少し悩んでから首を横に振りました。

確かにいつも言ってましたもんね、生き物だから個体差が激しいって。

でもオーガービジョンは索敵に有効ですから役には立つでしょう、私の銃にもつかないかな?

 

≪こちらブラボー1、アルファ、聞こえる?≫

 

「こちらアルファ1、どうぞ」

 

廃墟の反対側から入ったブラボーチーム、MG34さんから通信が入りました。アルファ1はサラさんです。

 

≪鉄血部隊の痕跡を確認、小隊規模みたい≫

 

「メンドクサイ」

 

同感です。

 

≪同感ですね、出会わないことを祈りましょう。こちらは手はず通り、反対側から潜りますね≫

 

「了解です、アウト」

 

やれやれですね、こんなに大変になってるのに鉄血はまだ元気なんですか。

ミュータントがうろうろしてる中で撃ち合いとかやってられませんよ

 

「鉄血?まさかあれ目当てじゃないの?」

 

ゲパードさんが道路の向こうを指さします、そこには壁によりかかるようにして機能停止している右腕に巨大な機関砲を持ってる大型二足歩行兵器の残骸があります。

 

「グランランサー?まさか回収する気?確か前にボコボコにされてたわね」

 

グランランサーは正規軍が運用する軍用戦闘ロボの一つで、鉄血工造が崩壊した後にシェアを伸ばしてきた軍用ロボット産業大手のベルゲン社製です。

IOPや鉄血みたいな自立人形ではない、全金属型の人型ロボットを主にしてる企業ですね。

たしか前に鉄血の侵略部隊がベルゲン社の工場を襲いましたけど、反撃されて全滅してたはずです。

確かその時の映像で、このグランランサーに滅多打ちにされてましたね。ハイエンドなしでも結構な規模だったのに。

 

「修理すればまだ動くように見えるよね」

 

「中身抜いたの私たちだよ」

 

G11さんの言う通り、あの中身は私たちが持っていきました。

ちなみに窃盗にはなりません、あのグランランサーは軍でも損耗扱いでとっくに所有権を放棄してますので。

それにブラックボックスはそのまま正規軍に進呈しました、大佐も気前よくボーナスくれたのでウハウハでしたねぇ。

 

「それにしても、だいぶ苔むしましたね」

 

初めて見たときは大きくて頼もしくて圧倒されました、でも今はもうすっかり雨風にさらされて苔が生えてます。

なんだか、そんな姿を見てると少しもの悲しい感じがしました。私も壊れちゃったら、こうなるんでしょうか。

破壊された人形の多くは回収できれば回収されてリサイクルに回されます。でも、そうならない人形だっています。

このグランランサーもその一体、戦うために作られて、一生懸命戦って、壊れた人形です。

 

「気になりますか?」

 

「はい、少し…」

 

サラさんの言う通り、なんだか気になります。

 

「え、いつもの残骸じゃないの?」

 

FAL姉の言う通り、確かに残骸なんでしょう。でもなんだか他人事じゃない気がしました。

何考えてるんでしょうね、今までそんな風に思ったことなかったのに。

 

「大丈夫?やっぱりまだ安静にしてたほうがよかったんじゃない?」

 

FAL姉が心配してくれます。悪夢で魘されてた時は大変でしたけど、いまはだいぶ落ち着きました。

そもそも寝られないというか、寝た気がしなくてつらかったようなもので、フラッシュバックとかトラウマっぽいものじゃないから。

 

「ううん、大丈夫。なんか、寂しそうに思えて」

 

「寂しそう?」

 

FAL姉がすごく困ったような顔をする、ほかのみんなもそう。でも、サラさんだけは合点がいったように頷いた。

あれ、でも、今なんて言ったんでしょう。サラさんが何かつぶやきましたけど理解できません。

 

「何?サラ、何かわかるの?」

 

「えぇ、きっとこの子も寂しかったんでしょう。そういう時はこうするんです、ほら両手を合わせて」

 

サラさんは両手を合わせて目をつむりました、あれは合掌、いえ、お祈りですか?

 

「今の私たちにはこうすることしかできません、これでいいんです」

 

私もサラさんと同じように両手を合わせてお祈りする、確かに、なんだかすっきりしました。

でも、それだけでいいのかな?こういう時は、確か…

 

「おや?」

 

「一〇〇式?」

 

私はグランランサーの足元に近づいて、ポーチの中に忍ばせておいた合成チョコバーを取り出して手ごろなでっぱりに置きました。

お供え、ですよね。昔日本のことを勉強したとき、死んだ人たちとか、神様とかへお祈りのときにするって覚えました。

たしか指揮官達がよくやってるやつも供養だったはずです。

 

「…行きますよ」

 

「了解」

 

サラさんの後ろに続いて私たちは廃墟の街の歩道をゆっくりと進みます。周囲を警戒しつつ、向かいのは用水路。

FAL姉たちは少し気になった様子でグランランサーとサラさんを交互に見つめてましたけど、何も聞きませんでした。

きっと聞かないほうがいい事、なのかもしれません。サラさんも、指揮官も、ハンターの人は時々そういう有無言わせない空気を出します。

少し行くと見慣れた用水路が見えてきました、ここを少し下流に下るとメンテナンス通路に入るハッチがあります。

そこから中に入って、中にいるらしいミュータントたちをとりあえず間引きするのがお仕事ですね。

 

「あら?誰か先客かしら?」

 

水路上部から階段を下りて、コンクリートの堤防になっている部分に出ました。汚染で汚れた水が流れていて、ちょっと臭いです。

おかしいですね、新しい足跡がいくつも残ってます。戦闘の痕跡もいくつか、でも少ない。奇襲で一気にやられたみたいですけど、死体がありませんね。

それになに?鉄血兵の足跡のほかに、なにかブーツみたいな足跡があります、これは?

 

「鉄血の足跡だけじゃないね、なんだろうこれ?ブーツと裸足?でも、なんか変だね」

 

G11さんがゴム手袋をつけて足跡に手を触れます。うわ、なんかぬめぬめしてる。

 

「何これ。潤滑油?」

 

「オイルにしちゃ生臭いよ、サラ?わかる?」

 

「どれどれ…ミレルークですね」

 

ミレルーク?確か、二足歩行のカブトガニでしたっけ。甲殻が硬くて生半可な威力じゃ実弾系もエネルギー系も弾くミュータント。

 

「それって、カニみたいなやつよね?ポイズナーみたいに毒撒き散らさないの?」

 

ポイズナー、蟹型のE.L.I.Dで猛毒を撒き散らすやつですね。しかも毒は可燃性のガスでよく燃えるっていう。

それだけでも厄介なのに臆病だからすぐに逃げまわってあっちこっち行くから、いつも振り回されて苦労するとか。

 

「いいえ、むしろおいしいですね。問題はかなり凶暴で結構強いんです。ゲパード、スコープを外して」

 

「接近戦かー…慣れちゃったな…」

 

「これ使う?」

 

「いい、いつもので行く」

 

G11さんがゲパードさんに背中を向けて、スリングで自分の背中に回していたオーガーを差し出します。

ゲパードさんは首を横に振ってから銃の狙撃用スコープを外して、レッドドットサイトに付け直しました。

 

「みんな、戦闘用意。ここを縄張りにしに来た新参者です。きっと腹ペコでしょう」

 

水面が突然泡立ちました、水路の底に何かいます。

 

「ほら、きた」

 

サラさんは余裕綽々で銃を抜きました。その瞬間、水路の端に大きすぎるカニのはさみが二つ。

大きな水しぶきを撒き散らして上がってきたカニ人間に思わず言葉を失いました。

しかも一匹じゃない、一気に三匹、しかもまだまだ水の中に気配がある!

 

「カニ人間!?」

 

「あれま、団体さんですか」

 

図鑑で見たことがあるカブトガニにフルプレートアーマーを着た人間の手足を生やして二足歩行させたようなカニ人間、ミレルーク。

多い、ミレルークが8、どんどん来る。後ろは路地に続く階段だから囲まれないけど、遮蔽物が少ない。

様子見に来ただけ、じゃないですよね。だって殺気立ってハサミカチカチ言わせながら走ってきますもんね!

 

「増やしてきましたねぇ、まとめてカニ鍋にしてやりましょう」

 

うわっ!?ものすっごい笑顔、サラさん喜んでる!めちゃくちゃ喜んじゃってます!

 

「サラ、どうするの!」

 

「撃ちまくって!動きたくなくなるくらい!」

 

サラさんが発砲、私たちも続いてミレルークに向かって引き金を引きます。

 

「弾かれまくってる!!」

 

「撃て撃て撃て!一塊にしてやって!!」

 

G11さんの言う通り、ゲパードさんの12.7ミリ以外の弾が全く効いてません。それも甲羅の部分には弾かれてます。

でも絶え間ない銃撃に警戒したのかミレルークたちはハサミで顔を隠しながら前傾姿勢になって分厚い甲羅を前に出して耐える姿勢に。

なんとか動きは止めましたけど、こんな動き出来るって相当頭がいいってことですよ。

怖い、グリムのあの遮二無二な全力疾走も怖かったけど、こちらをうかがうカニの目と目が合うと背筋が凍りそう。

 

「結構、FALさん!グレネードで後ろから!」

 

「了解!」

 

「撃ったら接近、近距離なら正面を抜けます。背面攻撃は厳禁、背中が一番固いので。

一〇〇式は頭を、ゲパードは一歩引いて援護!G11、オーガーは無し!抜けない!」

 

一塊になったところにFAL姉がライフルグレネードを撃ち出しました。対鉄血用の空中炸裂式、重装甲型にも多少は効果がある代物です。

ライフルグレネードはミレルークの壁を飛び越えて、狙い通り隠れている背後で起爆しました。

爆風でミレルークたちも姿勢を崩し、水路から上がってきた新手も爆風で煽られてよろめきます。

好機、私はすぐに駆け出しました。隣をサラさんが追い抜きます、出力劣ってるはずなのになんで早いんですかねぇ!?

 

「こいつらは任せました!新手はこっちでやります!」

 

サラさんはもがくミレルークを飛び越えて、体勢を立て直しつつある新手のミレルークたちにとびかかりました。

すっごい瞳が輝いてます、なんかいつもより上機嫌じゃないですか?あれですか?本来の仕事だからですか!?

 

「せやぁ!!」

 

私は早速顔に高周波ブレードを突っ込むサラさんから目を外して起き上がろうとしたミレルークを蹴り上げ、仰向けにしてから甲羅と外骨格の間にある顔に銃剣を突き刺しました。

耳障りな悲鳴を上げて暴れるミレルークを何とか抑えて、3連射。ミレルークの顔が砕けて緑っぽい血が噴き出します。

よし、倒せます。このくらいなら私でもなんとかなります。

銃剣は引っかかっているみたいなのでそのまま銃だけ外し、立ち直って向かってきたミレルークの右ハサミの突き攻撃をよけて、そのハサミを蹴っ飛ばします。

一瞬姿勢が揺らいだところで、さらに頭の顎下?あたり上段前蹴りで蹴りぬいて蹴り倒し、倒れた瞬間足で抑え込んで頭に3発。

後ろから忍び寄ってきた奴には振り向きざまにけん制で連射、至近距離なのに面白いくらいがりがり弾かれます。

でもその連射でビビったのか足が止まる、その隙に予備の銃剣を左手で抜いて突っ込んできたカニ顔に突き立ててやりました。

 

「この距離ではじくな!」

 

本当にカニ?触り心地はキチン質みたいですけど無駄に硬い、8ミリだって近距離なら威力あるのに。

他のみんなも一気に接近してナイフを頭の突き刺したり、至近距離から腹部骨格を撃ち抜いて仕留めていきます。

でもサラさんの言う通り甲羅が硬い、それにしぶとい奴もいる。私がいまぶっさしてるこいつとか!

 

「こんのッ!」

 

抱き着くな挟むな近づくな!生臭い!この!この!!口をカチカチ鳴らすんじゃない!

 

「ゲパード!行ったわよ!」

 

「うわ来るな!」

 

FAL姉の声が聞こえてゲパードさんのほうを見ると、ミレルークが彼女のハサミを振り上げるところでした。

ゲパードさんは振り下ろされたハサミをよけて、後ろに回って背面を抜こうとしたゲパードさんの弾が弾かれました。

振動自体は響いたようでよろめいたところをG11さんが胴体を撃ち抜いて仕留めます。

 

「た、助かったよ!」

 

「どういたしまして」

 

何度も突き刺してやっと静かになりました。あー、死ぬかと思いました。おや、もう終わったみたいです。

至近距離からなら正面外骨格もG11さんの弾でも抜けるみたい、本当に硬すぎません?いったい何に備えてそうなったんですか?

 

「まさか、この距離ではじかれるなんて…ドキッとした」

 

ゲパードさんがミレルークをしげしげと見つめながら表情を引きつらせます、うわ、撃ったところ削れてるだけですよ。

アンチマテリアルライフルを至近距離から喰らっといてこれだけ、でたらめじゃないですか。

 

「絶妙に丸いから弾が滑ってる、爆風も破片も効き目が薄いわけだわ。角度が悪かったかな」

 

「背面攻撃厳禁だね、厄介だ」

 

極力真正面で殴り合いですか、しかもゲパードさんクラスじゃないと安全な距離で撃破できません。

FAL姉もハサミを牽制しつつ正面骨格を撃ち抜いてましたから、実質格闘戦状態でしたもんね。

 

「まだまだ来ますよ、このまま各個撃破しましょう」

 

いち早くミレルークを飛び越して新手を滅多切りにしたサラさんが、高周波ブレードのついた血を払いながら水面に目を向けます。

よく見ると上流のほうから水面下に影がいくつか…どうやらまだまだ元気いっぱいのようです。ぞっとしました、本当に増えてますよ…

 

「余裕があったらですが、なるべくヘッドショットでお願いしますね」

 

そんな余裕あるか!

 

 




あとがき
うちの子は基本強い、ただ上がいるので自覚が薄い、というわけで4話です。
痛々しくバカにされてるハイエンドキラーたる所以、一対一は無謀でも二人でならいい勝負できるのが彼女たちです。
しかもメインフレームのみでガチバトルして勝ちに行くのが基本という狂気の沙汰。
試験的にオール一人称でやってみました、今後もちょこちょこ使う予定。
あと最後に、サマシュさん使用許可ありがとうございます!




ミニ解説

ミレルーク
出典・Fallout3
旧アメリカ合衆国・ワシントン近辺で見られる二足歩行のカニ。カブトガニの変異体と言われている。
水辺を好む水棲だが陸地でもある程度活動可能、集団で生活し縄張り意識が強く狂暴なので用がない限りは避けるのが一番。
多少の銃撃ではへこたれず、レーザー射撃ですら弾き飛ばす強固な甲羅を武器に押し進んでくるパワーファイター。
攻撃は近接主体、タックルから両手のはさみで切りつけ、挟み込み、ボコボコに殴りつけて弱らせてから水の中に引きずり込む。
集団で行動するので囲まれるとかなり危険、狙う場合は周りを常に警戒しよう。
弱点は顔それ以外の部分は大変固い甲殻でおおわれている。生半可な打撃や銃撃は怒らせるだけである。
近年ではならず者が持ち込んだ個体がユーラシア大陸でも繁殖しており、類似種のマイアラークと並んで捨てるところが少ない稼ぎのいい狩りのターゲットとなっている。


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