遠くから銃声が立て続けに響く、街の水路から響くその銃声にFN・FNCは作業の手を止めて顔を上げた。
周りを見回すと、突入の下準備と休憩をしていたブラボーチームの仲間たちもおもむろに顔を上げて銃声に耳を澄ませている。
突入を早めるべきだろうか、FNCは何となく考えたが下水への入り口は分厚い耐水ハッチが設けられていて、手持ちの爆薬で発破するのは容易ではない。
電力自体は生きているため、美奈ことM1911がバイパスによるハッキングを試みている最中だ。
「やってるね、アルファかな?」
「待ってください」
駐車したボロハンヴィーに背を預けていたMG34が無線機のプレストークを押してアルファチームに確認を入れる。
すると、離れていてもわかるくらい荒々しい返答にMG34はイヤホンを外して渋面を作った。
「…ミレルークだそうです、絶賛迎撃中だから邪魔するだって」
「うわ、カニ人間?派手にやってるってことはやっぱり繁殖しちゃってるんだね」
MG34は愛銃の残弾を確認し、バックパックから予備弾倉を取り出して弾薬ポーチにしまい込む。
「上流から団体さんが下ってきてるそうですよ?いけるところまで行って巣穴かたまり場を探ってみるそうです」
「上流っていうと鉄血のほうに大本がいるわけか、厄介だね。下手につついたら藪蛇なんてもんじゃない、と」
「乗り込んだら鉄血の迎撃が間違いなく飛んできますからね、ミュータントを相手する暇がない」
下水への入り口を制御する操作盤を弄っていた美奈ことM1911の怪訝そうな声を上げた。
「サラたちが相手取ってるのが群れの一つだったら、この奥にいるかもしれないよ?こういう場所は巣にぴったりだから」
「え?はやく開けて!」
「突っつかないでよ、スペクトラ。というか、居るなら開けたくないよ」
操作盤の基盤をバイパスするM1911を後ろからのぞき込んでいたスペクトラM4が有無言わせぬ口調でせかす。
M1911は苦笑いしながらその手を払いのけ、急ぐ様子もなく操作基盤にコードを取り付ける。
基盤とコードの間に小さくショートが発生し、ハッチに備え付けられた操作パネルが明滅した。
「閉所でミレルークとか結構きつい。しかも放浪してたなら気が立ってるだろうし、様子見なんてしてこない。
スペクトラ、その9ミリでやるなら頭を撃ち抜くしかない。接近戦になるけど?」
「やるわよ、指揮官にアピールするチャンスじゃない?」
私を買ってもらうんだ、怪しげな含み笑いを浮かべるスペクトラM4。その様子にM1911はやれやれと首を振る。
「やめといたほうがいいと思うけどな」
「なに?私にダーリン盗られちゃうのが嫌かしら?」
「怒られちゃうよ?」
「怒られる、指揮官に?…いい、指揮官に認めてもらえる、怒ってくれるなんて!殴ってくれる?頬をつねってくれる?きゃぁぁぁぁ♡」
こじらせてんなぁ、M1911の呆れが混じる視線を気にもせずスペクトラは小躍りしている。
このスペクトラ、指揮官に完全にお熱かつ拗らせまくっているのだ。理由はFNCもよくわかるし、共感できる。
U05基地のメンバーのほとんどが全線で捨て駒にされた人形の敗残兵、致し方のない場合はあれど大体は元所属の基地の中でも扱いに困っていた部類の人形が多い。
スペクトラM4も例にもれず前線でしんがりという名の捨て駒にされた上に、前の基地での扱いも良くなかったらしい。
性能不足、足は速いけどそれだけ、影が薄い、気づいたらはぐれてるなどさんざんな言われようだそうだ。
その影響で指揮官に拾われ、価値を認められてU05基地に居場所を定めてからはノンストップ状態だ。
「静かにしてよ、この玉砕バカ。ミレルークがこっち来る、開けた瞬間ご対面とかマジ勘弁」
「来い!ハサミ寄越せ!私は外地でも戦える、指揮官の武器になれるの!」
「それが駄目だってのに…」
すっかり指揮官に心酔し、ある意味ぶっ壊れた彼女は事あるごとに自分をアピールして購入を迫る。
そのたびに断られて玉砕するのだが、それでもあきらめずに猛アタックする。よって玉砕バカなのだ。
やれやれ、とM1911は肩を竦めてから立ち上がり、操作盤の基盤をスペクトラに差し出す。
「ほら、これくらいできないとね。一番槍はあげる、一応止めたからね!」
「任せなさい♪」
ゴム手袋をつけ、基盤のバイパスに取り組むスペクトラ。控えめに、死にやすい先陣を譲られたのだがスペクトラは意に返さない。
指揮官にアピールできるでかいチャンスが転がりこんできた、としか考えてないのだろう。
その行動力が彼女の強みなのだから捨てたものではないのだが、少し危なっかしいところだ。
「まったくもぅ、まぁタイマンなら勝てるだろうけど複数いたらどうするつもりよ」
「とか言いつつ止めないよね、助けに行くんでしょ?」
「良いの、スペクトラはいい子だし」
M1911達もそのアタック自体は止めない、彼への恋慕を否定するつもりは毛頭ないのだ。
もし彼がスペクトラを引き取るというのならばむしろ喜ぶだろう、彼女がいい娘なのはFNCも理解している。
ただどんどん過激になっていく自分セールスには少し呆れているのだが。
「奏太が好きなのは私も同じ、それを否定なんてできないから」
「じゃ、私も当然ありだよね」
「ふっ、認めさせてみろ、この伊集院美奈に対して!」
「ステン!」
「どうぞ」
FNCと一緒に作業していたステンMk2が、FNCにあるそれなりに大きい何かを渡す。
爬虫類の尻尾、トカゲを思わせる形だが紫色をした外皮と長さが30センチはある上に手でつかめるほど太い。
「へへーん、どう?このしっぽ、いい形でしょ」
FNCは切り取ったゲッコーの尻尾をミナに見せつける。こういったミュータントの一部はハンターオフィスで討伐の証と使われる、それをあえて実践しているのだ。
危険度と討伐数に応じてグリフィン本部からも追加報酬も期待できるのだからやらない手はない。
彼女たちの前には尻尾を切られた紫っぽい体色をしたゲッコーの死体が山積みにされ、その手と姿は血で汚れていた。
服も血しぶきで汚れていて、血の匂いが染みついていて鉄臭く生臭い。その香りにFNCは不思議と心地よさを感じていた。
(あ、そっか、指揮官とおんなじなんだ)
ふと気が付いた、自分たちがいま置かれている環境は程度こそ違うが圏外のそれと同じだ。
前の指揮官の様に邪険にせず、自分を認めてくれた指揮官と同じ場所に立ち、同じように狩りをしている。
指揮官と同じことができる、彼と同じ立場に立っている、そう理解するだけで達成感が沸いて出た。
「はいはい、ほら、匂い消し」
「どもども」
M1911が差し出してきたタバコケースから、FNCは紙巻きたばこのようなものを一本受け取った。
ハンターが用いる匂い消しの一種だ、匂い消しの薬草を刻んで紙巻きたばこの形にしたものである。
火をつけると消臭効果を持つ煙を醸し出す、それを口の中に吸い込んで体に吹き付けるようにして使うのだ。
FNCはポーチからオイルライターを取り出すと、火をつけて口に咥え、大きく吸い込んで体に吹き付けるようにして煙を吐き出す。
タバコよりも薄く煙る煙は不思議と煙たくなく、服についた悪臭をかき消した。
「第2世代の戦術人形でしかも整備は万全、内地基準とはいえ装備も潤沢でASSTフル活用。
この装備ならゲッコーくらい軽くひねれて当然、形は良いけど所詮は原種だからそこまで強くないし」
「うわ、結構厳しい」
「命がけなんだから厳しくて当然、油断はベテランだって殺す。油断だけはしないこと、素質はあるんだから。ね?ルーキー」
ハンターは甘くなんてないよ、と自分も匂い消しを口に咥えながらM1911は肩をすくめる。
FNCはM1911の自分に対する呼び方に首をかしげる、彼女はいま何といった?
「ルーキー?」
「そうだよ、ルーキー。ピカピカの新人にしちゃ上出来、殺し方も筋がいい」
M1911はFNCが仕留めたゲッコーの頭を少し動かし、一撃で撃ちぬいた頭の弾痕を指さす。
人類生存可能圏外に置いてミュータントは、生きるために必要不可欠な資源をいくつも持つ重要な存在だというのはFNC達もよく聞いている。
ゲッコーも皮は加工すれば衣類や防具、小物など様々な用途に使える。骨や牙も同じ、脳みそも薬の材料になる。
肉はしっかりと捌いて加工すれば食べられる、圏外ではよく料理にされているらしい。
「こいつが一番すごい。ここが内地なのが残念、これなら結構いい金になるよ。80センチクラスで頭一発ならほぼ全身を使える、小金持ちになれちゃうね」
「そうなの?」
「でかくなると頭蓋骨と皮膚が分厚くなって弾が滑るから、小口径ライフルだと少し分が悪いんだよ。
かといって大口径だと無駄に抉っちゃうし痛めちゃう、ま、場合によりけり出し仕方ないんだけどね」
だがミュータントは非常に凶暴な存在だ、狩りというだけでも一苦労である。
うまく倒してとしてもその過程で傷だらけになったり、倒すためだけに毒物を使ったりして使える部分をつぶしてしまうことも多くあるらしい。
そういったことは日常茶飯事なので、よほどひどい損傷でなければ誰も気にしないが、その分傷を少なく狩れるハンターは尊敬されるそうだ。
「これから服や防具か、向こうも大変なんだね」
「そうでもないよ、ただ獲物が昔みたいな鹿とかから化け物に変わって、そこにくそったれが混じってる。少し厳しくなっただけ」
M1911の言葉に棘が混じる、くそったれ、そういった彼女の表情はひどく辛そうだった。
「いやいや、絶対違うって」
「そう?あ、ならこいつ捌いてあげよっか?おいしいよ」
「えっ!?」
ゲッコー、体長80センチくらいにまでなる紫色の二足歩行のトカゲ。こいつを食べるのか?
M1911が喰おうというのは、今日狩った中でも一番大きな80センチクラスだ。肉付きがよくてむっちりしている。
FNCの脳裏にいつもの合成食品よりもグロテスクなゲテモノが浮かび上がった。
指揮官達は基本好き嫌いというものがない、食えるのならばゲテモノでも気にしないで食べるところがある。
「ゲッコーの肉はしっかり焼くと美味しいよ、ケバブとかステーキとか」
「ステーキ?そういえばそんなこと言ってたっけ…」
「ゲッコーステーキ、こう、大きい獲物から豪快に肉を切り取って、塩コショウで味付けしてがっつり焼くの!
塩コショウは少しきつめにしてなじませたやつがもう最高。ご飯にピッタリでさ、何杯も行けちゃうの」
想像の中の料理が豪華な肉厚ステーキに変わる、この時代ではめったに食べられない天然物の肉を使った豪華版だ。
ミュータントとはいえ肉と肉、それも工場で作られた味付け合成たんぱく質である合成肉ではない天然もの。
それをナイフで豪快に切って、口いっぱいにほおばって咀嚼する。にじみ出る肉汁と肉の繊維が口の中で踊るだろう。
それを食べる自分を想像し、思わず口の中によだれがにじみ出た。食べてみたい、一体どんな味がするのだろう。
「ねぇ、これで料理を作ったら指揮官は喜ぶかな?」
「喜ぶと思うよ、奏太も肉は大好きだし」
「もしかしたらこれで指揮官に…きゃぁ♡」
頬を両手覆ってくねくね身をよじるステンMk2、彼女もFNCやスペクトラの同志だ。
スペクトラの様に毎回アタックしては砕け散るわけではないがアピールを欠かすことはない。
きっと任務が終わったらどうティータイムに誘うか考えていたのだろう、付き合いの長いFNCにはよくわかるのだ。
ティータイムに肉は合わないだろうが、ステンはあまり気にしない。
ふと肉のことを考えていたら口がさみしくなり、腰のポーチからいつもの合成チョコバーをかぶりつく。
「ん~、おいしい~」
甘いけれども安っぽい合成品のチョコ味だがFNCはこれが大好きだ。
前の基地ではお菓子好きが災いして煙たがれ、それ故にしんがりにされておいて行かれたのだが、今となってはその指揮官には少し感謝している。
おかげで今の指揮官に巡り合えたし、煙たがってくれたから今もU05基地に所属していて、信頼できる仲間と一緒にこうしてお菓子を食べられる。
FNCにとってこのU05基地にいる時間は幸せであり、捨て駒扱いなんてどうでもよかった。
「また食べてる。太っちゃうよ?」
「太りませーん」
「あれ、新型は太るって聞いたけど?」
M1911は首をかしげる。確かに戦術人形でも太ることは太る、しかしFNCにはあまり関係がない。
「私はほら、燃費悪いから」
「うわ、なにそれうらやましい」
「美奈は太るの?」
「ふくよかにはなっちゃう、こっちについたらたまんないよ」
魔改造型の弊害ってやつ、とM1911は困った顔でわき腹を摘まむようなしぐさをする。圏外仕様の生体部品というのもなかなか大変らしい。
人間に近いということは、人間の欠点も現れているようだ。
「それは大変だね」
「奏太に油断した体は見られたくないもの」
油断できる環境なのか?思わずFNCは疑問に思った。
「あはははは…独り身にはつらいわー、お姉ちゃんなきそうだよ、42」
チームの中で指揮官に恋愛感情を持たないMG34は、仲間の会話に入り込めず一人ぼやいた。
敬愛してないわけではないので、指揮官の今後は少し心配だ。
「ミナ!開いたよ!早速―――んん?」
重苦しい音を立てて開くハッチの隙間からスペクトラは中を覗き込み、怪訝そうに眉を顰める。
FNCは銃を手に取り、素早くスペクトラの背後に回ると壁に背を付けてカバー姿勢を取った。
M1911とステン、MG34も銃を手に取り手ごろな遮蔽に身を隠す。
「どったの?」
「ねぇ、あれ何?」
「あれ?」
スペクトラの指さす先、中へと通じる通路に何か転がっている。木彫りの装飾品のようだ、一体なんでこんなところに。
周囲には何もない、通路の真ん中にポツンと落ちている。まるで拾ってみろとばかりだ。
FNCは首をかしげる、見渡す限り周囲に罠らしきモノは見当たらない。
誰かの落とし物か、と安直に考えるがすぐに否定する。人形の目とセンサーをごまかす罠ならいくらでもあるからだ。
「スペクトラ、援護する」
「了解、ミナ、手伝って」
「任せて」
接近戦になれば短機関銃のスペクトラM4、拳銃のM1911が適任だ。M1911に至っては近接格闘戦を得意としている。
FNCは何が出ても撃てるように銃を膝うちの姿勢で構える。その後ろでMG34はハッチを一度見分してから押さえる。
このハッチは耐水用の分厚いハッチだ、もし閉じ込められたりしたら開けるのには手間がかかる。
「ステン」
「持ってきた」
FNCの言葉に彼女は頷き、ハンヴィーから持ち出してきたオーガーを構える。オーガービジョンによる索敵だ。
「敵影なし」
MG34が頷き、FNCはスペクトラの方に触れて合図。彼女は頷くと銃を構え、静かに通路内に入る。
その後ろにM1911が続き、背後を守る。
「トーテム?」
スペクトラは落ちていたそれを拾い上げて怪訝そうな声を上げた。
「なんでこんなところに?」
「さて、ね。ただ先客がいるのは間違いなさそう」
M1911はトーテムから目を離し、通路の隅に手を伸ばす。入り口からは見えない死角に落ちていたものを拾い上げた。
それは錆びついたボロボロの拳銃、ホールドオープンした状態で血に汚れていた。
◆◆◆◆◆
放置された管理者の日誌
1日目
この町に起きたこと、そして私の身に起きたことを書き残そうと思う。
私はルイス、この下水の管理者だ。私は運がよかった、あの日も、こうしてこの管理室にいたから五体満足でいられた。
先日、ついにこの町にも鉄血の暴走戦術人形たちがやってきた、グリフィンは何とか守ろうとしてくれたが多勢に無勢。
正規軍も応戦してくれたが圧倒的な数に押し負けて、町は完全に占拠されちまった。
地下には何とか難を逃れてきた避難民が大量になだれ込んできてる、どうやらここから街の外に出られると思ってるらしい。
馬鹿な奴らだ、この年の下水は確かに外につながってるが、その先は川だぞ。汚染が酷い、防護服が無けりゃすぐ死ぬぞ。
幸い、下水のハッチは全部閉めた。分厚い耐水圧ハッチはそう簡単には破れない。ひとまずは安心だ、ひとまずな。
けどそれはつまり俺達も閉じ込められたってわけだ、先行きは暗いぜ。
2日目
どうやらグリフィンは完全にやられちまったらしい、どうしてわかるのかって?俺は下水の管理者だ。
この町を管理するグリフィンの指揮官様と少し知り合いでな、まだ若い兄ちゃんだがいい奴だったよ…
あいつ、最後まで頑張ってくれたんだ…おいぼれの俺が変わってやれれば…
ま、なんでわかるかっていえば、いざというときの連絡用に直通の無線をいただいてたのさ。もう、駄目になっちまったがな。
3日目
下水に逃げ込んできた富裕層のファッキンピザ夫婦とボンボン息子が管理室に来た。
偉そうによくわからない遠巻きな表現をしてきたが、俺をこの管理室から追い出そうとしてるらしい。
おい、息子が呆れてるぞ。ついでに言うとこの部屋はやらん、帰れ。
4日目
あのファッキンピザども、どうやら下水の避難民コミュニティの中で俺の悪口をばらまいたらしい。
ここら辺にいるのはファッキンピザと同類の富裕層ばかりだ、やばいかもな。
5日目
ボンボン息子が朝っぱら?からこっそり部屋に来た。何でも両親の様子がおかしいらしい。
部屋と防護服を奪って逃げるんだと、しきりにぶつぶつつぶやいて、ありもしない計画を口走り始めてるんだとさ。
ストレスでおかしくなってきたか?あのデブども、ガタイ通りの甘ちゃんだったか。
どうも息子はデブでなよっとした風体だがまともではあるらしいなこいつ。でもよ、拳銃は考えすぎだろ?
6日目
なにもない、眠いから寝ておく。
7日目
ふざけやがって!あのファッキンピザどもが俺の防護服と部屋を奪いに来やがった。誰がやるか、一着しかねぇしこいつは作業用だ!
これがなきゃ下水の調節もできやしねぇ、あっという間にお陀仏だってのがわからねぇか!!
くそ、銃なんか撃ちまくりやがって。ボンボンが置いて行ってくれなきゃ射的の的だったぞ、耳が痛てぇ、鉄血にばれちまったかもな。
9日目
やっぱりだ、案の定鉄血が下水に攻めてきやがった。食い物を取りにハッチを開けたところを待ち伏せてやがった。
でも生きてるぜ、俺だって備えてねぇわけじゃねぇんだ。ここは俺の城だ、すこしやられちまったが一網打尽にしてやった。
下水の奥に誘い込んで、排水で洗い流してやったのさ!
バルブの使い方を間違えなきゃガキにでも調節できるのさ。ボンボンに協力してもらって仕返ししてやったぜ!
今頃汚染水の中に叩き込まれておぼれてるだろう、ざまぁみろ。敵は討ったぜ、アーネスト。
でもこれでもう外には出られないな、ハッチの場所が割れてるんじゃ待ち伏せされて終わりだ。
13日目
わるい、書くことがあんまりない。というか気が滅入る、というのも食料の底が見えてきた。
元々避難所じゃねぇし、保存食自体が全く足りてなかった。グリフィンの救助を目当てにしてたからな。
鉄血の見張りが居なけりゃ、こっそりどっかに補充しに行くってこともできただろうがすべてのハッチを四六時中張ってやがる。
監視カメラの目の前で野営してやがるから確信犯だ、俺達を閉じ込めておく気なんだろう、くそ、意地の悪い奴らだ。
俺のもだいぶ減ってきた、このままじゃネズミを食うことになっちまう。下水のネズミだぞ?汚い。
16日目
みんなピリピリし始めた、食い物がなくなってみんな腹が減ってるんだ。
水だけは浄水装置が生きてるから何とかなるが、やっぱり食い物がないと。
でもどうするってんだ?外は鉄血だらけだ、ハッチを開けただけでお陀仏だぜ。
ハッチの前には今じゃ四つ足のでかいやつがずっとこっちに銃口を向けてやがる。
ありゃ軍をやめる前に聞いたことがある、確か軍の新型だったはず、ふざけやがって。
20日目
管理室前で喧嘩だ、どうやらあのファッキンピザが飯を金で買おうとしたらしい。
この状況で、そんな金なんざケツ拭く紙にもなりゃしねぇ。案の定断られたら、なんと盗もうとしたそうだ。
でもすぐにばれてぼっこぼこにやられたらしい。気の毒に。
30日目
ついに食料がなくなった、少し前までは殺気立ってたのに今じゃぁそんな気力もないみたいでみんなどんよりしてる。
だが俺はマシだ。水だけは大量に備蓄してたし、浄水装置が生きている限り補充はできる。塩もまだある、なんとか耐えられそうだ。
大戦のときに習ったことがこうやって役に立つとはな。この際だ、ネズミ狩りにでも行こう。
34日目
すばしっこいネズミどもめ、だが人間様にはかなわんぞ。下水を調節すればあっという間に袋小路だ。
今日は大量だ、これなら少しはもつだろう。塩も少し分けてやった、一袋だけだがな。
37日目
最悪だ、鉄血のアホがどこからか迷い込んできて俺の足を撃ちやがった。幸い折れてねぇが、酷いやけどだ。
あのボンボンが薬をくれたが、こんなんじゃ足りねぇ。消毒液があるだけでもありがたいってもんだがよ。
どこから入り込んできたのかと思ったが、何のことはねぇ、注水パイプの中を通ってきやがったんだ。
パイプの入り口は水路の中、水中だ、脱出には使えない。
どっかの穴の格子が壊れてんだな、たぶん水に落ちてたやつを吸い込んじまったんだろう、ついてねぇ。
なによりついてねぇのは、もう下水を動かせないってことだ。平常運航は問題なさそうだが、ゴミを吸い込んで壊れたら浸水して全員お陀仏だ。
40日目
腹減った、ネズミ狩りもできねぇし、下水が動かせなきゃ誘い込むこともままならねぇ。
狩りの成果もダメみたいで、ボンボンが謝りに来た。お前のせいじゃねぇよ、くそ。
というか、なら下でわめいてるデブ親何とかしてくれねぇ?トーテムがどうとかうるさいぞ。
45日目
だいぶ、間が空いた。今日は気分がいい、久しぶりに腹が膨れてるからな。
ボンボンのやつ、どうやらネズミ捕りがうまくなったらしい。少し騒ぎがあったらしいが…まぁ元気ならいいよな。
今日は俺の塩と交換に肉を分けてくれた、最高だ、少し脂っこいが、悪くない。
48日目
今日も肉だ、ほどほどの量だが柔らかくて、しっとりしたいい肉だ。
50日目
おかしい、人の気配が少なくなってる気がする。くそ、足がやられてなけりゃな…
今日もあいつらが肉を持ってきてくれた、筋張った肉だ、やせたネズミしかいないらしい。
55日目
あしがへんだ、なんか、傷口が、カチカチだ。みょうだな、でも、ちがでないからいいか。
今日の肉は柔らかで、ぷるぷる、塩のノリがいい。うまい。
ろくじゅうだとおもう
腹が減った、でもからだがすごいかいちょうになった。すごい元気だ、それに、なんかすごくすばやくうごける。
でもめがあんまりみえない、ずっと地下にいるからだろな。日記を書くのもちょっとしんどいぜ。
なんにちかな?
はら、へった。さいきん、あたま、はたらかない。ずっとベッドで横になってる、うまく体が動かない。
ボンボンのやつ、最近、こうかんにこない、しょうがないからじぶんからいく。おしお、どこだっけ?
あたまがぼーっとする、おかしい、おかしいか?あれ、おれなにかいてる?
なんにち?
うまい、にく、うまい、しお、ふって、やく、うまい、にく、ぼんぼん、うまい。
わからない
はずれだ、にくがまずい、てつがはいってる、さいきんにくがいない
げすい、ちょうせつしても、こない。どこ、にく、おなか、すいた
いらない
にくない、へんなの、いらない。にく、にく、にくにくにくにくにくにく、にくくいたい
にく
そと(ここから先は筆跡が乱れていて読めない)
あとがき
はい、カニだけじゃ終わりません。
何とか上下で済むか、それともまた長くなるか…わからんなぁ。
うちのスペクトラちゃんは大体こんな感じ、指揮官にゾッコンラブなタイプ。
正直、あんな格好の子にアピールされたら股間に悪いなんてもんじゃない。