同時にoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』よりH&R社、リホーマーさんも出演させていただきました。
今回は前準備会、情報提供の場でのひと悶着って感じで…アサルターさんは待機です、すみません。
ふと思うのですよ。この世界と魔界、どっちのほうが地獄だろうね。
「――――以上が本作戦の目標です、皆様には基地制圧部隊として活動していただきます」
U地区より遠く離れたS地区、S-10基地の作戦会議室。その一角に座っていた笹木奏太はタブレットの資料を読みながら嘆息した。
副官の人形を連れた可愛らしいS-10地区指揮官のシーナ・ナギサの表情は緊張しすぎている、相手が悪魔という非常識な存在と戦おうというのだから当然か。
いや、そもそもこの会議室の内実でさえも異常である。片や化け物狩りのハンター5人、片や別のPMCを運営する戦術人形1人だけだ。
他に作戦へ参加するこの基地の部隊やDevil May Cryの面子は準備中、404小隊も別室で待機中だ。
この場はあくまで、この後に行われる作戦会議の前準備的なものだ。応援部隊用の情報公開の場である。
そんな場だがまともなグリフィン基地からの援軍が誰もいない、緊張するなというほうがおかしいのだろう。
「ねぇ、あの人、人形だよね?」
M14の小さな囁きに奏太はうなずく。鉄血の暴走以後、鉄血製の人形のほとんどは暴走し人類の敵に回った。
何かしらの偶然、あるいはそもそも暴走しえないタイプの人形たちも迫害されて破壊されるか消えていった。
そんなことがあってから人形そのものの立場も揺らいだ、端的に言えば印象が悪くなった節がある。
今でこそIOPやグリフィンなどの尽力で回復傾向にあるとはいえ厳しい目がないわけではないのだ。
「今の時代に内地で人形がPMCの社長ですか、苦労したでしょうね」
「ああやって堂々としてるのだから相当修羅場をくぐっておるのじゃろう、やり手じゃな」
「うへぇ、すっごいね」
P38、M1895、M1911は広い会議室の向こう側で映像を食い入るように見る白い髪に白い肌、金色の瞳の女性をちらりと見る。
リホ・ワイルダー、詳しいことは聞いていないがヘルメス&リホーム社、通称H&R社というPMCを経営している社長だ。
少し自己紹介した限りでは、少し特徴的な喋り方をするとっつきやすい人物のように感じた。身長3メートルのカラフルでゴツイ仲間を引き連れていたが。
人形が会社を経営しているのはまだしも、グリフィンという大手PMCの作戦に呼ばれるのならば手腕はなかなかのものなのだろう。
(うん、俺よりすごい…自信無くしそう)
壇上でカチコチなまま作戦説明をするグリフィン&クルーガーのS-10正規指揮官のシーナ、その話を聞きながら何か思案し始めるやり手の女社長のリホ。
そこに交じるのは腕にこそ自信はあるがそれだけの小規模ハンターチーム、明らかに違い過ぎる。
特殊な事案だからと味方もつけずに放り込んでくれたフランシスにはあとで仕返しが必要だ。
「それにしても、悪魔ね」
映像から目を離し、配られたタブレットの画面をスクロールさせて資料を読み込みつつ映像を見る。
「まるで脱皮だね、E.L.I.Dだとしたら相当変異したタイプだよ」
かろうじて人の形をしているがそれだけの怪物が人間の肢体を食い破るようにして現れるのを見てM1911がつぶやく。
悪魔のような歪んだ角を生やした頭、あまりに異様で鋭利なかぎ爪を持つ腕、そして真っ赤に光る双眸。
見るからに悪魔、誰が見ても一言目で悪魔と言いそうな造形だ。
「絵にかいたような悪魔だな」
「でも行動自体はクリーチャーと変わりませんね、十分対処できるかと」
確かに動きは速いがそれだけだ、銃弾でも十分倒せる相手である。問題はそれを統括している相手だ。
(親玉がグリフィンのクソだとしても、そいつ一人ですべてを使役できるのか?)
映像の中で死体から次から次に生まれ出てくる化け物の数は明らかに多い、しかしこの映像を持ち帰ってきたということは撤退に成功したということだ。
ならば何かしらの方法で手下の悪魔たちを統制し、多少なりともいうことを聞かせているということに他ならない。
それをすべてその悪魔がやっているのだろうか?
(やっててもおかしくはないが、どこかで分業しているほうが自然か)
奏太は配られた資料をめくり、件の悪魔が根城にしている過激派のリストに目をやる。
(基地幹部クラスが怪しいな、甘い餌で釣ってそうな感じがする…ん?待て、そういやこいつグリフィンだよな?)
悪魔が所属していたグリフィン基地の現状報告を開く。根城にしていた以上何かしらの仕掛けをしていてもおかしくない、警戒は必要だ。
ひとたび疑問が出てくるとどうしてもいやな想像ばかりが頭をよぎる、それで生き抜いてきたのだがやはり始末が悪い。
「失礼、その件の基地は分かりました…ところでグリフィンの基地の方はどうなっていますか?」
「は、はい?」
静かに手を挙げてシーナに質問する。
「この悪魔が所属していた基地です、人員、戦力、その他もろもろの掌握と調査はどうなっているのですか?」
「少々お待ちを…追加のデータをお送りします」
タブレットに新しく資料が送られてくる、やはり引っかかった。悪魔の所属していた基地の面々、こいつらは怪しい。
調査の結果は何も知らず、わからないまま協力していた可能性が高いようだ。だがそれは別に重要なことではない。
知っていようがいまいが、白か黒かは関係がない、この手の寄生型を使うのだ。確実にナニカしている、それとももう手遅れか。
検査結果では白、しかし基地自体は封鎖しており人員は軟禁状態にしているようだ。
(下手に追い詰めれば、絶対に動かす)
そうなる前に対処したいところだが、できることと言えば清めの塩を振りまくか、お神酒を使うといった物理的なお祓いしかない。
手持ちのお守りも悪魔にどこまで通じるかわからない、ムカデ様を信じていないわけではないが何事も専門外はあるのだ。
「奏太、やっぱり?」
「当り前だ、俺ならそうする」
「うわ、変態だ」
M14の問いに肯定を返すとM1911が茶化す。
「あの、なにか?」
「その基地にも寄生されてる奴がいるかもしれん」
口を開きかけた奏太のセリフを奪ったM1895の言葉にシーナの表情が凍る。言うことを取られた奏太は口を閉じて頷いた。
「この悪魔どもは親から寄生するのじゃろ?なら接触があったこいつらはまだ黒じゃ、それにほかの寄生経路があるやもしれん」
「肉体接触の記憶がある人間、人形はすぐに隔離したほうがいいでしょう。自覚はなくてもあり得ます」
M1895の断言にP38も資料を読みながら続ける。
「寄生型の厄介な点は病気と同じ、いつの間にか宿主となり、そこかららさらに増えている場合があることです。
悪魔がどんな生態を持っているかわからない以上、寄生体のアウトブレイクは十分あり得る話かと」
「しかし、ギルヴァさんはそういった可能性はないと―――」
「それは信用できるのか?親玉無しで増えないとしても、少なくともこいつ等は全員寄生されている可能性がある。
死んでからじゃないと出てこない、親の命令でも出てこない、なんて都合のいい奴らとは思えないな」
あえて強い口調でシーナに言い放つ。自分たちは悪魔というものを知らない、故にできる限り疑ってかかっていきたいところだ。
未知の敵と戦う以上妥協はできない、いつものようにいくとは考えていなかった。
「俺達も悪魔みたいな連中とは縁が深くてね、正直嫌な予感しかしないんだ」
「何が言いたいんや?」
リホの瞳が奏太たちを射抜く。シーナは少しびくつきながら奏太に言葉を促した。
「除去方法はあるのか?」
「それは…」
「無いのなら皆殺しにするしかない、作戦と同時にだ。一人残らず、一体残らず、基地も人も人形も、何もかもすべて燃やし尽くすんだ」
「な!?そんなこと、できるわけがないでしょう!」
「ならば祈るか?あの基地は大丈夫だと祈ってあいつらに手を出すか?ヤバくなれば、奴は必ず動かすぞ」
最悪の場合、親玉の鶴の一声でその基地の人員すべてが異形と化して襲い掛かってくるだろう。
基地を囲む戦力でそれを抑えきれるか、つい先ほどまで嘆いていた人形や人間が化け物となって襲い掛かってきて、それに冷静に対処できるか。
「下手をすれば基地がもう一つ、丸ごと悪魔の巣だ。そいつらが何しでかすかなんて考えたくもないね」
「しかもこういうのの怖い所ってさ。いくらやっても、まだいるかも、ってなるとこなんだよね」
M1911は肩をすくめながら割り込む。
「親玉を殺せば寄生体も消える、そんな展開ならいいよ。それがわかりやすいってならなおさらいい。
けどさ、こういう寄生体っていうのは親玉殺したところで生きてるってことが多いんだよね。
それで忘れたころになって出てきたりしたらもう大変。簡単に疑心暗鬼が広がるよ、彼と会ったから、彼の部隊と仕事をしたからってな具合で。
ことが露見すればそれこそ、一気にさ。そうなったらきついよ?解決策を見つける前に内部から食いつぶされておしまい」
「なら、もう手遅れかもしれへんやん。奴はグリフィンの社員としていろいろ出入りしとったはずや。
それこそそこらじゅうの人間と接触があってもおかしくあらへん。そもそも、こいつら過激派だけでも―――」
そう言いかけてリホは表情を一変させる。その表情にM14は頷きながら言葉を継いだ。
「うん、あの過激派だけじゃなくそこら中に植え付けてる可能性は十分あるし、過激派だって今はこの基地にいない連中にもくっついてるかもね。
親玉を殺せばはいおわり、なんて簡単にはいかないかな。そこから先は防疫戦、それも訳の分からない悪魔なんて寄生体におびえて過ごすことになる」
考えれば考えるほど鬱になる、この悪魔はここまで考えて寄生体という手を使ったのだろう。
この時代、この世界においてこの手の寄生体はうってつけだ。それが身を亡ぼす、とまでは考えていないだろうが。
「俺達は正直言ってその親玉よりも奴がばらまく寄生体のほうがずっと怖い。本当に奴を殺せば済む話か?そもそも悪魔はコーラップスや汚染に耐性があるのか?」
シーナは答えない、答えられないのかもしれない。何しろ悪魔に関する情報そのものが少ないのだ。
寄生体に銃弾がそのまま通用するのなら、空爆だって通用するだろう。作戦と同時に後顧の憂いは断つべきだ。
「あの基地のみんなも被害者です。それに証拠はどこにもない」
「ないな、増えない保証も、いない保証も、何もないんだよ、どっちも」
「それは!?」
意地悪な答えだろう、だが現状これが答えだ。何もない、寄生体が増えない保証も、寄生体がいない保証も。
悪魔に関する情報が少なすぎてまったく判別がつかない。奏太たちも、あくまで経験則で語っているだけに過ぎない。
「でも―――」
「まーまー、落ち着いて。ここでいがみ合ってもしょうがないやろ?」
ヒートアップしてきたシーナをリホが諫める。
「ササキさん、ちょいと言い過ぎや。逆に聞くんやが、証拠がないならどうしてそうこだわるんや?」
「状況、勘、自分なら保険を掛ける、そう考えたまでですよ」
「ふぅん?」
「助けた相手がいきなりグサリ!なんてことになるかもしれんという事じゃ、これじゃこれ」
M1895は立ち上がると奏太を手招きし、窓際の少し広いスペースに連れていく。
「わしは人質、助けてー、たすけてー」
「俺は特殊部隊、だいじょぶかー」
「たすけてー、ひとがしんだー、ばけものだー」
「わかりましたー、自分の後ろに続いてくださいー安全な場所までつれていきますー」
「ありがとー」
棒読み、棒立ちの3文芝居だ。やってる奏太自身も恥ずかしい、しかしこれが一番わかりやすいだろう。
M1895がやりたがっていることがわかる奏太は、くるりと彼女に背を向けると誘導するそぶりをする。
M1895はそれについていき、やがて苦し気な表情を見せて胸を押さえる。
「う、うう…がおーーー!」
「ぐあーーー!?そ、そんな…がくりっ」
「がおーむしゃむしゃ」
そして何の脈絡もなく最後から一撃、哀れ特殊部隊ソウタさんは奇襲を受け即死、そのままむしゃむしゃされましたとさ。
「とまぁ、こうなるわけじゃ」
「あんたら…基地の人質まで考えとるな?」
「汚染源がいる施設に一緒にいるわけだしな、下手すればこれだ。そうでなくてもいろいろあり得る。どうする?」
シーナは答えない、迷っている。どうやら今の説明が少し応えたらしい。奏太は立ち上がりながら問いかけた。
「いっそ、全部燃やしちまうか?軍の爆撃隊がうちの近くにまだいる、呼べば片手間で爆弾降らせてくれる」
「…いいえ、その提案は却下します」
「なぜ?」
「私は…ギルヴァさんを信じます、こいつを倒せば寄生体は消える。それに悪魔は宿主が死なないと動きません。
あの基地は、今回の作戦区域からは距離があります。大丈夫です、悪魔が変なことを考える前に片を付けてもらいましょう」
毅然とした、指揮官として凛々しい顔で彼女は言い切る。
「信じるのか?そのギルヴァとやらを」
「信じます」
シーナはまっすぐに、純粋な瞳で奏太を睨みつけた。きれいな瞳だ、仲間を信じる強い目だ。良い、実に良い上司だ。
経験はまだまだ足りない、青い所も多分にある、けれど彼女はまだ若い、若いゆえの勢いがある。
奏太は軽く肩をすくめると一息ついて柔和に微笑んだ。信じてみてもよさそうだ、彼女とそのギルヴァとやらを。
「わかりました、先ほどまでの失言を謝罪させてください。申し訳ありません」
「信じてくれるんですか?」
「どのみち放っておくわけにもいかない、信じましょう。でも保険はかけるべきかと」
「…考えておきます」
実を言えば、この異常な案件に携わるシーナの覚悟と心の強さを確かめたかった、という事もある。
彼女ならば問題ない、信じられる人間だろう。自分の目に狂いがなければの話だが。
あとがき
何とか書き終えたーーー!寄生型ときて真っ先に考えそうなことをつらつらやりました。厳しいこと言ってるけど、ごめんなさい。
うちのとしてはガチで親玉よりこっちのほうが厄介と考えてます。ほら、うちグリムパニック起きてるので…
悪魔とはいえ、こいつらの中じゃ化け物です。情報が少ないので疑ってかかります。
しかも増えること前提で考えてますからね、こっちのバカども。決して貶めたいとか思ってるわけじゃないので許してください。