同時にoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』よりH&R社の方々、本当にありがとうございました!
…やってることが後始末だしいろいろツッコミどころあるけど、許して?
戦闘が終わり、凄惨な戦いの痕跡を残した廃墟の中、黄色いゴムのような質感のずんぐりしたスーツを着込んだ二人は歩いていく。
軍の知り合いに頼んで買い取った軍用の旧型ハザードスーツを着込んだ笹木奏太は、過激派基地の中で火炎放射器を片手に高精度汚染測定器をかざして進んでいた。
放射能やコーラップスなどの汚染を測定しながら過激派基地内を練り歩き、死体や血痕などを見つければ片っ端から火炎放射器で燃やしていく。
旧型とはいえ軍用のハザードスーツは耐熱処理も万全で、廊下が火の海でも稼働可能な限りは安全だ。
火炎放射器を担いだ黄色いずんぐりむっくりがのそのそ歩いているのは軽くホラーだとシーナにはぼやかれたが妥協はしない。
(ここで最後か)
基地の司令部前、最後の防衛線となった廊下に立って周囲の惨状を見回してため息をつく。
司令部となっていた食堂の中は過激派たちの息絶えた死体で埋まっていて、血と硝煙の匂いがハザードスーツ越しにも感じらせそうだ。
やるか、奏太は火炎放射器のノズルを点火し、一番奥に足を踏み入れてから手ごろな死体に向けて引き金を引く。
一人、また一人と入念に炎で燃やし尽くし、血糊や体液類も燃やせる限り燃やす。
ここまでもそうしてきたが派手に燃やしてもあまり燃え広がらないのは、第3次世界大戦当時に建てられたこの建物のせいだ。
過激派が基地にしていただけあり、この建物もいざというときに軍基地として使えるように燃えにくい設計と構造になっている。
念入りに燃やすのもそのためだ、のちに発破処分するが危険性は少しでも減らしたい。
(こうまで燃えないとは…忌々しいな…)
死体が燃え尽きると火が消える、コンクリートの床には焦げ跡が大きく残るがそれだけだ。
いくら派手に炎を当てても可燃物の死体や血が燃えるばかりで一向に燃え広がる気配がない。
廊下に積まれた土嚢の間で息絶える男性の死体を念入りに焼いていると、不意に背後から肩を叩かれた。
「ここまでする必要があるのか?」
「ありますとも」
同じようにハザードスーツを着込んだギルヴァの問いに奏太は頷く。彼もまた、最後の仕上げという事で同行してもらった。
まさかいきなり服を脱がされた挙句ハザードスーツを着こまされるとは思っていなかったようだが妥協してもらうしかない。
「敬語はいらん、なんでだ?」
「単純な話だよ、変異されてたら困る」
基地ではシーラの支持の元、救出した人質も含めて防疫処理を行ったはずだ。
前線の人形部隊は服と装備を丸ごと徹底消毒&殺菌、体は軍用規格の消毒液で徹底消毒した後に念入りに体を洗うよう提案した。
今頃はハザードスーツを着た仲間たちに出迎えられ、人質たちと一緒に念入りに消毒されているだろう。
手に入れた軍用規格の消毒液は、高濃度汚染地帯近くで戦う正規軍の必需品だ。欠点は匂いが酷い、腐った薬をより濃縮したような悪臭がする。
たとえ水不足でも消毒を終えたらすぐにシャワーやお風呂で念入りに体を洗うことが男女ともに推奨されているくらいだ。
「こいつ等だって大なり小なり汚染は受けてる、雨を被ったことがないわけじゃねぇだろ」
「その程度でか?」
「それで十分な場合もあるんだよ、昔のきれいな雨だって浴びまくれば風邪ひくんだ」
それに変異するのが人体や悪魔だけとは限らない。ほんの少し歯車が狂っただけでこの世界はいろいろと悲惨なことになる。
「ギルヴァさん、あんただってコーラップスのヤバさは知ってるだろ?油断しないに越したことない」
「そりゃわかっているがな…いまさらこんな服着るとは思わなかった」
「暴れないでくれよ?戦闘用じゃないし、破れでもしたらあんたも燃やさなきゃならんかもだ」
戦友を燃やすのは勘弁だ、と奏太は肩をすくめる。肩を並べこそしなかったが同じ戦場を生き抜いた戦友だ。
こうして話しているだけでもギルヴァは悪い男ではない、少し老成しているようにも見える若者だ。
「さすがにそこまでバカじゃない」
「そいつ片手じゃ説得力ねぇんだが」
ギルヴァの右手には愛用の日本刀『無銘』、左手には高精度汚染検査機を持っている。
もし悪魔が現れてひと暴れしようものなら、ハザードスーツは持たないだろう。
「まだやるのか?」
「いいや、これで最後だ。2階と地下が終わってれば、あとは燃料とテルミットをばらまいて燃やし尽くす」
「徹底してるな」
そうしないと何が起きるかわからない、とは奏太は言わなかった。あまり怖いことは言うべきではない。
奏太は無線のプレストークを押しながらにやりと頷いた。
「そりゃするさ。奏太から琥珀へ、そっちはどうだ?」
≪うんざりじゃ!ろくに掃除しとらんし、生体部品が腐りまくっとる。解体してたな≫
≪サラから奏太、コンヤハオボエトケ≫
地下担当になった琥珀のイライラした返答とサラのロボットみたいな棒読み返答に笑いを漏らす。
一応公正なくじ引きで決めたはずである、そもそもはずれを引いたのは奏太だ。
見ず知らずの男と組むというだけでも、いつ化け物が合わられるかわからないここではかなり危険な状況だ。
「生体坑道突き進むよりかはマシだろ?爆破準備は?」
≪あれと比べるでない。とりあえずテルミットを仕掛けて、燃料をぶちまけた。先に戻るぞ≫
≪こちら美奈、こっちも終わり。ありったけ仕掛けたから、面白いことになると思うよ≫
≪市代から同じく奏太へ、上はきれいなものね。テルミットバラまいてすぐ降りる≫
「了解、通信終了。さ、帰るか」
盛大な花火になりそうだ、奏太はポーチからテルミット爆薬を取り出し手ごろな柱に仕掛けながら答える。
部屋という部屋に仕掛けてきたテルミットは、起爆すれば盛大な火柱を上げて周囲を燃やし尽くす広範囲殺傷タイプだ。
燃やしにくいならば、いっそ燃やすのではなく溶かしてしまおうと考えたのだ。
「俺達も帰ったら、消毒液をかぶって熱いシャワーだ。それから薬も、変な病気にゃかかりたくないだろ?」
「体は丈夫だが…」
「悪魔だろうが化け物だろうが風邪は引くのさ、悪魔がE.L.I.Dにならない保証はない」
ギルヴァの目が泳ぐ。ならないとは限らない、コーラップスとはそれだけ危険な代物だ。
「いや、まさか…あり得るのか?」
「どうだかね、前例ないからわからない。ただ生物兵器はなる、たまったもんじゃねぇ」
もしかしたら特殊能力を備えたE.L.I.Dが悪魔の成れの果てなのかもしれない、と奏太はふと考えた。
ふれるだけで対象を白い何かに変えるE.L.I.Dやアリのような女王をトップとしたコロニーを作るE.L.I.Dもいる。
その特殊な能力の源泉はどこから来ているのか、変異に変異を重ねた結果だと言われているが実はもとからあったのでは?とも考えていた。
(世の中、知らないほうがいい事って、やっぱあるよなぁ…)
知らなければこんな風に考えないでいいのに、めんどくさい。奏太はいつものようにため息をついた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
基地に帰り、待ち受けていた戦闘部隊の仕返しという名の迎撃(消毒)を終えた奏太たちはエントランスに戻ってきた。
S10基地での仕事はほとんど終わっているが、まだ仕事が残っているのだ、
「奏太、わかっておるな、買え」
「いいのか?高かったら保留にするぞ」
「いや、掘り出し物に違いない。レールガンじゃぞ?レールガン」
鼻息を少し荒くしているナガンM1895に奏太はやれやれと肩をすくめる。
「琥珀、大佐のアレ欲しがってたもんね、良いんじゃない?」
「市代、わかっておるじゃないか」
雑談しながら待ち合わせの相手を探していると、ベンチに座っていた彼女が立ち上がった。
「あ、やっときたの…」
「すいません、ワイルダーさん。遅れてしまって」
ガンケースを手にしたリホに奏太は小さく頭を下げる。
「いいんや。いい休憩できたし…」
「ところでどこでやるんですか?」
やることと言えば商談だ。リホの会社はPMCであり、かつ武器製造もおこなっているらしい。
本人曰く、そこらの大手にも負けない武器を作って見せるという話だ。
実際、彼女の相棒であるアサルターの戦闘力は凄まじかった。その技術力ならば、こちらでも相応の武器が手に入るかもしれない。
これから先も人類生存可能圏内で戦うのであれば、こういった伝手を少しでも作っておけば今後も楽だ。
「シーナ指揮官に会議室借りられる様にお願いしたから大丈夫や」
「そうですか、分かりました」
どうやら二人が気を使ってくれたらしい、リホはエントランスからそう遠くない小会議室の方を指さす。
「あっ、ホンマすまんが二人だけで話せんか?色々と話しをするし」
「二人だけで?」
なぜだ?奏太が首をかしげると、リホは少しばつが悪そうに視線を逸らす。
「その…信用して貰う為には色々と真実を知る必要があるからの。その為に必要やからや」
どうやら彼女も込み入った事情があるらしい、魔改造されているとはいえIOP製の戦術人形であるほかのメンバーにはあまり聞かせたくはないのだろう。
IOP製の戦術人形は完全な嘘を付けないと聞いたことがある。
(こいつらはそんなことないけど…まぁ仕方ないか)
その大ウソでひどい目に何度も会った奏太としてはただの経験不足なんじゃないかと考えているが、先方の要望では仕方ない。
奏太がM14達に目配せすると、彼女たちは各々うなづいてエントランスに散っていく。
「わかりました。二人で話しましょう」
「こっちや」
リホに連れられて会議室に入る。きれいに整頓され、誰でも使えるようにされた部屋だ。
テーブルとイス、そしてある程度の防音が施された簡素な会議室に入ると、彼女はコンセントやテーブルの中や下を確認しだした。
「盗聴器は流石に無いと思いますよ?」
「念には念を入れないといけんのや、それぐらいの真実やから…」
彼女は盗聴器の有無を確認すると手近な椅子に座る、奏太もそれに追従して向かいの席に腰を下ろした。
「さて…色々言わアカン事が沢山やけど…まずはカタログに載ってる奴で今持って来てた奴や」
リホはガンケースと説明書を奏太の前に置く。説明書を開くと、想像していたものとは違うがレールガンのようだ。
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仮名称…H&R-ARW-002
武器種…AR〜RF
全長…800mm
使用弾薬…H&R-7.56mmRG専用弾
装填数…30発〜箱型マガジン…50発
発射速度…1200〜2500発/分
銃口速度…1100m/s
重量…4000g
コンセプト
・激しい戦闘に余裕で耐えるうる耐久力
・反動を受けた射手の姿勢が変化するより短い時間内にフルオート射撃を行えば人体大の集弾が得られ、高い制圧火力を発揮できる
・取り回しのし易さ
・レール部分の露出軽減による消音か成功
性能…
命中度…単発・750m先の人型のマネキンの頭部の眉間に命中し成功。それ以上のデータは無い為不明。
フルオート・150m先のマネキンに25〜28発命中
威力データ
単発・500mmの鉄板の貫通を確認
フルオート・400mmの鉄板の貫通を確認。
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ガンケースを開くとそこには説明書にある通りの銃が収まっていた、見た目は銃身をレールガンに変えたメタリックなAUGだ。
どうやら既存のAUGと同じように銃身や弾倉を変えることで、様々な用途に使えるようになっているらしい。
「見てもいいですか?」
リホは頷く。奏太はARW-002をガンケースから手に取り、銃口を明後日の方に向けて構えた。
「手抜きはしとらんよ。武器商人は信用が大事やしな。あとオーダーメイドで武器を作る事も出来るから頼んでもな?まぁ値は張るけどの」
構えた感じは悪くない、ぴったりと体にフィットするように感じて構えても負荷が少ない。
あらかじめ用意された空の弾倉を手に取り、中を確認してから銃に取り付ける。この動きもスムーズだ。
銃のスライドレバーを操作し、一発空撃ち。さらに再装填動作を素早く行い、再度空撃ち。
(想像以上だ、今日初めて握ったような気がしない)
装填、銃撃、再装填からの咄嗟の打撃、どれも銃が下手な干渉をしない。まるで銃そのものがアシストしているようだ。
戦術人形に使われているASSTの効果とは、こういうものなのかもしれないと思うくらいに馴染む。
これほどのモノならば、仲間たちも一回で完璧に扱えるだろう。
大当たりだ、まさに掘り出し物だ、確かにかなり高いがその値段の価値はある。奏太は静かに、ていねいにARW-002をケースに戻した。
「取り敢えず一丁お願いします。弾倉と予備パーツってありますか?」
「ガンケースの下の収納に修理キッドと弾倉、予備部品が4セット入ってるから安心してな」
4セット、実用するには十分な量だ。少なくともこの一丁を運用するなら当分困らない。
「ありがとうございます。あとオーダーメイドの事何ですがいいですか?」
「ん?なんや?」
これほどの銃を作れる会社ならば、今後も取引できればこちらでの活動の助けになるだろう。
「できれば対E.L.I.D戦にも使える携行しやすいサバイバルナイフや銃剣、またはコンバットアックスをお願いします。作ってくれる業者がいるんですが、手に入るのであれば欲しいので」
人類生存可能圏外の知り合いに頼めばいくらでも買えるだろうが、届くのに時間がかかる上に輸送費もバカにならない。
圏内で生産できるならばそちらで作ってもらったほうが多少高くついてもおつりがくる。
高くてもすぐに手元に届いてくれたほうが安心できるのだ。
「了解や。サバイバルナイフに銃剣…コンバットアックスな?分かったいいモン作ったるからな!それとな、本当の事話そうと思っとったんや」
「本当の事?」
リホの表情が少し険しくなった。
「実はの…この作戦グリフィン&クルーガー社に呼ばれてないんや。勝手に出たって感じなんや」
爆弾投下、見事に命中大爆発。そんな心境であった。
「えぇ…」
「それとな、いつかは絶対バレるから今話しとくな?ウチは鉄血ハイエンドなんや。上位個体の…まぁ、とっくの昔に裏切ったんやけどな」
瞬間、会議室の壁や窓に液体金属のような何かが張り巡らされる。変なことをすれば殺す、そういう事だろう。
そんなことはさらさらする気はないが、奏太はリホを見つめながら首を傾げた。
「えっとその、じゃあリホ・ワイルダーって名前は?」
「偽名や、会社はちゃんとあるからあんせてな。本当はリホーマーって名前やで…まぁ、こんな感じなんで盗聴器やらなんやら調べてたんや」
「大丈夫です。少し驚きましたが。まさか鉄血ハイエンドモデルだなんて」
圏外の知り合いからもらった昔のカタログでは見たことがない、おそらく新型のハイエンド機なのだろう。
鉄血工造が暴走した際、ハイエンド機は優先して乗っ取られるか破壊されたと聞いたがどうやら生き残ったようだ。
「この事聞いて銃を向けたり殺気向けんとは、こっちも少し警戒してたのも馬鹿らしくなったわ」
「あなたもそうでしょう?それに鉄血がどうとかうちはあんま気にしませんからね」
「なんでや?」
なんていえばいいんだろうか、奏太はリホ改め、リホーマーへの返答に困った。鉄血が暴走しているというのは大事件だろう、それを気にしない人間はいない。
奏太自身も警戒はしている、しかし彼女が鉄血の暴走とは無縁で動いているのであればどうも思わない。
人類生存可能圏外でも同じで、鉄血製の人形は今日も必至で生きているのだ。
「知り合いにも鉄血製はいるし…あーいや、違うな、あれだ、外国人だから、かな?」
「ふぅん?」
「自分はここの生まれじゃないし、普段も人類生存可能圏外で暮らしているアウトサイダーです。こっちの考えにはなじみがない、それだけですよ」
「なじみがない?なんやそれ?」
「うーん、自分にとって人形は人形ですからね。なんていえば…あー、売られてないから、か?」
「はぁ?」
「言葉にするのが難しいのです、申し訳ない。」
人類生存可能圏外、自分の住む朝霞の街では人形は人形として受け入れられている。他の街でも圏内のような考えは圏内から遠ければ遠いほど少ない。
人形自身が言うような『道具』としての考えではなく、人形は人形、別の種族というだけという考えだ。
圏外の人間にとって、人形との出会いは企業の新商品としてではない。ただ過酷な環境で生き延びようとしていて、偶然巡り合っただけの同じ『隣人』なのだ。
「…けったいな考えしとるな、ロボット人権組合のようでそうでない、人間と人間の間に近い…いやちがう…」
「うまく説明できず申し訳ない」
人形は人形、そうとしか表現できず奏太は少し苦笑いした。
人形が人間の上に立っている所はいくつも知っている、リホーマーが社長と言われてもすごいとしか思わない。
鉄血のハイエンドとはいえ、敵対しないのであれば人形でPMCの社長として接するだけだ。
「ま、ええわ。少なくとも差別とかはせぇへんのやろ。お買い上げ、おおきにな」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。あ、これうちの連絡先です。それからオフィスの無線も」
「これはこれは、ご丁寧に」
二人は立ち上がり、短く握手を交わした。互いにいい出会いであることを祈って。
あとがき
初っ端から防疫してるドルフロ小説はここだけだよ…すみません、遅くなったうえに地味で。
前半は笹木一家が少し遅れた理由、後半は商談の奏太視点でお送りします。後始末もちゃんとしなきゃね…
しっかり汚物は消毒して燃やし尽くしたので変異の心配はないでしょう。
ちなみにハザードスーツは映画とかでもよく見る頭かデカい奴が少しもこもこして頑丈そうな感じ。