U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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気分はメトロシリーズ。というわけで、みんなお着換えじゃぁ!!


第11話・メトロライン2062

 

アウトーチに到着してから二日、私やFALさん達は買える限り物資と情報をかき集めた。

ここはまだ人類生存可能圏に近いからか、まだ私たちの常識が通じる。やり取りにはほとんど支障はなかった。

指揮官達も一緒にいてくれるおかげか、必要なものは一日とちょっとですべて買い集めることができた。

指揮官達のネームバリューとライセンスの力はかなり大きい、オフィスでも有名で指名依頼が溜まってると愚痴られてた。

グリフィンの名前はこっちでは全く通用しないのは分かってたけど、これは予想外だった。

けれどそんな中で時折感じる不思議な感覚、私たちが別な扱いをされていると感じることは何度もあった。

遠くからの旅商人の人との取引では顕著だった、これが外国に来ているっていう感覚なのか、それとも気のせいなのか、私の経験ではまだ理解できない。

まだ足りない、もっと知っておかないといけない。外に出てみたいけれど、この街の外は汚染され尽くされていて装備がなければ人形も危うい。

アウトーチの周りの街や居住地にもいってみたい、けど私だけでは到底そんな遠くまではいけないだろう。

法と秩序が成り立っているのは町とその周辺のみ、その先はどこも無法地帯でありミュータントや無法者たちの巣窟だから。

その上装備があっても危うい汚染地帯がそこかしこにあって、空からは人類生存可能圏内よりも汚染された雨が降り注ぐ。

比較的安全と言われる地下も同じ、ミュータントは無法者がどこに潜んでいるかわからない。そんな土地を抜けていける力は私たちにはない。

そんな時、指揮官が私たちに提案をした。

自分たちは輸送の仕事を受けた、隣町まで一緒に来るか?命令ではない、ただ誘っているだけの言葉だった。私はすぐ頷いた。

私は知りたい、もっといろんなものを見てみたい。死んでいった仲間たちが、あの人が見れなかった世界を。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

アウトーチの宿屋の個室はいつもの部屋や仕事の時にあてがわれた内地の安宿よりも簡素で安っぽい内装だった。

元は下士官の居住区だったらしい部屋も殺風景でベッドと机があるだけ、あとはシャワールームと付属の姿見。

使い古しの軍用ベッドは2段ベッドの壁埋め込み式、上は荷物の収納スペースになってて一人用に改造されてた。

ベッドのマットレスは使い古されててぺちゃんこ、洗濯されてるだけマシって印象。基地のベッドが恋しいな。

でも指揮官曰く個室で安全で壁が普通なだけマシらしい。

まぁ指揮官達の場合はないと困ると思う。役所みたいなところで書類を郵送してたから、昨日は盛り上がっちゃってたし。

 

「これで、いいよね?」

 

シャワールームの鏡に移ってるのはいつもの制服じゃない、カーキ系マルチカムのサバイバルスーツ姿の私。

旧式戦闘服を模したサバイバルスーツにコンバットベストとポーチを付けている、背中にはバックパック、頭には鋼鉄製のバイザー付きヘルメット。

指揮官達と同じ昔の軍人みたいな格好で、バイザーを下ろしたらたぶんSuperSASSとはわからない。

うーん、落ち着かない。何となく体をぐいぐい動かしていると、部屋のドアがノックされた。

 

「琥珀じゃ、準備はできたか?」

 

「あ、はい、どうぞ!」

 

返事をしてからドアの鍵を開けて、コハクさんを中に入れる。うぅ、コハクさんも何度か見たサバイバルスーツ姿。

だけどすごい着慣れてる感じ、歩き方とかすごいスムーズなの。

 

「どうじゃ?サイズはあってるか?」

 

「あ、はい、何とか…」

 

「どれどれ…ちょっと失礼」

 

コハクさんは私をしっかりと見つめて、全身を嘗めるように見つめて不意に手を伸ばしてきた。

腰のあたりのベルトを緩めて、胴体のコンバットベストを少し緩めてからもう一度締めなおす。不思議、自分でやるよりちょうどいい。

 

「これでよし、かわいい新人さんの完成じゃな」

 

「か、かわいい、ですか?」

 

「あぁ、さぁ行くぞ。初仕事じゃ、FALも外で待っておるわ」

 

コハクさんに連れられて個室を出る。要塞の下士官居住区を丸ごと使ってるこのホテルはハンター御用達で、廊下にはハンターたちの姿がちらほら見える。

男性も女性も大体がミリタリールックにサバイバル用の装備を身に着けた感じだけど、時々見慣れたような、いろいろおかしい格好の人もいる。

 

「慣れんか?歩き方がおかしいぞ」

 

「いつもスカートだからズボンがちょっと…」

 

「そうか、ここらじゃあの格好でお前を外に出すわけにはいかんから我慢してくれ」

 

仕方ないとはいえ、やっぱりズボンに慣れない。

 

「本当にいつものじゃダメなんですか?」

 

「駄目じゃ、あれは普段着にしておけ。しっかりしないと後が大変なんじゃよ、特にここらは汚染が酷い。

学校の制服みたいな格好でウロチョロできる環境じゃないのは知っとるじゃろ?朝霞当たりならそれでもいいがな」

 

知ってます、内地製の汚染検査機全部のメーターがレッドゾーンから戻らなかったし。

ホテルの外には私と同じサバイバルスーツ姿のFALさんが壁によりかかって待っていた。

おかしくはないけどやっぱり来てる服が違うと印象変わるね。FALさん、かっこいい系肉体派になってる。

すらっとした高身長にサバイバルスーツがよく似合ってるし、いつもより精悍でキリッとしてる。

 

「なかなかのもんじゃ、よく似合っとるよ」

 

「そうかしら…」

 

コハクさんは素直にほめてるけど、FALさんは少し不満げ。やっぱり普段からファッションに気を使ってる人にはきついのかも。

ファッション性なんてかけらもない戦闘服をさらに戦闘用アクセサリーで固めて武骨なスタイルだもの。

 

「儂の旦那はこっちのほうが好みじゃが?」

 

「いい装備ね、気に入ったわ」

 

変わり身の速いFALさんと一緒にホテルの区画から出ると、雑多な商店街に出る。

しっかりとしたお店があるわけじゃなくて、行商人とかが屋台とか机とかを並べただけの闇市みたいな感じ。

昨日指揮官と回ったようなオフィス直営店とか部屋を丸ごと使ったお店みたいな品ぞろえはしてないし、中古のおんぼろもたくさんある。

値段も少し安かったり高かったりでまちまち、でもお客も値切ったりとかしてて見てると面白い。

 

「殺風景な家に、ちょっぴりの贅沢はいかが?」

 

「フィルター、ナイフ、治療キット!何でもそろってるよ、さぁ見てってくれ!セールだよ!安いよ!!」

 

「それじゃ高すぎる、3000でどうだ?」

 

「3000!?いやいや、この空気銃は上物だ。3500だ、どうだ?」

 

ここの熱気は変わらないなぁ、うまくいけば掘り出し物があるって指揮官も言ってたけど私はあまり買ってない。

買うとしたら少し行ったところの屋台とか食品売り場がいい、焼き豚がおいしいの。

商店街を抜けると頑丈な鉄筋コンクリート造りの巨大な吹き抜けのある区画に出る。

円筒形の吹き抜けは底が深くて一番下まで見降ろそうとすると足が竦みそう。その外周にそってリフトがある。

それに乗って集合場所の地下鉄ホームまで向かう、階段や他のエレベーターもあるけどこれが一番早い。

これから向かう町は汚染された市街地の真下にある地下鉄駅だから飛行機は使えない。

車での移動も危なすぎる、いけないわけじゃないけどミュータントがうじゃうじゃしてる上に町は崩壊してるから遠回りになるんだって。

だからいつも地下鉄のトンネルを使うらしい、それでも安全とは呼べないらしいけど。

 

「なんだかモグラになったみたいね、ずっと地下生活なんて…」

 

「住めば都というぞ、外がいいとも限らん。ここはまだ金回りがいいからマシじゃし、安全性でいえば折り紙つきじゃ」

 

「ははは、ところで指揮官は?」

 

「先にホームで準備しとるよ。後はM2じゃがあいつは美奈に任せておけばいい、あれは時間がかかるからの」

 

リフトのノリ口はいつも少し列ができるくらいに混雑してる。早く乗りたいけど並ぶしかない。

リフトを待っているうちに寝てしまったのか、整備士の制服を着た男の人が近くのベンチで眠ってる。

魘されているみたい、しかめっ面でつぶやいてる。どうしたんだろ?気になってチラチラ見ていると、その人が突然両目を見開いて泣き叫びながら飛び起きた。

 

「おいどうした!」

 

びっくりした、いったいどうしたんだろう。悲鳴を聞きつけて近くにいたらしい同僚の人が走ってきた。

 

「あ、あぁ、すまない、わ、悪い夢を見ちまって」

 

悲鳴を上げて飛び起きた整備士さんはふらつきながら壁に背を預ける。悪い夢ですか、怖いですよね。私も今はその気持ちは分かります。

最近はあの夢は見ないけど、代わりに昔のことが出てくる…本当に忌々しい。

 

「核が落ちた時の夢を見たんだ、俺は、その時地下鉄から降りたばかりで、駅から出たばかりだった。

帰るはずだったんだ、郊外の家、小さな畑のあって、俺の家族が、待ってた。でも、あの時の、あのサイレンが鳴って、ミサイルが…」

 

「まったく、だから部屋に戻れといったんだ。こんなところで寝るからだ、仕事馬鹿が」

 

「でも、仕事はまだ―――」

 

「お前の夢の話は聞きたくない、部屋に戻れ」

 

「あ、ああ、悪い、そうだな、部屋に戻るよ」

 

核戦争の時の夢、あの人は偶然生き残った人なのか。まだ10年くらいしかたってないのよね、核戦争から。

 

「あいつも可愛そうに、あと1時間早く帰ってればこんな悪夢を見なくて済んだだろうにな」

 

受付の男の人が同情する…聞かなかかったことにしましょう。私たちの番が来て、リフトに乗って地下鉄ホームのある階まで降りる。

アウトーチの地下鉄ホームにつくと、先に待っていたタクティカルサバイバルスーツ姿のイチヨさんとサラさんが手を振って待っていた。

 

「5番ホームに向かって、乗り合い客車の後に出発だよ。琥珀、変なことしてないよね?」

 

「するか馬鹿者」

 

「ならいいけど。SASSちゃん、気を付けてね?彼女両刀だから」

 

それは基地のみんな知ってるから…イチヨさん達だってそうでしょ。

 

「先に行って、奏太が装備を配ってる。私はM2を待ってるから」

 

M2さんはまだ来てないみたい、なんかゴテゴテしてるの持たされてたし時間がかかってるのかな。

地下鉄ホームの私たちが護衛する改造ハンドカーの近くに、指揮官達が武器の入った箱を置いて待っててくれた。

ホームには指揮官たち以外にも人が多く居て、ほとんどは私たちの前に出る乗り合い客車のお客みたい。

依頼主のお爺さんとにこやかに話していた一〇〇式が私たちに気付いてこっちに来た。

 

「FAL姉!やっと来たね」

 

「ごめんなさい、少し着替えに手間取っちゃって。そちらが今日の雇い主?」

 

「あぁ、その通りだよ可愛いお嬢さん」

 

一〇〇式と話していたお爺さんがにこやかに手を差し出すと、FALさんはその手を手に取った。

 

「FNFALです、よろしくおねがいします」

 

「FAL?あぁ、あんたも人形さんかい。ボリスだ、よろしく。儂はパーク駅で店をやってるんだ。要は仕入れの帰りってわけさ。

行きは良かったんだが、なんでも野盗どもが近くをうろついてるって噂を聞いたんでな。それであんたらに護衛を依頼したわけだ」

 

パーク駅はアウトーチから少し離れたところにある市街地の中にある街、大きな自然公園に直結してる大きな駅らしい。

もう公園は見る影もないけど地下街には多くの人が住んでいて、市街地での仕事でよくハンターも出入りしているんだって。

ボリスさんのハンドカーは3両、後ろ2両が貨物兼客車で先頭がエンジンを取り付けた動力車になってる。

元はハンドカーだから移動用のレバーが全部についてるけど、普段はエンジンみたい。

 

「了解しました、任せてください。SASS、先に装備をもらってきたら?」

 

そうしよう、ボリスさんとの仕事のすり合わせはFALさんに任せて私は指揮官のほうに向かう。指揮官はホームに装備の入った箱を並べて私たちを待っていた。

 

「来たな、待ってろ…ほらSASS、君のだ。まずは装備のおさらいをしよう」

 

指揮官が箱の中から私の銃を差し出してきた、昨日預けておいた私の半身。今はリンクを切ってる、受け取ってASSTと接続して…あれ?おかしいな。

私の半身のはずなのにASSTの反応が少し悪くなってる?指揮官なにしたの?

 

「違和感があるか?一足早いが圏外のパーツを組み込んで対E.L.I.D用特殊弾を使えるようにしてある、悪いが慣れてくれ」

 

だからASSTの反応が少しおかしいのか、圏外パーツが反応してないんだ。

 

「内地製向けの改修キットじゃな。使い込めば小細工などないほうが馴染むわい」

 

コハクさんのリボルバーはもうM1895の皮被った44マグナムでしょ。ASST全く反応しないのはちょっと…

 

「こいつはK弾、オートマチック用の弱装弾だ。向こうで配った奴ほどじゃないが反動は強いから気を付けろ」

 

指揮官が箱の上に置いたマガジンを一つ受け取る。中には弾頭が黒い7.62ミリNATO弾が詰められてる。

通称『K弾』対E.L.I.D用特殊弾の一種である徹甲弾。薬莢、弾頭、装薬、プライマーのすべてに手を加えたまともじゃない銃弾。

これには弱装、普通の2種類あって、私が使うのはオートマチック用の弱装弾。

弱装弾は装薬が80パーセントくらいで射程と威力は劣るけどオートマチック式でも使えるように作られているタイプ。

反動は強いけど自動装填機構への負荷は少ないし、有効射程の30メートル以内なら普通のと変わらない貫通力がある。

普通のはボルトアクションとかの手動装填式の銃に使うタイプで、威力と射程に優れるけど反動が強すぎてオートマチックでは使えない。

反動も弱装弾の非じゃないくらい強いし連射なんてできたもんじゃないけど、射程は二倍の60メートルもあるし安全な距離を保って戦える。

 

「18発入りだ、使い時は任せるが間違えないようにな」

 

K弾は重装甲な敵やE.L.I.Dに遭遇した時の切り札、強い分お値段も高い。大体通常弾十発で一発分の値段、大切にしなきゃ。

マガジンをポーチに入れると指揮官が次々に支給品を渡してくれた。

対人対ミュータントの両方で使う通常弾、手榴弾、ナイフやバックアップのリボルバーも受け取ってポーチやホルスターに納める。

なんだかこういうのって新鮮、基地では自分で準備することが多いからかな。

 

「それからこいつだ、万能充電器。人間にも人形にも必需品だ、各種装備の充電からいろいろと入用になるだろう」

 

握るハンドルと発電機が付いた手作り感あふれる充電器。手持ちの装備とかの話だけど本当に便利。

指揮官達が使ってるの見たときから欲しかったのこれ、あると便利だから。アルケミストに壊された時はショックだったな

試しにハンドルをにぎにぎしてみる、これですこれ。にぎにぎしてるとなんか落ち着くんですよね、充電もできて一石二鳥。

これで作戦中に装備の電池を気にする必要もない、夜戦装備とか意外と電気を使うし。

 

「ガスマスク…は持ってるか。フィルターだ、外に出るかもしれないし地下にも汚染区域は山ほどある。こいつがなきゃ安心はできないね。

フィルターは持てるだけ持っておけ、汚染の度合いにもよるが内地のようにフィルターは長持ちしない。外でなんかすぐに目詰まりしちまう、ケチるなよ?」

 

指揮官が全員に配ったPMMガスマスクのフィルター、見た目は旧式で少しぼろいかな。

このあたりの外の空気は内地と違ってひどく汚染されてるからガスマスクが必須、地下でも場所によっては必要らしい。

私たちは人形だけど汚染された空気のせいで生体部品がやられて、そこから体が壊れるからね。

 

「それから治療キットも忘れないように。それと無針注射器と緑のヤツ一本、いざってときには迷わず使え。

ただし一日一本、用法容量は良く守るように。劇薬でもあるから、使い過ぎると腹を壊しちまう」

 

黄色いケースに入った応急治療キットと緑色の瓶がはめ込まれた無針注射器。

治療キットはよくある包帯や麻酔とかのセット、回復促進効果のあるバイオジェルとか抗ウィルス剤とかの見慣れない物もいくつか入ってる。

緑の瓶、体内の放射能や放射線、汚染物質を分解除去して排出する薬、コーラップスにも少しだけど効果がある。

ZE除染薬っていうけど、薬剤が緑色をしてるから指揮官達は緑のヤツってよく言ってる。これも広く流通してる。高いけどお店で売ってるの見たし。

圏外ではこういう医療技術とかが発達してて、それの傾向が人形の魔改造にも影響してコハクさんたちみたいになってるって本当みたい。

人間か圏外仕様の魔改造型人形に必要なもので、まだ純正の私には必要かわからないけど一応もらっておく。

生体部品に関連して必要になるかもしれないし、私じゃなくても周りが必要な時が来るかも。

 

「これで全部だ、あとは食料品とかはそっちにあるからな。でもこれで完璧ってわけじゃない。

他にも各種レーダーや検知器などなど仕事によっては多くの機材が必要になる、向こうでも装備として導入するが自前で揃えるのが一番だ」

 

「了解しました!」

 

「いい返事だ、あとは自由時間…っとそうだそうだ、これを忘れてたな」

 

指揮官が懐から小さな紙の封筒を取り出して渡してきた。お金?中に古い紙幣が8枚か入ってる。

 

「依頼の前金、お前の取り分だ。残りは達成報酬だ。気負い過ぎるな、いつも通りやればいいさ」

 

指揮官はいつもの頼りがいのある笑みをにやりと浮かべて笑う、私もそれにニッコリ笑って返す。お金はあとで財布に入れておこう。

支給された武器と装備を持って、ほかのみんなが集まっているカートのそばに移動してベンチに座っているM3さんの横に腰を下ろしました。

M3さんも銃を抱えたまま落ち着かなそうだ。私もそう、いざとなると、なんだか怖い。

ここは私たちのよく知ってる人類生存可能圏内じゃない、始めてくる土地なんだ。空気も、匂いも、何もかもが違う。

人間が住める場所なんてたかが知れてて、その周りは内地の比じゃない超危険地帯。汚染、ミュータント、ならず者がうようよしてる。

 

「ん?」

 

足元に何かが転がってくる、小さな瓶だ。緑のヤツと同じような瓶だけど、中身が青っぽい薬。

何だろう、拾い上げてみるけどよくわからない。抑制剤って書かれてるけど、その前の部分にマジックで名前が書かれてる。

レナ、持ち主の名前?抑制剤っていうからには、持病の薬かもしれないし。届けてあげなくちゃだめだよね。

 

「どうしたんです?」

 

「抑制剤、誰のだろう?」

 

「あ、あの!」

 

瓶を見つめていると声をかけられた。前を見ると、ジーンズに子供用のコートを着た10歳くらいの赤い瞳をした女の子がいた。

 

「それ、私のお薬…か、返して!」

 

女の子は少し片言の共用語でたどたどしくお願いして来た。

この子の?という事はレナちゃん、かな?嘘は言ってるようには見えないけど…ま、いいや。

 

「どうぞ」

 

瓶をそっとレナちゃんに握らせる。その瓶と私を交互に見てから、小さくお辞儀をしてホームの奥に走って行った。

よく見る遠くのほうにご両親らしい夫婦が見える、レナちゃんを抱きしめたご両親は話を聞いたのか私たちに頭を下げた。

私もお返しに手を振って、3人が乗り合い列車の中に入っていくのを見送った。

 

「し、指揮官?これで良いかしら?」

 

「M2、様になってるぞ」

 

聞きなれた声がして振り返ると、指揮官の前にヘビーバトルアーマーをがっちり着込んだM2さんがいた。

私たちのスーツにもっとゴテゴテ防弾プレートとかを張り付けたいつもの格好とは真逆のガチガチスタイル。

時間がかかるわけだね、ミナさんがすっごい疲れた顔してる。

 

「私だけこんながっつりしてていいの?」

 

「お前は銃座担当だろ、それくらいあったほうがいい。ほら、お前の武器だ」

 

「なにこれ!!」

 

M2さんは指揮官から渡された巨大な重機関銃に驚いた、私もびっくりして呆れた声が出た。

設計はたぶんデュシーカ、けどベルトリンク式で装填されてる弾がショットシェルになってる。さしずめ重機関散弾銃、かな?

 

「さすがにトンネルで50口径をばらまくわけにはいかないからな、経年劣化でもろくなっているところもあるんだ。

お前のいつものはこっちに入れて持ってくから、必要な時には出すよ」

 

「理由は分かったけど、なんだか頼りないわね」

 

「そんなの最初だけだ、すぐにお前も気に入るよ。そいつはアブザッツ、モスクワ生まれのイカした奴だ。

装弾数は20発だがベルトリンクの長さは調節できる、お前なら40発入りを抱えて撃ちまくれるだろうが今はそれだけだ。

セミフル切り替え式、銃が重たいから取り回しに戸惑うかもしれないがその分反動も抑え込みやすい。

弾は12ゲージショットシェルなら何でもいける、バックショットとスラッグを用意したから好きに使え

とにかく撃って撃って撃ちまくれる頑丈な奴だ、閉所で化け物どもを殺しまくるには最高だぞ」

 

指揮官の力説がすごい、気に入ってるんだね。

 

「でもASSTが反応しないって不安ね…データにもない、運用法が、不明…」

 

「考えすぎんな、いつもみたいに振り回せ。あとはそのうち分かってくる」

 

「了解」

 

M2さんは頷くと、アブザッツを抱えてカート後部の機銃座に添えつけ始めた。その手つきはいつもみたいな迷いのない手つきじゃなくて、少し手間取ってる。

確かにM2さんなら使いこなせるかもしれないけど、初めての武器でいきなり実戦は怖い。怖いけどやっぱり、少しワクワクしている自分もいる。

ホームの向こう側に見えるトンネル、その向こうにはどんな街があるのだろう。どんな世界があるのだろう。はやくいってみたいな。

 

 





あとがき
みんなでお着換え、オリジナルスキン『メトロ2062』でございます。はい、パクリですがなにか?
遠征組はこれより戦闘服に弾とかポーチをごてごて張り付けた色気もくそもない男らしいスタイルで行動します。
悩んだ末、SASSちゃん一人称でお送りしました。






ミニ解説

万能充電器
出典・メトロシリーズ
汎用性と拡張性に富んだバッテリー用手動充電器。モスクワメトロ生まれのベストセラー。
充電器そのものに変圧器が内蔵されており、装備に合わせた充電を行うことができる。
劣悪な環境や激しい扱いにも耐えられる耐久性をもち、ハンターには欠かせない必需品。
地下鉄暮らしに欠かせない精神安定剤でもあり、ハンドルを握って充電していると心が落ち着く不思議な感覚を覚えるらしい。


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