U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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R08から物資が届いてしまったのでそれに対する対応、そしてメイドとハボックの戯れ。ギャグです、まじめな顔して空回りさせました。


第12話・強制輸送システムの余波

真新しいプレハブ小屋、派遣されていた建設作業員の休憩スペースであったそこに9A91と事務方メイドのレイチェルの二人はいる。

9A91はプレハブに設置された内線電話を取ると、肯定を返した。ヘルメットを外した旧式の軍用ハザードスーツを身に着けた9A91は少し言葉を交わすと内線を置く。仕事の時間だ。

 

「9A91さん、失礼します」

 

持って生まれた性と元指揮官であった男も諦めたメイドらしい恭しい仕草の後、レイチェルは襟を少し下げて首筋にガンタイプ無針注射器を押し付ける。

笹木一家から提供された圏外製のそれに取り付けられた緑色の薬剤が詰まった瓶、ZE除染剤が入っている。

空気が抜けるような音とともに撃ち込まれた瞬間、9A91は注入部位に熱を感じた。撃たれたZE除染剤が作用しているのだろう。

体にたまった放射能や放射線で変異した細胞、あるいは放射能などそのものを分解し除去しようとしているのだ。

この影響でトイレが近くなるが、除去作用の働いている限りは放射能などの汚染物質が体に入っても吸収されず除去される。

もしR08の輸送キャラバンが置いて行った荷物が汚染物込みの爆弾だとしても、多少は気にせず作業ができる。

 

「終わりました、お加減は?」

 

「少し熱いです」

 

「しばしの辛抱を、すぐに収まります」

 

レイチェルは無針注射器から空の瓶を外して箱に納める、一緒に箱に収まっている緑の瓶は残りは一本だ。

圏外へ行った彼らが帰ってくるまで何もなければいいが、もし何かあったときはこの一本は命綱になる。

 

「行ってきます」

 

「ご武運を、必ずやお戻りください。お待ちしております」

 

身を案じてくれているのだろうレイチェルのかすかに震える声に、9A91は頷いてハザードスーツのヘルメットをかぶりプレハブ小屋のドアを開けた。

U05基地は殺気立っていた、空にはCH-47EとV-22が飛び回り、基地の残っていた人形たちは臨戦態勢だ。

基地改修工事は全面的に一時中断され、作業員は自分たちで作った防護シェルターに避難し、基地要員は臨戦態勢に入っている。

普段は事務員として働く人形たちも制服と化しているメイド服に防弾ベストを着込んで弾薬ポーチなどを括りつけていつでも戦えるようにしている。

ホテル時代から制服だったらしいクラシカルかつ露出の少ないヴィクトリアンスタイルのメイド服は、この基地に勤務する元メイドの人形たちの手によってすっかり定着していた。

 

「敬礼!」

 

keepoutと書かれた黄色いテープで封鎖された道路の先にあるのは建設されたばかりの物資倉庫、その周りを封鎖していたメイド隊が背筋を伸ばして敬礼する。

彼女たちもガスマスクを装着し、最低限度とはいえ汚染対策を施していた。

事務要員や後方支援要員でありながら基地防衛にも携わって長く、鉄血兵の襲撃にも狼狽えない彼女たちの表情は緊張しているのがわかる。

9A91もその気持ちは痛いほどわかる、まさかいきなりこんなことになるなんて思いもよらなかった。

 

「現状は?」

 

「動きはありません、ドローンによる調査の結果は白、クリーンです。とはいえ、データベースに存在するものだけの話ですが。

被害は甚大、居合わせた多くの者が負傷しました。こちらです」

 

警備のメイドに連れられ、9A91はハザードスーツをのそのそと動かしながら簡易テントの中を覗き込む。

 

「はは、あははは、ゲイリー、ゲイリー♪ゲイリー♪あははは」

 

SOP2はまさか使うとは思っていなかった精神病患者用の拘束担架に括り付けられ、不気味な笑みを浮かべたまま虚空を見つめていた。

放っておくと適当なもので相手に殴りかかる危険な状態だ、拘束してからはおとなしいのだが不気味に笑っている。

それもゲイリーとしか言わず、意思疎通が全くかなわない状態だ。

 

「うそだ、そんな、あんな、だめだ、まがらないよ、やめて、もうやめて!見たくない、見たくない!!」

 

「やめて、やめろ、ちかづくな、近づくんじゃない!!罠だ、なんで、違う、もっと手があるはずなの!」

 

別のテントから叫び声が上がり、赤十字の腕章を付けたメイドたちが慌ててテントの中へ駆け込む。

中を覗くと、AR15とHK416が簡易ベッドの上で苦しそうにもがき、うわ言を叫んでいた。

 

「しっかりしてください!鎮静剤、急げ!!」

 

「まがらない!伸びないの、あんなのむり、むりなの!!いやだ、やめて!嫌だ!助けて!!助けて!!」

 

「あんたじゃない!私はあんたじゃない!!こんなの違う、違う!敵なら殺せ!殺せ!銃を持て!なにが嫌いだ、自爆なんかくそだ!!ふざけるな、ふざけるな!!」

 

「くそっ、悪化してる!睡眠導入剤を持ってこい!」

 

体をしきりにかばうHK416と、何か別の物を見て怯えるAR15の首筋に注射器が当てられる。

おそらく睡眠導入剤なのだろう、撃たれた二人は苦しそうに呻きながらも暴れるのをやめて寝息を立て始める。

その寝息の形相は安眠とは呼べない、時折うなされては寝言で苦しげに呻き続けていた。

 

「一番重症なのは彼女たちですが、ほかにも幻覚や幻聴に悩まされている方もいます。死人がいないのが不思議です」

 

「M4さんとM16さんは?」

 

「お二人ともまだ目を覚ましておりませんが…うなされています」

 

被害は甚大だ、この騒動で基地の改修作業は完全にストップした上に要員にも被害が出ている。

だが自分できることは何もない、9A91は自分の無力さに歯噛みするしかなかった。今やできることをするしかない。

 

「マンティコアは?」

 

「すでに倉庫に配置してあります、AI、操作系ともにクローズドに組み換え済みです」

 

「了解、作業に入ります」

 

「幸運を祈ります、無事の帰還をお待ちしております」

 

メイドの一人がビニールテープを上に押し上げて通りやすくする。9A91はそれをくぐると、できたばかりの物資保管庫の前まで向かった。

倉庫の扉は開けられており、その目の前には重厚な防弾盾が置かれており、その陰に機材が用意されていた。

 

「開始します」

 

物資の山を俯瞰できる位置にある監視所の映像で全体を見渡すフランの命令に合わせ、9A91は防弾盾に背を預けて手元のラジコンコントローラーを手に取る。

市販されている遊具の物を改造したものだが、そのコントローラーとコードでつながっているノートパソコンと、そこからLANケーブルでつながっている機体が物騒過ぎた。

 

「マンティコア起動、異常なし。これより検査を行う」

 

黄色い頭でっかちがずんぐりむっくりのハザードスーツのせいで動きづらい指を、9A91は細心の注意を払ってコントローラーを操作する。

鉄血から鹵獲し、中枢部分を取っ払って放棄された工事作業用機械の物に入れ替えた作業用マンティコアはアームで防御用の鉄板を支えながら慎重に近づいていく。

荷物運びから強行突破用の動く盾として縦横無尽に活用する作業用マンティコアはこの基地でも重宝される鹵獲兵器だ。

何が起きるかわからない以上、操作はハッキングされづらい有線操作に切り替えられているとはいえその信頼性は揺るがない。

高度かつ高速な情報伝達に耐えられるケーブルの長さに限りがあるため、こうして危険地帯から操作しなければならない

パソコンもネットから隔離したクローズドタイプにしており、各種センサーの読み取りと解析に特化したものである。

自分が乗っ取られないように細心の注意を払った、ハザードスーツに身を包み、ハッキング対策もして、予防に薬も討った。

もしどちらかが乗っ取られても脅威にはなりえない、武装しておらず挙動も緩慢でゲパードM1に撃たれてすぐ終わりだろう。

そもそもここまで対策をしておいてハッキングされたのならばもうどうしようもないのだ。

 

「目標に到達、空気測定開始。ガイガーカウンター、反応なし。コーラップス、反応なし。ウィルス、反応なし。」

 

ここまでは良い、マンティコアに搭載された反対用の各種測定機器の反応をつぶさに確認する。

倉庫内部に置かれた開封されていない物資の山は微動だにしていない、何も漏れていない。

下手に触るな、9A91は額に汗が出てくるのを感じながら当初の予定通りに検査を進めた。

 

「精神放射、反応なし。胞子反応、反応なし…オールグリーン、生体汚染は確認できず。これより封印処理を開始します」

 

口の仲が空からになるのを感じる。緊張で指が狂いそうで、思わず9A91は一度天を仰いだ。

もしこれが爆弾ならばまだいい。だがもし生物兵器の類なら、それこそコーラップスを用いた兵器ならば自分はまず助からない。

記憶のバックアップは取ってある、もし真新しい体で目覚めたときは最悪の結末という意味だ。

そうなればかつての仲間を、あるいは変異した自分と戦うことになるだろう。考えるだけでも悍ましく、恐ろしい。

絶対にそんなことはさせない、自分たちでは対処できないなら対処できる彼らが帰ってくるまで時間を稼ぐのだ。

マンティコアのアームを動かし、9A91は大きく深呼吸してから物資の封印処理を開始した。

その報告を基地の真新しい指揮所で受けたフランは頷くと、メイド長のケイトの無駄のない優雅な足運びで指揮所を去っていくのを見送る。

指揮所の壁に取り付けられた大型モニターに目をやり、次いでオペレーターを担当するメイドたちを見渡してから小さくため息をつく。

 

「何ため息なんてついてんの、指揮官がそれじゃ先が思いやられるわよ?」

 

「改めて世間の無常さを感じ取っていただけよ」

 

まさか味方のはずのグリフィン基地から問答無用で送り付けられてきた物資の山でこんなことになるとは思いもよらなかった。

しかしその見方が味方ではないという疑いがある以上、この基地の特性から見ても対応は慎重になる。

事の発端はR08基地から差し向けられた援助物資を抱えたキャラバン隊が到着してしまったことだ。

どちらもごたごたしていたらしく連絡は今まで取れていないことが裏目に出てしまったのだ。

そのうえ彼我の基地の距離と規格外戦力のロボットがいるとはいえ陸路での輸送ではどこかでやられるのでは?という後になってわいたちょっとした楽観視があだになった。

 

「それで、彼女のことは何かつかめたかしら?」

 

「全然駄目ね、本当に何にもない。白としか言いようがない」

 

「だけど、あの輸送キャラバンから察するに裏はある。あからさますぎるわ、どうにもならないわね」

 

ドリーマーはお手上げと肩をすくめる、手は尽くした。としか言えなかったのだ。

キャラバンがこの基地に無事到着できた、それがすべての証左だ。いかに強力な兵器を搭載した護衛を付けようが、所詮は一匹と一体の小規模キャラバンだ。

護衛の魔改造ロボットも感知範囲外の狙撃や物量戦による圧殺を繰り出されればあっという間に沈むはずなのだ。

バラモンは直接戦闘力には欠け、悪党に捕まれば最後は人間の腹の中に納まるだろう。だがそうはならなかった。

デスクローが徘徊する基地周辺を抜け、鉄血、人類人権団体などが常に目をやっている輸送ルートを堂々と進んでここまでやってきた。

 

「はっきりいうと、あの戦力でここまでのんびり歩いてくるなんて普通は無理よ。

ここは言うに及ばず、R08地区にはデスクロー、ほかの地区にも鉄血、人類人権団体など活動家の過激派、物資狙いの野盗が目を付ける。

襲撃されないはずがないのよ、戦力的には余裕で跳ね返せるのかもしれないけれど何度も攻撃を受けていたらいずれは限界が来る。

そもそも狙撃で徹底的に攻撃されたらひとたまりもないはずなのに、それをかいくぐってここまで来てるのよ?」

 

「途中の戦闘で弾薬、バッテリーの補給も必要とみれば明らかね。予備の武器弾薬をバラモンに乗せていたとしても限度がある」

 

予想以上に超高性能なロボットなのか、それとも陰ながら守る部隊があったのだろう。恐ろしい相手だ。

 

「そのうえで問答無用で置いて行ったこの資材の山に怪現象…もう、なんでこんなことに」

 

つい先ほどまで起きていたとんでもない現象を思い出してフランは頭が痛くなるのを感じた。

最初は持って帰ってもらおうと考えた、危険を承知でロボットたちと相対し物資の支援は現段階では不要だと丁寧に伝えた。

だがロボットは全く融通が効かず、制止を振り切り無理やり基地の中に入り込んだ。当然ながら基地は工事中であり、いろいろと散らかっている。

どんな思考回路か知らないがロボットとバラモンは散らかった基地内のがれきや建設途中の施設をある程度避けながら進んだ。

だがある時バラモンががれきの中に引っかかった、がれきに体を押し付けて右往左往する姿は愛嬌があり少し可愛そうにも見えた。

だが好機でもあった、このまま捕まえて一度放り出してしまおうと考えたスコーピオンとイングラムがバラモンを捕まえようとした。

そして急加速して瓦礫をすり抜けたバラモンに追突されて吹っ飛んだ、訳が分からなかったし二人も怪我はなかった。

見間違いだと思っていると、今度は作りかけのプレハブの中に入り込んで引っかかっている。今度はSPAR小隊が全戦力を持って挑んだ。

M4、M16A1が水の入った桶をもって視線を誘導し、SOPⅡが頭をなで、後ろからAR15とHK416が手綱と首輪を持って忍び寄った。

水には興味を示さなかったがSOPⅡにあやされて気を良くしたのか手綱と首輪の取り付けはうまくいった。そして悲劇がまた起きた。

壁すり抜けワープ突進というべきだろうか、離れていったロボットに追いつこうと駆けだそうとしたバラモンの法則が乱れた。

バラモンは空をかけた、壁をワープしM4とM16を二つの頭で腹を強打して吹っ飛ばした。二人は水浸しになり目を回したが怪我はなかった。

手綱を引こうとしていたAR15とHK416は咄嗟に手を離したので、壁に押し付けられはしたが大きな怪我はなかった。

SOPⅡは悲惨だった、バラモンをあやしていたせいで突進に巻き込まれて消えた、その消えた一瞬をその場にいた全員は確かに見た。

宙に放り出されたSOPⅡの体が妙にねじ曲がったり、手足が伸びて荒ぶり高速回転しながら飛び回る姿を。そしてなぜか搬出途中のロッカーの中に挟まって動けなくなっていた。

ロッカーのカギは締まっていたのに、なぜか器用に挟まっていた。しかも取りつかれたように『ゲイリー』としか喋れなくなる始末、もう訳が分からない。

しかもそれを間近で見たAR15とHK416は精神的ダメージを受けて錯乱している、訳が分からない。

結局基地内を練り歩いたロボットとバラモンは、出来上がったばかりの赤い作業台しか置かれていない物資貯蔵庫に山のような物資を放り出した。

バラモンの背中に山ほど積まれた物資を下し、任務完了を告げて悠々と帰っていくロボットの後ろ姿にはもはや言葉も出ず唖然とするしかなかった。

 

「くそ、なんなのよ、わけわかんない、わけわかんないわ」

 

こんなことならやっぱり変な欲を出すんじゃなかった、基地のみんなのために良かれてと思ってこのざまよ、フランは悲しくなった。

その様子見ていたドリーマーも肩をすくめてフランを慰めるしかない。彼女が悪いわけではないのだ、きっかけではあるけども。

 

「これは下手に突っつかないほうが無難ね。うん、とりあえず誤解だけはされないようにしましょう」

 

「そうね、あれは私たちが触れてはいけない類のものに違いないわ」

 

新世界の新たな現象、アノマリーの仕業に違いない。触るな危険、身をもって知った二人は自らの精神を保護するためある決断をした。

もうどうにでもなれ。二人は小さく笑いあうと、通信用コンソールを立ち上げてR08基地に通信をつなげた。通信は数拍置いてつながった。

 

「お初にお目にかかります、R08基地指揮官。私はフランシス・フランチェスカ・ボルドー、U05基地の指揮官です。初めまして」

 

「同じくU05基地所属、副官の夢子・ロスマン。よろしく」

 

きっとものすごい穏やかな顔してるだろうな、と二人はなんとなく思ったがもう止まらない。

とりあえずまずは一言、もうはぐらかされようが知ったことか、彼女の答えで納得して終わらせよう。

 

「あなた、何者?」

 

なお一連の被害は、全員一晩寝たら治ったが酷い悪夢に魘されまくって心底疲れ果てた。

 

 




あとがき
届いた物資でひと悶着、唐突にFO世界の法則に触れたU05基地のみんなにはSANチェック。全員失敗からのアイデアロールです。
AR15には原作世界線のオリジナルを追体験、HK416は自分がハボックの戯れとなり暴れ狂う悪夢を見ています。
なおSOPⅡはファンブルしたので世界の心理に触れました、ベセスダ神話技能を5ポイントプラスします。
まぁわかる人にはわかるハボック神の遊び、ゲームならネタだけど、現実で見たら驚愕とかじゃすまないと思うの。
59式指揮官、後は頼みます。

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