U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

29 / 59
話を買い出し部隊に戻します、酒じゃ!酒を持てい!!


第13話・パーク駅

パーク駅は自然公園だった名残で比較的裕福という話の通り、ほかの居住地と違って活気があった。

メトロの駅構内や地下街は有り合わせの材料で作られたバラックや、地下鉄の車両をそのまま使った家が乱立していてさながら迷路のよう。

見た目はスラムを地下に押し込んだような感じだったけど、治安は安定してるし子供たちも人々も元気で恰好は少し汚くても住み心地は良さそうだ。

おかしな話だと思う、なんだか内地のスラムよりも環境は悪いはずなのになんというか、温かい感じがする。

駅で取った宿屋も、地下鉄の車両をそのまま使って棚みたいな粗末な二段ベッドに仕立てただけの劣悪なモノだったけど安心感はあった。

恰好はともかく店主の老夫婦はいい人だし、マットレスもボロボロだけどちゃんときれいにされてて黴臭くない。

だけど少し驚いたこともあった、宿泊名簿にM2HBと書いたとき店主さんが少し首をかしげたの。

もしかして共用語が読みづらいのかい?なんて言われたときは少しおかしくて、私たちはグリフィンの戦術人形だと伝えた。

純正の戦術人形で内地から来たばかりというと、店主さんたちはとても驚いていたけどすぐににっこりと笑って承知してくれた。

親切にこの街の見どころとか、おいしいお店とかのおすすめも優しく教えてくれた。同時に、危ない所もいろいろ。

なんだろう、この感覚。すぐに話がまとまったことは良いのだけれど、とてもむず痒い…

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

軽快なギターの音楽な流れるハンターオフィスに併設された酒場は、常に酒飲みと地上や地下で稼ぎを得るハンターたち隣接する娼館目当ての客でにぎわっている。

ハンターオフィスが運営する酒場とはいえハンター専用というわけではないので、駅の住人たちも多く利用する。

少し高いが安全でうまい酒が飲める店として駅の住人たちにも受け入れられていて、普段から騒がしいのだが今日は珍客が席の一角に陣取っていることもあり、イギリスのパブを模した酒場は彼女たちを肴にいつもよりも賑わっていた。

 

「まったく忙しいったらないな」

 

「まったくね、ま、稼ぎになるからいいけどさ」

 

忙しそうに配膳と食器の回収に回るウェイターやウェイトレスの少し困ったような愚痴を聞きながら、カウンターでカクテルを作り続けるマスターの男性も同じ思いだった。

普段から人の出入りは多いほうだが今日ほどではない、ほどほどに慣れていると体がついていかない。

それもこれも街の入り口でノサリスの大きな群れを相手に大立ち回りをしたハンターチームが店で飲んでいるからだ。

 

「あのサイドテールの姉ちゃん、良い体してるねぇ。一晩おつきあいしてもらいたいぜ」

 

「すげぇでけぇ、いいねぇ…ん?純正ってことは中って機械なのか?あれで、マジかよ…」

 

「いつ見ても信じらんないよな」

 

カウンターに座る男性ハンター3人が、黒ジャケットにワンピースの女性に下心のあるスケベな視線を送りながらこそこそと喋っている。

ノサリスの群れ相手に一歩も引かない戦いぶりをした屈強な猛者たちを一目見たさに野次馬が集まり、そこからアーマーやヘルメットを脱げば出てきたのがほとんど美女美少女となれば話題にもなる。

そのうえやってきた部隊の一組は上等なサバイバルスーツを着込んだベテランの一級ハンター、笹木一家だ。

噂では人類生存可能圏内の仕事で全滅したなどといろいろ言われていたが、しぶとく生き残った上に向こうでまた別の仕事を受けていたらしい。

笹木一家と一緒にやってきた戦術人形チーム、笹木一家の雇い主が所有する人形部隊で純正の機械の体を持つ初々しい美女美少女達だ。

パーク駅でも人形の女性がいないわけではないが、完全な純正品の体を持つ人形はパーク駅では珍しい。

この地域は良い狩場はあるが、向こう側から逃げてきた人形たちのたどるルートからは離れているのでめったに見ないのだ。

駅に住む人形たちも人形素体生体化施術を受けた魔改造型で、一度は人類生存可能圏外から遠く離れて経験を積んでいるので彼女たちのような初々しさはない。

そうなれば必然的に彼女たちの行く先々は人が集まるし、その過程で大なり小なり店も繁盛するというわけだ。

 

「純正の戦術人形…グリフィンだと?いつからPMCも堂々と出てくるようになったんだ?」

 

「知るか、どっちにしろ碌なことじゃねぇよ。怖い怖い」

 

「だがPMCがこっちに進出を狙ってるとなったらどうなる?技術が違い過ぎるぞ」

 

「戦争の後、世界は大きく変わっただろ?安全圏でぬくぬくしてた連中がいまさらここで暮らせるとは思えないね。鉄血の二の舞だ」

 

カウンターの端、黒い旧米国製コンバットアーマーに身を包んだ二人組のやや粗野な出で立ちの男二人が彼女たちをチラ見しながら話し合っている。

ハンターオフィスではなく別会社所属の傭兵だ、とはいえおとなしく酒を飲むのならただのお客である。せいぜい聞き耳を立てて情報にしてやろう。

 

「マスター、カナディアンサンセットくれ。大ジョッキで」

 

「あいよ」

 

その傭兵の片割れから注文を受け、背後の酒棚下にある冷蔵庫から今朝に解凍したトマトジュースを詰めた瓶と瓶ビールを取り出す。

それを調理台においてから、グラス用クーラーの中からビール用の冷えた大ジョッキを取り出して調理台の上に置く。

その中にビールを一瓶流し込んで、トマトジュースで割って軽く混ぜれば完成だ。

傭兵に差し出すと、彼はそれを受け取り思いっきり煽る。景気よく喉を鳴らして半分飲み干し、気持ちよさそうに一息ついた。

昔はまずいカクテルの一つだったカナディアンサンセットだが、この時代では立派な高級品だ。

酒の高揚感と酩酊感を程よく楽しみつつ、トマトジュースでビタミンなどの栄養も補充できるので栄養ドリンク感覚で飲むものも多い。

汚染に強い遺伝子改造した天然トマトの野菜ジュースは冷凍ものの輸入品だが、安全で栄養は十分だ。

 

「マスター、注文いいかしら?」

 

「なにうぉ!?」

 

カウンターに少し身を乗り出すようにしているハニーブロンドの長髪でダイナマイトボディの美女、M2HBの問いに思わず言葉が詰まる。

街に来たときは全身にプレートアーマーを括りつけたヘビーバトルアーマー姿だったが、その中身は絶世の美女だ。

しかもオフなのか格好も露出の多いへそ出しルックのミニスカート、少し身を乗り出した彼女の豊満な胸部に思わず目が行ってしまう。

豊満で柔らかそうな谷間に、首にかけたドッグタグを挟んでいてなんでも包み込んでくれそうな母性にあふれていた。

人類生存可能圏内で作られた戦術人形の見た目麗しい肢体と魅惑的な声色には、長年酒場を経営して来た百戦錬磨の彼をもうならせる完成度だった。

 

「何をお望みで?」

 

「天然物の酒を、銘柄はお任せするけど値段はほどほどのね」

 

「うぅん?そうだな、ならこいつでどうだ?」

 

人類生存可能圏内から出てきたばかりと言わんばかりに天然を押すM2HB、初々しい浮かれ具合だ。

天然物とはいえあくまで今手に入る物で再現しただけなのでいろいろ違うが、天然物は天然物なので合成品に慣れていると味わい深いらしい。

さてこの新人さんにはどれがいいかな?マスターは今ある在庫を思い出しながら少し考え、彼女にラベルのはがれた瓶を差し出した。

中身はキノコウォッカだ、戦前のウォッカを地下で栽培しやすいキノコを熟成させて再現した代用品である。癖のある味だが慣れると意外といける。

別の駅で作られた天然物で、地上の街で作られている酒に比べれば輸送費などの経費が掛かっていないので安い。

 

「キノコウォッカ、近くの駅で作られた天然物さ。値段はこれくらい」

 

「もらうわ、ハイ代金」

 

瓶一本分の酒の代金をさらりと払うと彼女は機嫌よく席に戻っていく、その足運びに女に飢えた男女の目が集中していた。

スケベ親父や若い男、拗らせた女の熱い視線に気づいたのかどうかは分からないがM2HBは思わせぶりに振り返りマスターに向けてウィンクした。

 

(こんな良い女を作りまくってドンパチしてんのか。向こうの奴らは分かんねぇな)

 

席に戻ったM2HBを見送り、何気なしにM2HBと同席する彼女たちを見ながら縁がないと思っていた人類生存可能圏内のことを考えて首を横に振る。

戦争以後、自分はパーク駅で暮らしてきた。戦争で故郷の街を焼け出され、店も何もかも失っても酒場への愛情からパーク駅で小さな酒場をやって日銭を稼いだ。

やがてハンターオフィスに雇われ、従業員までいる店のマスターになって、人形と呼ばれる見た目麗しい女とも接点はいくつかある。

最近では人形も種類が増え、銃器と密接な設計をされた戦術人形というバリエーションも増えてきた。そんな世界を見てきて思うのは、世界は着実に壊れてきてるのだろうということだ。

 

(ま、俺にはどうでもいい事か)

 

コーラップスが降りまかれ、核で世界を破壊したときから人間は壊れているに違いない。マスターにはそんな確信があった。

酒を傾ける彼女たちに幸運を、そして自分にもそろそろいい女性との出会いを。できればあのM2HBのような良い女がいい。

マスターもできる限りカッコつけてM2HBに向けて磨き終わったグラスを掲げて見せ、一向に背を向けた。

それを見てワルサーP38はニヤニヤする、M2HBに脈ありのようだと感じたのだ。

 

「いい雰囲気じゃないですか?」

 

「別に、あの人のノリがよかっただけよ」

 

「そうですかねぇ?」

 

ニヤニヤするP38にM2HBは先ほどまでの自分に少し恥ずかしくなって視線をグラスに集中させた。酒が入っているとはいえ調子に乗り過ぎた。

周囲から感じるいろいろな興味津々な視線から逃げるように、瓶のふたを開けて机の上の空のショットグラスにウォッカを注いでいく。

自分の机に置かれたグラスを満たすと、隣の席においてある席のグラスにも手早く注いだ。

グラスから香る強い酒の香りをかいだ奏太が、注がれた酒の正体に気付いた。

 

「お、この香りはキノコウォッカか。久しぶりだな」

 

「そう、近くの駅で作ってる奴だって。さ、乾杯しましょ!」

 

乾杯!と各々が酒を注がれたグラスやカップを掲げる。

 

「おー…おいしぃ」

 

「効きますねぇ」

 

「こ、これは…」

 

SASSと一〇〇式は一口飲んでからほっと息をつき、M3は無言で一気に煽った。

FALは少し顔を顰め、水の入った瓶を手に取ると中身をグラスに注いで水割りにしてちびちびと飲む。

M2HBも一気に煽り、喉を通り過ぎる熱いアルコールの感触と口に広がる人工的ではない複雑な味わいに思わず声が漏れた。

キノコウォッカの味を堪能していると、隣の席からカシャッとシャッターが切られる音がする。

目を向けると古い手巻き式カメラを手にニコニコしているコルトM1911と目が合った。

 

「元気ねぇ…それにしてもあれだけ派手に戦ったのに、話題にはなってるけど大騒ぎってわけじゃないのね?」

 

FALの言う通り、酒場の雰囲気はほんの数時間前に駅の近くで先頭があったとは思えないほどに日常を謳歌している。

あちらこちらから注目されているようだが、逆を言えばそれだけだ。

街が殺気立っているわけでもなく、警備兵が動員されているわけでもない、ちょっと騒ぎがあってそれで少し盛り上がっているだけだ。

現場で殺し合いをしていたM2HBからしてみれば大分異常に思える、一歩間違えれば街が壊滅していたかもしれないのだ。

 

「戦闘自体はいつものことだしね、寧ろあなたたちそのもののほうが話題性あるよ」

 

「あれでいつものこと?冗談だと思いたいわね…」

 

「あんな近くに巣を作られるのはめったにないけど、規模自体はたまにあるからね」

 

カメラをポーチに締まったコルトM1911の言葉に、改めてM2HBは経験の違いを感じた。ほんの数時間前に激しく戦闘をしたのに彼女達は全く堪えていない。

P38はニコニコ顔でエビのような肉のフライを頬張り、ナガンM1895とM14は互いにモヤシ炒めを食べさせあっている。

人間である奏太でさえ疲れを顔に見せず、静かにウォッカで口を湿らせながら真新しいハードカバーの図鑑をめくっている。

パーク駅前での激しい戦闘で不慣れなグリフィン組をフォローするために最前線で一番激しくノサリスと殺しあったとは思えないほどいつも通りだ。

自分は体の部品が軋んでいるような感覚を覚えているのに、恨めし気に奏太に目をやるとそれに気づいた彼は少し顔をかしげる。

 

「どうした?」

 

「疲れてるの、部品がギシギシ言ってる感じ」

 

「何?参ったな、予備部品でなんとかなるか?ここでIOP製は望み薄だ」

 

パーク駅にはIOP製の人形用部品を扱っている店はない。あるとすればジャンクやだがそれも望み薄だ。

そもそも人類生存可能圏外にはIOP社は展開していないので商品の流通がない。

探せばあるかもしれないが必要な部品だとは限らない、持ち出してきた部品でなんとかならないなら戦力外確定だ。

 

「問題ないわよ、疲れてるだけ。エラーコードとかは出てないわ、SASSだって大丈夫なんだし」

 

ノサリスとの戦いで一番傷ついたのは、ウォッカの酔いが回って頬を主に染めてニヘニへ笑っているSASSだ。

自己診断と触診で問題なしとされているが、体への負担が大きくかかったのは間違いない。

 

「だーいじょぶでーすよー、にんむのときはー、へるめっとー、かーなーらーず、もってきまーす!」

 

「ならいいけど、二人とも無理しちゃだめだよ?損傷は寝れば治るってわけでもないんだし」

 

コルトM1911の心配にM2HBは頷く。それと同時に彼女の『治る体』が少し羨ましくも感じた。

骨格などほとんどを生体部品に置き換えた故に、彼女たちは人間と同じように疲労するが自然に体の傷が癒える。

仮に先ほどの戦闘で自分の腕が折れてしまえば、M2HBは予備部品で少しは直せても基地に帰るまで戦力外だ。

もし何か起きて基地に帰れなければ、運よく部品が手に入らない限りずっと戦力外のままで過ごさなければならないだろう。

圏外にも互換性のある部品は作られているが、性能差があり慣らしやプラグラムをいじる必要があり時間がかかる上に性能も落ちる。

だがコルトM1911の体を構成する強化カルシウムの骨は人間と同じように治る、人工筋肉も治癒する。自然と元の性能で復帰できるのだ。

 

「後で再チェックするから大丈夫よ。それよりもいい加減脱いだら?」

 

「悪いな、このほうが落ち着く」

 

M2HBが指さす先、自分が来ているタクティカルサバイバルスーツを見下ろして奏太は肩をすくめる。

席を囲む笹木一家はタクティカルサバイバルスーツのままで各々が食事にいそしんでいるのだ。

その格好と仕草は酒場にすっかりなじんでいて、一仕事終えていつもの着慣れた服に着替えたグリフィン人形達のほうが少し浮いているくらいだ。

 

「普段着になったほうが休めるでしょう?駅なら汚染の心配もないんだし」

 

「極力洗濯物は増やしたくない」

 

意外と家庭的な理由だった。そういえば掃除洗濯などは一通りできる家庭的な男でもあったな、とM2HBは思い直す。

 

「そ、そう、ところでその本は?見たところ図鑑みたいだけど?」

 

「図鑑だよ、オフィスが出してる奴の最新版だ。一年も見てないといろいろ更新されてるよ」

 

奏太はモンスター図鑑の適当なページを開きM2HBの方に見せる。

青い鱗と皮膚を持ち赤いトサカがトレードマークのラプトル『ランポス』が見開きの片面を一杯に使われてきれいなカラー写真が乗せられていた。

そのページの次には全体的な身長、特徴、習性、生息域などが細かく羅列されていて読みやすく分かりやすい。

指揮官の持っていた古いタイプの文庫本サイズに載っていたのは白黒でやや簡易的な絵だったので、こうした詳細な資料は初めてだ。

 

「見てもいい?」

 

「どうぞ」

 

奏太から図鑑を受け取りページをめくる。モンスターの中でも特定の遺跡やその周辺に生息している種の専門書だ。

確認されているモンスターの詳細な写真から遠めの荒い写真、詳細なデータから不明が羅列されている種類まで様々だ。

U08の地下で発見されたイャンクックのカラー写真、おとぎ話に出てくるような赤いワイバーン、鱗が鋼でできているらしい黒いドラゴンなど見ているだけも面白い。

狩猟の難易度も記されており、狩猟に成功したチームや個人名のコメントが載せられている。笹木一家の名前も散見された。

あとがき部分を開くと、ハンターオフィスの編集部のコメントと調査協力を行った会社やハンターチームの名前が並んでいる。

この図鑑はまだまだ未完であり、生態系や謎を解明するため目下調査中であるとのことだ。

調査協力を行ったチーム名に笹木一家の名前もあり、尊敬する指揮官達の知名度に少しうれしさを感じた。

 

「すごいだろう?生で見るともっとすごいぞ」

 

「指揮官達もたくさん見てきたのね」

 

「あぁ、たくさん見てきた。調べて、戦って、勝って負けて逃げて知って、ここまで生き延びてきた」

 

奏太は何かを思い出したように微笑むと、ウォッカを飲み干した。

 

「ねぇ、このランポスって指揮官達の地元に多いの?生息域が朝霞周辺ってあるけど。それにこれ、ほとんど遺跡内部ってなってる」

 

「朝霞の近くには遺跡がいくつかあってな、その中の一つがこいつらの生息する巨大遺跡なんだ。

その中からあぶれて出てきた奴が、遺跡とその周辺をテリトリーにしてる。群れのボスに出会ったら中堅だって危うい」

 

「ボスが出てくるなんてそうそうないけどね。稀にイャンクックもあぶれ出てくるけど、一年に一度あるかないかだし」

 

魔境である、さらりと言っているがいつ巨大なドラゴンみたいな化け物が襲ってくるかわからない土地という事だ。

同時に彼らが今回の事件の初頭で恐ろしく怒っていた理由も納得がいく。U08の鉄血が暴走する所以となった連中は、彼の住む町の周辺にも手を出していたからだろう。

笹木一家が朝霞という町を気に入っているのは基地の全員が知っている。そして大切なモノを傷つけられた時の爆発力もだ。

 

「この上にもいるんでしょうか?」

 

ほろ酔い気味のM3から発せられた問いに奏太は首を横に振った。

 

「この辺りには居ないだろう、モンスターは自分からテリトリーになってる遺跡かその周辺に行かないと見かけないな。

ランポスは周辺地域の汚染が緩やかだから何とかなってるだけで、ほかの遺跡は汚染地帯のど真ん中だったり入り口が断崖絶壁だったりと立地が酷い所が多い。

それにクリーチャーやE.L.I.Dがそこら中にいるから自分から生息域を広げるのも難しい、遺跡の中のほうが住み易いから出てこないんだ」

 

「なかなかうまくはいかないものね」

 

「モンスターの住む遺跡はペイラン事件の余波か、核戦争の影響で出てきたもんだからな。この辺りならデーモンとハウラー、水辺にシュリンプ、あとはE.L.I.Dあたりだろう」

 

奏太はエビのような肉のフライ、メニューではシュリンプフライとなっている揚げ物を一口頬張る。

M2HBもそれにつられてフライに嚙り付く、プリッとした肉が口の中で弾けて甘みのある魚介のエキスが迸った。

合成物に比べれば味の深みと複雑さが違う、噛めば噛むほど味わい深くていくらでも食べたくなってしまう。

 

「E.L.I.D…戦えるでしょうか、変異が進んだ個体ですよね?この辺りのは」

 

「やり方次第だな、小型ならお前らの銃でなんとかなる。心臓か頭をぶち抜いてやれ、至近距離から」

 

一〇〇式の不安そうな様子に指揮官は不敵に笑うが言っていることは鬼畜である、相変わらず発想がおかしい。

 

「お前らなら大丈夫だ。鉄血相手に一歩も引かないんだから実力は十分、ノサリスだって退けたんだから自信を持ちな。

あとはアノマリーだが…これは現場で対応するしかない。どこに何が出てくるかなんて予想もできん」

 

「指揮官でもお手上げ何ですか?」

 

「お手上げだよ、一〇〇式。あれは本物見ないと―――」

 

「失礼します」

 

一〇〇式に説明しようと奏太が別の本を持ちだそうして、その先の言葉をよく通る男の声が遮った。

奏太の話を遮った声のした方を向くと、きっちりとした黒スーツのオフィス職員が二枚の依頼書を手にたたずんでいた。

 

「どうした?」

 

「笹木一家に指名の依頼です。緊急性のある依頼なので、今日中の返答をお願いします」

 

オフィス職員はM2HB達の机に二枚の依頼書を広げる。パーク駅の市長からハンターオフィス経由で笹木一家に出された指名依頼だ。

依頼は二つ、駅近辺に作られたノサリスの巣の駆除と地上の周辺調査だ。

ノサリスの巣の駆除は文字通り、巣の駆除とノサリスたちの殲滅だ。明日明朝からパーク駅警備部隊と共同して巣の破壊に赴いてほしいらしい。

また市長はそのノサリスたちが別の巣から移動して来たのではないかと考えているようで地上の周辺調査はその一環だ。

確認されている近辺のノサリスの巣やその他ミュータントたちの縄張りに異変がないかを調査して、最新のデータ集めてほしいようだ。

笹木一家にはその一つ、地上の建物内に作られた巣の偵察を依頼されている。本格調査前の事前調査のため、時間はかからない。

 

「明日、すぐに終わるタイプだな。値段は上々、現場体験にももってこいだな…どうする?やるか?」

 

M2HBはすぐに頷いた。

 

 




あとがき
パーク駅での一幕、次回で少しだけお外に行くよ。次回次々回くらいで帰りたいですな。
あと少し更新が遅れるかもしれない、忙しい時期になってきたんで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。