U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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ネタ満載というか文字通りのごった煮、ドルフロキャラいるにはいるけどやってることが全くドルフロしてないのでそれでも良ければどうぞ。




OS2・『とある仕事と演習と』

 

 

砂利が擦れる音が静かに響く、コンクリートの塀で囲われた修練場の中心で二人の少女が互いに獲物を構えてにらみ合っていた。

ワルサーサラの戦術人形であるサラはその音に耳を澄ませながら九五式軍刀を抜いて正眼で構える。

その向かいには紅蓮ともいえる濃い赤髪をツインテールにした活発そうな少女、彼女も一本の巨大野太刀を掲げるように構えて動かない。

どちらも動かない、互いに一片たりとも動きを見逃さぬと集中したまま相手を見つめる。何方も動けない、今は先に動いたほうが負ける。

赤髪の少女、CZ75が動けばP38のサラが放つ一撃がそれより早く彼女を切る。反対にサラが動けば、斬られる前にCZ75が彼女を斬る。

だから動かない、動けない、互いに一瞬の隙、一瞬の瞬きを待っている。

 

「…」

 

その様子を固唾を見守る男女の生徒たち。朝霞高等学校一年の生徒たちだ。

スタンダードな黒い学ランの男子と、襟や袖に赤いラインの入ったセーラー服の女子が20人ほど壁際に並んでいる。

その隣には夕晴高等学校、ニューカートンカレッジ、ロゼット女学院、プリムス工業学校の生徒たちも並ぶ。

その向かい側の壁で、朝霞剣術組合の重鎮たちに交じり笹木奏太はビシッと決めたスーツ姿のサラリーマンが肩の力を抜いて見物していた。

 

「どう思いますか?」

 

「サラが勝つ」

 

金髪碧眼、彫の深い欧州系白人のやり手サラリーマンを思わせる釣り目でキレのある瞳を持つ彼、辻本正樹は専用ベルトで固定した日本刀に手をやって唇を吊り上げる。

その中で、CZ75がにやりと笑って一歩前に踏み出した。砂利を大きく、そして思いっきり踏みにじる。瞬間、二人が動いた。

 

「だぁぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

CZ75の上段からの唐竹割り、それをサラはわずかに力を抜いた刀の刃で受け止め、弾いた。

そのまま素早く反撃、CZ75の首を狙い、外れる。CZ75がそれを察知して一歩引き、距離をわずかにとって避けたのだ。

再び剣漸が煌めき、二人の間に透き通った金属音が3度響く。サラの2連撃を弾いたCZ75が、すぐさま反撃に出たのだ。

 

「おぉぉぉおおおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

なにも小細工なしの横薙ぎ、だがその威力は変異しきった重装甲E.L.I.Dの首を一撃で叩き落とす。

受け止められるものではない、そして弾けるものでもない。ゆえに、サラは一歩引いて避けるしかない。それがCZ75の強みだ。

一歩引いたその隙にCZ75は振りぬいた大野太刀の勢いを殺さないように体を思い切り振りまわし、巨刀に見合わない速さでさらに逆袈裟切りを繰り出した。

 

「強化外骨格なしでこれかよ、ずいぶん鍛えたな」

 

「奈々子さん、前に負けたのが悔しかったらしくて…壊す前に止めましたけど」

 

「人形は見た目が変わらねぇしな。だが…これ依頼の内容にあってるか?」

 

大野太刀と九五式軍刀が交差し、鋭い剣劇が何度も交差する。今回、朝霞高等学校に依頼されたのはハンターを志望する生徒たちのための公開演習だ

しかしサラとCZ75は生徒たちの目など気にもせずに本気で斬りあっている、殺しはしないだろうが参考になるとも思えない。

なぜなら二人の次元が見習いにも劣る生徒たちとはあまりにも違い過ぎる、理解できるとは思えないからだ。

 

「北辰一刀流のサラ、薬丸示現流の奈々子、二人が本気でやりあうだけでも十分ですよ」

 

「脅しか?逆効果な気もするが…」

 

「えぇ、上には上が、そして実戦はこれよりはるかに危険、身をもって感じてもらいたいわけです」

 

「そのためにここまでするか?」

 

奏太は自分の周りでニヤニヤを隠せない剣術組合の重鎮たちから視線を映し、同じように集められた見慣れた姿を見て苦笑いする。

白スーツを着こなし、キリッとした面持ちで試合を見守る二天一流の女師範。

やや厭世的で浮世離れした白衣の女性とやや古いドレス姿で若干眠そうな目つきをした10歳くらいの金髪女子。

白い軍服をきっちり着こなす武士系ポニーテール犬耳女子と妖しい笑みを浮かべてにこにこしている長髪犬耳女子。

二人とも海軍らしい白い軍服をキチッと着こなしていて軍刀を腰に携えている。いろいろと豊満な肢体が男子生徒には目に毒だ。

身の丈ほどもあるチェーンソーのような刃のついた大剣を担いだ、狼の紋章をあしらったジャケットを着込む青年。

同じく背丈ほどもあるのこぎりのような大剣を担ぎ、青いパーカーを着込んだ褐色の少年が不機嫌そうにしている。

その横では青系のサバイバルスーツに戦闘用装備をがっつり付けた髭が似合うロシア人が居心地を悪そうにしている。

彼の周りが若い連中であふれていればそうもなるだろう、彼と同年代も同程度にいるのだが彼だけが席を離れてしまった。

周囲がお洒落で見た目がいい格好なのに彼だけ青系のサバイバルスーツに防弾チョッキやヘルメットとガスマスクを持った姿なのも居心地が悪いのだろう。

 

「フェンリル極東支部、太平洋連合、朝霞剣術組合、メトロレンジャー…よくもまぁこんなに」

 

「街にいる暇な人に片っ端から声をかけたようでしてね」

 

「学長の悪い癖が出たか、先生とあの子まで引っ張り出してくるとはねぇ」

 

朝霞高等学校の学長を務める知り合いのとんでもない人脈と手加減を知らないやり方に天を仰ぐ。

本人に悪気はないし集まった面子も了承済みなので問題が全くないというので責められない。

各所のハンターオフィス、会社、組織などにまっとうな仕事として話を持ち掛けて向こうも了承しているからだ。

知り合いの人外どもが総出でやってきているのはまるで何か起きるような不吉さを覚える。

事実、ハンター志望の学生たちの意識改善を目的とした演習は強い暇人の集う突発的総当たり戦と化していた。

この規格外どもを相手にさせられる身にもなれ、悪気なしにけらけらするであろうぽっちゃり系の中年を思い浮かべて呪う。

 

「平和な証拠ですよ、こうやって集まれるだけ面白いですし」

 

「この世の終わりの総力戦直前の間違いじゃねぇか?」

 

「それはそれ、それもまた面白い」

 

「面白いってお前ね…」

 

こいつも悪い癖が出ているな、奏太は内心ため息をついた。彼はなんでもポジティブに考える悪い癖があるのだ。

それこそなんでも明るく考える、危険度の高い仕事でさえも楽しみを見出して嬉々として飛び込む命知らずなのだ。

 

「きぃぃぃいいいいいいぇぇぇぇぇえええええええッ!!!!」

 

「え、ちょぉ!?」

 

一瞬の隙をつかれたサラの腹を奈々子の大野太刀が捉える、刀身を横にした打撃攻撃をしたたかに受けたサラの体が浮く。

その光景はまさにホームラン、したたかに下腹部を救い上げられて数メートル殴り飛ばされたサラはそのまま仰向けに倒れる。

彼女がおなかを痛そうにさすりながらすぐに上半身を起こすと、奈々子は勝ち誇った表情で人差し指を立てて笑った。

 

「よし、一本!」

 

「奈々子!もう少し手加減ってものをですねぇ!!」

 

「お前相手に手加減ができるか、やるなら勝たねぇとな?」

 

「もー!真っ二つになったらどうするつもりですか!シャレにならないんですよ!!」

 

「人形なんだからそんくらいじゃ死なないしくっつくだろ?」

 

「そういう問題じゃないでしょう、手加減覚えてくださいよ」

 

「やってられっか!」

 

「やれよ!」

 

勝負がついたので互いに武器を収めつつもぎゃんぎゃん言い合う二人に周囲の目は微笑ましそうに緩む。

 

「私の勝ちですね、お先にどうぞ」

 

「仕方ねぇなぁ…」

 

奏太は頭をぼりぼりと書きながら腰に差した訓練用のマチェットの位置を調整しつつ訓練場の中心に出る。

次の対戦相手が誰かは知らないが、さすがに相手は選んでくれるだろうと思って少し気楽にしていると相手側の待機列から出てくる対戦相手を見て思わず二度見した。

 

「よう、久しぶりだな奏太。元気してたか?」

 

「リンドウかよ、ウルマンに代われ」

 

「Слишком‼」

 

「嫌だってよ?」

 

身の丈以上もある愛用の赤いチェーンソータイプ神機の代わりに、それを模した訓練用の摸造剣を軽々担いでやってきたちょっと軽薄な見た目のイケメン。

その雰囲気に似合わぬ多大な経験と実力を持ったフェンリル極東支部の切り札、雨宮リンドウの変わらぬ軽口に奏太も軽口を返した。

なんでよりにもよってコイツなんだ、フェンリル極東支部の神機使い達でもトップクラスの実力で並みのアラガミじゃ手も足も出ないくらい強い。

そんな強敵相手に自分はマチェット一本だ、本気で勝ちに行くなら突撃銃と各種装備がないと話にならないというのに。

 

「OK、だがやるとして長引くのはよくねぇよな、棄権していい?」

 

「たまにはいいじゃねぇか、付き合えよ。いつもデカブツ相手でこういう機会は少ないんだぜ?」

 

「お前のそれに俺マチェット一本だぞ、弱い者いじめだと思わないか?」

 

「平気だろ」

 

リンドウの体僅かに揺れる、それを見た奏太は正対させていた体を一歩横にずらし真上から振り下ろされた摸造剣をかわして幅広い刀身を左足で踏み倒して地面に踏みつけようとした。

リンドウがすぐさま摸造剣を引き戻したので、踏み損ねた足を無理に止めずに踏みつけて軸足にしながら小さくリンドウに向けて跳躍。

その勢いに乗せて右上段回し蹴りでリンドウの側頭部を蹴りぬこうとして、リンドウにその足を掴まれて止められた。

 

「ほら見ろ、結構本気だったのにこれだ」

 

「よく言うぜ、止めやがって。相変わらずとんでもない反射神経してやがる」

 

並みの戦術人形なら完璧に入るはずだった回し蹴りをたやすく受け止めてはたまらない、相変わらずフェンリル極東支部の神機使いはいろいろと可笑しい。

旧日本にはびこる化け物たちと対抗するために、体を改造してきた神機使いはほとんどが人間をやめているようなものであるが。

 

「そろそろ放せよ。握りつぶす気か?」

 

「あ、悪い、加減しそこなったわ。これでいいか」

 

「いや放せよ、握りながら器用に力抜くとかすんなって」

 

「こら暴れんなって。やなこった、放したらラッシュだろ」

 

「ソンナコトシナイヨー、マッタクウゴカナイノニアバレテルナンテシッケイナー」

 

「嘘つく気ねぇな?」

 

「そだね」

 

がっつりと握られている右足で力任せに体を持ち上げ、左足をリンドウに首に巻き付けようと伸ばす。

瞬間、それに気づいたリンドウがノーモーションで右足を突き飛ばすようにして奏太を投げ飛ばした。

左足が空を切り、姿勢を崩した奏太は投げられた衝撃を転がりながら殺しつつ追撃してくるリンドウの振り下ろしをよけてマチェットで彼の顔に反撃の突きを出した。

それを見たリンドウは頭をずらして避ける、普通の人間なら殺せる自信があったが神機使い相手では訓練用の手加減した突きにしかならない。

 

「あぶね、容赦ねぇなぁ本当に。普通の人間なら死んでたぞ?」

 

「お前はゴッドイーターだからこれくらいでいいだろ?それに弱者と強者の戦いは一方的にやるかやられるかって相場が決まってんだ」

 

「手加減しろって」

 

「してる余裕ないし、棄権できねぇなら不甲斐ないとこ見せたくない」

 

「おーおー、やっとその気になったか?逃げるお前を追っかけるのは骨だからな」

 

なぜなら拮抗したら地力の差であっという間に負けるから。戦車一両と対戦車歩兵一名の戦いといえばわかりやすいだろう。

普通に考えて戦車に歩兵は勝てない、火力、装甲、人数、どれをとっても戦車が有利だ。たとえ対戦車兵器を装備していても真っ向勝負で勝てるわけがない。

しかし待ち伏せなどの戦法を考えれば話は一気に変わってくる、入り組んだ市街地などでの待ち伏せと奇襲などは典型だ。

その時戦車と歩兵は撃ち合いになることなく、歩兵はほぼ一方的に火力を叩き込んで戦車に勝つ。

 

(んなこと言っても、まったく勝ち目が見えんなぁ…こいつライフル弾だって避けられるし)

 

顔を逸らすことで刃をぎりぎりで避けるリンドウに連続で突きを出しながら、その攻撃で視線を誘導しつつ真下から顎へ蹴り上げをを仕掛ける。

足払いはリンドウに気付かれたが、その勢いを使って回転しながら立ち上がり後転しながら立ち上がって姿勢を直した。

リンドウの目の色が変わり、模造剣を肩に担ぐようにして半身になり前傾姿勢をとる。それを見た瞬間、奏太は咄嗟にマチェットをリンドウの突進予想進路に投げつけていた。

だが神機使いの突進はその程度では止まらない、リンドウは模造剣を使うことすらせず首の動きだけでマチェットを避けて模造剣を振り被る。

その左ほほに奏太は思い切り右ストレートを叩きつけて迎撃した。右こぶしから腕に走る確かな手ごたえは、ただの人間なら首の骨を折れるくらいだろう。

だが神機使いとして体を改造したリンドウは殴られた反動でよろけつつも、追撃を受けないように即座に飛びのくくらい元気だった。

奏太もすぐさまリンドウの懐に飛び込む、相手が規格外の神機使いとはいえこの至近距離なら距離くらい詰められるし大剣相手ならば思い切り距離を詰めてのインファイトが一番相手にしやすいのを奏太は昔の先輩から学んでいた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

結論から言えば笹木奏太は雨宮リンドウに負けた、想定したとおり一撃で終わった。

拳を握り超至近距離からのラッシュアタックは、奏太の思惑通りリンドウの顔を殴り続けたのだがそれで倒せるような軟な男ではなかった。

分かっていたからこそ、強化できても軟な部分である脳みそを揺らし続けたのだが訓練では使える火力に限界があった。

結局は一撃だ、避けても避けても次がくる神機使いの圧倒的な体力を前に根負けし重たい一撃を背中に食らって一撃で倒された。

その一撃の痛みがまだ残っている、昼の仕事であったあの試合が終わって夕暮れが近いというのに。

日暮れが近い商店街を歩く奏太は、隣を歩くサラとウルマンの雑談を聞き流しながら背中をさする。

 

「うんまい、やっぱり景色が違うと色々新鮮でいいね」

 

「あんまり食べると晩御飯が食べられなくなりますよ?」

 

「食わなきゃ損だぜ、せっかくこっちに来たんだから」

 

笹木一家行きつけの肉屋で売っていた出来立てコロッケを立ち食いするウルマンは心の底から美味しそうにほほを緩ませる。

実際、彼にとっては新鮮でおいしいのだろう。任務でもなければ彼らメトロレンジャーがモスクワ周辺から出てくることはほとんどない。

モスクワ周辺は第3次世界大戦で廃墟化していて地上部は荒廃しきっており、多大な汚染区域が広がっており人の住める環境もほとんどないのが現状で人間の居住可能区域はほとんど地下に限られてしまっている。

そんな場所で十年以上も暮らしてきた彼にとって、この地上でこんな風に買い食いするというのはめったにないのだ。

それを咎めるサラも本気では言っていない、そうしたほうが面白いからそうやって喋っているだけだ。そんな二人が奏太は非常の羨ましい。

二人はいい汗かいていい経験していい稼ぎになった、しかし自分はリンドウに痛めつけられた上に彼についてきた勧誘員に長ったらしくフェンリルへの入社を勧誘されて心身ともに疲れ果てた。

 

「…そんな目で見んなって、嫌ならうちに来いよ?お前らなら大佐も歓迎してくれるぜ?」

 

今一番聞きたくない言葉を吐いたので無言でアイアンクロー、ふざけた口を開いたウルマンの顔面を鷲掴みにして少し足が浮くくらいに持ち上げる。

常人なら大体この時点で悲鳴を上げるのだが、ウルマンはモガモガ笑って体をよじった。

 

「わかったわかった、悪かったから下ろせって!」

 

「よろしい」

 

「相変わらず動きの読めん奴…お、焼き芋だって?ジャガイモじゃなくてサツマイモ?これ甘いのか?ほぅほぅ」

 

「ウルマン、懲りないんですからもぅ…奏太?今日をお夕飯の献立は?」

 

「生姜焼き」

 

奏太は肉屋で買ったバラモンの肩ロースが入った買い物かごを揺らして見せる。献立は生姜焼き、みそ汁、白米、千切りキャベツを添えたシンプルな献立だ。

今日は疲れたのであまり手間は掛けたくない、生姜焼きは漬け置きに手間をかければあとは焼くだけで便利だ。

今日も喜んでくれるかな、一緒に食べるだろう他の3人の事を思い浮かべていると不意に背中に痛みが走って表情が歪む。まだリンドウに負けて殴られた位置が痛むのだ。

 

「大丈夫か?まだ痛いのか?」

 

「痛いよ…あいつ、加減ミスりやがった」

 

「派手にぶっ叩かれてたもんな、今の日本はあんなんばっかか?でかい剣振り回してよ」

 

ウルマンの言葉に奏太の脳裏には知っている今の日本、フェンリル極東支部が思い浮かんだ。

 

「剣じゃなくて銃もあるぞ、M2みたいなのから大砲までいろいろな」

 

「戦前もイカレてるとは思ってたがメトロのほうがマシだなおい」

 

「サカキ博士は北蘭島がなければ全世界アラガミカーニバルだったかもしれんと言ってたな」

 

そうなる前から化け物だらけだったがそこはそれ。北蘭島から今なおあふれ出るコーラップスが、アラガミの元であるオラクル細胞を日本列島とその周辺に押しとどめているのは確かだ。

これがまた厄介なのだがやはりそれはそれ、これはこれ、今は関係のない話である。

 

「リンドウさんもまた腕上げてきましたよね、あの人ってどこまで強くなるんでしょうか?」

 

「最近じゃソロで暴れることも多いそうだ、向こうも何かやろうとしてんだろうな」

 

ちなみに旧日本は朝霞周辺に比べたら気色が違う危険度だ、少なくとも段違いで酷い場所なのだがそれによるメリットもあるので何ともしがたい。

もし自分が単身で同じことをしようものなら確実に死ぬだろうな、奏太は彼の姿に自分を重ねてみてやれやれと首を横に振った。

 

「ちなみにお前を雁字搦めにしたレナちゃんのご両親、元東京エリア出身のPMCだ」

 

「化け物狩りの英才教育を受けた第3世代か?道理で強いわけだ。いきなり目が真っ赤になったのは何事かとは思ったがそういうことね。世界はおかしくなっちまってるな」

 

モスクワの汚染は非常にひどくそこら中に化け物がはびこっているが、逆に言えばそれだけで物流が改善された現在ではほかの地域と比べたら住みやすいだろう。

空調が生きているメトロに潜っていれば空気はきれいであるし、モスクワの地下鉄網は設計通りに巨大シェルターとなって化け物や汚染から守ってくれる。

戦争後の混乱期から物資の不足や思想の対立で人間同士の争いが絶えなかったが、外部との交流が再開された今は一部の紛争路線以外は平和なモノだ。

 

「そういうモスクワはどうなんだ?」

 

「だいぶ良くなったよ、いくつかの路線や駅は復興したしだいぶ飯もうまくなった。せまっ苦しいのは変わんねぇけど、空気も良くなったしな。

最近じゃ新入り達も良く帰ってこれるようになったから空気も明るい、でもレッドラインと帝国が相変わらずで困ってるよ」

 

「まだ帝国は頭蓋骨を測ってるんですか?懲りない連中ですね」

 

帝国はいわゆるネオナチのファシスト、レッドラインは昔ながらの共産主義、どちらも奏太にはなじみが浅くて大まかにしか理解できていないが少なくとも合わないのは確かだ。

帝国は前にモスクワに潜ったとき、戦術人形のサラたちを見てミュータント扱いしてきたくらいだ。常識が戦前で止まっているとはいえひどい扱いである。

 

「最近じゃひどい連中も出てきてな、金と商品の両方を徴発とか言って全部巻き上げてやがるんだ」

 

「全部ですか?野盗じゃあるまいし。金があるなら普通に買いにくればいいじゃないですか」

 

「探すよりある所から奪うほうが早い、そんなところか?ハンザの例もあるから下手に吹っ掛けるなんてできねぇんだろ?」

 

おう、とウルマンは頷く。外部との取引で物流が潤ったのはいいが、その恩恵にあずかれない路線のちょっかいでウルマンの所属するメトロレンジャーはかなり忙しいようだ。

そんなことをすれば商人や物流が先細りになって自滅するのが目に見えているが、それを思いつくようなトップがレッドラインや帝国にはいないのかもしれない。

モスクワメトロで外部との大きな取引がある駅は少数で、朝霞の街では定期的な取引がある環状線の『ハンザ同盟』と北方路線の『エキシビジョン駅』が有名だ。

特に現地で流通している通貨としての『弾薬』との交換レートを最初に定めたのがハンザ同盟で、レートも厳正に管理していることもあって外部からの取引もしやすいこともあり潤っているのである。

 

「その通り、おかげでキャラバンが奴らを避けて危ない路線に行っちまうとかあって大変だぜ。ファシストも最近意固地になってるしよ」

 

「現場が暴走してるんですか?奴らの頭だってやりすぎたら首を絞めるだけってわかってるでしょうに」

 

「あいつ等だってバカじゃねぇよ。お前らの話が広まって、D6の件が落ち着いたらすぐに遠征隊を出してたさ」

 

曰く、ファシストのとある遠征隊が一番成果を上げたのだがその成果がヴォルガ川まで行ってツァーリフィッシュに渡河を邪魔され、アノマリーに装備を丸焦げにされ、這う這うの体で逃げ込んだ集落はカルト教団、そこから逃げたらデーモンに上空からアンブッシュされたそうだ。

彼らの精鋭20名は壊滅、モスクワに逃げ帰りレンジャーの地上基地にたどり着いて無事に自分たちの司令部まで逃げこんだのは僅か5名であったという。

ほかの組織や駅も余裕があったところは冒険心を出したが、ほとんどはモスクワを出ることすらかなわなかったらしい。

 

「そのルート、アノマリーのおかげで暴走兵器とか寄ってこないですし、川の商人もくる場所ですから楽なほうなんですけどね」

 

「だからビビってんだよ、生き残りの話が事実な上にそれがまだマシだってのが知れ渡ってな。実際、ハンザの商人が別ルートで外に出た話してるからなおのことだ。

お前たちがカバガンとキャノンホッパーの残骸を持って帰って来た時は俺もビビったんだぜ?こんな馬鹿げたのがうようよしてんのかってな」

 

「まだ弾が効くだけマシな奴だがな。お前が買い出しに出されたってことは、なんかあったんだろ?」

 

「そうなんだよ、どっかのバカが線路に悪戯しやがってヴォルガ行きを出せなくなったもんだから俺がここに向かわされたわけだ!

ウォッチャーに追っかけられるわ、カルトどもに追っかけられるわ、サイ見たいなロボットに追っかけられるわ…しまいにゃ演習に参加させられて女の子に雁字搦めときた。まったく退屈しねぇよな」

 

長距離移動用に改造されたモンスタートラックでモスクワから一路この朝霞に向かわされたのは、それなりに知識があって実力も確かなレンジャーゆえだろう。

それに朝霞の街ならば知り合いがいて買い物もしやすいとなれば、彼が苦労するのはほとんど規定事項だっただろう。

 

「メトロに引きこもってるよりは健全さ」

 

「帰りは絶対楽してやる」

 

「そうしろそうしろ、臨時収入もあったんだしな。おっと、ここに用があるんだ」

 

「そうか、じゃ俺はあっちだから。またな」

 

奏太とサラが小さなジャンクショップも前で止まると、最初からここで別れることを聞いていたウルマンは軽く手を振りながら人ごみの中に消えていく。

この街ができてからある店で今も昔も雑多なジャンクをまっとうな価格で扱っている店で、二人はここに撃っているジャンクを見定めに来たのだ。

 

「ん~~~やっぱりないね、ごめん」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

店内に入ると狭苦しいジャンクでごちゃごちゃの店の奥からまるで映画から出てきたような赤を基調とした古典的な軍服を着る女性とすれ違った。

わずかに左足を引き摺りながら歩く彼女に奏太たちは一歩入り口から外に引いて道を開ける。彼女はそれに小さく礼を言いながら通り過ぎた

珍しいことがあるものだ、人形を見る目に関しては自信のある奏太はすれ違ったリーエンフィールドMk4の戦術人形の背中を見送りながら不思議に感じた。

 

「珍しいですね、この辺りで純正IOP機体を見るとは。しかもエリートタイプですね」

 

「あぁ、新顔にしちゃ随分と急ぎだな」

 

つまりそういう事なんだな、と彼女の強行軍を想像しながら肩をすくめつつ店内に入る。

店内は相変わらず様々な部品が展示されていてごちゃごちゃしていたが、品ぞろえに関しては上々な店だ。

ハンターオフィス直営店や各種製造企業、地元の職人などの直売もあるがこの店は安くて信頼できるいい店だ。

店の奥にはレジがあり、せま苦しい部品で囲まれたレジには困ったように腕を組む初老のおやじがいた。

 

「よぅ、ハーレム野郎。何が欲しいんだ?」

 

ニヤニヤ笑うひげ面のおやじ、この店の店主に奏太は肩をすくめ、サラが応対する。嫌味ではないいつものやり取りだ。

 

「部品を買いに来たんですよ、ハートビートセンサーの拡張パーツ、手に入りました?」

 

「センサー部品ね、待て待て、お、あるぞあるぞ。ソフィーか旧軍規格、だな」

 

「ソフィーを」

 

「あいよ、ヒナ!Bの3番にあるセンサーモジュールもってこい!」

 

あいあいさー!と舌足らずな少女の声が奥から響く。

 

「ところでさっきの彼女、一体何買いに来たんでしょう?見た限りまだ純正の体でしたけど」

 

「そりゃ部品を買いに来たんだ、IOP製脚部駆動パーツ、しかも純正ハイグレードモデルときた」

 

「あーそりゃないわな」

 

ここは人類生存可能圏外、純正のハイグレード部品となるとめったに流れてくるものではない。

IOPは人類生存可能圏外で部品を販売していないので、流通は限られており必然的にジャンクか密輸の横流しだ。

一般的に流通しているのは圏外企業が規格を合わせた物で、頑丈だが性能に関しては幾分劣る。

そのためここに暮らす人形はほとんどが魔改造を行っているのでメーカーサポートはとっくに適用外の人形ばかりである。

 

「鉄血製のならあるしソフィー製アダプターと一緒に進めたんだが嫌な顔されちまったよ」

 

「なんだジャンクでも出したのか?」

 

「バカいうな、ハイエンド用の上物だぞ。今出せるのはSP88の駆動系、整備も完璧だ」

 

「SP88?珍しいな、そんなものが流れてくるなんて」

 

「前に売りに来たんだがそれっきり買い手がつかん、今日は売れると思ったんだがな」

 

SP88『エクスキューショナー』の脚部パーツとなれば普通に高級品だが、この店は初見に嫌味な真似はしない。彼女ならば買えるから勧めたのだろう。

互換性もソフィー製アダプターならば安全だ。ソフィーは人形のメッカともいえる街で、鉄血製とIOP製に互換性のある部品を作っている。

 

「そんな上物を断ってるなんて…ガタが来てるだろうに。普通じゃないな」

 

「あぁ、まずはアウトーチあたりで慣らしてくるもんだ」

 

人類生存可能圏内に近い街であるアウトーチならばまだ部品が手に入りやすい、軍や密輸業者がそこで売りさばくことが多いのだ。

人形ならそこで圏外に行く準備を整えてからさらに外側に足を運ぶのが常道とされている。

アウトーチから外に向かい、人類生存可能圏外から遠ざかるたびに正規部品の流通は少なくなり、価格も高くなるからだ。

 

「あったあった!センサーモジュールB3番だー!」

 

元気で幼げな口ぶりで店の奥から紫色の髪をした少女が顔をだす、油で汚れたグレーのツナギ姿の鉄血製戦術人形リッパーだ。

 

「笹木のだんなにおくさま、いらっしゃい!」

 

「ヒナちゃん!?奥さまなんて、まだはやいですよもぅ!」

 

「あだ!?」

 

「なはははは!」

 

魔改造戦術人形であるサラに背中を思い切りはたかれては奏太も情けなく悲鳴を上げるしかない。

その漫才じみた光景にリッパーのヒナはけらけら笑う、子供っぽい愛嬌のある笑い声で不快に感じさせない温かみがあった。

 

「旦那ぁ、どうですぅ?毎日しっぽりとしてるんですかぁ?」

 

「少なくともお前んちには負けてないな」

 

「ほぅほぅ、ならもうちょっとだねぇ?」

 

ちなみに彼女は人妻であり、結婚2年目、子持ちの母である。夫はこの店の2代目、店番をしている父親にはあまり似ていない。

 

「どうなのさぁ、ここ♡昨日もかわいがってもらったんでしょ?」

 

「それならうれしいですけど…でも、まだ心の準備が」

 

「では先輩ママさんからアドバイスしてあげよう!」

 

ヒナはムフフと笑い、二人で少しカウンターから離れるとサラの肩を抱き寄せて顔を近づけると小声で何か吹き込み始める。サラはそれを聞いて顔お真っ赤にしながらも熱心に質問を返す。

何を話しているのかは聞き取れないが、聞かないほうがいいのだろう。女性の猥談は男には刺激が強すぎる。

ジャンク屋の親父もそれとなく目をそらし、それとなく所用を思い出したと言って店の奥に引っ込んだ。

逃げた親父についていこうかとも思ったがそうするとずっと話していそうな雰囲気がある、それも困るので奏太は少し様子を見て話が切れそうなタイミングでヒナに問いかけた。

 

「そういうお前の旦那はどうした?」

 

「娘とお散歩、うちの子はお散歩大好きだからな」

 

奏太は友人である彼女の夫に同情した、二人の子供は一度散歩に出るとなかなか帰りたがらない。気が済んで寝るまでひたすらぶらぶらすることになる。

母親の彼女に似ていてとても活発な女の子だ、もし歩くようになったらきっと毎日大騒ぎに違いない。

 

「お前もたまには相手してあげてくれないか?あの子も懐いてるし」

 

「暇ならな、はい代金」

 

「まいど、なら今度遊びに行くね」

 

いつでもどうぞ、と奏太は返事をして商品を受け取ると店の外に出る。外は少し日が傾てきている、もう少しで夕焼け空になるだろう。

まだ少し時間がある、帰りにオフィスによって仕事でも探そうかと考えているとちょんちょんとわき腹を突かれた。

振り返るとサラが少しそわそわして内股でもじもじしている、その姿に奏太はすぐに察しがついて胸の内に熱を感じた。

 

「その、あなた?私、少し疲れちゃいました。休憩しません?」

 

サラが頬を赤らめながら、ふと少し遠くにあるビルを指さす。路地を二つほど挟んだ先にあるのは歓楽街の一角だ。

当然ながらこの街にも夜の街というものは存在し、風俗店や恋人たちのためにホテルといったものはいくつもある。

昼は静かだが夜になれば一晩中明かりが消えることはない。今なら空いているしいい部屋も安いだろう。

奏太は彼女の手を取り、指を絡めて握りしめる。積極的な彼女の望みを叶えるのも彼氏の務めだ。

何も言わない、彼女の気持ちはよく分かってる。奏太は頬が少し上気するのを感じながら、その手を引いて歓楽街へと足を向けた。

その日、晩御飯は少し遅めになったのは言うまでもない。

 

 

 





あとがき
OSシリーズ第2弾、自己満足の特盛とワルサーP38のサラとのデート。たぶんこんな感じで大体どっかでヤッてる。魔改造戦術人形組は性に大変積極的なのです、エロが嫌いな人はいませんね?

今回は何気ない日常、朝霞では集まる連中が連中なので何かしら愉快なことが起きてる。出した連中はほとんど好きなキャラを集めただけです。
某3つの名言の人は言わずもがなですが、ロシア人も大人しいほうですが十分強い。どんなもんかは原作にてどうぞ。
この下手な描写でどこのだれかわかったら私はうれしい。過去にもいろいろ組み込んでますぜ(暗黒微笑)


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