U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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コラボ最終話です、いやぁ楽しかった。時間軸はギルヴァが去っていった当たりから分岐した感じ。
一緒に戦った人たちとちょいちょい触れ合いつつ物資配達に行きます。



コラボ番外編2・Operation End of Nightmare 3

 

 

「誰かのために戦い、誰かのために涙を流す悪魔もいる、か…なら何も問題ないじゃないか」

 

ギルヴァが残して言った言葉を考え、小さく微笑む。心配し過ぎだ、姿が変わろうがそれで彼らが変わることはない。

ギルヴァはギルヴァだ、ブレイクはブレイクだ、味方なら何も言うことはない。ただ生まれが少し違う、単純明快なそれだけの話だ。

すでに遠くに見えるギルヴァの背中に、聞こえないことを承知で奏太は返答した。

 

「お前はお前だよ、ギルヴァ。そもそも今更じゃないか、フードゥルやグリフォン、エージェントだっているだろ?」

 

敵なら人間だろうが人形だろうが関係ない、悪魔だろうがミュータントだろうが変わりがない。

それは味方だって変わらない。ギルヴァは悪魔だが味方で友人だ、デビルメイクライの面々だってそうだ。

もしかしたら彼は内心不安だったのかもしれない、その程度で揺らぐほど繊細な精神ではないのだが。

 

「へっ、嬉しいこと言ってくれんじゃねぇかよ。笹木の旦那」

 

「グリフォン?どうしてここに?」

 

「ちょいと顔を見たかったのさ、この作戦でイカレたことやった男の顔をな」

 

「イカレ…悪かったな、最後の方じゃあんま役に立てなくてよ」

 

悪い奴ではないのだが、やはりちょいちょいと癪に障る言い方をするチキン野郎だ。

しかしあまり役に立てなかったのも事実、最後の戦いでは終始、雑魚の掃討と援護射撃を送るだけで手いっぱいだった。

激しくぶつかり合う悪魔化したS11指揮官とギルヴァ・ブレイクの猛攻に突っ込むことができず、しかも危ない所を救われた。

S09Pのノアの超火力の一撃や、M16A4のような思い切りのいい突撃といったこともできなかった。

この体たらくでは、むしろ彼のように話のタネに使う程度で済ませてくれるのはむしろ幸運だろう。

 

「なぁに言ってやがんだおめぇ、寧ろなんでまだ生きてんのか不思議なくらいだぜ」

 

「なにおぅ?」

 

「うわ…無自覚かよ。あのアラマキって爺さんだってパワードスーツ着こんでたってのに、あんたのそれただの戦闘服だろ?重ね着してるようにも見えねぇ」

 

「ただのっていうわけじゃない、対アノマリーとか汚染対策はされてるしな」

 

「そんな装備で平然と悪魔をぶっ殺しまくってるのがやべーんだよ。あの戦術人形ちゃんたちだって苦戦してんのに、あんたらバンガードも殺したらしいじゃん」

 

確かに苦労はしたがグリフォンがそこまで驚くようなことだろうか?上位タイプならばともかく、下級の3種類は慣れればいくらでも狩れる。

U05基地の面子も訓練すればさほど苦戦することはないだろう、上位種との戦いは注意が必要だがそれも訓練次第でどうとでもなるはずだ。

 

「奏太、準備できたぞ。ナギサ指揮官のところに行こうではないか?」

 

「おや、グリフォンさん。どうしてこちらに?」

 

「おぅ!こっちのナガンにP38か?こっちもごっつい装備してんな」

 

「斬られたいのか?チキン野郎」

 

「…ついでに口も悪い、元はおんなじなのにこうも違うってすげぇな」

 

S09P基地とS10基地のナガンM1895と比べているのだろう。それは当然だ、生活環境も経験も全く違う。

今も服装はタクティカルサバイバルスーツにそれぞれツインショートブレードと九五式軍刀を携えている状態だ。

 

「あっちはあっち、うちはうちじゃよ。で、うちの旦那の何喋っとったんじゃ?」

 

「へ?旦那!?お前、結婚してたのぉ!?」

 

「あぁ、ほら」

 

手に付けたままだったタクティカルグローブを外し、ポーチの貴重品入れにしまっていた結婚指輪を薬指に嵌める。

ナガンM1895はすでにつけていたのか、タクティカルグローブを外してグリフォンに指輪を見せつけた。

 

「こりゃ驚いた、ギルヴァの野郎にも教えてやろ!このロリコン野郎!!」

 

「サラ、市代、美奈ともしておるぞ」

 

「…あー、笹木、どんまい」

 

「なんでそうなるんじゃ!?」

 

「斬っていいですか?」

 

「やーめい、それよりもほら、マンティコアが追い付いてきてるぞ」

 

撤収が進む野営地の奥から、輸送用コンテナを背負い小型銃器ケースとタンクを背負ってのそのそと歩いてきた作業用マンティコアを指さす。

無感情なカメラアイが追従目標になっているナガンM1895とP38を捉えている、マンティコアには感情のあるAIは積まれていないのだがその視線は呆れているように見える。

のっしのっしと足を踏みしめて歩いてくるグリフィンマークのマンティコアを見て、グリフォンが感嘆の声を上げた。

 

「おー、鉄血のマンティコアだ!動くやつをまじまじ見れるって変な気分だな、武器ついてないけどバリエーション違いって奴?」

 

「作業用だ、鉄血から分捕ってCPUを丸ごとベルゲン社製に取り替えてる。サラ、物は?」

 

「火炎放射器と燃料、軍用規格消毒液です」

 

「予定通りか、消毒液のタンクには要注意だな」

 

「消毒液ってあれか?くせぇって奴。ギルヴァも嫌な顔してたぜ」

 

どうやらこの正規軍正式採用品は悪魔も唸らすようだ、もしかしたらあの悪魔も消毒液で撃退できたかもしれない。

マンティコア上部に積載されたタンクの位置が気になったのか、ショートブレードを抜いて峰の方で位置を調節していたナガンM1895がタンクを小突きながらグリフォンに言った。

 

「嗅いでみるか?タンクの接続部分から嗅げるぞ」

 

「いいや結構、遠慮しとくぜ。シーナちゃんのとこ行くのか?だったら俺も一緒していいか?楽しそうだ」

 

「構わんじゃろ。なぁ、二人とも」

 

問題はない、奏太とP38はすぐに頷いた。グリフォンのことは結構気に入っている、一言多いが憎めないいい鳥だ。

無線でシーナに物資を融通してくると告げてから、三人と一羽と一台はのんびりと撤収作業の行われている野営地に繰り出した

マンティコアの頭部に器用に留まったグリフォンは、羽を繕いながらP38に問いかけた。

 

「そういや他の二人は?」

 

「撤収準備を手伝ってますよ。おや、あれはワイルダー社長では?」

 

「本当じゃな。んん?怯えてる?」

 

野営地から出てすぐ、撤収作業中のコンテナに隠れるようにして周囲をうかがう。リホ・ワイルダーの姿を見つけた。

何かにおびえているように少し挙動不審で、非常に周囲から浮いている。

奏太はグリフォン達にちょっと言ってくると声をかけて、リホに近づいた。

 

「よぅ、こんなところで何やってる?」

 

「ひゃぃ!?あ、さ、笹木さんかぁ。驚かさないでや」

 

「別に驚かすつもりはなかったんだがなぁ」

 

なぜかびくびくしているリホに奏太は首をかしげる。これは何かやらかした奴の反応だな、となんとなく察した。

何をしたのかは知らないがこの様子だとすでに釘を打たれているのだろう、ならば別に何も言うことはあるまい。

 

「何したかはしらんけど、やりすぎんなよ?ちょうどいい、渡したいものがあるんだ」

 

「肝に銘じとくわ…なにかの?」

 

「これ、レールガンの運用データだ。向こうで動かした分も入ってる、良ければ―――」

 

奏太はポケットから取り出したフロッピーディスクをリホに向けて差し出す。

すると、リホは目の色を変えてそのフロッピーディスクをひったくった。技術屋だねぇ、こういう所は。

 

「ほんまか!?おおきにな!!早速確認しなければならん!!」

 

「次の奴を楽しみにしてるぜ」

 

「またなぁ!」

 

興奮が抑えられないのか、先ほどまでびくびくしていたのがウソのようにルンルンと去っていくリホ。

あれは思い出した時のぶり返しが酷そうだな、と考えていると後ろから声をかけられた。

 

「あんた、あいつとも仲がいいのか?」

 

「その声は…M16A4か」

 

振り返るとそこにはこの作戦に従事した珍しい男性型戦術人形『M16A4』の姿があった。

リホに思うところがあるらしく、敵意をにじませた視線で彼女の背を追っていた。

 

「あいつがどんな奴か知ってるのか?」

 

「ほどほどには」

 

「知っててつるんでるんだな。いや、あんたの基地にはドリーマーもいるから今更か…危険だと感じないのか?」

 

「だとして、どうする?」

 

少し声に力を入れ、微笑みながら彼を強く見つめる。その視線に気圧されたのかM16A4はたじろぐが、すぐに持ち直して睨み返してきた。

よく訓練されている、そして若い、なかなか筋のよさそうな人形だ。

 

「何かあったら、俺は容赦しない。鉄血は敵だ」

 

「どうぞご勝手に」

 

「…やりにくいなあんた、それだけだ、じゃぁな」

 

去っていくM16A4に軽く手を振って見送る、彼がどう動くかはわからないが仕掛けてくるなら話は早い。

敵なら殺せ、もし今のリホに手を出したのならば彼は敵だ。最悪の場合は戦うことになるだろう。

あいつも大変だな、奏太は小さくため息をついているとグリフォンがさっきのやり取りを見とがめて問いかけてきた。

 

「ずいぶんと剣呑だねぇ、なんかあったの?」

 

「さぁね、あっちに何か思うところがあったんだろ」

 

「危ない若造じゃな…斬るか」

 

「やめてください」

 

まぁその時はその時だ、奏太はすっぱり思考を切り替えて再びS10基地の天幕の方へ歩み出す。目的地にはすぐについた。

S10基地の天幕は、撤収が始まっている各基地の応援部隊用の物と違ってまだ片付けがなされていない。

これからS11基地の本格な調査を行うため、部隊の再編の補給で忙しそうに人形や要員たちが動き回っていた。

その中の司令部として使われている天幕で、シーナ・ナギサ指揮官はタブレットを片手に難しそうな顔をしている。

長話はしないでさっさと仕事を終わらせたほうがよさそうだ。

奏太は作業用マンティコアに運んできたものを物資用天幕内に卸すように指示してから、荷物の中からクリップボードに挟まれた書類を取り出して彼女に歩み寄った。

 

「ナギサ指揮官、お時間を頂戴しても?」

 

「あ、笹木さん。どうぞ、どうしたんです?」

 

「前にお話しした火炎放射器と消毒液を届けに来ました、こちらにサインを」

 

奏太はクリップボードを差し出し、ナギサのサインを書類に書いてもらう。これで仕事は終わりだが、奏太は彼女が今後どうするのか気になった。

 

「ナギサ指揮官、今後どうするつもりで?」

 

「とりあえず基地の調査です、そこから先はその結果で決めようかと」

 

「そうですか。気を付けてください、連中の残したトラップがあるかもしれません。もし何はあればいつでもご一報を」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それでは」

 

奏太は彼女に一礼して天幕を出る。S11指揮官がどうしてこんなことをしたのか、それを解き明かすのはS10基地の仕事だ。

だが同時に、U05基地が設立された理由を思い出して大きなため息が出てしまった。

ヘリアンの懸念通り、グリフィンは鉄血にかまけすぎていろいろ脇が甘くなっている節があった。

出なければここまで大規模なことにはならなかったはずだ、基地一つが丸々侵略されているなんて普通はバレるはずだ。

悪魔の仕込んだ偽装装置があったとしても、物資の流通や人の出入りはどうしても避けられない。調べれば何かしらぼろが出る。

グリフィンにも内部監察部門があるが、それにもかかわらずこうして大ごとになるまで看破できなかったのだ。

しかも基地のトップである指揮官までもが悪魔となり襲ってきたとあれば、事態はかなり深刻であるというよりほかにない。

悪い前例ができてしまったのだ、グリフィン上層部は隠蔽に走るだろうが基地一つ丸々をつぶすとなってはすべてを遮断することも難しい。

 

「どうやら、ヘリアントス上級代行官の懸念は間違っておらんかったようじゃな」

 

「あぁ、まったく嫌になる」

 

「どういう意味?」

 

U05基地がなぜ設置されたのかを知らないグリフォンが首をかしげる。どうやらまだ行動を共にする気らしい。

次の目的地は少し静かなほうがいいのでグリフォンのような騒がしいタイプは歓迎されないかもしれない。

 

「グリフォンさんは知りませんよね、うちは元々甘くなったグリフィンの脇を埋めるために作られた節があるんです。

今は鉄血と派手にやってますけど、そっちにかまけすぎてて脇ががばがばになっちゃってるからだそうで。

その隙を利用していろいろと悪いものが入っちゃって来てるんですよ、麻薬だの、武器だの、ミュータントだの」

 

「へー、あーそうか、じゃなきゃここまで派手にできねぇわな」

 

人間だってバカじゃねぇんだし、とグリフォンも納得がいったらしくうんうんと頷く。

 

「喉元過ぎて場なんとやら、ってやつかね?ゾンビみたいなので大変らしいじゃん」

 

「熱さも忘れる、だ。鉄血を相手にし過ぎてE.L.I.Dを忘れたのかもな」

 

「その結果がこれだよ!って奴かい?」

 

「たまんないですよねぇ、また忙しくなりそうです」

 

まったくだ、本格的に基地が稼働したら仕事三昧になりそうで嫌になる。ハンターとしては依頼があることに越したことはないが、それでも限度はあるのだ。

これはまた圏外に出て物資を買ってきて基地の増強を図らなければならないかもしれない、そんなことを考えていると一行は救護所の前に差し掛かった。

理由もなくこちらに足を向けていたわけではない、ここにも少し用があるのだ。

救護所の方に目をやると、出てくるUSPコンパクトの姿が目に入った。迎えに来たらしいノアに付き添われており、足取りは少し重そうだが元気にはなったようだ。

 

「USPコンパクト、もう大丈夫なのか?」

 

「ん?誰だよあんた?」

 

「笹木奏太、ハンターチームの笹木一家を率いてる。U05に間借りしてるんだ、よろしく」

 

本調子ではないUSPコンパクトを守るようにノアが前に出てくる。

ノアのことは作戦開始前にも見かけてはいたのだが、向こうはそれほど印象がなかったらしい。

 

「あの航空支援の奴の指揮官か、何の用だ?」

 

「正確には違うんだが…ま、お見舞いにな、話はフランから聞いてる」

 

「元気かー?お嬢ちゃん」

 

「そりゃどうも、デビルメイクライの鳥野郎と…んん?」

 

ノアは少し警戒した様子で奏太を睨み、次いでグリフォンに目をやってからナガンM1895とP38を見て目を瞬かせた。

視線を追うと、当り前のように吊るしているナガンM1895の双剣とP38の九五式軍刀に目が吸い寄せられていた。

こんな武器を吊るしているのは珍しいのだろう、それに気づいたP38は軽く首を傾げた。

 

「どうしました?」

 

「刀を使うP38は初めて見た、その…M1895もな」

 

「琥珀でいいわい、そっちのと被るじゃろ?」

 

「私もサラと呼んでください」

 

「そうか、ならよろしく。サラ、琥珀」

 

ノアは二人に向かって右手を差し出し、ナガンM1895とP38と握手を交わす。すると、少し驚いたような顔をしてその手を見つめた。

あれ?俺嫌われちゃってるかな?と苦笑しつつ考えていると奏太の目に少し居心地悪そうにしているUSPコンパクトの姿が目に入った。

 

「ま、あっちはあっち、で、調子は?」

 

「はい、おかげさまで…今回はありがとうございました」

 

「俺は何もしてない、お礼ならG11たちに言ってやってくれ。無事でよかった」

 

直接場面を見ていたわけではないが、少しだけ護衛していたM16達によれば相当危険な状況だったらしい。

本人は薬で意識を失っていたうえ、その薬も普段使っているものよりも強い物だったらしいのだ。

いくら人形でもあまりに強い薬を使えば、電脳に大きなダメージを与えることもありうる。

今回のPTSDの発症も含めて、ほかの基地の要員ではあるが状況を把握してやれることはやっておきたかった。

 

「あ、よかった。まだ居ましたね、指揮官もご一緒ですか?」

 

ここにいるはずのない聞き覚えのある声に振り返ると、救護所に向かってU05のイングラムM10、G11、Vz61スコーピオンが向かってきているのが見えた。

おかしい、3人は搭乗していた一式陸攻に乗って一足先にU05基地に帰ったはずだ。

 

「イングラム、どうしてここに?」

 

「USPさんのお見舞いに来たんです、こっちには迎えにヘリに便乗しました。でもどうやら時間はなさそうですね」

 

イングラムは穏やかに肩をすくめる。ヤークトフントの支援をした彼女たちには思うところがあったのだろう。

その彼女の脇から元気よくスコーピオンが飛び出し、USPコンパクトの手を取ると有無を言わさず持ってきたビニール袋の持ち手を差し出した。

 

「ミレルークのカニ飯おにぎり、差し入れだよ!帰りにでも食べてね」

 

「ミレ…?」

 

「いいからいいから!持ってって!」

 

やや押し気味にぐいぐいとスコーピオンは小柄なお弁当箱を詰めたビニール袋を彼女の手に握らせる。

その勢いにUSPコンパクトは目を白黒させていた、ぐいぐい行くスコーピオンを見かねたイングラムが彼女の肩を叩いて落ち着かせる。

 

「すみませんね、USPコンパクト。辛いこともあるでしょうが、がんばってくださいね」

 

「深くは知らないけどさ、あんた凄いよ。あとその…ごめん、仲間に強く当たっちゃって」

 

申し訳なさそうに謝るG11、それをUSPコンパクトは微笑んで受け取り気にしないでと返した。

G11は安心したように息をつき、やがていつものように眠そうに目をこすった。

 

「USPコンパクト、負けちゃだめだよ。いいことを教えてあげる、どんな時でも考えることをやめちゃダメ、諦めたらそこで終わりなんだから!

ノアさんだっけ?これ、うちの連絡先。化け物に関しちゃうちは専門だから、手伝えることがあったら言ってね。いろいろ揃えてるから」

 

「お、おぅ…」

 

G11を押しのけ、スコーピオンはUSPに励ましの言葉を贈るとノアの手に連絡先を書いたメモ用紙をしっかりと握らせる。

基地の無線周波数からハンターオフィスの正規依頼窓口などの基地関連とスコーピオン個人の連絡先が書いてあるようだ。

 

「よし、じゃぁ長居は無用!また今度ね、指揮官も寄り道しないで帰ってくるように!」

 

「お先に失礼します、お元気で」

 

「おさきー」

 

騒がしいスコーピオンたちはいう事とやることを終えるとあっという間に帰ってしまった。

 

「なんつーか、嵐みたいに通り過ぎてったな」

 

「悪い、騒がしくしちまった」

 

「いや、スコーピオンってどこでもだいたいあんなだろ。むしろ安心した」

 

「そっか、ならよかった」

 

Vz61スコーピオンという戦術人形は素であんな感じで、どこの基地でも大体騒がしいようだ。

USPコンパクトはスコーピオンから受け取ったお弁当箱をまじまじと見つめた後、申し訳なさそうな表情で見つめてきた。

 

「無理しなくていいさ。でもまぁ、気持ちだけは汲んであげてくれないか。あいつら、ただ励ましたいだけなんだ」

 

フランシスとS09P基地のユノ・ヴァルター指揮官とのやり取りを誰かが聞いていたに違いない。

そこからドリーマーあたりに確認を取って今回のちょっとした突撃を提案したのだろう。それが理解できないUSPコンパクトは首を傾げた。

 

「どうしてそんなことを、あなたたちとはまるでつながりがないのに」

 

「無いし、深くまでは知らない。だからと言って放っておけなかったんだ、あいつらは」

 

ミュータントを相手にする仕事では、大なり小なりこういう事案の被害者を目にする。その心を傷の大きさも、深さもだ。

イングラムやスコーピオンに至っては最初の事件の当事者だ、U08の事件で仲間を失うことはなかったが二人は大きく心に傷を負った。

それ以上の傷を負っているかもしれないUSPコンパクトのことを考えると何かしてあげたかったのだろう。

 

「これは君の問題だ、だから俺達ができるのは応援と、ちょっとした助言だけ」

 

それだけのためにいこうして馬鹿をやっている。ミレルークのおにぎりを押し付けたのも『食っちまえば怖くない』とかなのだろう。

彼女がどんな経験をしてきたか、どんな暮らしをしてきたのか詳しくは知らない。けれどわかる、感じたことはある。

S09P基地のUSPコンパクトはどんなに苦しくても耐えてきた、悲しくても、寂しくてもここまで来た。

人形はつらい記憶を消してやり直すことができる、人間にはなかなかできない記憶の消去を簡単にできてしまうのだ。

けどそれを彼女はしなかった、つらい記憶も、楽しい記憶も全部ひっくるめて抱えている。辛くないはずがない。

自分のことは自分が一番わかっているだろうに、それでも彼女はこの戦いに参加したのだ。

 

「君は自分で挑戦できた、乗り越えようとした。それだけでもすごい事だ」

 

「でも私は、みんなに迷惑を…」

 

「そうだな、でもまだ生きてる。死んでない。迷惑かけたなら謝りゃいい、そうだろ?」

 

奏太はノアに目配せすると、彼女はニヒルに笑って腕を組んで胸を張る。

S09P基地で起きた多くの戦いを切り抜けてきた。仲間同士の絆は強いに違いない。

 

「君には次がある、生きている限り次がある。死んじまったら謝ることもできないんだ。それを忘れるなよ」

 

どんな悪夢も終わりがある、永遠に続く夢なんてないのだから。

 

 

 




あとがき
はい、コラボ作戦はこれにて終了。本家よりも遅れてしまいましたがたたみます。
いやぁ、楽しかった。展開には悩みました、何やらせようか、どう動かせば違和感ないかとか。
一回事故起こしかけてパニックになったし…いい経験になりました。
白黒モンブラン様、およびご一緒した作者様方、お疲れさまでした。



ミニ解説

ミレルークのカニ飯おにぎり弁当
U05基地の食堂で作られているお弁当、大きめのおにぎり二つと天然モヤシの酢漬けが入っている。
ミレルークのほぐし身を合成米と一緒に炊き上げたカニ飯をふっくら握ったおにぎりは食べ飽きない家庭の味。
天然モヤシの酢漬けは人類生存可能圏外『アウトーチ』からの輸入品、まじりっけなしの天然素材。
お値段はリーズナブルに日本円にして400円(税込み)

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