U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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さぁやりたい放題のお時間だぜぇ!(今更)最近ドクターも兼任したので忙しいですが元気です…イベントもあるからなおさらですわ。
このお話から笹木一家などの一部キャラクターの表記が変わります、わかりづらいって言われちゃった。



第17話・次の依頼を受けましょう

U05基地の改装が終わり、本格的に稼働し始めたが特に大きなことはなく平穏である。何しろ運用用途が特殊になったとはいえ基地の活動はあまり変わらない。

ミュータントやE.L.I.Dが出没すればそれを倒し、時折発見できる鉄血の部隊も始末する。

補給の要である汚染地帯を走る道路と境界線の検問を守るという業務もあるが、こちらも普段は平和なものだ。

G11によって『国道』と名付けられた道路は常日頃からU05基地の車列がパトロールしており、通るだけならば比較的安全だ。車から出ないで一直線に抜ければ、スリリングなアトラクションが楽しめるだろう。

そんな中で一部の建物では非番の暇な人形たちでにぎわっていた。基地の一般開放スペースとされた区画にある、二階建ての建物、以前はフードホールだった建物は今や改装されてこの基地の特徴ともいえる設備になった。

その名も『U05基地臨時ハンターオフィス』基地の本格始動が開始されるという事は、臨時ハンターオフィスも開店するということである。

そのハンターオフィスの中に、笹木一家の市代と琥珀の姿もあった。オフィスが開設されたのならば、本業である自分たちがいかなければ話にならない。

二人はいち早く依頼を確認して受領するために先んじてオフィスに足を運んでいた。奏太たちはほかの仕事を片付けてから合流するため、合流は少し後になるだろう。

臨時オフィスの内装は市代の慣れ親しんだ、依頼受注用デスク、依頼掲載掲示板、雑貨屋、飲食スペースが一つになっている。

どの設備も新品でピカピカ、依頼受注用デスクや掲示板にはまだ何も張られていない。

まさに出来立てほやほやのピカピカ、今まで慣れ親しんだどこかうらぶれてたり、荒々しかったりするような感じは全くしない。

おしゃれなカフェをもう少し欲張ってみました、といった雰囲気だ。

 

「これがハンターオフィス?なんか不思議ですね」

 

「そう?どこもこんな感じだよ?」

 

「そうなんですか?FALさん」

 

始めてオフィスに踏み入れたステンの問いに同じように見物に来ていたFALは物珍しそうに見まわしていた顔を彼女に向けて、少し考えてからうなづいた。

 

「そうね、向こうのはもうちょっと薄汚れてたけど」

 

FALの言葉にナガンM1895の琥珀も頷く。アウトーチやパーク駅のオフィスは片付けられてはいたが全体的に汚い、様々な人間が出入りを激しく行う以上どうしてもそうなってしまうのだ。

また建物のほとんどは戦前から残っている頑丈な所を再利用しているのがほとんどなので年季が入っておりどれだけ手入れをしてもそんな雰囲気が残ってしまう。

それに比べればこのオフィスは出入りが全くなく新品同然なので異様なほど奇麗なのである。

 

「U05ハンターオフィスへようこそ、ご用件はなんでしょうか?」

 

受付に行くとこれまた新人集漂う奇麗な担当人形のはきはきとした挨拶、メイド服を着こんだ顔見知りに市代は首を傾げた。

 

「レイチェル、あなたが担当なの?」

 

「はい!オフィス担当に任命されまして、普段はこっちで依頼の精査や管理を担当することになりました。

私のほかに、ホリーとクライン、B440が担当になってます。どういったご用件でしょうか?」

 

「依頼を受けに来たの、いいのはある?」

 

「あー…すみません、いただいてはいるんですがその、まだ整理途中でして」

 

がーんだな、出鼻を挫かれた。そんな市代のどこかの個人輸入業者のような雰囲気を感じ取ったのか、レイチェルは代案として併設された雑貨屋の案内を提案した。

雑貨屋は基地内に設置されているコンビニを原型としており、日用雑貨など様々なものが売られている。お菓子やジュースも完備されており、お菓子コーナーとなっている棚を見ればいつものごとくFNCがせっせと籠に陳列されたお菓子を放り込んでいた。

いつもの光景とはいえぶれないな、市代がかぶりを振っているとFNCの頭に琥珀の小さなげんこつが振り下ろされた。

 

「こら!初っ端から買い占めるんじゃない!」

 

「えー!でもお菓子が私を呼んでるんだよー!」

 

「みんな買うんじゃから自制せよと何度も言っておるじゃろう!チョコバーを箱買いしておいて足りんというのか?」

 

「それはそれ、これはこれ!」

 

「次の仕事、その癖治るまで省くぞ?」

 

「なんで!?」

 

汚染されたお菓子にも食いつきそうな勢いだから仕方ない。圏外では戦前のお菓子も流通しているが、戦前に生産されたものは大体汚染されている。作った国によっては元から放射性物質を混ぜ込んでフレーバーにしている産物まであるほどだ。

お菓子への情熱はある意味執着とも言えるほどある彼女のことだ、たとえ注意しても隠れて食べているに違いない。そんなことになれば絶対に彼女はおなかを壊してしまうだろう。

目の前でイヤイヤしているFNCの籠に入っているお菓子は合成品の安全なものばかりで、子供が食べても問題がない。それに慣れた圏内の人形の内臓にとっては劇物に近いのだ。

 

「…後でコーラを買ってやる、今はそれ戻せ」

 

「コーラ!?わーい!」

 

FNCは大喜びだが、琥珀が一瞬悪い顔をしたのを見て市代はすぐに彼女が何をする気なのか思い至った。

そういえばこれの話はしたことないか、棚ボタに喜んでお菓子を棚に戻すFNCを見て何とも言えない気持ちになる。

 

「もしかしなくてもあれよね?本気?」

 

「一本開ければ懲りるじゃろう。向こうで仕入れてある、混ぜればわかるまい」

 

「やめなって、絶対泣いちゃうってば」

 

何も知らずに飲めばFNCは痛い目を見る、それくらいしないと収まりそうにないのがFNCのお菓子ジャンキーっぷりだ。

琥珀の言うように彼女が買いすぎるせいで基地の売店からお菓子が消えることも多い。

尋問用に用意したアレを最初に飲むのが仲間であり友人というのはやるせないので市代は琥珀を止めた。

琥珀はやれやれというように小さく息を吐いて了承した。

 

「そこまで言うなら仕方ない」

 

「もぅ、琥珀ったら…ごめんごめん、ほかにはどんな風になってるの?」

 

ほったらかしになってしまったレイチェルに市代は謝る。レイチェルは気にしてないといって紹介を再開した。

 

「雑貨屋は小物だけじゃなくて武器弾薬、装備類の注文もできるようになってます。

こちらの端末を使えば、武器庫の方に注文を行えますのでよほどの物でなければ数分でドローンにより配送されてきます」

 

臨時オフィスという都合上、訪れるかもしれないハンター用の武器弾薬も扱うシステムもしっかり構築されている。

武器装備保管庫に併設された社内販売スペースからドローンでカウンター内に配達され、レジの担当者から渡されるシステムだ。

認証にはハンターライセンスかグリフィンの社員証か許可証が必要となり、誰でも彼でも販売するようにはなっていない。

比較的基地内でも不特定多数の人物が出入りする為、安全面を考慮して本物の武器弾薬は置かずにレプリカやホログラムで扱っている品を紹介しているのだ。

 

「さすが内地、ハイテクじゃな。カタログもタブレットを使っておるのか、常に最新の情報になっておるのぅ」

 

「うーん、物足りない。モノを買うっていうのはこう、さ。実物見て、触って、なんというか駆け引きがなきゃ駄目じゃないかな?」

 

どこかの個人輸入業者のようなことを言い出す市代、趣味が商店街巡りなので物の売買には結構うるさい。

 

「一応安全面は考慮しないといけませんから。あ、もちろん物の買取もしてますよ。いらない武器やスクラップ、もちろんアーティファクトなどもぜひお持ち込みください!」

 

「アーティファクトまで?まぁ、ちゃんと適正価格で売り買いできれば文句はないけど…」

 

「もちろん適正価格で双方笑顔で、です!さぁ、ほかにも見てください、武器弾薬だけじゃありませんよ!!」

 

雑貨屋の内装も充実しており、生活雑貨や狩り用の小物、特別な許可のいらない装備品や払い下げ品に至るまで多くを完備している。

売り買いは販売用のドローンが常駐しており、来客さえあればすぐに回転する24時間営業だ。

 

「あ、服まで売ってる。すごいねこれ」

 

市代が目に留めたのは一角にある衣料品売り場、一般的な下着から部屋着のスウェットなどの普段着類が主だ。しかしよく見ると、奥まったところに見慣れた制服がひっかけられている。

IOP正式採用品の人形用制服、戦闘で傷ついたダミー用などを補修したリサイクル品のようだ。いわゆる払い下げ品である。

この基地所属の人形用の物が出品されており、よく見るとM4A1セットなども販売されていて限定品という札がかけられている。

 

「こちらはグリフィンの払い下げコーナーとなっておりまして、人形用の衣装が主となっております。サイズは少ししか調整できませんが、その分お安くなっておりますよ」

 

「偽装に使えそうじゃが…まぁ今更か」

 

「もちろんIOPの許可ももらっています」

 

「許可あるならいいのか、まぁ見た目はコスプレ品じゃしな。おぅ!?なんじゃこりゃ、鉄血のものまであるのか?」

 

琥珀の視線の先、IOP製人形セットの掛かっている衣装棚の隣には見慣れた紫や白黒モノトーンの衣装が多くかかった棚がある。

どこからどう見ても鉄血製人形の衣装だ、下級人形のリッパーやイェーガー用の服が主力だが限定品としてハイエンドセットも売られている。

特にこの地域では数が少ないエクスキューショナーやハンターのセットは一品ものと札がかかっていた。

 

「夢子さん監修の鉄血衣装ブースです、放棄された基地や撃破した人形の衣装から復元しました」

 

「売れそう、こういうの好きそうな人結構いるし」

 

「え、これ人間が着るんですか?」

 

ステンが驚いて目をぱちくりさせる。グリフィンの人形も攻めている格好が大勢いるので今更だと思うが、市代はあえて口にしなかった。

いつも夫をつけ狙っているスペクトラM4はビキニとスカートという半裸状態がデフォルトである、目のやり場に困ると彼も裏では困っていた。

 

「何分いつ死ぬかわからん世の中じゃからな、覚えてもらいたくて突飛な格好してるやつも多いんじゃよ。ハンターなんかまさにそれじゃもの」

 

この世の中ではいつ死ぬかわからない、それならどんな形であれ自分がここにいた証拠を残しておきたいと思うし悔いを残さないようにもしたい。

夫と思い切ってイチャイチャするのだってそれが理由だ、互いにいつどうなるかなんてわからない。ならばやりたいことはやる、だからくっつく。

服も同じだ、恥ずかしくても興味のある服があれば臆さないで着る人がいて、服やアーマーにこだわる人もいる。そういう系統のハンターたちからすればここは垂涎の売り場になるだろう、彼らはいざとなればお金を使うことを惜しまない。

そんな話をしているとレイチェルの持っていた無線機が小さく鳴動し、彼女小さく謝ってからそれを取ってやり取りをする。

 

「依頼の整理が完了したそうです。戻りますか?指揮官たちも到着したようですよ?」

 

ついにこの時が来たか、市代と琥珀はこの基地で初めて張り出される依頼に少しワクワクしながら頷いた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

どうしてこうなった、奏太はハンターオフィスの片隅で頬杖を突きながら目の前で真剣に掲示板に張り出された依頼書を見つめる仲間たちを見つめながら考えていた。

笹木一家を指名して発注された通常依頼が張り出された掲示板を見上げているのは、本日暇人であるグリフィン人形たちだ。

秘匿を依頼者が望むなどの特殊な仕事でない限り、指名依頼であっても依頼された本人が知り合いのハンターに助力を依頼することは多々あるのでこういった回し読みはたいして問題ではない。

笹木一家も指名依頼を請け負った際、報酬の何割かを折半する契約でほかのチームを仕事に引き入れたことはいくらでもある。

ただこんな風にわいわいがやがやと自分のチームに来た依頼をキラキラした目で見つめられるのは初めてだ。

 

(掲示板にフリー依頼が掲載されるなんてここじゃしばらくないから、空気づくりにはいいのかな?)

 

本来は特定の氏名がないフリー依頼が掲示される掲示板だが、ハンターオフィスの知名度が消え失せているうえに基本グリフィン経由での依頼になる圏内ではすぐに依頼が掲載されることはない。

オフィスから回される圏外のフリー依頼もわざわざここで募集するようなものではないから来ることもないだろう。実質、しばらくは笹木一家の専用状態だ。

それに自分からこの仕事に行きたいと立候補してくれるならば、奏太としてもつれていくメンバーを選ぶ必要がないからありがたい。

奏太は合成カフェオレを一口飲み、さらに頭を悩ませる手元の依頼ファイルを見つめて小さくうなる。オフィスのカフェ担当であるホリーが入れたカフェオレは甘さ控えめかつクリーミーでおいしい。さすが元カフェ勤務経験のある人形が入れたカフェオレだ。

とはいえ、沈みつつある気分を慰める程度にしかならない。

 

「大丈夫?おっぱい揉む?」

 

隣に座るM1911の美奈が心配そうにのぞき込んできたのでとりあえず返事をする代わりに望みどおりも左手を伸ばす。

服越しでもわかる魔性の揉み心地である、自分でも気づかない程度にしかめっ面だった表情が緩むのを感じた。

揉んでいた手を彼女の肩に回してさりげなく抱き寄せると美奈は恥ずかしそうにうつむいた。

近くの席に座っていたサラがクスリと笑い、市代と琥珀はニマニマ笑ってGOGOと手ぶりを示す。ノリノリである。

いっそのことそうしてこの目の前にある自分を悩ます原因から目をそらしたくてたまらない。

テーブルの上にあるのは掲示板に掲載するべきではない笹木一家指名の依頼だ。それが一番悩ましい、困った依頼なのである。

 

「指揮官、決めました!」

 

かわいらしい妻を堪能しているとスペクトラM4がうきうきした様子で掲示板から依頼書を引っぺがして持ってくる。

依頼書は見慣れた形式で、依頼内容、依頼者、依頼の詳細または挨拶などという構成だ。

 

『依頼・指定対象の捜索と排除

依頼人・フェンリル社

やぁ笹木君、久しぶりだね。君たちの活躍はこちらでも耳にしているよ、そちらも大変そうだね。

今回君に依頼したいのはユーラシア大陸に上陸したアラガミ、もといE.L.I.Dの討伐とサンプルの回収だ。

縄張り争いで負けた個体が逃亡を図った際、何を考えたのか海を渡ってそちら側に行ってしまったんだ。なかなか興味深い事例だろう?

本当ならうちの第一部隊を送り込みたいところなんだけど、対象をロストしてしまっていてね。発見したらでいいから頼むよ。

上陸地点は旧韓国の釜山、ルートは定まってはいないものの人口密集地であるそちらを目指している可能性が高い。

いつも通りで構わないけど、もしコアを確保できたらボーナスをつけるよ。でも無理はしないように、無理そうなら知らせてくれるだけでいいんだ。よろしくね』

 

ふんす、と鼻息を鳴らして依頼書を差し出すスペクトラに奏太は頭を抱える。しかも知り合いの無駄にあやしい博士からの依頼だ。

やっぱり持ってきたか、隣に座る美奈をちらりと見ると肩をすくめて首を横に振る。

 

「ダメ」

 

「そんなー」

 

「たとえお前が5人いても無理だ」

 

資料は読み込んでいるはずなのでスペクトラは相手がどんな化け物は分かっているはずだが、それでも彼女の意欲は削がれないどころかブーストされているらしい。

自分の力量を考えて取捨選択してもらおうと思って混ぜたのだが、そんなことはお構いなしのようだ。

ただでさえ鈍っているのがこの前の合同作戦で理解できたのにこれである、長距離移動で消耗したヴァジュラとはいえルーキーを連れて戦うなんて自殺行為でしかない。

フル装備+αの笹木一家5人がかりで殺せる相手である、それも乱入された日には地獄が確定だ。スペクトラの実力では間違いなく死ぬ、傷一つ与えられないままあっさりと返り討ちだ。

 

「それにしてもヴァジュラなんて珍しい、まさかまた?」

 

「勘弁してくれ、あんな奇跡は二度とない」

 

過去の依頼でヴァジュラや同系統の敵と戦い、最後は核爆発に巻き込まれ、なのになぜか生きてる不思議を思い出して奏太も遠い目をした。

 

「じゃぁ次だな、こいつをやらないか?」

 

がっくりとうなだれたスペクトラを避けて依頼書を差し出してきたのはM16A1、どうやら二つやりたい仕事があるらしい。

 

『依頼・指定品の捜索と確保

依頼人・シドロヴィッチ

お前さんに頼みたいことがある。そっち側から輸入しようとしたちょっとしたものを探してくれないか?

そっちではいい腕の運び屋を雇ったはずなんだがめっきり音沙汰がない。もしやらかしたようならケジメをつけてやってくれ。

物は少し大きい、背中に背負える金属製コンテナだ。IOPのロゴが入ってて、裏にロシア語でシドと書かれているはずだ。

中身は詮索するな、ちょっと性能のいい警備装置を個人輸入するだけだ。グッドハンティング・スタルカー』

 

まともな依頼である、どうやら知り合いのトレーダーが輸入しようとした何かが奪われてしまったらしい。

添付された資料と見比べてから添付された資料に目をやる、背中に背負えるくらいの大きいコンテナのようだ。

まずは運び屋を探し出して話を聞く必要があるだろう。もう一枚のほうに目をやる、これも同じようなものだ。

 

『依頼・指定品の捜索と確保

依頼人・ネクロフィリア博士

やぁ笹木君、相変わらずいろいろやっているようだね。とりあえずはやく死体になってくれないか?だめ?まぁいい、今はね。

依頼はそちらで作られた鉄血製の新型制御モジュールだ。ずっと前に輸入するつもりだったんだが、知ってのとおり蝶事件のせいでうやむやになってね。こちらに届くはずがパーさ。

だからあきらめてたんだが、実はそのモジュールがある倉庫はまだ無事らしいんだ。連中が何かする前に何とか持ってきてくれないかな?報酬は弾むよ。

それから追加報酬で鉄血の部品とかも確保してくれたらグレードに合わせて追加報酬をつけるよ、ただし危ないウィルス入りとかは減額するからね』

 

変なところで鉄血が出てきたな、奏太はふと妙な縁を感じたがすぐにどうでもよくなった。鉄血も以前は会社だったのだ、その時に裏から仕事を受けたのだろう。あの博士も変なところで迷惑を被ったものだ。

 

「よし、ならシドのから始めるか。SPARの連中でいいか?」

 

「あぁ、あんたの仕事ぶりを見せてもらうぜ」

 

「ずるい、指揮官指揮官!それ私も私も!」

 

スペクトラも志願する、悪くはないだろう。どちらも探索と捜査が必要な仕事だ、人手が多いに越したことはない。

奏太がスペクトラの立候補を了承すると彼女はにっこりと笑顔を浮かべ、一緒に戦うプランを練るといってM16と一緒に近くの席に座った。

掲示板のほうを見るとまだ暇人たちがあーだこーだ議論しながら依頼を吟味している、次の依頼が決まるまで少し時間がかかるだろう。

さて、問題に取り掛かるとしますかね。奏太は机に放置していた依頼書の一部を手に取って、もう一度流し読みした。

 

『依頼・スカウト

依頼人・不明『大ムカデの焼き印が焼き付けられている』

戦術人形、一人、希望。夜に強き静かなる者求む。この地、またもや物騒、我が家族のため、よろしく』

 

簡潔かつ分かりやすい依頼だが依頼人ならぬ依頼神はどうやってこれをオフィスに出したのか。

ふいにどこかの黒い奴が疲れた様子で夜の街を徘徊している風景が思い浮かんだ。

 

『依頼・依頼者指定カスタムのダミー人形納品

依頼人・インディちゃんのお姉ちゃん

お久しぶりです笹木さん!インディちゃんは今日も最高です!

それでですね、都合がよければなんですがインディちゃんのダミー人形というのを買ってきてほしいんです。そうすればインディちゃんといつも一緒ですよね?

ではなくて、危ないときに身代わりみたいにもできるし、インディちゃんに両方からはハグしてもらえるし、お帰りも一緒、どこでもインディちゃん2倍になっちゃうんでもぅインディちゃん最高なのでおねがいしますね!

もしよければ佐々木さんもどうですか?インディちゃん最高ですよさいこうなんですインディちゃんのあの――――』

 

文章から感じるのは依頼というよりも底なしの姉妹愛。ダミー人形が欲しい理由だけではなく、妹への愛情が延々とつづられ続けている。

その延々とつづられる文面だが、これを書いた彼女はこれが平常運転である。

 

「どこから居場所仕入れてきたんですかあの姉、海の向こう側なのに」

 

「うわぁ見てよ、スリーサイズどころか手作り写真集まで送ってきてる」

 

美奈が広げたのは褐色肌の美少女を映した手作り写真集、しかも丁寧に手書きの寸法や衣服のデザインまで丁寧に書かれた注文資料まで完備していた。

呆れていたサラの表情はさらにうんざりした様子になる、サラは件の彼女がどうにも苦手なのだ。

 

「とりあえず、IOPの窓口に発注するかのぅ…」

 

「まぁ、世話になってるしなぁ」

 

気が乗らない、と思いつつ用意しておいた戦術人形製造依頼書に仕様を細かく書き始めるのだった。

 

 




あとがき
ここからちょいちょい日常とか挟んでからいろいろやっていく所存、他より遅いのは勘弁して。
特異点イベントも始まりましたねぇ、まだクリアならずですがピックアップでは目をつぶってるほうはお迎えしました。






おまけ・世紀末の怪談

夜、FNCは宿舎の自室にルンルン気分で帰ってきた。その手にはコーラの瓶、琥珀がおごってくれたキンキンに冷えたコーラだ。
ほかにも偶然手に入れた戦前にアメリカで生産されたというコーラもキンキンに冷えており、どれから飲もうか悩ましくて笑みがこぼれてしまう。
しかしどれを最初に飲もうが結局はすべて飲むのだから考える意味はない、FNCはさっさと部屋着のジャージに着替えて椅子に座るとアメリカ産の珍しいコーラの蓋を栓抜きで抜いて思いっきり煽った。

「うーん!シュワッときてヌカッとさわやか!」

おいしい!FNCの頭はもうそれだけだった、味わって飲むことはしない。寝る前だというのに、もらったコーラをすべて飲み干した。そのおかげでおなか一杯になったFNCは、歯磨きをしてすぐさまベッドに横たわって寝息を立て始める。
どれくらい時間がたっただろう、ちょうど真夜中、耳元で妙な音が響き始めた。

カリカリ…カリカリカリカリ…

「ん?何の音?うるさいよー、寝れないじゃない」

どこかの部屋で何か削っている音が響いているんだろう、その時はそう考えて愚痴るだけにした。どのみちすぐに収まると考えていたからだ。夜中に大きな音を立てるのは周りに迷惑ということくらい仲間はだれだってわかっている。
だというのに、いつまでたっても妙に耳に触るひっかくような音は一向に収まらない。

カリカリカリカリ、カリカリカリカリカリ…

「もぅうるさぁい!だれよこんな真夜中に…あれ?」

ベッドから上体を起こして癇癪を起こしかけてふと気づく。この音は、壁から聞こえているわけではない。ましてやほかの場所から聞こえてるわけでもない。
自分の中だ、何かに反応したシステムが稼働音を鳴らしているのだ。しかもこれは最近よく聞く音だ、訓練で聞かされる音だ。
背筋がこわばる、まさか、あり得ない。この部屋は汚染されていない、この音が聞こえるはずがない。
何かの間違いだ、FNCはすぐさま計測システムを呼び起こし、思い当たるシステムを立ち上げた。
見てしまった、体内で暴れまわる放射性物質から放たれる放射線を計測したガイガーカウンターを。

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリンカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!!

じりじりと体を内側から蝕む放射能汚染に言葉にならない悲鳴を上げ、大泣きして部屋から飛び出したFNCは一直線に笹木一家のハンガーに駆け込んだ。
結論、飲食するときはそれが安全かよく確かめましょう。




ミニ解説

ヌカコーラ
原典・FALLOUTシリーズ
ヌカッとさわやかヌカコーラ!旧アメリカ合衆国にて販売されていたコーラの一種。
放射性物質を含めたスリリングなフレーバーが特徴で、多種多様な味が販売されている。
ヌカコーラ社はこのコーラを軸に大規模展開しており、旧アメリカでは国民的飲料となって親しまれていた。
炭酸飲料だが保存食としての長期保存が可能、常温保存が可能で瓶は炭酸が簡単に抜けない仕組みになっている。
なおユーラシア大陸では当然ながら発禁されていて展開していない。
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