U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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手口は本場仕込みなお話と戦果リザルトなお話。グロ注意ですよ~(どっかのクロスボウ使い風)


第18話・シドロヴィッチの依頼3

 

恐ろしい、最初に彼らが何をしたのか理解したときに指揮官が感じたのはそれだった。整理された執務室のイスに深く座り、一度天井を仰ぐ。

気を取り直すためにまずいコーヒーを口にしてから、彼は殺された野盗たちを写した写真が添付された資料にもう一度目をやって瞠目する。

この地区を悩ませていた野盗は一晩にして壊滅した、それは喜ばしいことだったらその過程が異質すぎるのだ。

まず第一に野盗達には抵抗した痕跡が少なかった、応戦した痕跡はあっても発砲した痕跡がないというのはあまりにもおかしい。

また随所にみられる先頭の痕跡も異質すぎた、死体の一部は高威力なクロスボウによって地面や壁に縫い付けられており、すべての死体から武器弾薬が抜き去られていた。

死体を解剖しても出てくるのは鉄の矢やどこにでもあるボールベアリング、あるいはナイフや格闘戦で殺されている。

このことからハンターやその配下の人形たちは、銃を一切使わずに的に反撃を許すことなく作戦を成し遂げたということだがわかる

人間と戦術人形の混成部隊11人だけで68人の野盗を相手取って、一方的に虐殺したうえで彼らは略奪を行う余裕があったのだ。

恐ろしいとしか言えない、ほかの形容詞をつける気すら起きないほどの異常性だ。

 

「向こうの指揮官はなんだって?」

 

「シラを切られた、あいつらが忍び込んだ時にはとっくに全滅してたってさ。荷物が無事だったからすぐに尻尾を巻いたって。

もしかしたらナイトキンが潜んでるかもしれない、とか言っていた。青い肌で筋肉ムキムキな巨人で、透明になる機械に精通していて奇襲が得意だそうだ。なんてばかばかしい」

 

副官のUMP9の問いに指揮官は肩をすくめつつ答える。我ながらばかばかしい話をされたものだ。

なら人質になっていた人形たちを助けた連中はなんだというのだ、フランの言う特徴とは似ても似つかない上に人質を助けるとは思えない。

変わった武器を持っていて顔を隠して言葉もあまり発さなかったとはいえ、どう考えてもU05からやってきていたハンターたちに違いない。

圏外で暮らす無法者らしい好き勝手で実に嫌気がさす、彼らは条件さえ合えばタブーも法律も平気で破るからだ。

それに追従する人形たちにもそれは移っているのだろう、彼のチームならまだしもグリフィンのチームでさえこれに手を貸している。

 

「鉄血の新型にそんなのがいるのかしら。筋肉もりもりで青い肌ハイエンド、マッスラーとか?」

 

「あいつらみたいな異常者の事なんかわかるもんか」

 

指揮官にはわからない、鉄血相手に戦争を繰り返す最前線組の連中の考えることなんかこれっぽっちも理解ができない。

鉄血の暴走人形たちと戦ったことはある、この町にも鉄血製の人形はたくさんいた。戦術人形を警備に使う会社だってあり、蝶事件の際は暴走したそれらの対処に苦労に苦労を重ねた。

だがこの地区や近辺には鉄血の生産工場などといった拠点になりうる施設はなく、最初の混乱を過ぎればあとは事後処理と見慣れたメンツの消えた少し寂しい街に戻ってしまった。

そのあとはいつも通りになって、そこからすべてがおかしくなった。鉄血との戦闘激化によって変わっていく会社の性質が、じわじわと自分たちを苦しめ始めた。

弾薬配給の減少、整備部品の配給縮小、地区の治安向上のための増員は却下され、果ては高練度な職員や古参人形を引き抜かれた。

最初のころは補充の新人が配属になっていたが、今はそれすらもやってこなくなった。

そのうえ彼らを最前線基地に配置し、人間は殉職させ、人形たちは死にすぎて価値観が変わってしまう。その後始末も人道的配慮という形で押し付けてくる始末だ。

戦死した部下の家族が一家心中を図った光景を思い出し、指揮官は椅子に再び持たれ買って深々とため息をついた。指揮官に抜擢され栄転だと喜んでいた彼女の顔は今でも焼き付いている。

最後に副官になったMP5と歩く彼女の背中を見送ったのも、そして彼女の戦死の報告とボロボロになったMP5がやって来た時も。

生きる世界が違うことは分かる、同列の存在でないことも、そして今回勝手をしてくれた連中の異常性もだ。

 

「ナイン、二人は様子はどうだった?」

 

「良好とはいえない、体は何とでもなるけどメンタルのほうは頑なになっちゃってる」

 

「モーゼルは?」

 

野盗の捕虜にされていた二人のうち一人は、この基地所属のC96だった。モーゼルの愛称で呼ばれる彼女も、彼らの暴行によって心身ともにひどい傷を負わされた。

未だ昏睡状態にある彼女は体を破壊されただけでなく電脳にも損傷があり、そのままでの復帰は絶望的と診断されていた。

体はダミー人形の部品も用いることで修理し、損傷した電脳からデータをそのまま新しい電脳に移したのだが目を覚ます気配はない。

こちらが覚醒信号を送っても彼女はまるで答えず、ただ深い眠りの中にいる。まるで人間のようで、指揮官はここでもそれを見る羽目になるとは思っていなかった。

かつて正規軍にいたとき、幾度となく病院で見せつけられた光景で人形たちとの暮らしでは無縁だと思っていたのだ。

 

「進展なし」

 

「そうか、お見舞いは必ず行ってやってくれ。話しかけてやったり、マッサージしてやるとよくなることがある。私もできる限り顔を出すよ」

 

「それは…ううん、わかった。ところで指揮官、話は変わるのだけれどお願いがあるの」

 

「ダメだ」

 

UMP9の言葉をさえぎって指揮官は断る。決意を固めた彼女の表情から、何が言いたいのか容易に想像できた。

 

「令状は取れない、彼らを逮捕することはできないぞ。そもそも証拠が足りない」

 

「今なら現状証拠だけで十分立件できるよ、こんなことができる奴らなんてそう居ないんだから」

 

彼女は資料に添付された写真の数々を指差し、嫌そうな表情をしながらもそれを手に取って指揮官に突き付けた。

野盗の拠点になっていたモーテルの一室、大型無線機の設置された寝室は凄惨で異常な殺人現場と化していた。

部屋で無線担当だっただろう野盗の男性は、裸にされた上に皮膚をはがされた状態で両足を紐で括られてつるされていた。

モーテルの廊下横たわった下半身がダクトに引きずりこまれた死体、下半身はナイフでめった刺しにされていた。

鉄の矢で壁に文字通り磔にされてまるで標本のような状態になった死体、関節を固定するようにしており位としてやっているのがわかる。

首なし死体の横たわるベッドルーム。その首を集めて浮かばせたバスタブ。加工途中のように半解体された脊髄付き頭蓋骨が放置された給湯室。

四肢が欠損していたり、首がなかったりする死体を鎖やひもで吊るしてアートのように飾り付けた食堂。

ぐちゃぐちゃにされた数人分の肉と骨をまとめて放り込んだゴアバッグ、人の首もまとめていて否が応でも想像させられる。

UMP9の脳裏には写真に納まりきらなかった悲惨な現場がよみがえったのだろう、顔色を悪くしてその写真を裏返した。

 

「野放しにしておけない、いくら何でもやりすぎよ」

 

「ダメだ、この程度のことで突けるような基地じゃない。そもそも俺たちがどうにかできなかったせいだといわれるのが落ちだ。

仮に許可が下りたとしても君たちで勝てるとは思えない。奴らは全力で抵抗してくるぞ、お前に勝てるのか?あいつらは生身でD型を殺せる」

 

UMP9は答えに詰まる、E.L.I.Dの脅威は元正規軍の指揮官がよく知っているのを理解しているからだ。

E.L.I.Dの中でも変異しきったD型の脅威は正規軍から広く伝わっている、種類にもよるが並の戦車砲では歯が立たない外殻を持つ上に機動性もある強敵だ。

その中でも種類や特徴があり、戦うすべは見つけているとはいえそれでも厳しい戦いになる。

鉄血以上の最新式の装備と兵器を運用する正規軍ですら対策に苦慮相手を、彼らは生身で己の糧にできる状態で狩るのだ。

 

「向こうの基地の人形たちとの共同なら?」

 

「火に油を注ぐ気か?悪手だ。たとえうまくいったとしても敵に回ったなら容赦しないだろう。何でもしてくるぞ、こいつを見ろ。

奴らが使っていたのはどれも普通の武器じゃない。空気銃にクロスボウだ、しかも空気銃に至ってはまともな銃ですらない」

 

指揮官は死体から回収された武器の銃弾として使用されたボールベアリングの写真を指差した。

 

「これは武器として作られてすらいないただの玉、そこらの量販店で安く手に入る車の部品だ。

こんな粗末なものを使う武器で野盗を圧倒したんだぞ、偽装のために手加減したうえで。人間相手にまともな銃を使う必要すらないってわけだ」

 

そんな連中を怒らせて、本気のフル装備で応戦してくればどうなるか。指揮官には目に見えていた。

UMP9はこの地区では有能な警官だ、ほかの人形たちもみなそうだ。もうこれ以上、やる必要もない戦争に繰り出して失うわけにはいかない。

 

「くそ…こいつらの模倣犯が出ないことを祈るわ」

 

「そうなれば向こうに後始末をつけさせよう、今は堪えるんだ。代わりに使えるもんは使わせてもらうさ、スラムの治安向上にもつながるしな」

 

ただしあいつ等はブラックリストに載せておけ、指揮官の有無言わせぬ言葉にUMP9は頷いた。彼らの勝手な行動に引っ掻き回されたのは事実だ、証拠はないが絶対にあいつ等だと基地内でもうわさが広がっている。

一つの荷物のために自分たちの理由も考えないで好き勝手に引っ掻き回し、ゴロツキの野盗とは言え68人をむごたらしく皆殺しにした上に偽装工作まで施した凶悪犯。

人間性の欠けたサイコパスの集まりだ、たとえ同じ人間や人形だとしても仲良くなんてできない。

もしまたこの地区に来て、理由ができたなら容赦なく捕まえて刑務所にぶち込んでやる。

自分たちはこの地区の治安を維持して人々を守る責任がある、法を犯すものを捕まえる義務があるのだから。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

高校と蛍光灯が室内を照らすバンカー内、コンクリート壁の無機質な室内は商品の医薬品やジャンク品、装備類などが並ぶ棚や箱が散らかっている。

その中心にある作業台、普段は修理中の銃や工具で散らかっている机の上には一人の少女が静かに目をつぶって横たわっていた。

薄いシーツをかけられているが発育のよい体のラインが浮き出ており、その胸は上下しておらず呼吸をしていない。知らない人間が見れば少女の死体が安置されていると勘違いしそうな光景だ。

未だに中身がない少女の横顔を見つめながら、カウンターに背を向けて椅子に座っていた太った中年のロシア人男性はお茶を飲みながらつらつら考えていた。

彼女の顔はおそらくこんなだったはずだ、目を覚ませば活発で無邪気に笑うのが似合いそうな女の子。

もっとも知り合いのスタルカーがデストラックの残骸から拾ってきた彼女はもう死んでいたのだが。

思えばあの嵐の後から彼女との奇妙な縁は始まった、『モノリス』と呼ばれる武装宗教団体が行う死体運搬トラックの内一両が落雷で破壊された時から。

ZONEの奥から時折出てきては荷台に満載している死体をそこら中に捨てていくトラックの中で、彼女は異様すぎた。そのおかげか、死体をあさりに来た知り合いの目に留まった。

このZONEと呼ばれる地域ではめったに見られない、内地製の部品を使っている純正の戦術人形だったから。

 

(そういえばあの時もこうやって、チキンを食ってたな。まさか、いやいや)

 

年は取りたくねぇな、シドロヴィッチは頭をかくと昼食のチキンにかぶりつき、あふれ出る肉汁に舌鼓を打ちながら室内をガチャガチャ歩き回る新しい警備要員に視線を移した。

人類生存可能圏で使えるように制御装置と機体のカバーを換装した自動地雷敷設機『ダクティル』はせわしなく室内を動き回っている。

AIは正常に稼働しているようで散らかった部屋の中を躓かずに動き回って、地雷敷設動作を繰り返していた。

これで地雷原の管理が楽になる、いつも自爆しないかひやひやしなくてすむのはいいことだ。

向こうの軍は良い物を使っている、うらやましいと考えていると開けっぱなしの店に入るくだり階段のほうからどたどたとあわただしく降りてくる足音が聞こえてきた。

店兼住居のこのバンカーは比較的音が反響するが、その中でも重苦しくガチャガチャうるさいとなれば彼女しかいない。

 

「うわさをすれば、か」

 

「おっちゃんおっちゃん!!」

 

「うるせぇぞ、フレッシュなら外に置いとけって言っただろ。あとで捌いてやる」

 

「そうじゃなくて荷物、あたいの品が届いたんでしょ!」

 

銀色の長髪をひらひらとさせ、グレーの上着にミニタイトスカート、両足の質感を強調する黒のストッキング、このZONEでは珍しくおしゃれで軽装備だ。

店のハッチを大きな音を立てながら開けて入ってきた軍用戦術人形『サイクロプス』は、AKS74U突撃銃を抱えたまま図体に似合わぬ女じみた挙動で首を横に振る。

AI自体は女性なのだが、圏外での活動のためにカスタムされたラバーのような被膜がされた躯体とその上に着る女性ものの服のおかげで嫌な方面に強調されていた。

 

「どこ!?」

 

ガチャガチャと歩み寄ってきてカウンターの中に首を突っ込んできたサイクロプスのカメラアイに、シドロヴィッチはびっくりして口の中に残っていた鳥の皮を反射的に吐き捨てた。

 

「うぎゃぁぁぁぁ!?」

 

「あ、悪い」

 

カウンターから頭を引っこ抜いてカメラアイを押さえてもだえるサイクロプスに、シドロヴィッチは謝りながら手拭きをサイクロプスに投げつける。

このご時世、トレーダーとして商売をしている以上強盗にあったことは一度や二度ではない。

このコルドンはZONEの遺跡や研究所に潜ろうとするスタルカーや傭兵、研究者にハンターといった良識がまだある連中が多いがそれでもすべてではない。

用心深い小悪党が無言でいきなり拳銃をカウンターから突っ込んでくることもある、そんなときは唾を吐きつけて一瞬でも隙を作って逃げることにしているのだ。

 

「何てことすんのさ!レンズが油だらけだよ」

 

「謝っただろうが、さっさと入ってこい」

 

「へいへーい」

 

シドロヴィッチがカウンター横の防弾扉を開けると、サイクロプスはカメラアイのレンズを拭きながらのそのそと店内に入ってくる。

手慣れた様子でカメラアイをきれいにすると、店の奥の机に寝かされている少女を見つけて恐る恐る近づいてその顔に手を触れた。

 

「わぁ、これがあたいの新しい体なんだ。すご、ふにふに…」

 

「あんま強くすんなよ?お前の鉄面皮とは違うんだ」

 

「そんなことしないよ、でも、うわぁ…ヨンゴーも同じ顔だったりして」

 

「さぁな。そもそもお前も覚えてないだろうに」

 

「まぁね、だから探してんだし」

 

「はたして見つかるもんかね…まぁいい。注文通り、UMP45第2世代型戦術人形を原型にしたカスタム躯体だ。詳細はこの書類にある、不備はないか?

ASSTは無し、電脳は電子戦型の大容量、各種ソフトもフルインストール済みだ」

 

「ふむふむ、歩く大容量スパコンだね。どれどれ…おっほっほぉ~♪」

 

シドロヴィッチが渡した仕様書を流し読みしてから、人形の体に掛けられていたシーツをめくるサイクロプスは親父臭い笑い声をあげる、機械の顔がどことなくいやらしく笑っているように見える。

少し前までは結構初心だったのに、このどっちを向いてもむさくるしい男だらけの環境にすっかり適応してしまった。

 

「このえっぐい下着はおっちゃんの趣味?AVの世界だよこれ」

 

「売れ残り押し付けられたんだろ」

 

おそらくえぐすぎて買い手がいなかったのだろうとシドロヴィッチは考えていた。

 

「ふぅん?IOPはいい仕事してくれるねぇ。あとはあたいを移して、病院で生体化施術を受ければ完璧だね!」

 

サイクロプスはわくわくした様子で人形の頭をなでると、勝手知ったる店内から接続ケーブルを持ってきて自分と人形を接続しようする。

それをシドロヴィッチが横からケーブルをひったくって止めた。

 

「落ち着け、まだ営業中だぞ。ここでやるなら店を閉めてからにしてくれ、何かあったら困る」

 

「りょーかい、じゃぁ何か手伝うことある?お金になるならなおよし」

 

「悪いがマークドワンに任せちまったよ、追っかけるか?」

 

「マー君なら平気っしょ、じゃぁ休憩させてもらおっかな?OK?」

 

「勝手にしな」

 

サイクロプスは椅子に座って暇そうに体を揺らす、その姿を見てシドロヴィッチはふと気になっていたことを問いかけた。

 

「お前、準備が整ったらまた奥に行くんだな?」

 

「そうだよ?あたいは奥から来たみたいだし」

 

「無謀だと思うがね、そこらじゅうアノマリーだらけだしモノリスどもがうじゃうじゃいる」

 

この地域で稼ぐスタルカーたちの目的は様々だが、全員が大なり小なり狙っているのが一獲千金を狙うトレジャーハントだ。

このZONEと呼ばれる地域はアノマリー発生率が奥地に行くにつれて高くなり、それに伴ってアーティファクトの生成や希少価値の高い種類を見つける確率が高くなる。

またアノマリー発生地帯特有の異常力場が促す変異性によって生まれたミュータントたちもまた金になる獲物である。

それらを狙うスタルカー、傭兵、ハンターや科学者たちが集うのだがその全員が一度は耳にしたことのある伝説がある。

ZONEの奥には戦前に作られた秘密の研究施設があり、そこにはあらゆる願いをかなえてくれる万能の願望機があるという話がまことしやかに語られている。

最終戦争前に作られた秘密兵器だった、偶然生まれたアーティファクトであるなど憶測が飛び交っているが確実にそれはあると考えられている。

ZONEの奥から姿を現すモノリス兵がその証拠だ、この噂の発端がそもそもそのモノリス兵の存在なのだから。

 

「お前さんはモノリスにゃ興味がないんだろ?わざわざほかの連中と同じ手を使わんでもいいだろう」

 

「かもね、でも手掛かりはそれしかないから。どっちみち奥に行くのは変わんないしね」

 

それは前にも聞いた、シドは鼻を鳴らしてタバコをふかす。

 

「お前がそこから来たのかはわからんぞ、偶然どっかで死体を拾っただけかもしれん」

 

とあるスタルカーに拾われた彼女を、正確には彼女の壊れた電脳からAIを救い出したのはシドロヴィッチだ。

正確には助ける気などなかった、ただなぜモノリス兵のトラックから人類生存可能圏内の戦術人形が転がり出てきたのか知りたくなった。

偶然同じように持ち込まれたサイクロプスがあり、そちらは損傷が少なかったからそれを使ってちょっとした冒険をしようと考えただけだった。

彼女は頭を撃たれて完全に死んでいて、何もなければ使える部品を抜いて墓地に埋葬してやるその手間賃のつもりでだ。

結果として彼女はサイクロプスの中で目を覚ましたが記憶喪失になり、自分の名前も過去の記憶も思い出せない。

そんな彼女を今も突き動かしているのは唯一覚えているという、ヨンゴーとやらを見つけるという思いだけだ。

 

「そいつを追いかけても良いことは何もないかもしれん」

 

彼女の電脳を破壊したのは45口径の拳銃弾、ありふれた銃弾だが戦術人形と銃の関係を知るシドロヴィッチには無関係には思えなかった。

彼女が求めるヨンゴーとはいったい誰なのか、味方か敵なのか、何もわからない。だがいえることは、彼女はその銃弾で殺されかけた。

45口径の銃弾を彼女に撃ち込んだ犯人がヨンゴーならば、そうする理由があったはずだ。下手をすれば、拾った命を捨てに行くことになりかねない。

彼女は腕のいいスタルカーになりつつある、良いお得意様の素質があってみすみす死なせるのはもったいない。だが、やめろというつもりもシドロヴィッチにはなかった。

彼女の道は彼女が決めることだ、彼女にはその意志と強さがある。自分が口出しすることではない。

 

「大丈夫、45はあたいの家族だから」

 

「そいつは初耳だな。まぁいい、少し待ってろ」

 

「え?なに?」

 

「座ってろ、渡すものがある」

 

シドロヴィッチはのそのそと立ち上がると、店の裏にある倉庫に向かった。倉庫の中の電気をつけて銃器ラックを開き、少し考えてから一丁の短機関銃を取り出す。

彼女にはきっとこの銃がいい、もともと彼女の銃なのだから役に経つだろう。シドロヴィッチはUMP40短機関銃を抱え、弾が入った弾薬箱を持つと武器庫を出た。

 

 

 





あとがき
グリフィン内で悪評をもらった、シドロヴィッチからの評価が上がった。
前回の仕事によるリザルト会、笹木一家は仕事人ですがアウトローに近いので嫌われてます。
仕事のためにやってますけど、勝手に暴れて引っ掻き回して虐殺したことには変わりないので。
ま、悪い噂なんてあんまり気にしないやつらなんで意味ないんですけどね。
サイクロプスは…イッタイダレダローナー。

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