U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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第23話・カーネギーホール

 

結局のところ、困ったときの捨て駒扱いだ。今更それがなんだとか言わないけれども。

SPAR小隊を束ねるM16A1はガスマスク越しに見えるカーネギーホールの重厚で趣のある両開きの大扉を目指して進みながら、対E.L.I.D戦もできるように改修されたM16A1突撃銃を構えて後ろについてきているM4に手信号で指示を出しながら内心笑う。

こういう使い方をされるのは人形としては当たり前なのだ、所詮人形は道具なのだから。そう思っていても、なんというかやるせない。人間でさえ同じように扱うのだから人間というのはどこまで行けるのかむしろ気になるくらいだが、それは置いておこう。

SPAR小隊にマンハッタンシティ警備部からの任務が来たのは、AK-47達から彼女の知る情報を聞いてから少し後の事だった。任務は偵察及び救助、SPAR小隊で得体のしれない何かがいるカーネギーホールに飛び込んで取り残された民間人やテロ対策部隊の生き残りを探し、救助しつつ中を探れというわけだ。

しかももしオペラの主演女優であるメリッサ・ピアスが生きているなら最優先救助対象として、自分を犠牲にしても守って救助しろとのありがたい命令までつけてある。

ダミーを用いないたった5人の部隊にそれをやれというのだから、向こうも破れかぶれといった様子だがこっちにとっては好都合だ。

こういった不思議な案件に慣れている人員ではあるし、装備もほかの部隊と比べたら整えていつも持っているのだから。

 

(こんなところで歌のお姉さんが生きてるとは思えないけどな)

 

なるようにしかならんと考えながら出したM16の指示にM4は頷き、M4A1突撃銃をスリングで肩にかけて担いでいたオーガーエネルギーライフルを構える。

網膜投影型スコープを覗き込み、オーガービジョンで透過した壁越しにエントランスを舐めるように見回した。

 

「敵影無し」

 

M4の小さなつぶやきにM16は頷き、入り口の脇に身を潜めて地面スレスレに手鏡を差し出して中を覗き込む。

オーガービジョンは万能ではない、オーガービジョンの視界では見えない化け物もいるし隠蔽用の装備を持っていたら簡単に騙せてしまう。

手鏡でエントランス内を索敵するM16は、鏡に映る異様な焼死体の転がる荒れたエントランス内が見えた。

敵影は見えない、トラップや待ち伏せというわけでもなさそうだ。後ろについてきているM4たちに手信号で進むよう伝えると素早くエントランス内に入り込んで近くの柱の陰に隠れる。

館内に一歩足を踏み入れた時から嫌な予感がした、M16は体が汗ばむような感覚を覚える。

入り口からしてひどいありさまだ、あちこちでオペラに来ていた客と思しき焼死体が文字通り転がっており、最後の凄惨なパニックの面影を残していた。

 

「焼死体だらけだな、こういうのは私たちも初めてだ」

 

「敵は…見えないね。M4、どう?」

 

「妙よ、とっても奇妙」

 

「何か感知したか?」

 

再びM4A1突撃銃を構え、持ち込んだ探知機やスキャナーなどを取り出してエントランスを調べるM4は首を横に振る。

 

「異常なし。毒物、放射能、コーラップス、それにアノマリー、すべてないわ」

 

「つまり安全ってことか?あり得ないな、それ程時間がたっていないから可燃性ガスだとしても少しは出てくるはずだぞ」

 

「うん、でもみて」

 

M4はかざしていたガス検知器の画面をM16に向ける。その画面には確かに有毒な物質や現象の類は検知されておらず、残滓も見られない。

空気中の湿度が高く、発火現象のせいか温度も高いくらいだろうか。M16の後ろからスキャナーを覗き込んだのか、416が少し考えてから呟いた。

 

「正常値…いや少し湿っぽい?臭いわね、そのスキャナーが探知できない何かの可能性があるかも」

 

「だな、絶対マスクは外すなよ」

 

全員に釘を刺しながらM16は地面に横たわる死体の傍らに片膝をついて、死体のすぐ近くの地面を触る。

この焼死体は完全な炭化はしていないものの、見た目では個人が判別できないくらいに燃えていた。

皮膚はほとんど燃えており、真皮どころか筋肉にまでやけどの跡は広がっていて黒焦げで皮膚がズル剥けの様な死体だ。

だがおかしい、人間がこれほど燃えているのに周囲の焼け跡はそれほどではない。焦げこそしているが延焼しているような跡が見られないのだ。

 

「妙な燃え方だ、標的だけ燃やしたような感じだな」

 

小規模あるいは個人を標的にした攻撃ならば納得できる殺し方だがそれにしては多く燃やしすぎている、オペラの客すべてが標的だというならば話は別だがそれだと手段が納得できない。

人だけを確実に燃やすような何かを使って周囲の被害を抑え、オペラの客すべてを燃やす。それなら建物ごと燃やして事故や別のテロに仕立て上げるほうが安上がりだ。

まさか人間だけを狙って、建物の被害は抑えたいなどという変わった考えをするテロリストがやったわけでもあるまいに。

外の死体安置所で確認した死体でも感じた疑問だが、現場でまだ整理されていない状況を見ると余計におかしさを感じてならない。

マンハッタンシティ警備部の指示が遅いのも納得だ、この妙にちぐはぐで薄気味悪い状況ではどう指示を出すべきか迷ってもおかしくない。

 

「引っかかるね、人が燃えるくらいなら床も燃えてるはず。なのに焦げただけなんておかしいよ」

 

「また謎が増えたか…行こう、テロ対策部隊はまっすぐホールのほうへ向かったようだ。追うぞ」

 

同じような疑問を覚えたらしいSOPⅡの呟きにM16は同意しつつ、先頭に立ってエントランスを進む。

エントランス内や廊下には全く戦闘を行った様子は見られない、テロ対策部隊の痕跡はすべて自分たちと同じように状況を調べた跡ばかりだ。

さらに奥のホールに向かう通路の手前に差し掛かると、通路の手前にグリフィンの使う偵察ドローンが落ちているのを見つけた。

マンハッタンシティ警備隊の放ったドローンはエントランスから奥に進む通路の近く、折り重なって倒れた焼死体の横に転がっている。

折り重なっている焼死体の内、下敷きになったほうは人形だったのか部品が露出している。おそらく背負っている人間を助けようとして、ここで力尽きたのだろう。

まさかこんなところで死ぬとは思っていなかっただろうな、M16は見る影もない死体のそばで片膝をついてドローンからチップを回収しつつ冥福を祈る。

笹木一家がやるように軽く両手を合わせて祈ると偶然死体の首に掛かる光るものが目に入った。

 

(42、AK、すまない。ダメだったようだ…)

 

見る影もない焼死体の首に掛かっていたのは焼け焦げたグリフィンの認識証はこの死体がU06指揮官のモノである示していた。

U06指揮官の死体を丁寧に退けて、下敷きになった人形の焼死体を探ると四角い小箱とMG3の顔写真の入ったIDカードが見つかった。

死体はすでに冷え切っている、二人は事件発生直後にすでに死んでいた。自分にはどうすることもできなかったとわかっていても、M16は無力感を感じずにはいられない。

助けられなかった、このことをMG42たちに伝えることを考えるだけでも胸が苦しい。バックアップから再生されたMG3にも伝わるとしたらなおさらだ。

 

「姉さん、この二人は…」

 

「あぁ、見つけたよ」

 

M16の後ろからのぞき込んできたM4の問いに頷くと、彼女の瞳が悲しげに揺れる。ほかの3人も同じように各々悲しげに俯いた。

だが悲しんでもいられない、M16は二人の死体を通路の脇にどけてハンカチを顔にかぶせて目印をつけてからさらに奥に足を進めた。

廊下も焼死体だらけだ、人間も人形も区別なく息絶えているにもかかわらず廊下には延焼した様子はほとんど見られない。

炭化しているもの、先ほどのように生焼けの様なもの、あるいは体の一部を残して跡形のない物もすべて同じだ。

 

「M4」

 

ホールに入る扉の一つに近づき、突入態勢を取りつつM16が合図を出すとM4はオーガーで室内を索敵する。

彼女が頷く、それを見てM16はホールの扉を少し開いて入り口を同じように手鏡でホール内と入り口の周囲をうかがった。

敵影は無し、待ち伏せの類の痕跡もなく、扉にトラップなども見られない。突入用意、M16は手信号で合図を出すとSOPⅡとHK416が素早く反対側の壁に張り付いて合図を待つ。

反対側の二人と後ろに付いたM4に頷き、M16がAR-15に視線を送りホールに入る扉を指で示すと彼女は素早く扉に詰め寄りゆっくりと押し開ける。

中に入れる程度にドアが開くと全員で一気に内部に入り、ホールの惨状に息をのむしかなかった。

 

「いったいここで何があった?」

 

ホールは地獄絵図と化していた、座席や通路にはバリエーション豊かな焼死体が当時の状況をそのまま残しており今にも動き出しそうな形で残っている死体が見られる。

そして舞台の壇上とその周囲が最も損壊がひどく荒れ果てていた。理由は単純だ、先の突入したテロ対策部隊の面々がこのホールで何かと交戦し、敗北していた。

 

「ひどいな、全滅か…」

 

P90、64式自、M950、スーパーショーティ、SPAS12、計5人と各二人のダミーからなる部隊が舞台を中心に客席や通路に躯を晒している。

客席に寄りかかるようにして息絶えたP90は胸に焼け焦げた大穴を開けて目を見開いたままだ、抵抗した様子がないことから敵意がないと判断した相手から攻撃を受けたように見える。

おそらくその奇襲が引き金となって戦闘が勃発、しかし交戦むなしくテロ対策部隊は全滅したといったところだろう。

原形をとどめていない死体もあり、焼死体だらけのホールをさらに悲惨な血だまりで彩っていた。

 

「銃声が聞こえなかったのはここの防音設備のせいね、ここならドンパチやっても外までは聞こえづらい」

 

「そのうえ外は外でサイレン、車、人ごみに野次馬のざわめき、雑音のコーラスだ。紛れちまうのも無理はないか」

 

このカーネギーホールは周辺地域への音の影響を鑑みて静粛性と防音性に気を使って設計された作りだ。

特にこのホールで行われる公演の音が騒音被害にならないよう徹底的に対策されている、ホールの防音設備とそれを囲む施設も防音性に富んでいるのだ。

おかげで激しい演出のある公演でも許容範囲であり、そのおかげか周辺からの苦情もほとんどない。それが今回は仇になったのだ。

テロ対策部隊の反撃が少ないというのも理由の一つだろう、見る限り奇襲を受けて反撃してはいたようだが弾薬の消費量からして消極的かつ混乱が見られる。

組織的な反撃ができるのに、個別に対応しようとして各個撃破されたような状況だ。

 

「随分と高出力の何かにやられたのね、溶けてるわよこれ。レーザーかしら?」

 

AR-15はSPAS-12の防弾盾に空いた穴に手を這わして顔をしかめる。鉄血のハイエンド人形の使うハイテク武装の掃射にもある程度耐えうる装甲版がほぼ一撃で抜かれていた。

おそらくP90の胸を貫いた攻撃と同じだろう、同じような攻撃で64式自やM950も殺されている。

64式自は顔の半分を失い、M950に至っては首そのものが消し飛んでいた。

 

「化け物の死体が一つもない、あるのはテロ対策部隊と焼死体だけ。仕留め損ねたのね」

 

「そうとは思えない、仕留め損ねたにしては痕跡が少ないぞ。それにこの弾頭を見ろ、きれいなもんだ。まるで受け止められて落っこちたみたいだな」

 

「再生能力の高いタイプ?でもきれいすぎるし…確かに痕跡もないわね。鉄血かしら?それともテロリスト?」

 

「フォースフィールドだってここまできれいにはならない、鉄血のシールドだって同じさ。それにこれ、妙な配置してないか?」

 

M16は薬莢の散らばり、弾痕のつき方を見てふと疑問に思う。最初の一撃はおそらく、敵を包囲した状態で行われた。

なぜそのような立ち位置にありながら逆転されたのか、包囲したテロ対策部隊の動きも気になる。

 

(奇妙だ、ん?これは引きずった跡か?)

 

妙なものを感じて部隊の痕跡を調べると、戦闘の後に紛れて小さな引きずった跡と斑点状の形状がおとなしい血痕が続く痕跡があるのにM16は気付いた。

血痕と引きずった跡は舞台脇に続いており、舞台の楽屋のように続いているようだ。

 

「新しいな…SOPⅡ、ついてきてくれ。ほかはここの調査を」

 

「OK、任せて」

 

SOPⅡが後ろにつく、それを確認してから客席と舞台を調査する3人に目配せしてからM16は舞台脇に足を踏み込んだ。

舞台脇に入るとホールにこもっていた焼け焦げた匂いが弱まる、周囲が荒れていないことからここには当時は人がいなかったらしい。

その分、誰かが通った痕跡がより見分けやすくなっていた。足跡は小さいが体重は重い、歩幅は小さく中学生くらいだろう。よほどのデブか人形だ。

さらに奥に進むと足跡が舞台裏のドアに消えている、ドアを抜けると舞台裏だ。劇で使う小道具や機材が所狭しと並べられていてかなり手狭になっている。

痕跡はその奥にあるドアに続いており、札には休憩室と書かれていた。人間か、化け物か、M16は一度息を整えてからドアノブに手をかけて中に耳を澄ます。

 

(居るな)

 

小さな何かを咀嚼するような音、無駄に何かを踏みしめる音、暢気な生存者が遅い夕食をしているのに出くわすとも考えづらい。

ドアを通して聞こえる物音からしても隠れて身を潜めているといった様子は見られない、何よりこの手の何かを食べる音には聞き覚えがありすぎた。

M16はSOPⅡに手信号で突入すると伝えて、ゆっくりドアを開けて中を覗き見た。

休憩室は小さなキッチンと冷蔵庫を備えているありきたりな内装で、机やいすは乱雑にひっくり返されて血まみれになって荒れ果てていた。

その部屋の隅に、追いかけてきた彼女はいた。化け物に伸し掛かられ、今も血をまき散らして食われながら。

鼠だ、いや、鼠のような何かだ。目の前に現れた四足歩行の化け物に照準を合わせ、M16はすぐに気持ちを切り替えた。

元は排水溝を駆け回る太ったドブ鼠だったんだろう、しかし今の大きさは中型犬サイズだ。

急速に変異したためか皮膚の再生が間に合っておらず、肉体を覆う毛皮はまるでびりびりに切れたストッキングのようなありさまで真っ赤な肉が曝け出されている。

頭の形も歪に変化し、口元はまるで牙が突き出た異形の嘴のようになった骨がむき出しになっている。

3股に先割れした鞭のようにしなる尻尾には炎が灯り、まるでファンタジー映画の火の玉攻撃のように揺らめいている。

その異形の嘴がスーパーショーティの首をかみつき、今にも噛み千切ろうとしていた。

 

「突っ込め!!」

 

M16はドアを激しく開いて突入しながらその化け物に向けて引き金を引く、銃弾は正確に化け物の胴体をえぐって痛みでうろたえた化け物は嘴を彼女の首から離れさせた。

すぐさまSOPⅡが化け物に詰め寄ってスーパーショーティの体から引きはがして地面にたたきつけ、至近距離から5.56×45ミリライフル弾を撃ち込んで確実に息の根を止めた。

 

「みんなを呼んできてくれ。敵はミュータントだ、気をつけろ」

 

「了解!」

 

SOPⅡに召集を頼んだM16はすぐにスーパーショーティのもとに駆け寄った。血だまりの中で力なく横たわるスーパーショーティは重傷だった、体中に火傷の跡があり左腕を失い傷だらけだ。

右足は完全に破壊されており、壊れた部品が皮膚を突き破っている。先ほど見つけたわずかな血痕と引きずった跡は、ショーティが歩いた後だったのだろう。

それでもまだ生きていた、苦しそうに喀血した彼女は苦しげに呻きながらもM16を見据えて口を開こうとする。

咄嗟にM16は彼女を制した。彼女は首を激しく損傷している、無理にしゃべらせては命が危険だ。

 

「U05、SPAR小隊のM16A1だ。しゃべらなくていい、すぐに助けるぞ」

 

ポーチに常備してある応急治療キットを取り出し、消毒スプレーで傷口を消毒してから止血剤を塗った包帯を押し当てて応急処置をする。

首は切断寸前だ、外部接続部などはボロボロでフレームの頑丈な部分が何とか化け物の牙に耐えていたがそれ以外の駆動系やコードはちぎれたり破損している。

生体部品は見る影もない、噛み付かれてぐちゃぐちゃになっており大量出血している。普通の人間ならばとっくに首なし死体の仲間入りだっただろう。

 

「気を付けて…ばけもの…なりすましてる…だまされないで…」

 

「それは最悪だな、もう大丈夫だ」

 

「ちいさかったから…かな…メリッサは…奥に…」

 

「メリッサ?おいおい、まさか生きてるのか!?冗談だろ…」

 

スーパーショーティは震える右腕を上げて指をさす。指差した先にあるのは、舞台裏に出る開けっ放しのドアだ。

彼女は何かを伝えようとしている、もし通信障害がひどくなければデータの受け渡しができたがだろうがカーネギーホール内はいまだに通信が使えない状態だ。

 

「きをつけて…おく…に…メリッサ…ばけもの…」

 

スーパーショーティの瞳が眠るように閉じ、震えていた腕が力なく落ちた。おそらく限界だったのだろう、気を失った彼女にM16は、スーパーショーティの傷に応急処置を施した。

首の傷以外でひどいのは右足くらいで、ほかの裂傷や火傷はひどいが前の二つほどではない。

背後が騒がしくなり気になって振り向くとSOPⅡに連れられてM4達が全速力で走ってくるのが見えた。

 

「スーパーショーティ!?」

 

「まだ生きてる、すぐに運ばないと。M4、SOPⅡ、頼めるか?」

 

「わかった、でもいったい何にやられたの?」

 

M16からスーパーショーティを託され、彼女を背中に慎重に背負ったM4は彼女の傷跡を見て顔をしかめる。

 

「でっかいネズミみたいなやつ、あそこに…あれ!?」

 

SOPⅡは自分が仕留めたはずの化け物の死体が転がっているはずの場所を指差して素っ頓狂な声を上げた。

その声にM16も釣られて化け物の死体があった床を見て驚くしかなかった、確かにそこにあったはずの死体がなかったのだ。

SOPⅡが仕留め損ねたとは思えない、誰かが持ち去ったとも思えない。一体何が起こった?ハッキングでもされたか?M16は一瞬背筋に嫌な感じがしたがすぐに否定する。

ハッキングされる可能性は低い、U05基地では仕事中は普段からオフラインで活動する。鉄血からのハッキングやサイバーウィルスの感染を極力抑えるためだ。

 

「どういうこと、確かに殺したはず!M16、動かした?」

 

「まさか…」

 

「落ち着いて、残り物があるわ。私が調べるからあんたは彼女を外に」

 

驚くSOPⅡを宥めたAR-15は、死体があった場所に片膝をついて死体のあった場所と思しき湿った床に手を這わせた。

SOPⅡは少し逡巡したが、頷くとM4を警護しながら外に引き返そうとする。その背中にM16はふと思い立ち、時間を確認してから追加して指示を出した。

 

「二人とも、もうすぐ指揮官たちが到着するはずだ。彼女を預けたらそっちに合流して戻ってこい、私たちは先行して偵察する」

 

「了解、無理はしないでね。そうだ、これ」

 

「サンキュー、気を付けてな」

 

去り際のM4から対ELID用徹甲弾が込められた弾倉を受け取り、M16は頷いて3人を見送った。

 

「湿ってる…血だけじゃないわね。まさか溶けた?サンプルを取っておきましょう、向こうで解析すれば何かわかるかも」

 

「手持ちじゃ無理か?」

 

「やってみたけど無理ね、ミトコンドリアの残骸が多めに出てくるくらい」

 

AR-15は床の湿った場所に簡易解析装置のスキャナーを当てて解析するがすぐに首を横に振る、解析結果の出る画面をのぞき込むと有力な証拠となる物質はほとんど出てこない。

細胞か何かだった残骸がこのサンプルの主成分ということだ。詳しく調べれば出てくるのだろうが、簡易的な持ち運び用ではこの程度にしかわからない。

念のための証拠写真を撮り、画像を確認しながらAR-15は再びかぶりを振る。

 

「血や体液にしては量が多い…まさか溶けたのかしら?どんな形だったの?」

 

「ネズミが変異したように見えた、それと尻尾に火が灯ってたな」

 

同じようにAR-15の頭越しに画面をのぞき込んでいた416の問いにM16は、自分が売ったはずの化け物を思い出しながら答える。

 

「聞いた限りネズミの変異タイプに思えるけど…溶けるのなんて聞いたことないわね」

 

あぁ、指揮官からも聞いたことがない。M16はAR-15の返答に確信を持った、こいつらは新種かあるいは変異種。どちらにしろ未知の敵だ。

自分たちでは荷が重いかもしれないな、無理はしないでおこう。

 

「行くぞ、メリッサを探す。後ろは任せた」

 

 





あとがき
カーネギーホール編スタート。今回はSPAR小隊のM16視点での物語。
今回も死にまくりました、嫁が死んだ人ごめんなさい。次の彼女はきっとうまくやるでしょう。


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