U05基地の化け物ハンター   作:イナダ大根

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U01基地のおおまかな戦力想定は大体の人形が揃っていて、高練度かつ高スペックな主力も多く充実している大規模基地。
指揮官と戦術人形達の関係性もまずまずで互いの信頼は厚く、互いに恵まれた上司と部下という感じのよくある感じ。
戦力的には鉄血のハイエンドともやりあえるのでNMCくらいまともに戦えるなら簡単に蹴散らせます、まず負けません。まともに戦えればの話ですがね(暗黒微笑)




第27話・NightConcert2

U05派遣部隊の臨時指揮所となっている倉庫から出ると、倉庫前のやや広い空間はすでに最前線の防衛ラインのただなかに変貌を遂げていた。

臨時指揮所に繋がる細い通路には土嚢が詰まれ、ダミー人形が身を隠して銃口を向けて路地の奥からやってくるNMCを警戒している。

その内側をU05所属の人形たちが弾薬箱や機材などを手に走り回り、次々と設置して対化け物用の陣地を構築していく。

鉄条網を設置した乗り越えづらい遮蔽物と、乗り越えられたとしても対処しやすい広めの陣地にありったけの弾薬と近接武器を置いて戦いに備えていた。

 

「指揮官!」

 

素早い対応に感心していると、すぐ横から元気な声がかけられた。

声をかけられたほうに目を向けると倉庫の前にリアカーに山積みにされた補給物資が鎮座しており、その中から自分用の.32ACP拳銃弾の込められた弾倉をせっせとバックパックに詰め込んでいたスコーピオンがいた。

 

「遅くなったな、状況は?」

 

「問題なし!武器弾薬もばっちりだよ!」

 

U05基地から輸送されてきた予備の武器や弾薬は言うまでもなく危険物であり、U01基地もそれを気にして空いている武器弾薬庫に保管するよう求められたのでそれには応じていた。

ただその際に担当としてスコーピオンとイングラムを付け、有事の際はいつでも逃げ出せるように言っておいたのだ。

持ち込んだ武器弾薬を収めたコンテナや木箱は大型リアカー4台に山積みにされており、一部は降ろされていて空になった木箱は簡易バリケードとして再利用されている。

 

「何かもってく?」

 

「今はいい、俺も出るが一緒に行くか?」

 

「ううん、私はここの防衛に回るよ。イングラムも一緒、誰かが守らなきゃ」

 

「そうか、MG34はどこに?」

 

向こうだよ、とスコーピオンが指をさすと撤退してきたハンヴィーとトラックに武器弾薬を積み込む仲間たちとそれの横で組み立て式の机に地図を開いてマーカーで書き込みを行うMG34の姿があった。

彼女はすぐに奏太の姿に気が付くと顔を上げた。その姿は普段と違い緊張がにじみ出ており表情も硬い、普段の任務では特に気負いもしない彼女だがかなり緊張しているようだ。

当然だろう、U05基地の面々はこれまでも化け物とは何度も戦ってきたが、こういった事件は誰もが初体験なのだから。

 

「34、俺も行くぞ。構わないか?」

 

「指揮官、助かります。指揮をお願いします」

 

「いや、任せよう。作戦はできてるんだろ?」

 

奏太はMG34が睨んでいたU01基地の地図に書き込まれた情報を見下ろし、小さく肩をすくめて断った。

彼女の広げているパッキングされた地図には、収集した敵の分布や戦況が細かく記載されていて臨時指揮所からの作戦行動ルートも書き込まれていた。

おおよそのプランももう彼女の中でできているのだろう、それを無駄にする必要はない。

 

「部隊をアルファ、ブラボーの二つに分けて、外周を左右から攻めようと思います。指揮官が上げてくれた偵察ドローンとU01基地司令部からの情報で、敵が集中している部分をある程度絞り込めました。

ヘリポート、基地内居住区、正面ゲート、駐車場、そしてU01本部棟です。どこも人形と職員が応戦していますが、混乱がひどく長くはもちそうにありません。

逆にNMCはこの五つに集中しつつあります、特に正面ゲートへ群がり始めていて一番危険ですね」

 

MG34は地図に書き込んだU01基地内の防衛ラインを指で指示す、その戦力に奏太は首を傾げそうになった。

 

「随分と数が少ないな。戦術人形だけでも100人はいたはずだ、奇襲だとしてももっと抵抗できるはずだが?」

 

MG34が収集した限り、現在何とか立て直して応戦している戦術人形たちは40人前後といったところだろう。

街を擁する大規模基地で、ほぼ全種の人形を網羅しているといってもいい大戦力を有するU01基地としてはあり得ない数字だ。

 

「えぇ、生存者の数はもっと多いですがなぜか戦闘を避けて逃げ回っているようです」

 

「トンプソンが再編するはずだが…指示を受け付けないのか?」

 

わかりません、MG34は首を横に振る。謎が増えた、どうやらU01基地の戦術人形たちは完全な混乱状態にあるようだ。

現在総指揮をとっているトンプソンの指示も聞き入れられないほどならば相当なモノだろう。

 

「非戦闘員、装備がないなどで戦闘不能な人形には避難指示が出ていてすでに避難を始めています。行き当たりばったりで逃げていて武装していたら、その個体です」

 

「わかった、見つけたらそいつらに直接問いただそう」

 

「お願いします。指揮官には駐車場内を経由し、正面ゲート確保、外周の掃討中央本棟へ向かってください。

私たちは右ルート、ヘリポートに向かいミルヤ達を救出しつつヘリを飛ばしてから外周掃討を行い、その後本部内部に踏み込む予定です。

情報オペレーターはメイド隊の二人に任せていますので、周辺の情報は随時参照可能です」

 

「振り分けは?」

 

「アルファにFNC、ステン、指揮官もそちらに。ブラボーはIDW、G11、私が率います」

 

MG34は地図に新しく付箋をいくつか針、マジックペンでルートと作戦目標を書き示す。地図に張り付けられた付箋には展開予定の部隊あるいはすでに取り残されている部隊が記されている。

本部内のSPAR小隊とSuperSASSの7名、内部にSPAR小隊、上層テラス部分にSuperSASS。

臨時指揮所には守備部隊、そこから伸びるルートには外周部に出撃する部隊の付箋が張られている。

笹木奏太を隊長としたアルファチーム、MG34を隊長にしたブラボーチームがそれぞれ割り振られ、ブラボーチームの横に追加でM2HBとM3の付箋が追加された。

この臨時指揮所を守るのはスコーピオンとイングラム、補佐のメイド隊二名、巻き込まれたMG42とAK―47を含んだ6人が残る。

そして一番危険な場所にいるのがヘリパイロットとして同行していたミルヤ達4名、攻撃にさらされるヘリポートの倉庫に籠城している。

 

「M2とM3をヘリで出す、ブラボーに同行させるが大丈夫か?」

 

「ミルヤ達の避難もありますのでトラックを使わせてもらいますから問題ないかと、アルファチームは歩きになりますがいいでしょうか?」

 

「問題ない、じゃぁ二人はデルタだ。それとあの二人はどうする?」

 

奏太はトラックに武器弾薬を積み込むMG42とAK―47を顎で示す。二人ともすでに戦闘装備を身にまとい、自分の武器を背中に背負っている。

ホールの一件から巻き込まれ、死亡したU06指揮官の代わりに臨時で基地をまとめる副官から支援としてそのままU05部隊に同行することになってしまったのだ。

 

「ここに残します、守りも無視できませんし」

 

妥当な判断だ、最初の事件の現場にいたとはいえMG42とAK―47は化け物との戦いを経験していない。二人にはここの守備に徹してもらうのが一番役に立つだろう。

MG42汎用機関銃の7.92×57ミリマウザーライフル弾の打撃力と嵐のような弾幕ならばいま確認されているNMCはまず耐えられない。

AK-47突撃銃の7.62×39ミリライフル弾の打撃力と取り回しの良さは、防衛線の様々な場面で生きる。

ハンヴィーの機銃座も活用すれば、多少なりとも打たれ強い壁として使えるので生存率も上がるのだ。

 

「妥当だな。妹さんたちは不慣れだ。前線には出せない、ほかに守備は?」

 

「スコーピオンとイングラムを基軸に先の二人、この4人とほかはダミー部隊で固めます。呼び出し符号はチャーリー。

防御し切れない場合はダミーで時間を稼ぎつつ脱出するプランです」

 

スコーピオンとイングラムの戦闘能力は奏太もよく知っている、短機関銃を用いた近接戦タイプで打撃力は心もとないが身軽なところが売りだ。

拳銃弾を用いる短機関銃の一撃の軽さは、MG42とAK-47がどう活躍してくれるかが守りの要になるだろう。

メイド隊の二人も戦力にはなるが、彼女たちは基地内の掃討に出る部隊のオペレーターに専念する必要があるのでカウントできない。

 

「FNC達も戻ってきているんだったか、駐車場の生存者は?」

 

「AEKが一人、右足をやられていますから戦力にはなりません。それにひどく動揺していて…」

 

FNCはステン、IDWと一緒に行動していた、彼女たちに損害はないにしても連れてこられたのがAEKだけとは少ない。

 

「話はできそうにないか?」

 

「はい、今はスリープモードで救護室に隔離しています、手の施しようがありません。起こした途端、錯乱し始めます」

 

「そうか…何かあったのかもしれないな。大体理解した、その作戦で行こう。二人はどこに?」

 

「すでに作戦区域で偵察中です、場所はここに。配置につき次第作戦を開始してください」

 

「了解、じゃぁ行ってくる」

 

「気を付けてくださいね?いつもハラハラしてるんです」

 

「そっちもな、戦術人形だって不死身じゃないんだ」

 

「バックアップがありますよ」

 

「今のお前はここにしかいない。マスク、忘れるなよ?」

 

ああ言えばこう言う…MG34は少し脱力して肩をすくめる。相変わらずな自分に呆れたのだろう。

奏太はMG34の体から無駄な緊張が抜けたのを見て朗らかに笑みを浮かべた。

人間も人形も命は一つ、どれだけバックアップがあろうとも今の彼女はここにしかいない。

死は平等だ、人形は少しやり直しがきくだけ、奏太はそう思っていた。

MG34と別れ、山積みにされた補給物資から武器弾薬を手っ取り早く小バックに詰めてからガスマスクをかぶりFNC達が待つ待機場所に向かう。

土嚢を飛び越えて倉庫区画から抜け、銃声を悲鳴が響く暗い基地内を駆け抜ける。NMCの姿は見えない、道中逃げ惑う非戦闘員に指揮所に向かうよう指示しながら合流地点になっている駐車場脇の小整備所へ向かって走る。

駐車場ではすでに戦闘が開始されており、合流地点になっている小整備場の倉庫前でガスマスクをつけたステンとFNCがそれぞれの武器を振り回して駆け回る人面馬と相対していた。

やややせ細った馬の頭を人間に挿げ替えたような格好のNMC『チェイサー』は大昔から言い伝えられてきた都市伝説の人面犬を馬の形で再現したような醜い化け物だ。

馬の体に付いた人間の頭も馬面に変異しており、耳元まで割けた大きな口が荒い息使いもあってまるで常時笑っているに見え、よう赤く染まって闇夜で光る眼が闇夜の中では光を引く。

駐車場から湧いて出てくるチェイサーたちを、FNCとステンは互いに背中を預けた状態で銃撃と近接武器によるカウンターで捌き続けていた。

二人とも小整備場の倉庫を守るように戦っていて、時折二人を無視して倉庫のほうに駆け出すチェイサーがいるのを見つけると即座に攻撃してそれを阻んでいる。

奏太は即座に駆け出し、二人にまとわりつくチェイサーたちに横合いからガリルAR突撃銃で奇襲をかけながら二人に駆け寄った。

 

「指揮官遅い!!」

 

飛びかかってきたチェイサーの首をサバイバルナイフで切り飛ばし、その死体を蹴り飛ばしながらFNCが怒鳴る。

奏太も突進してくるチェイサーの頭に左回し蹴りで蹴り飛ばして突進の軌道を逸らしながら、背中に銃撃して追い返しつつけらけら笑った。

 

「悪い悪い、戦況は?」

 

「見てのとおり滅茶苦茶、チェイサーはだいぶ仕留めたけどどんどん出てくる。倉庫にまだ非戦闘員がいるから、彼女たちが逃げられるように始末して!」

 

倉庫の中には武器がない戦術人形と非戦闘員がいるようだ、まずは彼らを臨時指揮所に向かわせてから作戦に入るのが先決だろう。

 

「グッドタイミングってわけだな、俺が相手するから彼女たちが逃げられるよう援護しろ。ついでに補給してこい、結構撃っただろ?」

 

チェイサーをけん制しながら奏太は二人のために5.56×45ミリライフル弾や9ミリパラベラム弾を詰めた弾倉や手榴弾などを詰めた小バックを二人に渡す。

 

「さすが指揮官、話が分かる!」

 

「5分稼いでください、すぐに戻ってきますから」

 

「お任せあれ」

 

倉庫のほうに走っていくステンとFNCを見送り、奏太は懲りずに戻ってきたチェイサーの気味の悪い人面をガリルAR突撃銃で打ちまくりながら大声で怒鳴った。

 

「来いよ馬面ども!!美味しい人間がここにいるぞ!!」

 

だがそれだけではだめだ、気を引いても自分より逃げる非戦闘員たちのほうがやりやすいと思われては意味がない。

先ほどはステンとFNCのほうが脅威であり、エサである非戦闘員たちを襲う障害になっていたから攻撃されていたのだ。

ただ一人残った人間とは言え大勢のまえでは、逃げるエサのほうがいいと思うやつがいる。それもできれば誘引したいところだ。

だから片っ端から銃撃してちょっかいを出して怒らせる。5.56ミリ×45ミリライフル弾一発程度ではNMCはビクともしないが、攻撃したら当然敵とみなされる。

チェイサーは知っている限り群れのボス以外はたいして頭は良くない、こうして挑発すれば怒って奏太のほうに突っ込んでくる。

馬鹿正直に突っ込んでくるチェイサーの頭にカウンターの5.56×45ミリライフル弾を叩き込み、ひらりと身を横に逸らして避けつつ撃ちまくる。

弾倉を一つ撃ちきる頃には、チェイサーの群れは10体前後にまで膨れ上がっていた。何匹か抜けたようでFNCとステンが反撃している銃声が聞こえるが、上出来な部類だろう。

バカの一つ覚えのように突進してくるチェイサーを避けながら弾倉を交換しスライドを引き直す、数が多い分勝手にチェイサー同士が邪魔になって避けるべき相手はそう多くない。

多くのチェイサーはそのまま駆け抜けていくが、一部の個体はその場で急ブレーキをかけて止まろうとした。

個体差による癖の発露だが、その個体の後ろにいたチェイサーもそれにつられてしまい団子ができる。

狙い通りに二つに割れたチェイサーの立ち止まった集団に、奏太はM61破片手榴弾を2個投げ込んで近くにあったチェイサーの死体を持ち上げて壁にする。

手榴弾のことなどわからないまごついたチェイサーたちの足元でM61破片手榴弾がさく裂し、破片がチェイサーたちを突き抜けた。

ビスビスと盾にしたチェイサーの死体にも刺さる、溶けかけていたその死体を下ろすとチェイサーたちの死体の山が一つ出来上がっていた。

およそ半分といったところだろうか、5~6体の死体が横たえる爆心地をちらりと見てから奏太は駐車場を駆け抜けて大回りで再び突進しようとしてくる残りのチェイサーに向けて引き金を引く。

 

(それにしてもひどいありさまだな、一体何が起きやがった?)

 

チャイサーの突進を避けながら奏太は駐車場に止められていたU01基地の車両の残骸を確認して、残骸の間に体を躍らせた。

ハンヴィーやトラックなどの軍用車両から、市街地のパトロール用セダンといった車両は損傷の大小はあるがほとんどが損傷しており駐車場はこの小整備場以外は滅茶苦茶だった。

ボンネットが開かれてエンジンだけが滅茶苦茶になったセダン、運転席で何かが爆発したように内側から捲れたトラック、タイヤがパンクし室内が血みどろになったハンヴィー。

そのほかにも煙を上げていたり、すでに出火していてエンジンからもうもうと黒煙と炎を上げる車両もある。

逃げようとした車両もあるようだが、結局失敗したらしくほかの車両に突っ込んで被害を大きくしていた。

あちこちに整備員の人間や人形の死体もあり、事故車の間には挟まれた死体も見られ混乱の痕跡が残っていた。

小整備場周辺が無事だったのはU05部隊が使うハンヴィーとトラックを仮置きしていたからだろう、近くにはFNC達が立哨をしていたから狙えなかったのかもしれない。

 

(無事な車両もいくつかあるが…妙だな)

 

破損した車両の間によく見ると動きそうな車がちらほらとある、奏太は車の場所を記憶しつつチェイサーの群れをできるだけ無事な車から引き剥がすように走る。

回り込んできたチェイサーの突進をハンヴィーの中に飛び込んで避け、その先にいた新手をドアごと蹴飛ばして蹴り倒し、踏み台代わりにして車の残骸に上る。

壊れたトラックの屋根の上に上り、目につくチェイサーの背中に一発づつ喧嘩を売りながら奏太は駐車場の違和感に納得がいった

 

(やはり反撃の数が少ない。グリフィンの戦術人形にしてはおかしすぎる、注意しなきゃな)

 

近場のチェイサーに銃撃してから飛び降り、残骸の合間をすり抜けあるいは飛び越えながら追ってくるチェイサーに時折銃撃を撃ち、手当たり次第に撃って喧嘩を売る。

そんなことをしながら駐車場をちょこまかと走り回っていると、車の陰からひょっこりと顔を出したピンク色の醜いNMCが目に入って咄嗟に頭を撃ちぬいた。

 

(ストレンジャー、嫌なタイプだな)

 

突進してくる群れとは別に、駐車場にのそのそと入り込んできた醜いピンクの化け物はその場に倒れてもがき、耳障りな悲鳴を上げた。

人間と裸の鶏をミックスしたような格好のストレンジャーは、より醜いことに顔が人間の面影を残している。

茶髪の短髪に耳にピアスを付けた青年の面影を残す『オド・ストレンジャー』は、不格好な逆関節になった足でよたよたと詰め寄ってきた。

右手一本でガリルAR突撃銃をチェイサーに向けて最後の弾を撃ちつつ、左手でM29マグナムリボルバーを抜いてオド・ストレンジャーの頭を撃ち抜く。

撃ち殺したそのそばから車や建物の陰からよたよたとやってくるオド・ストレンジャーが姿を現すのを見て、奏太は鬱陶しく思った。

ほどほどの丈夫で俊敏に動くチェイサーほどオド・ストレンジャーは脅威ではない、強靭な足腰をしているが移動は基本歩きで耐久力もチェイサーほどではないからだ。

しかしチェイサーの群れを相手取っている中に紛れ込まれてしまっては余計に気を割かなければならない、チェイサーの群れに紛れ込まれて接近されたら厄介だ。

 

(集まってきた、こんな数初めて見たぞ。何が起きてやがる、おかしなことばかりだ)

 

こうして派手に銃声を打ち鳴らしていれば化け物たちにここにエサがいると教えているも同然だ、誘蛾灯のように集まってくる。

囮としては十分機能できているがその分危険度も増してきた、単身ではもたもたしていると数で押しつぶされてしまうだろう。

NMCの群れと戦うなんて珍しいことだ、旧アメリカのドライフィールド地方近辺でしか見られない希少種が目白押しとは異常事態に他ならない。

いつもなら稼ぎどころなのだが背中を守ってくれる彼女たちがいないのが痛いところだ、奏太はM29マグナムリボルバーをホルスターに戻してガリルAR突撃銃を再装填しながらいつもの彼女たちを想った。

 

(タイミングが悪すぎる、明日くらいなら…おや?)

 

その時、またふらりと現れたオド・ストレンジャーの顔に見覚えがあるような、そんな気がした。元は金髪で小柄な女の子、のように見える。

どこかであったかな?突進してきたチェイサーを受け流しながら組み付き、ヘッドロックをかけてナイフを脳天に突き刺しながら記憶を探る。

思い出せないな、なんとなく引っかかりながらそのオド・ストレンジャーを撃ち殺すとステンとFNCが駆け戻ってくるのが見えた。どうやら無事に指揮所のほうへ誘導したようだ。

奏太は息絶えたチェイサーを手放し、飛びかかってきたチェイサーのひづめを避けてお返しに足払いするとステンが転んだチェイサーに止めを刺す。

そのステンの背中をFNCが守り、向かってきたチェイサーをFNC突撃銃で頭を的確に撃ちぬいて確実にカバーする。

 

「戻りました、作戦は?」

 

「変わらないが、手間取るぞ。注意しろ、明らかにおかしい」

 

「そりゃ見ればわかるよ、U01の部隊がまともに動いてない。奇襲されたにしてもひどすぎる」

 

「いつものU01とは思えないお粗末さですよ、これでおかしく思わないほうが変です」

 

FNCとステンも変に思っていたようだ。二人もU01基地の戦術人形たちが鉄血との戦いで鍛えられたベテランだということは重々理解しているし、何度は轡を並べたこともある。

彼女たちの戦闘能力もその目で見ていたからなおさら奇妙に思っていただろう、鉄血のハイエンド戦術人形にも果敢に立ち向かえるのにNMC相手にスキルを活かせていないのだ。

この場で暴れているNMCは鉄血と比べればはるかに弱い、チェイサーもオド・ストレンジャーもインパクトはあるが落ち着いて対処すればまず戦術人形の敵ではないのだ。

 

「何か思い当たりますか?」

 

「わからないが良くはない、やりながら探る。行けるか?」

 

FNCとステンは頷くと同時に奏太を追いかけまわしていたチェイサーに銃口を向けて引き金を引いて答えた。

奏太も二人の背中をカバーするために一度背後に目をやり、ふと先ほど殺したオド・ストレンジャーの死体が目に入った。

どこかで見たような気がした死体は形状崩壊を起こし始めており、骨もろとも液体化して溶けつつある。

こうしてNMCは死ぬと腐るよりも早く死体が形を失うから解析がなかなか進まない要因になっているのだが、殺した傍からこうなるのは早すぎる。

奏太が知る限り、最悪でも最短でも半日は体の形を保っていたはずなのだ。

それが気にかかった奏太は、背後に回り込もうとするチェイサーをけん制しながら溶ける死体に近づいた。

 

 





あとがき

現在のU05部隊内訳
アルファ『笹木奏太、FNC、ステンMkⅡ』
ブラボー『MG34、G11、IDW』
チャーリー『スコーピオンVz61、イングラムM10、MG42(U06)、AK-47(U06)、事務方メイド隊2名』
デルタ『M2HB、M3グリースガン』

孤立部隊
SPAR小隊『M16A1、AR-15、M4A1、M4SOPMODⅡ、HK416』
本部上層階監視所『SuperSASS』
ヘリポート『ミルヤ含め4名の事務方メイド隊』


結構いるように見えますがほとんどダミー人形を用いていないので少数精鋭、これでも普通のNMC相手なら勝てます。
原作知っている人ならわかると思いますが、しっかり対応できればよほどの相手じゃなければまず凌げる相手ばっかりです。
でも問題はどうしてこんな奇襲を受けたのか…ここは基地だから、材料はいっぱいあるんですよね。
今回の敵をほぼ2系で固めているのもそのためです(暗黒微笑)





ミニ解説

チェイサー
出展・パラサイト・イヴ2
旧アメリカ合衆国・モハビ砂漠・ドライフィールド地方のみに生息する希少種ミュータント『ネオ・ミトコンドリアクリーチャー』通称NMCの一種。
馬の体に馬面の人間の頭を付けたよう見たまんまの『人面馬』で、多くの個体は開けた乾燥地帯で小さな群れを作り生息している。
真っ赤に染まった両目は闇夜で光り、耳元まで割けた口は常に笑っているように見えてかなり不気味。
馬型らしく脚力があり、NMCの中では俊敏で移動能力が極めて高い。戦闘能力は極めて単調で、大体は脚力を武器にした突進が基本。
頭から突っ込んでくる頭突きやフライングボディプレスは距離感と立ち回りさえ理解してしまえば簡単に避けられる。
なるべく閉所での戦闘を避け、広い場所で回避重視のカウンター狙いで戦うと良い。背中が弱点なのもあり、慣れれば苦労しない部類。
ただし戦闘中は、傍目から見ると興奮して荒い息のニマニマ人面馬にまとわりつかれている絵面になる。
群れの規模が大きくなる巨躯のボス個体が自然と発生し、ボスを中心とした統率の取れた活動を行うようになり危険度が飛躍的に高まる現地民からは危険視されている。



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