独自設定MAX、変態MAX、自分勝手MAXでお送りします。
部隊を乗せたエレクトロチヌークが戦地に向かう、その姿を私は普段はめったに使われないヘリポートで帽振れしながら送り出した。きっと奏太や市代しかわからないでしょうけど。
空が青い、まるで吸い込まれていくように2機のヘリが空を行く。私も行きたいところですけど、今日は我慢しなきゃ。
あと2週間、この基地をしっかり運営しないと有終の美は飾れないですから。
最近は着慣れたP38のデフォルト制服、ドイツ軍帽子をしっかりかぶって気合を入れる。
さて、やりますか。と思ってたら、後ろからパタパタ慌てて走ってくる足音が聞こえました。
「あー!またかー!!」
「美奈、遅いですよ?」
「うぅ、琥珀に続いて奏太と市代まで。なんか厄日だよ」
ヘリポートに上がってきたのはコルトM1911の美奈、私の大切な人の一人。
「ダーリンとハニーに行ってらっしゃいができないなんて、昨日といい今日といい。ついてない」
「またコケました?」
「食堂の時計がズレてた」
おおぅ、それはついてないですね。あの時計、結構古いからやっぱガタ来たんですね。どこかで調達しなきゃ。
でもなぁ、ここら辺のは取りつくしちゃってますし。素直に買いに行っても、下手すりゃ高くつきますよね。
「むぅ、こんなの寂しい!帰ってきたら…襲う」
「二人とも疲れてるのよ?」
「だよねぇ」
がっくり、と肩を落とす美奈。かわいい。
「なら、慰めてあげましょうか?」
「へ?」
美奈の手を取り、腰に手を添えて顔を近づける。美奈は顔を真っ赤にして、逃げない。かわいい、さすがは私の嫁。
彼女の手を引いてヘリポート横のハンガーの隅に、影の中で美奈の唇を奪う。舌を絡めて、奥まで、寂しいのは私も同じ。
今はこの基地に家族は二人だけ、琥珀はM16達と、奏太と市代は基地のみんなと仕事にいった。
私たちは笹木一家、チームで恋人、いつもならどんな時でも一緒に仕事をこなしてきた。奏太、美奈、琥珀、市代、いつも一緒に。
確かにチーム分けはあったけど、やっぱりここの仕事は勝手が違う。ハンターの生活が恋しいのです。
「んはっ!サラ、もう、まだ昼間よ?」
「いいじゃないですか、ちょっと、ちょっとだけ」
「あ、もぅ、サラ、エロい」
「カップルはエロくていいんです」
美奈の大きな胸を右手でやさしく堪能する、いつ見ても、おっきい。夢中になれる魔性があります、吸い付きたくなっちゃう。
むっちりとした太もも、ニーソが少しぴちっとしてて、いい色気。こういう衣装はほんとIOPって命かけてますよね。
うぅむ、私の服、琥珀の服、美奈の服、今はIOPのデフォルト服、小綺麗でデザインはいいんですよね。
「サラ?ちょ、あ…」
「かわいいですよ、美奈、もっと聞かせて?」
「あ、待って、マジで、これやば、ちょっとぉ!」
もう、ピクピク震えちゃってかわいいです。美奈もその気なんですよね?もう女の顔になってますよ?
それにこの下着、黒の勝負仕様、帰ってきたらする気満々でしたね…私も透け透けですけど。
「ほら、もうこんなになって。エッチな雌ですね?期待しちゃいました?」
「サラだって、トロンとしてるよ?」
当たり前ですよ、嫁がこんなにエッチなんです。エッチな美奈が悪いんです。
「サラ、スイッチ入ってる?マジ?」
変態です、いい変態です、嫁が最高です。我慢できなくて、美奈の胸に顔をうずめて大きく息を吸う。美奈の香り、市代と奏太の香りもする。
琥珀のは薄い、昨日から会ってないから仕方ないけれど、琥珀、琥珀、寂しい。
「美奈、寂しい、私もさみしいです。琥珀と一緒に寝てない」
「サラったら……もぅ私もだよ?昨日なんて不寝番だったじゃない」
一緒に寝たのも数日前、みんなと寝たのはだいぶ前。奏太も市代もわかってくれましたし、慰めてくれましたけど。
「でもでもぉ」
「仕方ないよ、落ち着いてきたほうだし」
「うぅ、やっぱりこういう仕事は合いません」
みんないい子ばかりですし、離れるのはさみしいですけど。やっぱり私たちは荒野のほうが好きなんです、身に合ってます。
「ま、あと2週間がんばろ」
「はい……では、いただきます」
「あれぇ!?」
据え膳食わぬは男の恥、もとい女の恥。この後たっぷりかわいがって、乱れさせていただきました。御馳走様。
第1話・裏
酷い夢を見ていた気がする、M16は生まれて初めて感じるめまいと吐き気に苛まれながら小さく悪態をついた。
夢は見ていないのだろう、ただそんな気がするだけだ。そう思いたいがSPARのM4という前例がある以上、もしかしたら見ているのかもしれない。
覚えていないのだから検証のしようもないか、M16はキリキリと痛む電脳に悩みながらうめいた。
自分が先ほどまで何を考えていたかは分からない、だが電脳に走るエラーと発熱は自分がどうなったのかを如実に示していた。
M4を抜いたSPAR小隊3人は、IOPの訓練場で初めてダミー人形を使った訓練を行っていたのだ。
ダミーがダミーを動かす、字面にするとただの書き間違いだなとM16はふと思う。
介抱してくれたらしいペルシカは、呆れた様子でボトルを差し出してくる。M16はそれを受け取ると、口に含んでゆっくり飲み込んだ。
「博士、すみません」
「ダミーに同じ動きさせようとするからよ、それにあんな動きするなんて」
最後の記憶にあるのは、指揮官から教わったハンターの足運びをダミーと一緒になってやろうとしたところだ。
だが電脳が自分の考えるダミーの動作を演算しきれず、オーバーフロー寸前になって強制シャットダウンしたのだ。
その結果、制御を失った体は思い切り壁に激突してしまったらしい。
「浮かれ過ぎたみたいですね、いやはや情けない」
「いいわよ、おかげであなたたちがどんな訓練をしてきたのかよく分かった」
ペルシカは屋内のキルハウス式訓練場で模擬戦を行っているSOPⅡと相手役を買って出た指揮官のM1895との熾烈な接近戦を見つめてぼやくように言った。
「少なくとも現代戦とは程遠い」
そりゃそうだ、M16はペルシカのげんなりした表情にけらけら笑う。U05基地の訓練は指揮官達がハンターとしての経験をもとに行っている。
ハンターの戦闘は多岐にわたり、常に寡兵で劣勢な場合が多い。そのため基本的には何でもありが常識だ。
それこそ通常のグリフィン対鉄血の戦闘、あるいはそれに類する銃撃戦では起こりえない近接戦も常に訓練されている。
訓練の一環として行われる軍格闘技、あるいはCQB訓練などではない刀剣類を用いた前時代的なものを含めてだ。
現にモニターが映し出すSOPⅡとM1895が行っているのは近接格闘戦、それも両手にナイフを握った熾烈なナイフバトルだ。
キルハウスの吹き抜けを模した場所で、上階や廊下から狙うダミーをよそに開けた吹き抜けど真ん中で取っ組み合っている。
訓練用ゴムナイフで互いの刃を捌き、隙を見て振るわれる蹴りや足技が二人の立ち位置をくるくると入れ替える。
小さな体躯に白を基調とした服を身にまとったナガンM1895、それに対するは女子高生的な身長の黒いコートを着たM4SOPMODⅡ。
M1895の左回し蹴りをSOPⅡは受け流し、その隙をつく様にナイフを突き出せばそれをM1895はからめとって勢いをそのままに投げ技を仕掛ける。
背負い投げのように投げられたSOPⅡは空中で姿勢を立て直し、両足から着地して再びナイフをふるう。
それをM1895はバク転で避けたかと思えば、着地と同時に地面にそって飛んでいるようなステップで左右に体を揺らしながらSOPⅡに肉薄する。
その動きに呼応するようにSOPⅡも同じステップを踏んでM1895の足並みを乱そうとする。
おかげで訓練するはずのダミーが、SOPⅡが近すぎるせいで射撃できず右往左往していて全く役に立っていない。
「ほらほらどうしたのじゃ!攻めが足りぬ、守りも甘い!」
「こんの!撃ってよダミー!なんで撃たないのさぁ!」
「使えぬのでは演算の無駄ァ!」
最初は銃撃戦での訓練のはずだったが、それでは面白くはないと相手役のM1895がSOPⅡにハンデを与えた結果がこれである。
M1895はナイフのみで、SOPⅡはダミーを3体率いた室内戦形式。結果は御覧の有様だ。
最初こそまとまった射線を武器にM1895をうまく捌いていたが、少し入り組んだ吹き抜けに誘い込まれてしまうと形勢は逆転したのだ。
M1895の得意とする近接戦における双剣のようなナイフ捌きははっきり言って異次元だ。
手元の動きが読めない上に足運びのせいで瞬間移動のように視界から消えて死角から切り刻んでくる上、まるで見えてるかのようにこちらの攻撃は尽くかわされる。
今回も包囲したと見せかけ、SOPⅡに突貫したM1895は撃ち出されるペイント弾を見て避け、あるいはナイフで弾き落としていた。
小さな体躯のせいで対峙すると余計にすばしっこく見えるのだから性質が悪い。
「まだまだ!」
だがSOPⅡも負けてはいない、師匠譲りの近接剣術は並みの戦術人形では動きを読み取ることも難しいだろう。
荒々しく舞うように振るわれるナイフと足の乱舞がM1895を攻め、反撃の隙を与えない連撃を叩き込む。
「ほいほいっと!」
それをM1895は完全に見切って避け、距離を取ると同時にホルスターから投げナイフをSOPⅡに向けて投擲する。
SOPⅡも黙っていない、投げナイフを自分のナイフでたたき落とし、地面に落ちて跳ね返ったナイフを思いっきり蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたナイフはM1895の顔面に一直線に飛び、彼女が上半身を逸らして避けた隙をついてSOPⅡは再び己の近接距離まで詰め寄った。
「撃てるわけないじゃない、自分も撃ってしまうわよ?そもそもダミーはSOPⅡが近すぎるから撃てないの、さっき離れた時に撃てばいいのに」
「いや、あそこで撃てば彼女は逃げます。しかも味方の銃撃のせいでSOPⅡは追撃できない、確実に見失う。
そうなると各個撃破が待ってますね、入り組んだキルハウスは彼女の独壇場でもありますから」
何より恐ろしいのは彼女を見失うことだ。見失うとその後が怖い、彼女が逃走を選ぶときは次の一手をすでに考えている。
この訓練の場合、必ず反撃を仕掛けてくる。姿を見せることのないステルス攻撃が襲ってくるに違いない。
そうなるとSOPⅡだけでは対処しきれない、確実に負けてしまう。それをわかっているから彼女はM1895から目を離さないのだ。
「となると、ダミーが足を引っ張ってる?」
「そうですね。私なら今撃ちます」
M16なら撃てる、いやU05の人形や指揮官ならば誰でもこの状況で敵を狙って撃てる。まだM1895も撃てる距離を保って近接戦を仕掛けているからだ。
さらに何もしないで近接戦を続けているあたり手加減している。いつもならとっくにSOPⅡは地面の倒されているのだ。
M16やM4、AR-15が参戦していればSOPⅡとの取っ組み合いで開く射線に弾を滑り込ませるだろう。
「え?」
「撃てますよ、SOPⅡもダミーの射線を開けるように動いてます。銃の性能とこの距離なら、ほら、今脇の下を抜いてけん制できます」
M1895がかがんだところを、SOPⅡは右腕を振り上げてナイフを振りかぶる。その脇の下の射線は廊下から狙うダミーの射線だ。
SOPⅡもダミーに射撃命令を送っているのだろう、一瞬だがSOPⅡの動きが鈍り、射線をさらに大きく開けようと身を引いている。
しかしダミーは発砲せず、それどころか銃を下ろして遮蔽に隠れてしまった。フレンドリーファイアを恐れたダミーが射撃を中断したのだ。
「まただぁ!もうじゃま!」
「隙あり!」
「うがぁ!」
SOPⅡはダミーに苛立った隙を突かれ、足払いで後頭部から床にたたきつけられる。
だがSOPⅡは地面にたたきつけられた状態から手だけでM1895にナイフの切っ先を向け、すかさず柄の部分にあるスイッチを押し込む。
柄の中に仕込まれたスプリングの力で押し出されたゴムの刃はM1895の腹部に向け射出されるが、その刃は届くことはなかった。
眼前に突きつけられたゴムの刃を見つめ、SOPⅡは脱力して床に身を預けた。
「届かなかった、負けたぁ……」
「なはははは、そう簡単に負けてやる訳にはいかんぞ。まぁ前に比べたらやるようになったな」
「余裕な顔してちゃ説得力ないよ」
「余裕じゃもの。まだまだ空間把握が甘い、だから隙を突かれる」
「お前のようなババァがいるかー」
「まだまだバカ弟子にゃぁ負けんわい」
M1895は、ゴムの刃をビヨンビヨンと波打たせてながら余裕綽々に笑う。
先ほどM1895はナイフが当たる寸前にそれをつかみ取り、素早く持ち替えてSOPⅡに突きつけたのだ。
お前のようなババァがいるか、とは基地の人形の誰もが一度は思うM1895への文句である。理不尽に強いという意味でだ。
「ちぇー、うまくいくと思ったのに。もう、私のダミーなのになんで撃たないかな?」
「ダミーはダミーじゃよ、いつも通り仲間との連携を密にするのとはわけが違う」
「それ私に言うのー?」
「お主はお主じゃろ?日に日に強くなっとるのは間違いない。なかなか様になっておる、今後も精進することじゃ」
「次は負けない!勝ってやる!」
師弟らしいやり取りを交わす二人をM16はモニター越しに見つめながら大きくため息をついた。
SOPⅡは師匠である彼女に追い付こうとずっと努力を続けている。
「すごいモノね、いったい何が彼女をここまでにしたというのかしら?」
「彼女はハンター、本業はミュータント狩りです。基礎から何まで全部違う、体もハンター用にだいぶ弄っているって言ってましたね」
彼女が時折語る思い出話はこのU地区ではまず聞けないことばかりで、現実味がない冒険譚も含まれる。
黄金色のゴリラを狩った話、新しく見つかった遺跡に潜った時の話、各所に点在する街での思い出、このグリーンゾーンではホラ話のようなことばかりだ。
もしペルシカ博士が同意しなければ誰も信じなかったに違いない、生の情報でグリーンゾーンの外を知る機会は滅多にない。
(外地、か)
グリーンゾーンを含む人類生活可能圏を内地、その外を外地。指揮官達がよく口にするせいでなじんでしまった区分のようなものだ。
正確には人類生存可能圏の外周を取り囲む正規軍の多重防衛ラインの向こう側、人類生存可能圏外であり核やコーラップスその他諸々に汚染された危険地帯だ。
そこで暮らす人間の多くは第3次大戦の難民や嫌気がさした人間、取り残された軍人であり、人の住める随所に様々な形で街を作り暮らしている。
居住可能区域は陸路や空路で交易を結び、発展している都市は戦前の街並みを取り戻しつつある場所もあるという。
それならば交流ができるはずだが、政府が制限を課しており交流場所は外周にある僅かな窓口のみに限られている。
理由は難民の流入を規制するためだ、人間不足と嘆いていても仕事はないし、グリーンゾーンで作れる食い扶持は今いる人間で精一杯なのだ。
圏外からの入国はそこで厳しく制限され、グリーンゾーンにおいて有能な技術や豊富な金、あるいは許可証を持っていない限りはいることができない。
さらに言えば圏内の人間は圏外の人間をあまり快く思っていない。人間の形を保っているだけのミュータントだといって排除しようとする者さえおり、それはグリフィン内部にも多く存在する。
ペルシカリア博士やヘリアントス上級代行官、クルーガー社長、マクラファティ支部長がそういった思想とは無縁なのは僥倖だ。
そうでなければ今頃、指揮官達はさっさと高跳びしているか姿を晦ましていたに違いない。
「そうね、でも全体的な総合出力は戦術人形としては低めよ?」
「そりゃそうじゃ、流通するパーツが違うからな」
訓練場からSOPⅡを伴ってきたM1895がM16とペルシカの会話に割って入る。
汗をかいたのか上着を脱いでおり、スカートと腕まくりしたシャツと薄手だ。
普通の第2世代戦術人形ならばここまで汗をかく前に疑似汗腺をカットするのだが彼女はそれができない。
彼女は人間の様に汗をタオルで拭い、SOPⅡから手渡されたスポーツドリンクを一飲みした。
「くぁーーー!」
こういうところはババァというより親父臭い上に荒っぽい。
「ほぼガワだけだものね」
「技術じゃ負け取らんじゃろ、こっちとあっちじゃ何もかも違うんじゃから」
「それは認める、でも今は出力の話よ。大体5割、それも初期型を基準にね。ここまで水を開けられると後が厳しくなるわよ。
最新バージョンがあるから買わない?高出力パーツも組み込んであげる、プログラムも最適化してあげるわ」
「もうこの体には慣れたし、わしらにはこの体が必要なんじゃよ」
M1895は自身の体を誇るように胸を張る。
「悪く言うつもりはないんじゃが、ここではよくても向こうで立ち往生するのがオチなんじゃよ。
戦術人形は整備に手間かかるし金もかかる、その上第2世代ともなればとてもじゃないが運用できん。環境も違うからなおさらじゃ。
あっちはここほど流通の便もよくないし、そもそもIOP製の部品が希少品じゃ。たとえ出力が劣っても治るに越したことはない。
そもそもわしらはハンター、クリーチャーやモンスター相手に力比べは不要よ。ま、対人戦にゃ有利かもしれんがね」
M1895は肩を竦めて首を横に振る。交渉は無意味だろう、M1895はペルシカの提案に毛ほども興味が湧いてないと見える。
彼女が自分の体をとても大切にしているのはM16もよく知っている。
だがその返答に納得できなかったSOPⅡは不満そうに声を上げた。
「えー!もったいないよ!」
「阿呆、だからお前はバカ弟子なのじゃ。新しいものが全ていいとは限らんのじゃよ?」
「でも慣らす時間ならいくらでもあるよ?それに新しい体なら師匠はもっと強くなれるんでしょ、博士?」
「そうね、出力は以前の倍くらいできるし関節や神経伝達速度も速くできる。すこしお金は掛かるけど部品も16LABの一級品にできるわね」
「すごーい!」
「はぁ………やれやれ、バカ親とバカ弟子が」
盛り上がる二人にM1895は、黙って見物していたM16に向けて軽く肩を竦める。
「悪いな、コハク。悪気はないんだ」
「知っておる、悪い気はしておらんよ。ちょっと失礼」
「どこ行くんだ?」
「トイレ、あと電話を借りて、少し風にあたってくる」
M1895は手をひらひらさせながら管制室から出て行った。
「ラブラブだね~」
もしかしなくても電話の相手は指揮官達だろう、それを知るM16はニヤニヤが止まらない。
あの甘い空気とそれに嫉妬する面子、それで巻き起こるちょっとした騒動はあの基地では事欠かない。
そういえば、とM16は周囲を見渡して首を傾げた。騒動ネタの一人が見当たらない。
「そういえばAR-15は?」
「ずっとサバイバルプログラムに夢中、今日こそやってやるって息巻いてる」
ペルシカが指さす先にはモニターがあり、そこにはVR空間で模擬戦に挑むAR-15の姿が映し出されていた。
そのVR空間は荒廃した地下世界、どうやらロシアのメトロのようで普段使用される対鉄血作戦プログラムとは趣が違う。
この対人戦プログラムはかつてM1895の知り合いが経験した戦闘を基に作られたサバイバルシミュレーションなのだ。
この場面はM16も経験したことがある、ここまで自分を先導してくれた教官が盗賊に捕まってしまいそれを救いに行くというシナリオだ。
シナリオはともかくやることは一対多数の総まとめである。
武装も貧弱で粗悪な代物だ、テストではボロボロのAK74と投げナイフを初期装備として攻略することになる。
それをどう使い、たった一人で盗賊がそこら中にいる駅の中を攻略するかが求められる。
AR-15はそれにすっかり熱中してしまっているのだ、これも訓練の内なのだが本来の目的であるダミー訓練もそっちのけだ。
「まったく、相変わらずだな」
「困ったものよ、おかげで全く実験ができない…別な意味ではデータが取れていいのだけれど」
荒廃して汚れたメトロの暗闇に潜む小綺麗な学生服のAR-15が、盗賊の視線をかいくぐるスキをうかかっている姿はひどくミスマッチだ。
だが彼女の表情は真剣そのもので、ボロボロの投げナイフを片手に談笑する盗賊の頭を今か今かと狙っている。
この訓練プログラムは彼女の夢への第一歩なのだから、それは当然なのだろう。AR-15はハンターにあこがれている。
指揮官達のように外に飛び出し、ハンターとして世界を回ることを夢見ているのだ。
だからといって、指揮官についていこうと常に画策しているのは正直やめてほしい。指揮官も困っている。
「すみません、あとできつく言っておきます」
「お願いね…ねぇ、いつもみたいに喋っていいのよ?」
気まずそうなペルシカの言葉にM16は首を横に振る。これは自分が自分であるために必要な区切りなのだ。
自分はM16A1で間違いない、けれどもペルシカが自分を通してみている彼女ではない。
「私はSPARのM16です。博士」
偶然生まれただけの同型機、AR小隊のM16A1ではないのだから。M16は、まっすぐ両目で博士を見返した。
◆◆◆◆◆◆
「おー、摩天楼じゃのぅ」
16LABの研究施設、職員用のカフェテラスから遠めに見える人口密集地のビル群を見ながらナガンM1895は手すりに身を預けて一息ついていた。
陽光に照らされてキラキラと輝く繁華街、車が走り、人々や人形が行きかい、活気があって輝いている。
夜になれまた違う、いわゆる100万ドルの夜景的な光景になるのだろう。
(向こうじゃこんなもんめったに見ないものな。あの上を飛んだらさぞ絶景じゃろう)
そういえば以前、かつては海の間際にもこんな大都市があって夜は夜景が海に反射してきれいだったとも言っていたな。
M1895は昔を懐かしむ老人の話を思い出してしみじみと思う、ここはそんな昔話をよく思い出す場所だ。
今となってはその摩天楼もただのクリーチャーやモンスターの巣窟、いい狩場であるが思い出に浸る場所としてはふさわしくない。
「空か、しばらく飛んでないのぅ…にひひひひ」
目的もなく自由に空を飛び、じっくり楽しんだ後に地上でもう一度楽しむ。誰もいない荒野の夜空の下の淫靡な一時。
思い出すだけで笑みが漏れ、下腹部が熱を持つ興奮がよみがえりM1895は迷わず妄想に飛び込んだ。
「うへへへへ……うん?」
そんなピンク色の妄想に浸っていると、背後に気配を感じて意識を切り替えて笑みを引っ込めながら振り向く。
テラスのガラス戸に、いつものような元気がないSOPⅡが居た。先ほどまであんなに元気だったのにどうしたのだろうか?
悪いものでも食ったか、それとも打ちどころが悪かったのか、そんな風に考えていると彼女はとてもいいづらそうに問いかけてきた。
「師匠、本当にもうすぐグリフィンを辞めちゃうの?」
「…まだ時期は公開してないはずじゃが?」
「詳しくは知らないよ。でも、もうすぐってことはみんなうすうすわかってる」
「あー…一応隠して準備してたつもりだったんじゃがな。やはりみな強くなっとるわ」
「ねぇ、答えてよ」
答えが詰まる、M1895はSOPⅡの悲しげな視線に胸が締め付けられた。
長く居すぎたな、こうまで彼女に肩入れしてしまうとは。
「2週間じゃ、何もなければ。それでお別れじゃ」
「2週間、たった、たった2週間!どうして、ねぇ、どうして!?」
「元から決まっておったのじゃよ。わしらの契約は半年ほど、元々路銀集めと修理のためなんじゃよ。
前にも話したじゃろ?わしらは別の仕事でここにきて、鉄血の攻勢に巻き込まれて帰りそびれたとな」
ただ帰るだけならば地上や地下を行くルートもないわけではない。しかしそれでも金がかかるし、危険度も空路を行くよりはるかに上だ。
グリーンゾーン周辺では野盗やE.L.I.Dから身を守るために正規軍の補給部隊にくっつくのが上策だが、それにはちょっとした心配りが欠かせない。
またそれがうまくいっても無事でいられるわけではない、その先には高濃度汚染地帯からあふれる汚染に満ちた荒野が待っている。
高濃度汚染地帯をよけていくのは当たり前だが、それでも汚染が酷い。さらにクリーチャーやモンスターですら近づかないその地域はE.L.I.D感染者の巣窟だ。
その襲撃をかいくぐってもその先にはクリーチャーたちの縄張りや野盗、空賊などが待っている。
笹木一家の総力を持ってしても近場の街まで行けるか不安が残るのだ。その点でいえばやはり空路が安全で、安くて、一番近道ができるルートだ。
なにより、自分たちが拠点とする朝霞の街は陸路で行くには遠いのだ。
「そんなの、やだよ。みんな居なくなっちゃうんでしょ?指揮官も、ミナも、サラも、イチヨも。
79式やPKPたちもいなくなっちゃったのに、指揮官達までいなくなったら、U05はどうなるの?」
「新しい指揮官が来るか、それかペルシカが掌握するかじゃろうよ。どのみち、わしらはもう―――」
「いやだよ師匠!コハク師匠!!」
「SOPⅡ」
「やだ!まだ全部教わってない、まだ勝ってない、まだ居てよ、ずっとここに居てよ!ねぇ!!」
子供のように、いや彼女はどうやっても子供なのだろう。駄々をこねる姿は年相応の子供だ。
寂しい、悔しい、悲しい、苦しい、いろいろな感情が彼女の中には渦巻いているに違いない。
仕方のない弟子だ、M1895は近くにあったベンチに座ると彼女に手招きした。
「こっちに来なさい」
「師匠!」
「いいから」
SOPⅡは少し逡巡ゆっくり歩み寄ってくる、M1895は彼女を隣に座らせて彼女の頭を胸の内にやさしく抱いた。
「わかるか、SOPⅡ?」
「うん、とくとく、言ってる」
「そう、心臓の音じゃよ。わしらがここを捨てた証、外の人形である証拠じゃ」
人類生存可能圏外で生きる人形は総じて二種類、部品をやりくりして従来の利便性を維持するタイプと利便性を捨てて新しい体に乗り換えて環境に適応するタイプだ。
M1895も体を乗り換えた一人、IOP製第2世代を素体として旧日本や旧アメリカで回収したロストテクノロジーをもとに圏外の生体義体技術の粋を集めて作られた生身の人形。
人形としての利便性をほとんど捨てる代わりに圏外の悪環境に適応でき、人間と同じように心臓が動いて、物を食べ、汗を流すことができる体だ。
圏外で暮らす人形の多くは、命を懸けて稼いだ末に昔の体を素にこうした生身の体を手に入れることが多い。
初期投資は高額、技術者も限られているがそれでも願う人形は数多い。M1895、P38、M1911、M14、4人もその中の一部だ。
「わしらはここには居られない、お客様なんじゃよ。ここで暮らすことはできないのじゃ」
「そんな法律はないよ、嫌ってるのは感情だけ。違法改造っていうけど、性能はむしろ落ちてる。
バックアップもない、パーツ取り換えは面倒、電脳は癒着してる、ネットに直接つなげることもできない。
それなら戦術人形って枠じゃないって言えばいいだけ、ただのカスタム品の一品ものってだけ!」
「ははは、賢い子じゃ。でもな、これは国も認めてはくれんのじゃよ。わしらは人間社会を脅かす、とな」
人間と子供を作れる人形なんて、ここの人間からすれば恐ろしい話じゃないか?M1895の言葉にSOPⅡは震えた。
普通の人形は子供を作ることはできない、そういった行為をすることはできても人類の神秘たる妊娠までは再現していない。
専用カスタムをされた人形は疑似的に可能だが、それは人工子宮に人間の卵子を移植して行う代理母的なものだ。
やろうと思えばできてしまうかもしれないのが今の世界だ。だがそうなれば、人間社会は終わりだと考えられた。
『好みの異性』を好きに製造でき、好きに性格や個性を設定できて、子供を産めて家庭を作れる。そんな世界になれば人間社会はどうあれ破滅だと。
この世界は一度滅びかけた世界だ、人間は数少なく人形の労働力を頼り、それでもなお確執、格差は留まることを知らずに広がっている。
何が起きてもおかしくない、どんな非人道的なことが起きても不思議ではないこの世界。
人間同士がもはや信頼しあえない世の中で、そんな夢のような技術ができてしまえば、世界は終わると。
だが圏外は関係がなかった、生きるだけでも命がけな世界ではそんなものはくそくらえだと必死だったのだ。
人間も人形も必至で戦い、考えて、技術をこねくり回してできたのがこの人形素体生体化技術だった。
「わしらはやがて子をなす、外で言えば第3世代の子供をな」
戦前から生きていて辛くも生き残り、薬物や肉体改造などあらゆる手段を使って戦い、生き残りながら今の時代を作り上げた第1世代。
戦火の中など様々な厳しい環境下と両親の元で生まれ育ち汚染に若干の耐性と変異を持った第2世代。
人形と人間の間に生まれる世代も含め、第2世代よりも耐性や未来を秘めて生まれる第3世代。
人間と人形の間はあいまいでただの種族の違いでしかない圏外の認識、故に出来上がったのがこの奇跡だ。
どうして孕めるのか、その理由は向こうの科学者や技術者でさえ分からない。まさに奇跡だった。だが政府はそれを認めない。
「わしらは諦めんよ、どうしてできるのかわからずとも、たとえ確率が低いとしても産めるのじゃ。なぁ、こんな幸せを逃す理由はないんじゃよ」
「でも、向こうは危ないよ。ここで暮らそうよ、ここで、みんなと一緒に。U05なんてもう田舎だよ、すたれたリゾートなんて誰も気にしない。
それに博士ならその体からこっち仕様に戻せる、産んだら戻しちゃえばいい!そうすればこっちの人も変に見ないよ。
基地のみんななら応援してくれる、喜んでくれるよ?だから、だから!!」
「ごめんな、駄目じゃよ。それは駄目じゃ。ここは狭すぎる」
「狭い?」
「世界は広い、わしらの子もそれを見てもらいたい。知ってもらいたい、感じて、考えてほしいんじゃ」
M1895は胸の中から見上げてくるSOPⅡの頭をなで、熱くなる目頭を堪えた。
「本当ならな、お前も一緒に連れて行きたい。みんなもじゃ」
世界は広い、それを見てもらいたい。かつて自分たちが感じたように。自分はどこまでも行った。
悲しさを紛らわすように、全員でどこまでも、いろいろな仕事をして、心行くままに歩んできた。
モスクワに行きメトロに潜り、旧アメリカでは派手に撃ち合い、旧日本では化け物相手に大立ち回りもした。
世界中を思うままに回った。そしてここで、すべてにケリをつけた彼を手に入れた。
「なら連れてってよ、師匠と一緒に行きたい。もっと一緒に、いろいろなものを見てみたいよ…」
「ごめんな、それはできん」
SOPⅡはIOPの人形、16LABに属する実験個体。ここに縛られている人形だ。
そんな彼女を開放する力はM1895にはない、ただ一介のハンターでしかない。
琥珀はただの雇われ人形、いつかは訪れる別れが来た。それがわからない彼女ではなかった。
はい、グログロ一切なしの日常パートでございます。残った嫁3人とM16達別メンバーのお話。
残りの嫁も登場、ワルサーP38『サラ』、コルトM1911『美奈』、ナガンM1895『琥珀』です。
サソリがM4を止めた理由がこれです、こいつらは互いにみんな愛してるタイプなので正妻とかそういうのじゃないんです。
前半のエロエロユリーンと後半の落差がひでぇ、でもつい筆が進むんですよね。
今回のクロス元は『バイナリードメイン』『FALLOUT4』より各種技術関連。この作品はパクリでできている(今更)
前者は未来の日本が舞台の珍しいTPSドンパチゲーです、敵も味方もロマンたっぷりで自分は大好き。
後者は知ってる人は知っている超大御所ポストアポカリプス、嵌る人は嵌る。自分のめちゃくちゃやりこみました。
その結果がこれだよ!!原作に喧嘩売りまくってますがご容赦ください、ドルフロの世界にも希望が欲しかったのです。
さて、裏話も終わったところで次のお話、グロさが売りなんで次もよろしくです。
ミニ解説・技術
人形素体生体化施術
人類生存可能圏内で生産された人形の体を素体として、必要不可欠な部品を除いて体を生体部品にすべて取り換えて人類生存可能圏外の環境に最適化する技術。
あくまで人形用生体義体部品への換装のため、人間には適応されていない。そもそも人間の脳みそを取り出す技術がない。
この技術には旧アメリカの大学、旧日本の研究所で発掘されたロストテクノロジーが使用されており内容はほぼ人間そのもの。
ただし人形としての利便性はほとんど失われ、人工筋肉の出力などの一部を除けばほぼ人間基準にまで性能は低下する。
反面、ハッキングやプログラムへの介入には人間並みに強く、腕のいい脳外科医などの協力がなければほぼ干渉不能である。
電脳は施術の過程で肉体と癒着してしまい以後の肉体換装はほぼ不可能となり、マインドマップも変質によりバックアップを取ることができなくなる。
肉体の成長や老化までは再現できていないものの劣化などは存在し、電脳の寿命が尽きれば死に至り二度と目が覚めることはない。
肉体の形成の際に子宮も一緒に形成されて搭載されるが、なぜか同時生成された子宮に限り低確率ながら子供を妊娠することが可能。
どうして卵子が生成され、妊娠できるのかという科学的解析と再現はできていない。
別途、同じ細胞を培養して作り出した人工子宮には妊娠機能がないため謎に包まれている。
なお生まれる子供も良くも悪くも人間同士と同じである。
ミニ解説・人物
M16A1
SPAR小隊の所属し、U05基地に身を置く戦術人形。SPARの長女的存在でありリーダー格。
オリジナルとの差異は腕章が無い、両目が健在の2点。性格はオリジナルとほぼ同じ。
いつも背負っているガンケースは弾薬箱兼非常用の盾、眼帯はフェイクで裏から透けて見えるタイプ。
最近の悩みはペルシカリア博士が仲間や自分を通してAR小隊を見ている節があること。
M4SOPMODⅡ
SPAR小隊に所属し、U05基地に身を置く戦術人形。
オリジナルとの差異は腕章が無い、腰にベルトを巻いてサバイバルナイフを二振り吊るしている事。
性格はオリジナルとほぼ同じだが、人形嗜虐性愛者ではない。純粋な心優しい少女である。
琥珀ことM1895に弟子入りし訓練を受け続けた近接戦の猛者、サバイバルナイフの二刀流が得意。
AR-15
SPAR小隊に所属し、U05基地に身を置く戦術人形。
オリジナルとの差異は服装、学生服型の装備にハンター装備を突っ込んだスクールバック型ガンケース。
性格はほぼオリジナルと一緒だが、オリジナルの屈折した感情やらしがらみが全部彼方に吹っ飛んではっちゃけておりノリがいい。
ハンターとして活動することを夢見ており、SOPⅡに倣い指揮官に頼み込んでいろいろと師事を受けている。
ペルシカリア博士の実験もそっちのけでハンター育成プログラムに夢中、哀れペルシカ。
指揮官が基地を辞める時にこっそりついて行ってやろうと画策しているが、有効手段は未だ見つからないので困っている。