勘違いで最強の冒険者に祭り上げられました。助けてください 作:帰りたい教会
レイン・スノーの名前はこの王都では大きな意味を持つ。よっぽどの跳ね返りか、恨みを持つ者でない限り彼と敵対しようとする者はいないといわれている。それは、流星のごとく現れドラゴンを倒したあの日から、敵対者を次々と血祭りにあげてきたからである。
同じ金剣級の冒険者や王国騎士・・・犯罪組織の幹部などなど様々な人間を潰してきた。彼は敵対する者にはどんな人間であろうと容赦をしない冷血な男と認識されてきたのである。
その事実に尾ひれがついて、王都内では下手なことをすれば『死神』に命を持っていかれる・・・怖いのは騎士ではなく『死神」だ。そんな話が王都中に広がった。
その結果、レイン・スノーは図らずも王都の治安に大きな影響を与えていた。例え、本人にはその気はなく、怖いから『朝霧』をずっと握っていたせいで、必要以上に大量の敵対者を撃退していただけだとしても。
そんなレインをギルドは簡単に手放すと思うか・・・答えは否である。
「ま、待ってください!?なぜ今このタイミングで王都を離れるのですか?」
ただでさえ、最近珍しく物騒な事件が数件起きているというのにこんな時期に抑止力であるレインにいなくなられるのはギルド的にも困るである。必死で、レインを引き留めよとする受付嬢の判断はごく当たり前だ。
「用事がある。一ヵ月ぐらいで帰る」
「詳しい事情説明はないのか?レイン」
レインが振り向くとそこには二メートルを超える巨漢が立っていた。頬に斜めに奔った古傷に、意志の強そうな赤黒色の瞳に肉体も引退したとは思えないくらいに鍛え上げられていて、如何にもな悪人面だが普通に良い人である。
「副ギルド長・・・」
受付嬢は安堵のため息を吐く。
「アークス・・・ギルドには冒険者の行動を制限する権利はないはずだが?」
「別に行くなと言っているわけではない。事情を説明しろと言っているのだ。レイン」
アークスは一言、低い恫喝するような声で言った。
「・・・答える義務はない」
(こ、怖ッ。襲われるかもしれないのが怖いので帰りますとは言えねぇ・・・)
強気に出ているレインだが、生意気な口の利き方も他の冒険者になめられないためのもので、内心はビビりまくりである。
「レイン・・・悪いが明確な理由を説明できないのなら王都を出て行かせるわけにはいかん!貴様はこの王都では英雄であると同時に抑止力なのだ!そんな長い間王都を離れてもらっては困る!!!」
「ハッ、勝手な言い分だ。そもそも俺がいなくとも王都に問題はない!!!」
(なんだよ、抑止力って!俺は一体どこに向かってるんだよ!そりゃ舐められないように色々したけどさ!結局ハッタリの内なんだよ!これ以上こんなお腹の痛い演技できるか!!!)
「・・・言えないだけで、お前なりの訳があるのだな」
「・・・」
「いいだろう、ギルド長には俺が言っておこう?」
「副ギルド長!?」
瞠目する受付嬢をよそにレインに許可を出すアークス。
「・・・悪いな」
これ幸いとレインは王都から逃げ出すことにした。
「良かったのですか?」
「元々止められるなんて考えてはいない。それにあれは建前だ」
何時だってそうだ。レインを止められた奴なんていない。もともと警戒心むき出しの跳ねっ返りだ。なんせ出会い頭に、ギルド長に切りかかった男だ。まあ、あの女狐に警戒心なしで接するのは無理だというのは分かる。
「・・・治安は悪化しますよ。たぶん」
「ああ、問題はなくはない。だが、あいつは無駄なことはしない男だ。あの竜災すぐ後も似たようなことを言って王都を出て行った。覚えているだろう?」
受付嬢であり、俺の腹心でもあるアイラは首をひねる。そして、思い出したように顔を上げた。
「・・・魔物の大量発生ですか」
「そうだ、あいつが訪れていた町で魔物の大量発生が起こった。奴はそれを一人で鎮圧。何食わぬ顔で、王都に戻ってきた。」
「今回もそうだと?」
「魔物の大量発生は原因不明の現象だが、魔王が復活しようとしているのではないかという噂も流れている」
「噂は噂ですよ」
「だが、国王はそうは思っていないらしい。近々、勇者を召還するらしい」
「え?」
「極秘だぞ。まだ公にはなっていないからな」
「そんな極秘事項しゃべってほしくないんですけど・・・」
「俺はお前の口の堅さを信じているからな。ギルド長も同じ考えだ。もし、魔王なんて存在が本当に復活するのなら・・・現段階でそれこそ止められるのは、王国騎士団長『聖騎士』アイザック・フォーリーかもしくは・・・」
最強の冒険者であるレインぐらいだろう。