深海戦線奇想譚   作:八切武士

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 昼休み中、食後のけだるい時間を過ごしていた明石の元にふらりと現れた初雪。
 彼女の衝撃的な一言が明石にとって非常にどうでも良い難題を投げかけるのであった。
 行きつけの粉もの屋で一杯やりつつひねり出した妙案とは?
 今、明石の(作らされた)公式垢でTLは赤く燃えている!


【第一想 明石さん、おしっこしたい!】

 

 

【単冠湾・鎮守府工廠】

 

「明石……さん」

「ん?」

 

 昼休みに工廠でお茶を飲んでいた明石の袖を引いたのは、初雪だった。

 ぼーっとした顔とこけしの様なぱっつんスタイルで、一瞬座敷わらしでも現れたのかと思ってしまった。

 

「珍しいなぁ、何かお使い?」

 

 吹雪型駆逐艦の初雪は何故か、引きこもり的傾向があり、一旦心地良い場所に落ち着いた彼女を、引きずり出すには提督の命令に準じる強制力が必要になる。

 

「ん、ん、ん……そうじゃなくて」

 

 独特の間で何か言おうとしている彼女を見ながら、お茶を啜る。

 択捉島はまだ肌寒い。

 全部言い終わるのを待っていたら冷めてしまうだろう。

 

「明石さん、わたし」

「んん」

 

 それにしてもこの八女茶はおいしい。

 間宮さんが貰い物から少しだけ分けてくれたのだが、このご時世、嗜好品は何でも高い。

 味わって飲まなければ。

 

「おしっこしたい!」

 

 口の中に含んでいたお茶がまるで毒霧の様に噴き出し、ラップトップのモニタにぶっかかった。

 

「はいー?」

 

 慌ててその辺のウエスで拭き取りながら初雪に目をやると、妙に不満そうな顔をしている。

 

「ちがう、潮じゃなくて、わたし、おしっこしたい」

「はいはい、そう言うのは白雪ちゃんか吹雪ちゃんに……ん、おしっこ?」

 

 艦娘は人間の様に排泄はしない。

 したくても、尿など出ない。

 明石は、改めて初雪に目をやり、彼女がいつになく真剣な表情をしている事に気がついた。

 流石に先入観が過ぎたかも知れない。

 

「ん~、どこか具合が悪いの?……擬体で尿意っぽく感じるなら冷却水のドレーン辺りかな」

 

 艤装に不調があれば、分身である擬体側にも変調が出るものだ。

 個体差はあるが、それはおおむね人間が病気の際に訴える症状に似ている。

 

「ちがう」

「取りあえず、診てみようか」

 

 工廠の整備台の方を指した明石の手を掴み、初雪は自分の方を向かせた。

 

「ちがう」

 

 少しかがんで、俯いた彼女に高さを合わせる。

 

「言いにくいこと?」

「ん、んっ」

 

 初雪は首をぶんぶんと上下に振って肯定する。

 

「なにかな?」

 

 首を傾げて待っていると、初雪は意を決した様に顔を上げて、明石の肩を掴む。

 

「わたし、あの人におしっこ飲ませたい!」

 

 聞かなきゃ良かった。

 

 思った時にはもう遅い。

 両肩を掴んだ手はまるでバイスプライヤの如くがっちりと食い込んで、中腰の姿勢のまま固定されてしまっている。

 かなり小柄なのにとんでもない力だ。

 

(そりゃ、艦娘だしねぇ……)

 

 逃げようが無い状態で現実逃避にふけっていると、がくがくと前後に揺すられてしまった。

 

「あ、はいはい……」

「イベントの時、ラムネの売り子してた」

「ええ」

「駆逐艦の艤装可愛いって、特に分離型の艤装で吹雪型は最高に……せ、せっ、せくしーだって」

「んん~」

 

 頬を赤らめ、鼻を膨らませて力説する初雪の言葉が何故か遠くて、内容がぜんぜん入ってこない。

 当たり前だ、だって聞きたくないんだから。

 

「だから、わたし、あの人におしっこ飲ませてあげたい」

「は?」

 

 どうしてそこに繋がるのか。

 そこが分からない。

 

「ちょっと、聞いていい?」

「んっ!」

 

 小さく手を上げて初雪の惚気を遮り、一息つく。

 

「初雪ちゃんの趣味で、彼氏……さん、におしっこ飲ませたいの?」

 

 初雪はぶんぶんと首を振り、少し恥ずかしそうに目をそらす。

 

「飲めるんなら、艦娘のおしっこ飲みたいって言うから……」

「あ、そっちの……」

 

 そろそろ憲兵さんの艦娘セクハラホットラインへ打電すべきだろうか。

 

「う゛っ、ぶ、ぐふ、うぅ」

「ええぇ……」

 

 再度現実逃避に逃げ込もうとしたら、今度は、初雪が唐突にべそをかきだした。

 

「が、がれ、ふぶきがたのっ、ぎ、ぞうがづぎでぇ、ぶぶきがだ、たぐざんい゛るしっ……ほ、ほがのごにぃっ、どられじゃうのや゛なのぉ!」

「おしっこ飲ませない位で浮気しかねない彼氏なんて、さっさと捨てといた方がいいんじゃ」

 

 つい小声で本音を漏らしたら、一瞬、静かになった。

 

「あ゛、あ゛ぁー!あ゛ぁ~ん!やだー、ずでられるのや゛だぁ!あ゛ぁぁぁ」

 

 ああ、ガチ泣きだ。

 がくがく揺れる視界の中で、工廠にまだ残っている整備課職員の視線が集中しているのが見える。

 こっちが泣きたい。

 もう昼休み終わりそうだし。

 ポケットで握りしめた携帯電話には吹雪の業務携帯の番号が入っている。

 

『おまえの妹だろ、早く何とかしろよ!』

 

 フリック&タップでチョイスして、そう絶叫したい誘惑は耐え難い程だったが、ため息をついて諦める。

 流石にあの娘にこんな目を背けたい現実を押しつけるのは忍びない。

 代わりに使用済みのウエスを拾って初雪の顔に押しつける。

 

「はいはい、チンして、あっちで聞きますからね……はぁ」

 

 

【鎮守府敷地内・世界のこなもん、てっちゃん】

 

 

「それで、午後の時間潰して、いままで残業してたの」

「そ、はぁ」

「看板にしてきたで~、災難やったなぁ、まぁ、飲んでってや」

「あ~、すみません、貸し切りにして貰っちゃって」

「どうせ、しばらくしたら閉店時間や、かまへん、かまへん、あんたら鎮守府の苦労人やからなぁ、こんな時くらい、ゆっくりしたってや」

 

 前掛けをした龍驤が升入りのコップに縁までたっぷりと注いでくれた吟醸酒に明石は口をつけて啜る。

 

「うす……焼き上がってます」

「あ、ども」

 

 身長2メートルの浅黒い巨漢が、丁度よく焼き上がったお好み焼きを指している。

 明石はお好み焼きをヘラで切り分けて、本格的に飲み始めた。

 

「あ~、おいしい」

「しっかし、駆逐艦のしっこ飲みたいとか、とんでもない変態やで、鎮守府ん中にロリコンがうろついてるんかい、怖っ!」

「龍驤さんが、それ言いますかねぇ……」

 

 身長2メートルの巨漢は、狭間哲弥(はざまてつや)。

 龍驤の“夫”、結婚(ガチ)の相手である。

 

「なに言うとるん、哲ちゃんはウチ一筋や、駆逐艦に色目つこたりはせん、なぁ、てっちゃん」

 

 龍驤にわき腹を肘打ちされたてっちゃんは、顔を背けて黙々とたこ焼きを焼いている。

 

「……うん、りゅーちゃん、好き」

 

 蚊の鳴く様な返事が微かに聞こえた。

 

「あははっは、相変わらずてっちゃんは、こえちっちゃいな」

 

 肘でうりうりとやられて、巨大な背がまるまってゆく。

 まるで、スルメ焼きだ。

 確実に何人か殺ってそうな外見をしているこの巨人、本当にシャイなのだ。

 

「吟醸、おかわり」

「私も」

 

 他人の惚気で酒が進む。

 胸やけしそうだが。

 

「話をまとめると、基地のイベントで艤装ラムネの売り子をしていた所でナンパされてつきあい始めた、そして、艤装フェチだと思ってた彼氏の新たな性癖が発覚、初雪ちゃんはそれについて行けなかったら、捨てられると思っている?」

 

 となりでたこ焼きをつついていた大淀が、焼酎片手に状況をまとめてみせる。

 明石としては、結局それだけの情報を聞き出すまでに、断続的に午後一杯の時間、他人の性生活(?)情報を含んだ惚気じみた妄言を聞かされる羽目になったのだから、笑えない。

 ちなみに、艤装の炭酸ガス発生器で実演販売するラムネ屋台はどの鎮守府のイベントでも定番の人気テナントである。

 

「まぁね、聞いてる限り艤装フェチとしては本物っぽいけど……特に吹雪型」

「しっかし、二人してラブホ入って、する事は艤装磨きって、なんやねん、する事しないんかいっ!」

 

 明石は、上陸休暇でホテルへお泊まりした時の事を話している、初雪の、にへらぁ、と緩んだ笑顔を思い出し、ため息をつくかわりに、お好み焼きを咀嚼する。

 ホテルの床に展開した艤装を抱きしめ、頬ずりしながら愛撫し、執拗に、細部に渡りワックスで磨き上げる彼氏。

 それを回転ベッドの上で体育座りした初雪が愛おしげに眺めている。

 イヤでも脳内に構成させられた構成図が消えてくれない。

 

「しかし、そこまでの艤装フェチなら、明石の所の関係者なんじゃ……」

 

 割と他人事な様子で焼酎をあおる大淀に、明石はうんざりした様子で手を振った。

 

「いやいや、流石にそんな“逸材”いませんって、ていうか、そんなの居たら、吹雪型の子から苦情だらけになるに決まってるし」

 

 明石の知る限りでは工廠所属の職員に、そんな、変態という名の紳士は居ない。

 

(……まぁ、趣味をオープンにしてなきゃ分かんないけど)

 

「しかしなぁ、あの子、男に興味なさそうやったけどなぁ、なんや見た目によらないっちゅーか」

「まぁ、ああいう、突き詰める趣味持ってる子の方が、はまりやすかったりする場合もありますね……ま、似た様な話は幾つか憶えはあります」

「で、明石はどうする気なん?」

「あ゛~」

 

 そう、聞くだけ聞かされるだけで、全ての気力を奪われた明石は、初雪への回答を保留したのである。

 

「ん~、でも流石にこれは明石の仕事じゃなくない、鹿島さん任せたら?」

 

 練習巡洋艦は、本来の訓練指導の延長線上から、鎮守府の軍事・経営コンサルタントや、提督の医療やメンタルケア要員、更には広報活動や外交にも幅広くたずさわる、艦娘の中でもトップエリートだ。

 その多くは大本営直属で、各鎮守府へは都度都度派遣されるのだが、この鎮守府の鹿島は専属契約を結んでおり、常駐している。

 

「いや、それも考えたんだけどねぇ、流石にあの人忙しいし、ちょっと、こんなの頼むの気が引けるっていうか……笑顔で引き受けてくれそうなとこが、また、罪悪感が……ね、ああ、もう、これが夕雲型とか、陽炎型辺りなら、長女に電話かけて引き取らせるんだけどなぁ」

「それなぁ、お芋村の長女にゃ、荷が勝ちすぎやで」

「でも、おしっこでる様に改造する訳にもいかないでしょ」

「まぁね、艤装は兎も角、擬体改造は流石にね」

 

 そこまでやったら、本当にマッドサイエンティストだ。

 

「全くもう、そんな艤装が好きなら、冷却水でも飲んでろー、とかねぇ、言いたくなりますよ」

「いやいや、金気臭くて飲めんやろ、あんなん……ほれほれ」

 

 あきれ顔の龍驤に注いで貰ったおかわりに、明石は顔を寄せて、ちゅうるると啜る。

 ふと、そのまま顔を横に向けると、大淀が妙に難しい顔つきでたこ焼きを咀嚼していた。

 

「ん、どったの大淀、中身入ってなかった?」

「んな訳あるかいっ、てっちゃんはそんなええ加減な仕事せえへん」

 

 カウンタから身を乗り出した龍驤に、ばしっ、とはたかれた頭を撫でつつ体を起こし、明石はまた一口お好み焼きを食べる。

 

「たこ、入ってないやつ、たこやき言わないッす」

「せやろ、タコ入ってなかったら、単なる“焼き”やで、出汁入り小麦焼きや」

「たぶん、それいけると思うわよ」

 

 コップを揺らしながらぽつりと呟いた大淀に、龍驤はうんうんと頷く。

 

「ま、仕入れた粉の味見にたまに作るけどな、“焼き”もタレついてたら、割とふつーにいけるで」

「あ、いや、そうじゃなくてですね」

 

 大淀は苦笑して、焼酎を一口飲む。

 

「冷却水って、基本的に艤装から取り込んで、缶で蒸気にしたり、艤装全体の冷却に使ったりしてるけど、実は擬体経由でも補給されてるし、擬体の血液にも使われてるのよね」

「大体あってる」

 

 明石は大淀の言葉に頷いた。

 艤装は激しく発熱する。

 冷却の為に、蓄えられた水を消費するのだが、航海中に真水をそうそう補給できない状況もある。

 そういう時は、艤装自体に備わった浄水機能を通して海水から真水を作り出す事が可能だ。

 艤装を直接海水に触れさせても良いが、普通に水面に立っているだけでも、艤装の靴、或いは擬体を通して少しずつ補給できる。

 ちなみに濾過された不純物は、艤装のゴミ箱に貯まるので、たまに掃除が必要だ。

 サバイバル本には、ゴミ箱に貯まった塩分を“利用”する方法も書かれていたりする。

 

(擬体と艤装を循環して、内部で濾過された水分……)

 

「あ、実質おしっこだわ、冷却水」

 

 何の事はない、答えは最初から頭の中の知識にあったのだ。

 見方が違っただけだ。

 感性の違う友達というのは、やはり大事なのだなぁとおもう。

 

「流石大淀、ファンメールの数は伊達じゃないわねぇ……いだ、いだだだっ」

 

 左の髪房を容赦なく引っ張られて、明石は悲鳴を上げる。

 

(あ、やば、思ったよりまだ気にしてる?)

 

 鎮守府の公式T○itterアカウント、大淀が中の人をやっているのだが、折悪しく、開設時期が大淀型モデルの裏ビデオが出回り始めた時期と重なってしまい、ダイレクトメッセージと返信欄が、“ファンメール”で溢れかえった事があった。

 そのビデオの出来がまた、妙に良くできている上、少々、マニアックかつ、ショッキングな内容であった為に、割と両業界内では問題になった一品である。

 友人の名誉の為に一言添えるなら、大淀は、裸で職場を徘徊する趣味はない。

 せいぜい、工廠のジャンクを片っ端から四角く畳んだ挙げ句にリアルMin○craft始める程度だ。

 ただ、今夜リアルMin○craftの素材にされるのは明石になりそうだ。

 

「明石ぃ、今日の分はツケにしとるからなぁ……生きて帰って来るんやで」

 

 龍驤の声が遠くなる。

 それにしても、髪が痛い。

 

「いだ、いだだ、せめて引っ張るなら、うしろ髪にしてぇ!」

 

 

【単冠湾・鎮守府工廠脇 自販機コーナー】

 

 

「……すみません、弊社では人間の頭の修理は受注しておりません、っと」

 

 あの後、工廠チームの公式アカウントを強制的に作らされたのだが、投稿してから数秒でくそリプが着弾したのは想像以上だった。

 

『俺の46サンチ砲も口搾して下さい(はぁと)』

『艦娘になりたいです、僕を島風君に改造して下さい』

『工作艦、机の下潜れば口搾艦』

『海の家イベントの時、裸エプロンだったの本当ですか?』

『制服のスリットから紐が見えないんですけど、履いてないんですか?』

『ピンクは淫乱』

『艦娘の材料が買われた子供って本当ですか、そう思うとなんだか興奮します。』

『少子化の原因は新生児を間引いて、艦娘にしてるからだ、俺は詳しいんだ!、俺も艦娘にしてくれたら黙っててやる』

 

 本当にくそリプの山である。

 なにが悲しくて精神病質者の性癖暴露大会につき合う必要があるのだか。

 

(……たまには大淀に一杯奢っておこうかな)

 

 昨夜見せられた大淀のDM欄。

 悪癖、汚物、偏愛、この世のすべての汚穢をアメリカ製ジューサーにぶち込んで作り出した狂気のジュース。

 履歴の中でたっぷり熟成されたそれは、悪酔いどころかウイルス性の食中毒引き起こす、地獄の猿酒と化していた。

 それに比べれば、今の明石のアカウントなど、飲み口軽いシャンパンみたいなものだ。

 ぽつりぽつりとではあるが、まともなコメントもついているだけ、本当にマシである。

 

『大人になったら、鎮守府の工廠で働きたいです、どうしたらよいでしょうか』

『艤装の妖精さんとはどんなおはなしをしてるんですか』

『ぼくのおねえちゃんは、ふぶきがた?みたいです、ぼくもぎそうをおそうじしてあげたいです、やりかたをおしえてください』

 

 たまに飛んでくる、子供(?)達のメッセージは癒し枠である。

 

「ん?」

 

『1cup_melon@baribariさんにフォローされました』

 

「げっ、夕張さんに見つかってるし……いや、公式垢じゃ、そりゃ見つかるよねぇ、ていうか、フォロワー一気に増えたんですけど……」

 

 ひとまずスマートフォンをしまい、コーヒーを飲む。

 一応、公式アカウントのチェックとレスは仕事のうちだが、端から見ると、休憩所でスマホをいじってるだけなので、ほどほどにしておかないとまずい。

 

「ん?大淀?」

 

 何故か、私服姿の大淀が明石の方へ歩いてくるのが見えた。

 

(非番じゃ無かったっけ?)

 

 パンツスーツに首には洒落たスカーフ、いつもの眼鏡は色の薄いサングラスに変わっている。

 完全に上陸休暇用の変装スタイルだ。

 ちょっとイヤな予感に襲われ、明石は素知らぬ振りをして空き缶をゴミ箱に放り込みんで休憩所からぶらぶら歩き出した。

 そのまま工廠へ戻るが、ちらりと通路に配置されているカーブミラーを確認すると、大淀がそのままついてきている。

 

「ああ……」

 

 イヤな予感が確信に変わった。

 

(まぁ、逃げらんないけど)

 

 ため息をつきながら工廠のデスクへ戻ると、大淀がパーテーションを軽くノックしてきた。

 

「はいはい、今日は町行って来るんじゃ無かったっけ?」

「行くわよ、この子置いたらね」

「……」

 

 大淀の背後から、こけし頭がひょっこりと顔を覗かせた。

 

(げげっ)

 

「この間は……ありがと、大成功」

 

 うれしそうに親指を立てる初雪の肩を押して明石の前に立たせると、大淀はきびすを返した。

 

「ちょ、待って」

「じゃ、頼んだわよ、次の便に遅れちゃうから」

 

 肩越しに手を挙げた大淀はかつかつとヒールの音を響かせながらさっさと行ってしまった。

 

「ええ……なんで?」

「これ……お礼、彼、すごく興奮してた、すごい」

「あッハイ……そりゃ良かったですね」

 

 この間、例の“冷却水でも飲ませてろ”というのを、少し丸めて伝えたのだが、即実行したらしい。

 できれば、事後報告はいらなかったなぁ、と、バターサンドと鮭とばを受け取りながら明石は思うのだった。

 

「ん、でも、彼入院しちゃった……救急車呼んだ」

「はぁ?いやいや、冷却水って言っても、蒸留水みたいなもんだし、倒れる様な事はないと思うけど」

 

 初雪はぷるぷると首を振り、ちょっと顔を赤くする。

 

「……盛り上がったから、し、しよう……って、入れたんだけど」

「取りあえず、昼間だから指はやめてくれるかな」

 

 人差し指と親指で作った穴に、すぽすぽと人差し指を挿しているのをぐぐっ、と押し下げる。

 

「火傷しそうに熱い、って……2度の火傷」

「どこに突っ込んだんですかねぇ……あ、言わないでいいです」

 

 明石は物理的に初雪の口を塞いでため息をついた。

 

「で、用事は終わりでいいです?ちょっと、改修案件があるんで……」

 

 このままだと、また、長時間の変態プレイ談義につき合わされかねない。

 

(うちの工廠は性癖の廃棄業務は請け負ってないんですよねぇ……)

 

「明石さん」

「あ、まだ、いた……じゃなくて、はい?」

 

 真剣な表情でぐい、と乗り出した初雪を明石は仰け反ってよける。

 

「わたし、彼に元気だして、ほしい……だから、今度はうん」

 

 明石の手が勝手に卓上の内線を叩いていた。

 

『吹雪型一番艦の吹雪さん、吹雪型一番艦の吹雪さん!至急、工廠へ急行して下さい!重要な回収任務があります、両舷前進一杯!缶が吹っ飛んでも直します、以上!』

 

つづかない……

 





 とんでもない下ネタ小説を読んでいただきありがとうございました。
 取り敢えず、すみません、初雪さんは彼氏が好きすぎるだけです。
 名も無き彼氏さんも、初雪さんが大好きなので浮気したりはしないです。
 艤装舐める、デストロイヤーファッカーですけども。

 皆さんは、やっぱり嫁艦のおしっこならごくごくイケる口なんでしょうかねぇ。
 愛の形は様々です。
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