口を守る触手に向けて36mmを連射、まだ残っていた戦車級には腕に持つ突撃砲で対処しながら自爆級との距離を縮める。
触手は36mmで弾けも飛んで行くが、それでも触手の数は減らない。
直接的な防御は触手だけとは言え、これだけ出してくると迂闊に近づけない。
「ここで引いたら横浜が死ぬ!火星での部下の仇も取らせてもらう!!」
量腕の突撃砲をパージし、高周波ブレードを量腕に展開。
担架に固定された突撃砲で弾幕を張りながら触手を切り裂く。
たが、逃した一本の触手が担架に直撃し機体がバランスを崩してしまう。
直ぐにバランスを取り戻し着地すると、アラートが鳴り響く。
「重力反応!?間に合わなかったのか…」
触手の攻撃が止み、卵形の動体が黒く歪んでいく。既に揚陸艦級の内部で準備をしていたのか。
「こんな所で死ぬとはな、ろくに時間稼ぎもできずに」
戦略マップを見れば大部分の部隊が撤退出来ていない、戦術機部隊など殿を務めているから尚更だを。
「CPすまん、自爆は避けられん」
〔少佐!そんなことよりも早く撤退を!〕
「間に合わん、横浜を吹き飛ばす程の爆発だ。逃げられん、だから少しでもやり返させてもらう」
四対の跳躍ユニットを全開に、一気に飛翔し自爆級の口に高周波ブレードを突き立てる。
内包していたG元素が機体を蝕んでいく、しかしこれで爆発の範囲を狭められるはず!
〔少佐!〕
「火星に戻れなかったのは心残りだが、後は任せた」
自爆級が黒い球体に変化し横浜を飲み込んで行く。機体が、体が消えていく。
しかし、不思議と死の恐怖は無かった。
そこで俺の意識は途絶えた…
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
救われる世界 1999年8月9日 横浜 G弾使用直後
私は目の前に映る光景に声を出さずに居た。
米軍の無警告で使用した新型爆弾はハイヴを破壊した、しかしそれは味方を巻き込んで。
ちょうど補給で後方に下がっていた為にG弾に巻き込まれずにすんだが、多くの仲間が死んだ。
味方と思っていた米軍の攻撃で。
〔中尉!篁中尉!〕
「っ!被害報告!」
副官の雨宮中尉の声で我を取り戻し、直ぐに部隊の被害を確認する。
かなりの衝撃波が機体を襲ったので被害が無いとは言えない。
〔ホワイトファング中隊に被害は無し、しかし全線に居た部隊は…〕
「わかっている、全機周辺警戒!ハイヴが無くなったとは言え残存BETAが居るはずだ!」
〔〔了解!〕〕
焦土と化した横浜、これが勝利と言えるのか?
仲間を巻き込んだ勝利など…
〔中尉!前方に要塞級!〕
「やはり生き残りが居たか!」
既に満身創痍な要塞級がまだ形のあるビルの陰から現れる。
撃退しようと指示を出そうとした瞬間、一発の砲弾が要塞級に突き刺さり弾けた。
「誰が撃った?!」
〔判りません!我々では無いのは確かです!〕
聞いてみたがそうだろう、一発の砲弾で満身創痍とは言え要塞級を倒す兵器なんて我が部隊には無い。
他の部隊にさえあるかどうか。
〔レーダーに反応あり!これは…戦術機です!〕
ビルから飛び出して来た一機の青い戦術機、それを見た私の心は震えた。
見たことの無い戦術機、しかしどことなく武御雷を思わせる姿。
肩には日の丸があるが、パーソナルマークなのか月を背にした狼が描かれている。
いったいなんなんだこの戦術機は、技術厰にこんな機体のデータなど無かった!
「こちらは帝国斯衛軍、ホワイトファング中隊。貴機の所属を述べよ!」
オープンチャンネルで呼び掛けると青の戦術機はこちらを向く。手には120mmと思われる支援砲があるが、あれも見たことがない。機体も装備も帝国では採用されていないものだ。
「貴機の所属を述べよ!」
応答が無いのでもう一度呼び掛けると、サウンドオンリーで青の戦術機と通信が繋がる。
〔不知火とは随分と古い機体を使っているな、轟雷全て機種転換したと思っていたが〕
不知火が古い?轟雷に機種転換?
〔おっと、所属だったな。斯衛軍第205火星遠征大隊ローンウルフ小隊所属…〕
聞いたこともない部隊名、しかしこの出会いが私と。世界の運命を変える物だったと気づくのは大分後になる。
〔東堂 昭久少佐だ。自爆級に巻き込まれたと思っていたがな〕
私はこの出会いに感謝するだろう…だが、このときの私は噛み合わない話に頭をこんがらかせていたのだった。