楽羅來ららちゃんは語りたい   作:那由多 ユラ

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第10話でも語りたい

「暇ですねぇ」

 

「そうだな。いつまでこうしてんだよ」

 

「そうですねぇ、擬似的に異世界転生でもしてみます?」

 

「とりあえず話だけは聞くだけ聞いてやる」

 

「まずこの場に宇宙を創ります」

 

「おう。突っ込まねぇぞ」

 

「具体的には暗い紺色で重力の無い空間を創ります」

 

「星があれば完成だな」

 

「次にでっかい円盤型の土台を創ります」

 

「ん?」

 

「土台の縁に大きな山を創り、塩水で浸します。海の完成です」

 

「おいそれ…」

 

「円盤の中央あたりを盛り上がらせて、大陸が出来上がりです」

 

「まてこら」

 

「最後に24時間周期に出たり消えたりする太陽と月、星を宙に創れば擬似的な世界の完成です。重力は大陸が大きければ勝手に発生します」

 

「天動説じゃねぇか!」

 

「ダメでした?」

 

「ダメに決まってっ……あれ、いいのか?」

 

「ただし生物が全く居ないので一から創る必要があります。アダムとイブです」

 

「却下だ!今と大して変わらねぇじゃねえか!」

 

「やれやれ、仕方がありませんね」

 

「なにがやれやれだよ。それはこっちのセリフだ」

 

「もういっそこのまま一生語らいますか」

 

「無期懲役やめろ」

 

「こんな可愛い子と一生を共に出来るんですよ?」

 

子猫(にゃんこ)だったら百歩譲って良かったけど、らら、お前が相手だと一週間も足らずで精神病む自信がある」

 

「私の話は聞くに耐えないということですか?」

 

「むしろ耳障りだ」

 

「いっそ歌い続けてやりましょうか」

 

「暴力的かつ恐喝的に黙らせるぞ」

 

「根元から絶たれそうな黙らせ方ですね」

 

「大事なのは首を絶つか肺を絶つかだな」

 

「肺を絶つという表現は初めて聞きました」

 

「よく考えたらただの切除手術だけどな」

 

「首は…ギロチンですね」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「……」

 

「あの、なーちゃん。『そうだな』だけ言われると会話が続かないんでなにか喋ってください」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「……フッ」

 

「なに勝ち誇るような顔してるんですか。可愛いだけですよ」

 

「あーはいはい、ありがとなー」

 

「なーちゃん?」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん萌えー」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん、私の事好きですか?」

 

「そうだなー」

 

「……」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん、ちゃんと聞いてくれないのなら体液を撒き散らしながら喚きますよ」

 

「…悪かったよ。ちゃんと聞くからせめて普通に泣いてくれ」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「何話そうとしたのか忘れました」

 

「おい」

 

「そうですねぇ、

本屋さんのホラーコーナーに、題名とか何も書いてない、黒いパッケージのビデオが置いてあったんですけどあれ…」

 

「呪いのビデオとかじゃねぇの?」

 

「いえ、仕切り用のダミーです」

 

「お、おう。そっか」

 

「中に何かを入れてきちゃったんですけど、世界滅ぶ前に誰か見たりしましたかね」

 

「多分誰も見てねぇよ。そして何入れやがった」

 

「液晶画面から黒髪ロングの女性が出てくるビデオです」

 

「つまりお前が出てくるビデオか。ホラーだな」

 

「いや、確かに私も黒髪ロングですけど、さらに個体数も増やそうと思えば増やせますけど、画面から飛び出ることも可能ですけれども」

 

「尚更お前以外が出てくる可能性が消え失せたぞ」

 

「貞子さんは私の友達ではあるだけで私は貞子さんじゃありません!」

 

「お前の交友関係どうなってんだよ」

 

「一時期廃校を拠点にしてた時期がありまして。視聴覚室の貞子さん、トイレの花子さん、通学路の口裂け女さん、一年三組のコックリさん、二年四組のコックリさん、五年一組のコックリさん、五年二組のコックリくん、五年三組のコックリさん、五年四組のコックリさんとシェアハウスをして、たまに近所の八尺様が遊びに来てましたね」

 

「コックリくんのハーレムにお前が首突っ込んだじゃねえか」

 

「かろうじて会話が出来たのは花子さんだけでしたね…」

 

「まずなぜ会話を試みたんだよ」

 

「画がホラーテイストなだけで容姿は女の子でしたから」

 

「どこ時空の誰なんだよお前は」

 

「グダグダ時空の楽羅來ららちゃんですよ、私は」

 

「はぁ?」

 

「ではまたいずれ逢いましょう」

 

「ちょ、おい待て!」

 

 

 

……………

 

 

 

「って夢を見たんだよ」

 

「夢オチですか?」

 

「…おう」

 

「へぇ」

 

「なんだよ」

 

「ふふふふふ」

 

 

……………

 

 

 

「って夢を見たんだ。らら、お前心当たりないか?あるよな?吐け」

 

「夢が夢オチで終わると、今この場は夢なのかどうか、分からなくなりません?」

 

「やっぱお前の仕業か」

 

「違いますよ?まだなーちゃんの脳は弄ってません」

 

「そのうち弄るような言い方すんじゃねぇよ」

 

「ちなみに世界はクトゥルフ神話の神格、アザトースの見る夢だと言われています」

 

「やめろ混乱することを言うんじゃねぇ」

 

「ちなみに聖書の神は世界を創るのに七日、使ったそうです」

 

「おう。それは知ってる」

 

「まぁ有名ですからね」

 

「で、いま私たちの居るこの真っ白い空間はどこなんだ?」

 

「世界が滅んだ後の世界じゃないところです」

 

「正夢じゃねえか!まさかお前、ソシャゲで爆死したから滅ぼしたとか言うなよな?」

 

「まさかもまさか、その通りですよなーちゃん。もしかして予知能力でも身につけたんですか?」

 

「んなわけあるか!って言いたいが…」

 

「ありえちゃう人生歩んじゃってますからね、私たち」

 

「ちなみにらら、予知能力持った知り合いとかいるか?」

 

「とある廃校の一年三組のコックリさん、二年四組のコックリさん、五年一組のコックリさん、五年二組のコックリくん、五年三組のコックリさん、五年四組のコックリさんがお持ちになられてましたね」

 

「そこまで正夢なのかよ!

まさか他に貞子と花子と八尺様と口裂け女も居たか?」

 

「え?貞子さんも八尺様と口裂け女さんは居ましたね。…でも、花子さんは居ませんでしたよ?」

 

「ちょっとズラすことで妙なリアリティを出すんじゃねぇよ!」

 

「いやだから違うんですって。なーちゃんがどんな夢を見たのかは理解しましたが、ホントの本当にトイレの花子さんの知り合いは居ないんですって」

 

「マジかよ。ってことは予知夢じゃねぇのか」

 

「それは分かりませんよ?予言なんて外れてナンボなものですから。ノストラダムスの大予言だって必ず当たる訳ではありませんし」

 

「んなオカルトとくらべられてもな」

 

「今この状況こそがかなりのオカルトだと思いますけどね」

 

「ホントそうだな。マジどうにかしろよ」

 

「それが不可能っていうのはなーちゃんの夢の中の私が語っているじゃないですか。これも夢オチで終わることを期待しててください」

 

「夢オチで終わってもそこからまた同じ状況になんのが目に見えてんだよ」

 

「さぁ、分かりませんよ?」

 

「らら、二度あることは三度あるって言葉しってるか?」

 

「なーちゃん、使うタイミング間違ってますよ。今この状況は三回目です」

 

「正確に数えて分析してんじゃねぇよ」

 

「いえいえ、これは重要なことですよ?」

 

「は?」

 

「今の私と次の私がが回数を把握している場合、それは完全に同じことを繰り返している訳では無い。つまりはなーちゃんの体験している無限ループは無限に続く訳では無いということです。」

 

「お、おう。そうか」

 

「まぁ夢のことなのでそれを無限ループというのかは分かりませんが」

 

「そうかよ。

…ひとつ聞きたかったんだけど、らら、お前今回のこれ以外に世界滅ぼしたりしなかったのか?」

 

「ありませんが、どうしてですか?」

 

「ソシャゲなんてしょーもない理由で滅ぼしてんだから今回以外にもやってそうだなって」

 

「ありませんよ?私はそこまで人類に絶望していませんでしたから」

 

「ソシャゲ程度で絶望したのかよ」

 

「昨今のゲームを嘗めてはいけませんよ。どれだけの人間を破滅に導いたことか」

 

「お前ほど人類を破滅に導いたやつもいねぇよ」

 

「まぁ、それはそのうちどうにかなりますから」

 

「マジ?」

 

「超マジです」

 

「ならさっさとどうにかしてくれ」

 

「なーちゃん、急がば(まわ)れ、ですよ」

 

「周してんじゃねぇよ。ループするだけじゃねぇか」

 

「周るのが嫌というのでしたら、もう少し眠りましょう。まだ夜中の三時頃で私は眠いんです」

 

「時計がねえから分かんねぇよ」

 

「私がガチャを引いたのが二時ごろでしたので、体感一時間経過で三時という計算です」

 

「めっちゃフワフワな計算だなおい。てかなんでそんな遅い時間に引いたんだよ」

 

「深夜に引くと当たりが出やすい、みたいな都市伝説あるじゃないですか」

 

「あれ都市伝説だったのかよ」

 

「確率は一定のはずですから」

 

「でもあれ、信じられないくらい被るよな」

 

「明記されていない要素が少なからずあるのは確かでしょうね。持っているキャラは出やすいみたいな法則ありますし」

 

「物欲センサーってやつだな」

 

「欲しいと思うものほど手に入りにくくなる。私のような消費者には損しかしないシステムですね」

 

「お前みたいな消費者はお前しかいねぇよ」

 

「さて、分かりませんよ?世の中には私以外にも一枚の絵に数千万どころか数億円払うような方もいらっしゃいますし」

 

「ソシャゲの課金と芸術作品を一緒にしてんじゃねぇよ」

 

「ぶっちゃけ芸術作品の評価って金額よりも分かりやすいものってそうそう無いんですけどね。ほとんど運ですし。あと産まれた時代」

 

「まぁピカソの絵が現代人もスゲーってなるかと聞かれると、微妙なところだよな」

 

「ピカソのような奇天烈な芸術家が評価されてる理由って、基本的人間はに理解不能なものは叩くのに芸術だけは『自分には理解できない高等なものだ』と褒めるからなんですよ。好きでもないくせに」

 

「言われてみるとそうかもな。ちなみにらら、お前はピカソの凄さは分かるのか?」

 

「正しく分かっているかはともかく、好きですよ?あのカオスな絵。是非とも現実で再現したいですよね」

 

「下手なお化け屋敷より怖ぇよ」

 

「そういえばここは全面真っ白ですね…」

 

「おいやめろ!」

 

「冗談ですよ冗談。ですから包丁を構えるの辞めてください。どっから出したんですかそれ」

 

「今すぐここを芸術作品にしないと誓え。さもなくば刺す」

 

「やめてくださいなーちゃん!なんかなーちゃんの足元にヒビが入っちゃってますから!」

 

「は?」

 

 

グチャリ

 

 

 

「…何だか真っ白な夢を観ました」

 

「おはよう、らら。ドーナツ食べる?コーヒー飲む?それとも私のみ、る、く?」

 

「あ、おはようございます子猫(にゃんこ)さん。…なーちゃんはどうしました?」

 

「世界が滅ぶ夢観たって言って、雛美のとこに相談に行った」

 

「なーちゃんが夢オチで終わる予知夢を観る予知夢を観て夢オチで終わる夢を観たのですが」

 

「…らら、なんて言った?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

「らら、そういえばアレ、当たった?」

 

「ダメでしたね。数千万溶かしたのですが、ひとつも当たりませんでした」

 

「そう」

 

「ショックすぎて世界滅ぼすところでしたよ」

 

「…そう。やめてね、めんどうだから」

 

 


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