各々夕飯を食べた後はそれぞれの部屋に戻っていった。
今はなーちゃんと私はパソコンで必要なものを購入している。
「シャンプー類はどうするよ?」
「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?どうせよく分かりませんし」
「じゃあ同じのを買い足しとくな。着替えはどうするよ?」
「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?」
「良くねぇよ、テキトーに選んどくからな。
他、なんか欲しいもの無いのか?」
「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?」
「そのセリフ三回目だぞ?
…おいらら、まさか疲れたか?」
「…ええ。フフっ、こんなに沢山の方とお話出来る機会なんて今までありませんでしたから。今、控えめに言ってかなり幸せです」
「そうかいそうかい。せいぜい飽きないように気をつけるんだな。
通販は明日にしてもう寝るか?つっても風呂には入ってもらうけど」
「寝ます。お風呂は嫌いなので体と服を創り直しますね」
「無駄使いにも程があんだろ。
私は風呂はいってから寝るから。…おやすみ」
「はい…おやすみなさい…」
加奈side
なーちゃんこと加奈は湯船に漬かりながら今日来た新入生を思い返していた。
ったく、何がどうなったらあんな人間みたいなバケモンができあがんだよ。
色んなことが知りたいから脳を創り変えるとか、風呂入りたくねぇから体創り変えるとか。
そのくせ寂しがりで話したがりだから知ってることでも聞いてくるし、なんか…めっちゃ懐いてくるし。
「しかも無駄に可愛いから悪い気がしないのがなんか気に入らん」
やべっ、声にでてたか。聞かれてなきゃいいが…
いや、聞こえてなくてもあいつなら分かっちまうのか。
…今後私はどうすりゃいいんだ?プライバシーはどこに行ったんだよ。ららのさじ加減か?
暴力で解決不可って面倒すぎるなおい。
いやまて、一発で殴り殺せば――
無理だな。確実に無理だ。
私は別に殺したいほどららのことは嫌いじゃねぇし、あいつのアニオタ具合を見るに、っつか聞くに自分のバックアップくらい作ってそうなもんだ。
加奈は夕食中にららがののとしていた最強キャラ談義を思い出す。
「最強と言ったらやっぱり物理法則に直接干渉する能力が一番です。温度を操れば相手を焼くことも凍らすことも可能ですし、どこぞの学園都市最強みたいにベクトルを操れば物理攻撃完全防御も可能です。圧力を操れば相手を破裂させたり、流体を操って溺死させることも可能です」
テーブルに着き、カレーライスを食べながら浄花町ののはららに言い放つ。
「確かにその通りですが、あえて私はそれを否定します。
最強と言えばどんなに、どれだけ、とことん死んでも負けにならない不死系統の能力だと思います。これは死を負けと定義づけた場合の話ですが。
でもまぁそれでも、様々な作品に様々な不死性を持ったキャラがいらっしゃいます。
粉々に破裂しても即座に元通りとなる超再生、肉体を流体に変化させることで物理攻撃を受け流す流体化、大量のクローンや人形に死後乗り移る肉体の大量生産、物語の都合で何度死んでも、倒れても生き返り立ち上がる主人公。
これらを倒すことが容易ですか?」
「容易ではありませんが、不可能ではない。それが私の以前出した結論ですよ。
世界中の神話などには不死性を持つ英雄、怪物が多数存在します。
それらを死に至らしめるのはいつもそれぞれの不死性に対する特効性能をもつ武器やアイテム、時には手段だったりします」
「浄花町ののさん、ひとついいことを教えて、語り聞かせていただきます」
「はぁ、?」
「不死の生物が死に至らしめられるのは全て、あれもこれもどれもそれも、殺したものにより強い怪物性、英雄性を持たせるためのものです。不死の生物を殺した英雄は時の人ならぬ時の英雄となり、不死の英雄を食らった怪物は最強の怪物と名を轟かせる。つまりは物語上必要なことです。
まぁ、現代で不死殺しをするのは結構簡単なんですけどね。
有名どころでいうなればプラナリアがそうでしょう。何度切られても、別れたそれぞれの肉体が不足分を再生して個体数を増やす。
そんなプラナリアだって、切られても死なない生物だって、大抵は煮込めば死にます。ヒドラもアキレスもヘラクレスも八百比丘尼も、トロトロになるまで煮込めば死ぬでしょう。
ちなみに、これはあまり知られていないことですがプラナリアは切っても死ぬことが割とあります。生命力が足りなくて再生がしきれずに死に至ったりとか。
これは有名なのでののさんもご存知かもしれませんが、不死を精神的にも肉体的にも一番殺すのは時の流れです。
百年弱生きる人間が、ひょんな事に切られても、茹でられても、煮込まれても死なず、突けるような弱点もない完全で完璧な不老不死を手に入れたところで、どうでしょう?
今の戦いは確実に勝てます。何せ相手が身体能力や異能が圧倒的に勝っていたとしても、不老不死というだけのことで寿命という絶対的格差が生じるので、極論相手が死ぬまで殺され続ければ戦いに勝てます。
しかし、数万年、数億年、数兆年が経過すればどうでしょう?人類は滅び、全く別の知的生命体が地球に住み着いたとして、自身が収まる場所はあるのでしょうか?人間を食物とする生命体がやってきたとしたらどうでしょう?
これでは不死の人間というのはただの的であり、栄養源でしかありません」
「あの、それだけ聞いてると不老不死を最強というあなたの意見と矛盾するのでは?」
「おや、そうでしょうか?少なくとも今話した不老不死の人間は、相手に寿命や経年劣化がある限り戦いに負けることは無いでしょう。闘いには勝てなくとも、戦いには勝てるでしょう」
「はぁ、なんだか全てその通りな気がしてきました。
でしたら、次は属性別で誰が最強かという話をしましょう。まずは火属性からです」
「いいですねぇ。では私は――
その後、四時間ほど話した、語らったところでののが力尽き、姫乃が抱き抱えて部屋まで運んで行った。
あいつら仲良しかよ。最初の仲悪げ、というかののの一方的な敵意はどこに行ったんだよ。
のののアニメ好きは小鳥先輩から聞いてたけどららもそうなのか。…こいつらの名前揃ってひらがな二文字だからめっちゃ読みづらい、もとい言いづらいな。
私もアニメとかはそれなりに見るけどあいつらには全くついていけなかった。ってかららのはアニメとかじゃないのか。
不老不死。
多くの人間の夢であり、多くの人間が追い求めた肉体の理想形。
多分、ららなら創れるよな。
限界が未知の創造能力。
私の料理が作れるだけの能力の完全上位互換ってところか。
…やべ、考え事してたらのぼせそうだ。
風呂から出た私は軽く水を浴びてから髪を乾かし、寝巻きに着替える。
脱衣所から出てふとららが寝ているベットに目を向けると、そこには体育座りのように膝を抱きしめるように身を縮めて眠るららの姿があった。
「こりゃ、抱き枕も追加かね」
「それならなーちゃんが抱き枕になってください」
「…起きてたのかよ」
「身体を創り直したら汚れ以外に疲労や怪我も無くなることを忘れていました。どうにか寝かしつけてください」
「無理だ。目ぇとじて黙ってろ」
「さもなければ気になるけどオチがなくて終わらない怪談を延々と語り聞かせますよ」
「やめろ。んなもんよりなんか癒されるような話でもないのか?」
「どれだけなーちゃんの存在が周囲を癒しているかを語りましょうか」
「やめろ。もっとやめろ」
「なーちゃんの目付きの影響で未知系の生徒のうち六名が猫派に鞍替えしたとか」
「お前と私を抜いた全員じゃねぇか。あと確かののと小鳥先輩は最初から猫派だ。
テキトーなこと言ってんじゃねぇよ」
「おっと、バレてしまいましたか。
でもそれでも、姫乃さんの猫嫌いを完全に克服させたのは事実です」
「待て、それ私知らねぇんだけど」
「ちなみになーちゃんは猫派ですか?子猫派ですか?猫又派ですか?」
「全部猫じゃねぇか」
「ちなみに私は白猫派です」
「せめて今言った三つの中から選べよ」
「アルビノの猫の目ってとても綺麗なんですよ」
「…そうなのか?」
「ええ。赤みのある青系統の色で他のものではなかなか見られない色合いです」
「ほーん」
「おや、あまり興味が無いのですか?」
「いや、普通に寝みぃ」
「今夜は私が眠くなるまでは寝かせませんよ」
「らら、お前って実はめちゃくちゃ自己中だよな」
「今更ですか?
まぁ、ずっと自分以外を中心に置けない旅をしていましたからね」
「お前の人生って普通に小説一本かけるよな。多分」
「なーちゃんはサブヒロインみたいなキャラしてますよね」
「それ聞く奴によってはめちゃくちゃ悪口だから二度と口にすんじゃねぇぞ」
「具体的には主人公の親友の恋人になりそうなキャラです」
「具体的に言ってんじゃねぇよ。いねぇよ、私を恋人にしたいなんて物好き」
「そうでしょうか?既にヤンキーキャラなのに料理が得意で先輩に可愛がられていて、後輩から慕われているという色んなギャップ萌えが発生していますよ」
「まて、結局私について語ってくれちゃってんじゃねぇか」
「今なら眠れそうな気がするので寝ますね」
「おいまて!」
「おやすみなさい、なーちゃん」
「こらー!」