かくして人類は滅び、それでも尚彼は観察を続ける。
fin
「…おい
「ファンタジック ヒューマンは、自分がこの状態になったらどうなるか考えながら観る。
植物となって人類が滅亡するまでを観察して、かつての同郷の人が死んでいくのをどんな思いでやり過ごすのか、とか」
「さぁなーちゃん!次はグッドイーターです!ポップコーンの貯蔵は十分ですか!」
「観ねぇし食わねぇよ!五万歩譲ってさっきのは良くてもそれは観たくねぇよ!…らら、お前なんでそんなにノリノリなんだよ」
「ファンタジック ヒューマンは素晴らしい作品でした!ピーちゃん先輩のおすすめへの信頼度は鰻登りです!」
「お前どんな頭してんだよ」
「創り物の頭ですけど」
「らら、それなら一人で見て。私も流石にご飯食べたあとにグッドイーターは見たくない」
「
「嫌ですよ。一人でなんて寂しいじゃないですか」
「ならののと一緒に観ればいい。あの子はグロとか平気だから」
「そうですねぇ、なーちゃんにあまり無理をさせる訳にもいきませんか。たしかピーちゃん先輩と同室でしたね」
「おう。馬に蹴られないようにな」
「おや、なーちゃん心配してくれるんですか?」
「ちげぇよ。ののの不機嫌がこっちにまで来るのが面倒なだけだ」
「それは残念。お二人にこのAVを渡しておきますのでご自由に使って下さいね」
「らら、私と加奈はそういう仲じゃない」
「ふふふっ。おじゃま虫は退散致しましょう」
………
コンコン
「ののさん、いらっしゃいますか?」
「居ません。居ませんから帰ってください」
「居るじゃないですか。私の目の前の全裸でピーちゃん先輩のベッドで眠っている黒髪のおかっぱ幼女は何方なのでしょうね?」
「そんなことをしていいのは私だけです。…何しに来たんですか」
「とある映画を見ようと思って誘ったらなーちゃんと
「…まぁ小鳥先輩も居ないのでいいですけど」
「そういえば確かに居ないですね。午前中は一緒に本屋さんに行きましたが、今はどちらに?」
「今なにか聞き捨てならないことを言った気が…
まぁいいですけど。漫画に影響を受けたらしく軽トラックでまだ見ぬロマンを探しに行ってしまいました。私を置いて」
「そういえば少年漫画を大量に買ってましたね」
「原因はあなたでしたか」
「まぁそう怒らないでくださいよ。小さな女の子が全裸で包丁二刀流なんてしても面白すぎて顔面蒼白になってしまいます」
「あなたを青あざだらけにして青ざめさせてあげます」
「痛そうですね。やめておきましょう。いくら私の残機が27京3598兆9807億4268万4457あったとしても、死ぬ時はちゃんと痛いんですから。毎回肉体がリセットされるので死にすぎて麻痺するみたいなこともありませんし」
「ちゃんと痛めつけてあげるのでご安心ください」
「そんなイタいこと言ってないで仲良く映画観ましょうよ。グッドイーターというキャラメルでひれ伏しブルな作品だそうですよ」
「…コミカルでフレキシブルでは?」
「もっとちゃんとツッコミ入れてください。はら、さんっはい」
「いえ、やりませんから。そんな自爆確定な演技を私がすると思いますか?」
「ギャップ萌えってあるじゃないですか」
「本人に直接求めないでください。あれは自然発生するものです」
「清姫さんののんびり変態キャラとかですか」
「あなたは姫乃のあれに萌えるんですか?軽々しくドン引きです」
「私は今『軽々しくドン引き』というパーフェクトワードに燃えてます。熱いです」
「あなたはギャップ萌えとは無縁そうですね」
「まぁ、ある程度なんでも出来ると大抵の事はギャップにはなりえませんから。
ギャップ萌えといえばやはりピーちゃん先輩なのですかね。外見、年齢共に十二歳で軽トラックの運転をしてらっしゃいますし」
「ええ。あれは正直私も驚きました。…かっこよかったなぁ」
「それはそれは、微笑ましい限りですがいい加減グッドイーターの内容が気になってきたので観ましょう。ポップコーンとアイスコーヒーを準備してきましたよ」
「グッドイーター…?たしか、小鳥先輩が絶賛していたような。なんでも、制作した方はきっと『命を貰う』ということを誰よりも理解してる、と」
「ほう。より一層気になったので観ましょう」
「えぇ」
あああアあアああアァァァァ……
Fin
「す、凄まじかったですね」
「…はい。なーちゃんと子猫さんが拒否したのも納得ですね。これは誰彼構わず見せられる内容ではありません」
「Gの入ったコロッケって、実際どうなんでしょうね」
「昆虫食は経験がありますが、よく分かりませんね。分かりたくもありません」
「昆虫食…、ちなみにどんな味なんですか?」
「種によって異なりますが、割と淡白な味がしましたね。大半が美味しくはありませんでしたが、時々あたりもあります。まぁ、見た目がアレなだけにもう一度食べたいとは思いませんが」
「聞いといてなんですけど予想外にリアルな感想で」
「軽々しくドン引き、ですか?」
「分かってて言わないでください。恥ずかしいじゃないですか」
「それを言うなら人の前で全裸のあなたの方がよっぽど恥ずかしいですよ」
「小鳥先輩以外の人間なぞ有象無象。見られてもなんとも思いません」
「気持ちは分からなくもないですが、私の場合肉体そのものを何度か作り直してるので周囲の人間ではなく私が有象無象という認識です」
「なんとも寂しそうな人生ですね」
「だからこうして遊びに来てるんです」
「わたしはあなたを友達とは思ってないですけど」
「私もそうですよ?話のわかる年下の女の子としか思ってません」
「…私が言うことではないでしょうけどそれ、人によっては本気で泣かれますよ」
「そんなこと語られずとも分かっていますとも。人を傷つける言葉を使うときはしっかりと状況と言葉を選びますよ」
「選んだ末に小鳥先輩を泣かせたのですか」
「可愛い子の泣き顔を見たいと思うのは当然のことでは?」
「チッ。
…不覚にも同感してしまいました」
「それにあれはすぐに治るところを突いたので見た目よりも遥かにダメージは少ないですよ」
「はあ。…人として終わってますね、お互い。なんで私たちみたいなのにすごい異能が備わるんでしょう。もっとまともな方にこそ備わるべきだと思います」
「備わったからこそ、人から外れたのでしょう。私の文字通りなんでも創れる異能に、ののさんの愛を操作する異能。そんなもの持って産まれて歪まないなんて、それこそ歪です。そんな私たちからしてみれば、感性はともかく比較的普通なぴーちゃん先輩やなーちゃんがどうしようもなく魅力的なんです」
「私から見れば、あなたも絢美先輩も大差なく見えるんですけどね」
「恋は盲目というやつですね」
「ちょっと違う気がします。言うなれば…目くそ鼻くそ?」
「せめてどんぐりの背比べと言ってください」
「それこそ大差ないでしょう。皆等しく踏み潰されて終わるんですよ」
「比喩ではなく物理的に潰すつもりでしたか。…なんで私たちは自分たちの人間性について話してるんでしたっけ」
「さぁ。あなたはただの映画を観に来ただけでは?」
「そうでしたそうでした。どうです?実際に昆虫食を経験してみませんか?」
「いえ、遠慮しておきます。あなたが持ってきたポップコーンでおなかいっぱいですので」
「それは残念。まぁ昆虫食は私たちで語らうほどのものでは無いのでいいですけど」
「用が済んだらのなら帰ってください。予定外に時間を盗られたおかげで私は眠いんです」
「それなら仕方ないですね。…裸で寝るのはいいですけどそれで体調を崩さないようにお気をつけて」
「余計なお世話です」
「では」