ウルトラウーマンダイヤ   作:桂ヒナギク

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2.スペード

 防衛隊の司令室で、ダイヤの映像が流れている。

「さて、このウルトラマンらしき巨人だが……」

 聡美は隊長の言葉を右から左へ聞き流していた。

「光隊員、聞いているのか?」

「え?」

「光隊員、しっかりしてくれ」

 そう言って隊長は話に戻る。

「……我々の味方であることは間違いないと思われる」

「隊長、ウルトラマンに似てるからと言って、味方と考えるのは早計では?」

「いや、しかし……」

「なんだっていいじゃないですか。宇宙人を倒してくれたことには代わりないのですし」

「光、お前なあ……」

「あ、昨日の戦闘で、彼女は言ってました。ウルトラウーマンダイヤと呼んでって」

「彼女? 女性なのか?」

「みたいですよ」

 その時、緊急通報のサイレンが鳴り響く。

 東京の一角に怪獣が出現したらしい。

「全員出動!」

 隊員はそれぞれ戦闘機や戦闘車に乗って現地へ赴く。

 聡美は地上で避難誘導を始めた。

「みなさん、こちらです! 焦らず行動して下さい!」

 住民が一斉に避難していく。

 刹那、聡美は上空で怪獣の攻撃を受け、墜落していく戦闘機を見た。

「は!」

 誰もいないところへ行き、ダイヤに変身、巨大化する。

 地上の人々は歓喜の声を上げる。

「あ! 巨人だ!」

「頑張れウルトラマン!」

 ダイヤは様子を(うかが)う。

 怪獣はダイヤに気づき、背中を赤く発光させながら襲いかかってくる。

 ダイヤは懐に迫り込んだ怪獣に蹴りを浴びせると、落下してきた怪獣のツノを捕まえる。

 ツノが熱を帯び始める。

「が!」

 ツノから衝撃波が放たれ、ダイヤは後方に吹っ飛び、ビルに突っ込んだ。

 ダイヤははまったビルの壁面から抜け出し、迫り来る怪獣を捕まえ、後方に投げ飛ばす。

「であ!」

 放り投げられた怪獣の体がビルを破壊し、地上に止まっている車を押しつぶした。

「とどめ!」

 ダイヤは腕を十字にクロスし、スペシウム光線を放った。

 スペシウム光線が炸裂。怪獣は爆裂霧散した。

「シュワ!」

 ダイヤは飛び上がり、空の彼方へ消え去った。

 刹那、光の球が地上に降りてきて聡美の姿になる。

「ダイヤ、見ーつっけた!」

 その声に振り返る。

 見覚えのない男の子が、瓦礫の上に座っていた。

「えっと、君は?」

 聡美の問いに男の子は答える。

「僕? 僕はスペードだよ」

「スペード?」

 ダイヤの記憶が、聡美の脳裏に流れてくる。

「あなた、本当にスペードなの?」

 ダイヤの記憶によれば、スペードはまだ子どもだが、ウルトラ戦士としての資格があり、遠方へ派遣されていたはずである。

「どうしてここに?」

「タロウ兄ちゃんがダイヤ一人じゃ心配だからって、僕に連絡を寄越したんだ」

「そうなんだ」

「うん。だからね、僕がダイヤのお仕事、手伝ってあげる」

「スペード、その姿は……?」

「ああ、これ? これは、擬態。ダイヤは、擬態じゃないんだね」

「あ!」

 聡美は思い出した。

「戻らなきゃ」

 聡美は「話はまた今度!」と残して去っていった。

 


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