仔熊のミーシャに愛をこめて   作:つきや

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【番外:赤い仔熊】
趣味でサバゲーやってます。


 

「ウォッカ。お前次の車どうする」

 オスプレイという名のジープを証拠隠滅のために墜落させた今、ウォッカには車がない。

 軍用ヘリは持っていても困るだけだったが、車は逆に持っていないと困るだろう。

 新しい車にカブトムシなんてどうよ。

「や、兄貴の車があれば当面は大丈夫なんじゃないですか」

 違う。

 元々はなかった車だと言われてしまえばそうなのだが、ある便利を覚えたら、ない不便には戻れないものである。

「バッカウォッカ。俺のかわいいアマガエルを砂まみれになんかできるかよ」

「そういや次のオフはサバゲーでしたね」

 

 そう。俺の趣味はサバイバルゲームである。

 

 思い起こせばもう随分と前の話になるが、組織での任務を言い渡されソ連から日本に渡って、俺たちはあっという間に退屈になった。

 なにせウォッカが「肉弾戦がしてえです兄貴」と言っても、拳と拳で語り合うような仕事はない。拳銃をちらつかせれば終わる怪しい裏取引や遠くからスナイプして終わる暗殺依頼が殆どだ。

 アングラな闘技場に乗り込んで生死不問の賭博格闘技戦にエントリーしたこともあるが、あっという間に不動のチャンピオンへと上り詰め、俺の懐は潤ったがウォッカはどいつもこいつも骨のねえ奴ばかりだと不満たらたらだった。俺もたまには銃口突きつけるだけじゃなく撃ち合いをしたいということで、次はとある戦場の外国人部隊に入り込んでみた。しかし、血湧き肉躍る命のやりとりを楽しもうとした直前、紛争に関係ない気がする大国からのミサイル発射情報が入り撤退。シッポを巻いて逃げ出したみたいで面白くなかった。戦車にも戦闘機にもロマンは溢れているけれど、目の前に居ない相手の指先ひとつでお陀仏っていうのは納得できないよなと、傭兵たちと意気投合。

 そして、気づいたらサバゲーチームを立ち上げることになっていた。

 サバゲーのマナーもルールも知ったことじゃないとまるっと無視して、しかし山あり海ありの私有地を確保してサバゲーやってますよときちんと届け出もして看板も立てたりしたから、通報されても趣味のサバゲーをやっていますで押し通し、その内それが当たり前になった。

 あくまで趣味なので、殺しはなし。実弾はあり。参加費以外の金銭のやり取りはなし。仕事の話もなし。身ばれ禁止というか、分かったとしても外には持ち出さない。他人のふりがしやすいようにあからさまなヘアカラーで赤や青に髪を染めるのが礼儀。スパイ活動中にドンパチしたとしても、潜り込んだパーティーでばったり顔を合わせたとしても、今日は髪の色が違うんですねと話しかけるのはマナー違反。だけどペナルティはなし。雑談のふりしての情報リークは割とあって、だから実はこのサバゲーでコネのひとつでも作ることができたならば、その価値は計り知れない。

 メンバーはひっそりと、しかし確実に増えた。

 ウォッカの周りに筋肉ダルマが集まると暑苦しい上に一緒に筋肉を限界まで痛め付けましょうぜと巻き込んでくるので厄介だが、たまに何も知らないビジターが紛れ込むのは面白い。以前は白い悪魔が引っ掛かった。

 そんなサバゲー団体によって開催されるサバゲー入門コースが、参加人数オーバーになるほどの人気を博している。

 懇意にしているサバゲー仲間(という名のプロ)も参加して丁寧に指導してくれるから、即戦力になると好評なのだ。

 ――あくまで、趣味のサバゲーとしての話である。

 特殊部隊の選抜試験に合格する力量を持っていても、ここのサバゲーチームとの交流戦で足手まといになった奴は実戦で直ぐに死ぬとか言われていたり、再訓練対象が放り込まれてきたりもするが、それでもサバゲーの話である。

 

 さて、ジープの話に戻る。

 ルーキーを鍛える時に、まずは基礎体力の確認だとうそぶいて砂浜を走らせている。ひーひー言っているそいつらをジープで追い立てながらマシンガンぶっぱなすのは、いいストレス解消になった。

 しかしこれを自分の愛車でやったら逆にストレスになるに決まっている。

 それ以前に、サバゲーのフィールドに俺のポルシェを持っていくのも嫌だ。

 仕事を離れて制約なしに暴れられるとどいつもこいつもヒャッハーして、流れ弾で穴があいたり流れ拳でボコボコにされたりと、惨事が待ち受けているのは目に見えている。

 俺も一緒にヒャッハーしているくせにと言われても、それはそれで別問題なのである。

「じゃあ兄貴、いっそのことサバゲー専用買いましょうや」

 結局、水陸両用のバギーを2台買った。

 

 気に入ったので仕事用にも買ってくれと、ボスにおねだりしている今日この頃である。

 

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