仔熊のミーシャに愛をこめて   作:つきや

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【仔熊のミーシャに祝福を】
仔熊のミーシャに祝福を


 

 

 

 ジンはベレッタの手入れをしていた。

 

 

 ベレッタは黒の組織に入ってからの愛銃だ。

 

 その前はトカレフを使っていたが、本当は拳銃よりも小銃のほうが馴染み深い。

 

 数年前の出来事だが、できることならモシンナガンを抱えていたいと零したら、ウォッカがロシア産は身バレの危険があるからまずいでしょうと言いながらもマウザーのGew98を錬成してくれた。

 

 そしてPTSDを心配された。あながち間違っていない上にお互い様だが、抱えて眠ることはできても持ち歩くことはできないじゃないかこれ。スナイパー組のようにギターケースを背負っていたら、絶対一曲弾けと揶揄われるに決まっている。弾けるのは心に刻んだアニソンだけだが聴きたいかちくしょうめ。

 

 更に、5徹の任務明けだった時に組織の待機室のソファでついついうたた寝をしてしまい、入ってきたライの脳天に風穴を開けかけ、避けんな当たれと悪態をついたら、なんだテディベアがないと眠れないのかと揶揄された。

 

 どいつもこいつもお互い様だ。枕の下に何も置かないで眠れる奴がこの組織に居るものかと正論を吐いたつもりなのに、妙に変な顔をされた。

 

 あーこいつも昔の俺と同じ平和な日本生まれの日本育ちかと思ったら腹が立ったのでもう一発ぶっ放しておいた。

 

 その後どうにも変な癖がついたらしく、入室者がある度にヘッドショットを狙い続けていたら、ボスに銃を取り上げられた。ああ、俺のマウザー。

 

 更には、そんなに寝起きが悪いなら自分のセーフハウス以外で寝るの禁止と言い渡された。

 

 だったら、過労死寸前の任務の押し付けをやめろと言いたい。

 

 それもこれも、全部シャアのせいだ。

 

 誰か俺に銃剣ください。

 

 

 

 ベレッタの手入れが終わるのを待っていたかのようなタイミングで、ウォッカが戻ってきた。

 

「兄貴! 同志ラムがヘリの処分を褒めてやしたぜ」

 

「同志言うな」

 

 しかし、ウォッカがわざわざ「同志」をつけたのは、オスプレイの処分を押し付けられたことに対する皮肉だろう。

 

 資本主義の奴らから最新技術の塊であるオスプレイを奪ったはいいが、金食い虫で持て余したあげく、実行犯である黒の組織に丸投げされた。

 

 余談だが当時、オスプレイの墜落事故が連続して報道された。

 

 他にも同じように手を出した奴がいると思われる。ハリウッドで宣伝しまくるのはそろそろ止めたらどうか。

 

 そしてボスはその戦闘ヘリを更にジンに丸投げした。

 

 ちょっと待てと言いたい。

 

 組織の隠し倉庫では、スパイたちの前にぶら下げたニンジンになりかねない。

 

 個人のツテを使うにはでかすぎる。

 

 結局、錬金術でジープに変えてウォッカが乗り回していたが、戦闘ヘリ保有の事実は消えてなくならない。

 

 その内どこか通勤ラッシュ中の沿線に墜落させ、全部アメリカのせいにしてやろうと計画するくらいには邪魔だったので、今回の一連の騒動は丁度良かった。

 

 オスプレイは海に墜落。

 

 爆発炎上。

 

 証拠を残すことなく海に沈めたつもりと思わせつつ、闇に紛れた烏がアメリカ産だとバレることを期待している。

 

 黒の組織が戦闘ヘリをアメリカから買っていたとなっても大問題だし、アメリカから奪われたものだと判明してもそれはそれで大問題だ。

 

 どちらにしろ、そのヘリが平和に休日を楽しんでいた民間人に向けて、牙を剥いたことには変わりない。どうせ揉み消されるだろうが、ザマアミロだ。

 

 これで組織の壊滅にまで行ってくれたら万々歳だったんだが。

 

 実は、スパイのリストなんてどうでもよかったのだ。公安なんぞに頼らなくとも、対外情報庁が作ったリストのほうが優秀だ。

 

 しかし、母国はヘリ同様、組織のことも持て余し始めている。今回の騒動でせめてもう少し組織に食い込んでくるものと予想していたのだが、そう上手くはいかなかった。あんなに派手なことをしたのに。大丈夫か日本警察。後、FBI。

 

 

 

「それと、次の任務です」

 

 ウォッカが真面目くさった顔で言う。

 

 俺はベレッタを懐にしまい、代わりに煙草に火をつける。

 

 ふうと紫煙を吐き出すのを待ち、ウォッカは言を続けた。

 

「今回は前回のお遊びと違い、マジもんですぜ。ソ連崩壊当時の上層部が外国と裏取引していた証拠及び隠し口座の明細が発見されたと。これが世に出りゃ、祖国はもう一度崩壊するだろうと」

 

「どこだ」

 

「現在お台場で開催されている『ロシアの女帝エカチェリーナ2世の遺産展』の展示品、幻の黄金の死の王冠にマイクロチップが仕込まれていやす」

 

「なんだってそんなとこに」

 

「元同志のいたずららしいです」

 

 ウォッカは呆れたように、ひょいと肩をすくめた。

 

「KGBが解体された時に、もみ消せない汚れ仕事の罪をいくつか擦り付けられて切り捨てられた恨みで情報を持ち出して逃走していたらしいです。兄貴、俺たちも何か派手なことをしてから退場しないと恥ずかしいですぜ」

 

「この間の観覧車より派手なことってなんだ」

 

「後、怪盗キッドの予告状が届いたので、コソ泥に盗まれるよりも早くマイクロチップを奪還するようにと」

 

 

「それを先に言え」

 

 

 

 

 

 

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