Stand in place!   作:KAMITHUNI

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第9話 エース

雪村(ふぅ〜……助かった。咲山がいなきゃテンパったままだった)

 

虎金 龍虎が覚醒し、大地と結城の打線ツートップの2人を完璧に抑えられた事に動揺した雪村は、6回に突然、制球を乱し、ノーアウト一、三塁のピンチを迎えていたが、本日スタメンマスクの大地が、途轍もなく破天荒で精密なビッグプレイでアッサリとピンチを刈り取った。

 

ノーアウト一、三塁のピンチは、たった一人の捕手のプレーによってツーアウトランナー無しという状況に一変した。

これは投手に掛かる筈だったプレッシャーをも消し去ったのだ。

 

『雪村 新太』という男は何をやってもソコソコまでしか出来ない、至って平凡な投手だ。

多少手先が器用で、人よりも変化球の扱いに長けているだけで、誰よりも強い武器は無い。

コントロールも内外と分けて投げる事は出来るが、ビタビタな程ではない。

スタミナだって、走り込みを続けて9回まで投げきれるようになったが、延長戦を戦い抜けるほどではなかった。

 

何処までいっても、雪村は『秀才』から抜け出せない。

 

そんなコンプレックスが何処かに潜んでいた。

 

5回 0失点。

 

勿論、好投している。

けれども……。

 

雪村「ふぅ……」

 

彼の脳裏に過るのは、三日前の徳修戦での空のピッチング。

圧巻の一言に尽きるあの時の完全試合投球が雪村を蝕む。

あの日、自分は監督に自ら頼み込んでブルペン投球に入った。

居ても立っても居られなかったのだ。彼の投球に絆された。

エースの自分よりも上の存在が、選抜ベスト8の強豪校を圧倒していたのだ。何も思わないはずがない。

 

自分が全国区の投手でないことはわかってる。

 

きっと、世間一般から見た中堅エースでしかない。

そんな半端者が、願っていい『夢』で無い事は理解している。

 

それでも……

 

雪村(それでも、俺は諦められない……! 諦め、きれないんだよ! あの舞台に……! 甲子園でエースとして勝ち投手になるって『夢』を諦めてたまるかよッッ!!)

 

雪村「ウラァッ!!」

 

ビュゴォォォォォォオォオオオッッ!!!

 

ズバァァーーンンッッッ!!!

 

《135km/h》

 

敵チーム3番「なっ!? (速い!? コイツ、こんなに速い球投げれたのか?!)」

 

審判「ットライークッッ!! バッターアウトォオオオ!!!」

 

実況『空振り三振ッッ!! 羽丘高校エース雪村 新太!! ツーストライクツーボールからラストボールはインコース高めの渾身のストレートォオ!! 最後は力で押し切ったぁぁぁあ!!!』

 

解説『素晴らしいボールですね!! 球質、制球、そして気持ちの乗った最高のボールを投げましたね! リードする咲山くんも納得いくボールを受けて嬉しいんじゃないでしょうか!?』

 

大地「先輩。ナイスボールです! 今日一のストレートでしたね!」

 

雪村「おうよ! お前には助けてもらってばっかりだからな! ほんと助かった、サンキュー!」

 

結城「新太、ナイスボールだ」

 

帯刀「お前ならやれるって俺は信じてたぜぇ!! 新太ぁぁぁあ!!!」

 

雪村「うお!? 泣くなよ悠馬!? マジでキモい!!」

 

帯刀「キモいとかいうなよぉおお!!!?」

 

片矢「雪村!」

 

雪村「っ!」

 

片矢「ふ、次の回も……いや、この試合は頼んだぞ! 『エース』としてこの試合を投げ抜いてみせろ!」

 

雪村「!!! は、はい!! 任せてくださいッ!!」

 

これが第一歩。

羽丘高校エース『雪村 新太』は漸く、長い道のりを繰り広げられるトンネルへと歩を進めた。たった場所は未だスタートラインだ。けれど、スタートラインにたった投手は強かに育っていく。

 

今、『エース』の夢が開かれていくのだ。

 

─────

 

澤野「ほぅ……(あのまま崩れると思ったが、中々にしぶといな。それに、球速が上がっている? ビデオで確認したフォームも下半身主体に変わっている気がしなくもない。何か変化でもあったのか?)」

 

澤野(兎に角、奴から点を取るのはそう簡単じゃなくなったって事だ。それもこれも、奴のせい。 咲山大地 。アイツがこの流れを変えた。あの場面で立ち直ったのは間違いなく、咲山のビッグプレイからだ)

 

澤野(……恐らく、虎金同様、今の奴も()()()()に入っている状態だろう。あの状態で同じく入っている今の虎金と再度戦う事があれば、正直勝てるビジョンが湧いてこない……奴の前にランナーを溜めないのは最低条件であり、これ以上の失点は命取り……ふぅ、気が滅入りそうだ)

 

虎金「主将!! 行きますよ!!」

 

澤野(まぁ、ウチのエースなら何とかなるだろう……捕手として楽観視しすぎるのもどうかと思うが、何故だか、今のアイツならやってのける気がしてならない。だったら、それに賭けてみたって、いいだろう?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────9回表─────

ワンナウトランナー無し。

3番 咲山大地 ツーストライクツーボール

 

ビュゴォォォオオオォォオオオォオオッッッッッ!!!!!!

 

────カキィィィイイイィィイイイイイイイインッッッッ!!!!

 

ボサッ……!

 

《154km/h》

 

大地「ッッ〜!! ッシャァァァァアッッッ!!!!」

 

虎金「……打たれた、か…………今のクロスファイヤーを打つのかよ……やっぱ、アイツ、イれてるわ」

 

実況『またまた、この男が打ったぁぁぁぁぁぁあ!!! 最終回表!! ワンナウトランナー無しでカウントはツーストライクツーボールから放ったのは、花咲川学園を突き放す特大のアーチィィッ!! 2ー0!! 非常に! 非常に貴重な追加点を最終回にもぎ取ります! 羽丘高校! 咲川!!」

 

実況『最後の最後で、自己最速を更新した虎金! ここで、マウンドを降りるようです! 会場からは慎ましやかな拍手が敵味方なく贈られます!

 

虎金 8回1/3 奪三振11 失点2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────9回裏─────

 

ズドォォォォォォォォォオンッッッ!!!

 

塁審「アウトォオオオ!!!」

 

花咲川の6番打者「なっ!? (フザケンナ! 完全に盗んでだろうが!! なんで、これでアウトになんだよ!?)」

 

 

実況『ここで盗塁阻止ィィイイイ!!! 花咲川! 最終回に仕掛けてきたが、羽丘の鬼肩である、咲山を前に敢え無く撃墜ィイイイ!!! ツーアウトながら一、三塁と形を作りましたが、最後まで羽丘高校エースの雪村を攻略できないままゲームセットッ!! 手に汗握る白熱した投手戦を制したのは、羽丘高校ッ!! 春季大会3回戦進出ですッ!!』

 

両チームは直ぐにグラウンド中心に集まり、整列する。

 

審判「礼ッ!!」

 

全員『ありがとうがいましたぁッッ!!』

 

澤野「今日はしてやられたよ! まさか、走撃で揺さぶりかけるつもりが、敢え無く撃墜させるとは思ってなかった」

 

結城「いえ、此方こそ其方のエースを攻略できませんでしたし、結果的に見れば改善の余地が浮き彫りになった試合でした。大変、勉強になりました!」

 

澤野「そうか……そう言ってもらえると少しは気が楽になるもんだ。しかし、なんだ。こうしてみると、殆ど奴の独壇場だったと言えるな」

 

結城「えぇ。本当に末恐ろしい一年ですよ」

 

 

澤野「ほんと、嫌になる。あんな怪物を率いるお前たちと同地区なのが今更になって嫌になってくる。だが、次は負けないからな」

 

結城「えぇ、此方こそ! 今度も負けません!」

 

 

─────

 

虎金「おい! 咲山!!」

 

大地「? なんですか?」

 

虎金「次は……次は絶対にオマエを完璧に抑え切ってみせるッ!! だから、オマエも俺に負かされるまで負けんじゃねぇぞ!!」

 

大地「……その御願いは聞けませんね」

 

虎金「はぁ!? フザケンナ─────」

 

大地「あ、いえ。そうではなくてですね、現在進行形で勝ててない奴がいるんですよ! ソイツとの勝負に勝つまで虎金さんとの約束は出来ません……だけど、これだけは約束しましょう。次会った時も、全力で存分にやりきりましょう!!」

 

虎金「ち! 兎に角、次会ったら叩き潰してやる! その、お前が現在進行形で勝てない奴と纏めてぶっ潰してやる!!」

 

大地「……えぇ、負けません」

 

 

 

 

─────こうして、壮絶な投手戦は幕を閉じ、新たな物語が始まる。

 

東京都春季大会 第2回戦

羽丘高校VS花咲川学園

 

羽丘|100 000 001|2

花咲|000 000 000|0

 

備考:羽丘高校 背番号12 咲川 大地 4打数3安打2HR2打点1三振

 

 




虎金 龍虎
143km/h→154km/h 更新
ノビB→ノビA

雪村 新太
125km/h→135km/h 更新
コントロール B→D
ノビD→ノビB

ヒロインは何処から選ぶべき2

  • アフグロ
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