榊「村井、ドンマイ。ほら、切り替えて守備な。これ、帽子とグラブ」
村井「うがっ! すまない、助かる!」
榊「どうだ? パワーカーブ」
村井「速いな。その上、高身長ゆえか軌道が異常に不規則だ。ナックルカーブというわけではないが、変化が鋭く強いから中々に打ちづらいな」
空「なぁ、大地」
大地「あ?」
空「次の回も三振、狙って行ってもいいか?」
大地「いいぞ。てか、俺もそれ言おうと思ってた」
空「ん? なんで?」
大地「先制点を挙げた後の回は点が入りやすいっていうジンクスが起きやすいのは、守備側の気の緩みとか投手の慢心だったりから生まれるからだ」
「だったら、最初からフルスロットルで黙らせた方がいい。その方が被打率は激減するはず」
空「なるほどなぁ」
大地「それに、この回から二巡目の上位打線に繋がる。9番の朝日さんを松伊さんの前に出さないようにするのは絶対条件だぞ。気を引き締めて行け」
空「おうよ!」
大地「ムキにだけはなるなよ」
空「わかってるよ」
実況『さぁ成田空、ここまで6者連続奪三振。全てのアウトを三振で奪っています。この3回表、八川大学第三高等学校の攻撃陣はどう出るか!』
解説『確か、成田くんは三回戦でも12者連続奪三振も記録していましたよね』
実況『仰る通り、成田投手は三回戦で4回を投げて12者連続奪三振を記録しております。しかも、変化球は一球も投げずに達成しており、このことから成田投手のストレートは《神童の一刺》などと巷では呼ばれていたりします』
グッッォオオォオオォォオォォオォォオ!!!!
ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!
審判「ットライークアウトォォオ!!」
実況『インコースへの直球で見逃し三振ッッ!! 右打者にはこのクロスファイヤーがよく突き刺さります!! これでなんと7者連続奪三振!!』
解説『今の朝日くんの打席には全球ストレート勝負でしたね。それも尽くインコースへのクロスファイヤーでしたが、朝日くんは全く手が出ず見逃しています。よほどスピード感があるんでしょう』
松伊「……ほう、ここまで全アウトを三振か。俺たちはとんだ化け物とやり合っているようだ」
空「へ、来たかよ」
大地(さて、どう攻略したものかな……)
実況『そして、迎えるは、成田投手のチェンジアップを初回先頭打者としてセンター前に弾き返している松伊純也。ワンナウトランナーなしの場面で、塁に出たいところ!』
唯蔵「春の時も感じたが、本当に凄まじいピッチャーだ。打者を捻じ伏せ、暴力的なまでに唸りを上げるストレートの球威。所々で決めてくるキレ味鋭いスライダーと高速シンカー、高速フォーク。緩急に活かせる大きく曲がるカーブと決め球チェンジアップ。それらを巧みに操ることが出来る高い制球力……」
「そして、球場全体を支配するマウンドでの圧倒的な存在感」
「これが成田 空の『ゾーン』……彼の本当の姿」
「コイツをこのまま野放しにしておけば、手に負えなくなるぞ、松伊」
「ぶちかませ」
大地(さっきの打席では追い込んでからのチェンジアップを初見で弾き返された。ただストレート2球で簡単に追い込めた)
(表リードならストレート。裏リードはチェンジアップかフォッシュ。間の策としてはシンキングファストもありだが、そうなると次も同様になる)
(……ストレート一択だな。オマエの球威で圧倒しろ!!)
グッッォオオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオ!!!!
松伊(ストレートに力負けせず、コンパクトに弾き返す!)
カキィィィーーーンン!!
審判「ファールボール!!」
実況『初球外角にストレート!!松伊、打ちに行きますがファーストファールゾーンッ!!』
松伊(これでも振り遅れるのか……始動を早くするか? だが、そうなると変化球について行けなくなる)
大地(バットを指一本弱短く握った?)
空(対応早いな)
大地(かなり直球を意識してるけど、変化球にも対応できるようにしてきたか……)
(こういうバッター相手に、中途半端が一番怖いんだよな)
空「っ!」
(─────インコース!)
大地(花咲川戦の澤野さんを相手にした時からずっと投げ込んできた火の玉……その感触、まだ残ってるだろ?)
(─────投げ込んで魅せろよ)
実況『2球目、成田空がサインに頷き投球モーションに入る!!!!』
空(相変わらず強気なリードだなっ!)
(けど、そのリードに引っ張られるオレも、どうしようもなく応えたくて仕方がない)
(────絶対、納得させてやるッ!!)
松伊(? 笑った?)
グッッォオオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォオオォォオォォオォォオォォオォォオォォ!!!!
松伊(来た!!)
(スト─────)
ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!
審判「ットライーク!! ツー!!」
松伊「な、に……?」
(コイツ、ストレートのスピードが上がった!?)
(一体、何キロ出て─────)
《 151Km/h 》
「っ……!?」
(どうなってやがる……アレでたったの151キロだと?! 目測だと160キロ超えてるぞっ)
実況『2球目はインコース、素晴らしいコースに快速球が決まって2球で追い込んだッ!! 好打者松伊を簡単に追い込みます、マウンドの成田!!』
松伊(さっきまで見ていたストレートとは明らかにモノが違う)
(途端に球質が変化しやがった!)
(初回と違うとすれば、スピン量か……!)
唯蔵(松伊が二度目の打席で、ストレートに圧倒されている? 球威が増したのか? 何にせよ、松伊がコンタクト不可能になるストレートを投げるとは……成田空、これが大器の片鱗か)
実況『3球目!!』
グッッォオオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォオオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォオォォ!!!!
松伊(真ん中低め!!)
ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!
《 154Km/h 》
審判「ットライークスリィィィーー!」
松伊「……そんな、馬鹿な?」
「低めが、釣り球の糞ボール……だと?」
実況『空振り三振だ!! 高めに大きく外れる真ん中直球に、好打者松伊も思わず手が出てしまったぁ!! なんと成田、これで8者連続奪三振!! 止まらない!止められないッ!!』
空「…………」
大地(最後、内低めに要求したボールが真ん中高めに制球ミス。ただし松伊さんが思わず手を出してしまうノビのあるストレートで空振り三振)
(もう俺ってただの壁じゃねぇのかって思うぐらい、破茶滅茶な投球してきやがる)
(だが、確かに伝わる)
ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!
審判「ットライークスリィィィィ!!」
《 155Km/h 》
大地(お前は『ゾーン』の先にある高い壁を、もう見つけてるんだな)
実況『2番見谷美もアウトコース一杯のストレートに見逃し三振ッッ!! これで圧巻の9者連続奪三振!!!! この回、全球直球勝負で捻じ伏せた!!!!』
澤野「……あんなのトラウマになるわ」
宮城「羽丘の一年って超人しかいないのか?」
虎金「二人で野球してますよね、今のところ」
雄介「えげつねぇーな(草)」
ひまり「成田くん、凄い……」
つぐみ「だね……」
日菜「るるるん♩ 」
浦山「アレが成田の本領ってか……」
松伊「初回とは別人だと思った方がいい。ボールの質と格が数段階上だ」
浦山「まるで、鬼神を相手にしているようだ」
「だが、図に乗るなよ」
「オレの方が上だって、証明してやるよ」
ヒロインは何処から選ぶべき2
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アフグロ
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