少々、書いていて作者自身がナイーブな気持ちになりました。
それをご了承の上で読んでください。
─────花咲川学園 校門前─────
5/2(土) 午前11時
澤野「おう、随分早い再会だな……咲山大地」
大地「えぇ、本当はもう少し後でって思ってたんですけど、最早手段は選んでられなかったので、迷惑でしたか? 澤野弘大さん」
澤野「いや、構わんさ……特に、今日はいいデータ取りになる。此方のメリットも充分にあるさ」
大地「ちゃっかりしてますね〜。ま、その分、コッチも盗めるモンは全部盗んでいきますけどね!!」
澤野「あぁ、そうしていくがいい……。似たような境遇の部なのだ、きっと役立つ情報があるはずだ、よく観察していけ、そして、俺らに良い情報をよこせ」
大地「ずいぶん直球だなぁ〜。少し腹を探ってくると思いましたよ!」
澤野「ふ、お前相手に心理戦は無駄に等しい。なら、裏表ない直球的な言葉こそが、お前に有効なのだろう」
大地「ほんと、いい性格してますね!」
澤野「それは、捕手としては褒め言葉だな」
ジリジリ……ッ!!
虎金「主将……そろそろ始めましょうよ!! それと咲山!! ウチの主将を煽るな!! いい加減収拾がつかなくなるだろう!!?」
結城「そうだぞ。咲山。今は落ち着け。どの道、この後、決着をつける事になるんだ、今はその闘志を胸の内に秘めておけ」
大地「いえ、結城主将……今日の俺はスタメンではありません。つまり、ピンチヒッターとしての代打の可能性が少なからずあります。でも、恐らくですが、今回は空と俺を抜いた1年しか使わない気がします!! そんな気がしてならないのです!! いや、絶対そうだ!! あの監督言ってたもん!! 「今回は1年主体で試合を作る。主力は支えてやってくれ」って言ってたもん!! あれは、絶対に僕達を使う気のない人の言うセリフなんだぁ!! わぁぁあん!!」
澤野「……」
結城「……すいません。少し、落ち着かせてきます。ほら、行くぞ」
大地「ヒグッ……ヒクッ……うん」
澤野「……あれが咲山なのか?」
帯刀「─────色々事情があるんです。察してください……」
空「今日、はやくも幼児化しやがった……」
我妻「……咲山って情緒不安定すぎるだろ。なんで、嗚呼も起伏の激しい感情になるんだか……」
空「まぁ、それがアイツの『代償』って事だろ? 『マルチタスク』だっけか? あれって、やっぱり脳の疲労が激しい上に精神的にも衰弱しやすいんだとさ……ほんと、めちゃくちゃだよな」
空「今でも、酷い時とかは、精神安定剤が必要らしいけどな……」
我妻「たしかに使いこなしてる、咲山はスゲェけど、正直本人の事を思うと、あんまり使って欲しくはねぇよな」
空「あぁ、だからこそ、オレら投手がアイツを楽にしてやるんだ。リードする時に迷わずに出せるレベルの球を持っておけば、大地にかかる負担も多少はマシになるだろうしな!」
我妻「あぁ、そうだな……! よし! 今日は高校初登板だし! お前みたいに完全試合は無理でも、完封ぐらいはしてやんよ!!」
空「ははっ! その息だ! 将来の2番手!!」
我妻「へ! 言ってろよ! お前なんて、直ぐに追い抜いてエースになってやんよ!」
空「言っとけ……エースになりたけりゃ、オレより安定してから言えよ!」
我妻「その内、寝首かいてやるから、気をつけろよ」
ジリジリ……!!
雪村「おーい! 俺を忘れんなよ!!」
─────
大地「……クソ。最近、崩れるのが早過ぎるッ!!」
大地は鞄から精神安定剤を取り出して、2粒掌に乗せて、口に含む。
それを持参の水筒に入ったお茶で流し込み、心の中で自分は大丈夫だと念じて飲む。
早くなる動悸と、襲ってるか倦怠感を押しのけて、トイレの鏡を見る。
大地(はは……ひでぇ顔。今にも吐き出しそうじゃねぇか……クソが)
ズキっ!!
大地「ぐっ!?」
突然の頭痛に思わず苦悶を上げてしまう大地。
頭を抱え込む。その瞬間、思い出しくない過去を回顧する。
??『─────なんで“ボク”から『奪う』の?』
─────れ。
??『“ボク”は只、みんなと『野球』をしたかっただけなのに……』
────まれ。
??『ねぇ? どうして“キミ”は“ボク”と同じ『ポジション』になったの? ねぇ、教え─────』
大地「黙れぇえぇえぇええぇえええええええぇええぇえッッッ!!!!」
グワァ……!
大地「はぁ……はぁ……クソ、がッ! なんで、今更、こんな事思い出さなきゃならねぇんだよ……ふざけんな……もう、“テメェ”は関係ねぇ! “俺”は“俺”だ……!」
叫んだ残響を残して、無人のトイレは悲しくも虚しい空間になる。
人間なら誰しも【闇】を少なくとも抱えるものだ。
それは、どれだけ【不動】な性格をしている者も例外では無い。
当然、【天才】にだって、それに当てはまる。
『咲山 大地』にだって抱え込んでいるものがある。それも、他人には担いきれない程の【闇】が彼の心に渦巻いている。
大地(クソ……1日、2錠が限度って決まってんのによ)
大地は仕舞った錠剤を再度取り出して、二粒ほど一気に喉奥へと飲み込む。
そして、最初と同じように念じて、落ち着くのを少し待つのだった。
─────
ガチャ……
紗夜「……(今の叫びは……)」
大地「はぁ……ッ」
紗夜「きゃっ!」
大地「へ!? 」
大地「悪い!! 人がいるとは思って無くて─────ッ! (そういえば、さっきの叫びを聞かれて─────)」
紗夜「い、いえ……此方こそ申し訳ありません。少し気が動転して─────ぁ」
大地(やっぱり、聞かれてたのか……)
大地「いや、気にしないでくれ。あれは一種の病気だから……出来るなら頭から消してくれ─────触れられて気持ちいいものではないから。じゃあな……」
紗夜「ち、ちょっと待ってください!!」
急ぎ足で去ろうとする大地の制服の端を急ぎ捕まえて、大地の進行を阻む。
大地「なんだよ……俺、急いでるんだけど」
嘘である。
別に急いではいない。試合がもうじき始まるとはいえ、今回の試合に自分の出番は無い。最悪、配球などの研究をする為に試合は見学するつもりだったが、別段、興が乗らないのでどうでもいい。
しかし、大地は直ぐ様この場から離れたかった。
忌々しい記憶が蘇ってしまったこの場所から早く離れなければ、壊れてしまいそうで怖いからだ。
大地(なにが、不動の【大樹】だ……1番、動揺してるのは俺じゃねぇか)
嫌気が差す。
こんな弱い“俺”が嫌で仕方がない。
そんな事、初めから分かっていた。
自分が自分で嫌ってるのだ。
受け入れられる訳がない。
紗夜「す、すいません……お伺いしたいのですが、貴方は羽丘高校一年の咲山大地さんで間違いありませんね?」
しかし、目前の女性に彼の真意などわかるよしも無い。
大地「……まぁ、一応、そうです……俺が咲山です」
紗夜「よかった……間違っていなくて。すみません、いきなり不躾で申し訳ないのですが、少し私に付いてきてくれませんか?」
大地「……は?」
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アフグロ
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