─────2回裏─────
木更実業攻撃。ワンナウト ツーストライクワンボール ランナー無し。
5番・エース 萩沼恒星
ズバァァァァァァァァーーーンンンンッッッ
ブゥンッ!!
萩沼「くっ!! (ホントに速いッ!! ミットの音が鳴ってからスイングしちゃってる!! なんてバックスピン量だ……)」
審判「ットライークッッッ!!! バッタアウトォォオッッ!!!」
萩沼(どんな指先の感覚してたら、そんなに回転数が増えるんだい? 面白い─────!! 僕はこういう試合を待ち望んでいた!!)
萩沼(逆立ちしても勝てないような相手を待ち望んでいたんだ!! 成田 空!! 君は最高だ!!)
萩沼(一歩も二歩も先に行く、君に直ぐに追いついてみせる……。だから、今は精々高みに居なよ!! 僕がこの試合中に証明してやるからさ!)
萩沼(どっちが、本当の最強投手かね!!)
─────
ザワザワ……。
観客「……おいおい。誰だよ、成田が天狗になったとか言ったやつ。アレの何処が天狗だって? どう見ても、バケモノだろ?」
観客「東と萩沼……。木実が誇る4、5番がストレート一本で捩じ伏せられてるだと?! どんな球筋してんだよ。あのストレート……」
観客「そ、それより……。あの球速表示はバグってるのか? 1年であの球速はオカシイって……。しかも、左だろ? 尚更、有り得ない……!」
観客「─────155km/h。正に【神鎚】……。天は『成田 空』という【神童】を産み落とし、野球の歴史を変えにきたぞ……」
観客「あぁ、間違いなく新時代の幕開けだ!!」
─────
紗夜(たったの打者2人……。されど強打者2人をオールストレート真っ向勝負で試合の流れを完全に変えた)
紗夜(萩沼さんが作り始めた独特の球場の空気を簡単に変えてしまった……。成田 空……。貴方は、やはり『日菜』側の人なのですね)
紗夜(球場に流れていた不穏な空気を払拭した今こそが、流れを確実なモノにする最大の好機であり、逃せば失速しかねない危険な攻防……!! ここからが本当の戦いです)
─────
ズバァァァァァァァーーーーーンンンゥゥゥッッッ!!!!
審判「ットライークッッ!!! バッターアウトォオォオ!!!」
空「シャァァァァッッ!!!」
山野「ハァッッ!!?」
審判「なにかね?」
山野「い、いえ……。なんも無いっす(今のコースが入ってんのかよ……)」
杉崎(ラストボール……。際どいがボール一個分外れているように見えたが……)チラッ
大地「空! ナイスボール!!」
杉崎(どうやら、咲山は捕球技術も高いようだな……。あの球を流されないようにピタリと止めて恰もストライクと思わせるフレーミングは、間違い無く一朝一夕で身につくものでは無い)
杉崎(……センス任せのプレイヤーでは無いということか。1年でそれだけのフレーミング技術を手に入れるのは常識では考えられない……。けど、お互いの相方の球が強過ぎるんだよな……。そりゃあ、嫌でも練習しなきゃいけないわな……。ほんと、互いに苦労してんな)
萩沼「何してんの? スゥさん! ほら攻守交代だよ! テキパキ行こう!」
杉崎「おう、今行くわ……(さて、向こうもやってくれた事だし、コッチも仕返してやんねぇとな。なぁ? 恒星)」
─────3回表─────
萩沼「じゃあ、やろうか……。ここからは、僕が奏者だ」
萩沼「羽丘高校……。全力でかかってきなよ」
グゥオォォォオオオォオォッッッ!!!
笠元「なっ!?」
ドゴォォオオオォオオオォオォオンンンンゥゥゥゥ!!!!
萩沼「─────じゃ無いと、その自慢の羽は、直ぐ光熱によって焼き落とされてしまうよ……」
審判「す……ストライークッッ!!」
杉崎「……えぇ……今日の恒星、どうなってんだよ……。マジで」
笠元(頭ん中どうなっとんねん……。ネジ絶対トレとるやろ……。なんでここでど真ん中!? しかも、さっきの回から更に球威が上がっとるやと!? どんな体の構造しとんのや!!)
《159km/h》
ワァァァァァァァァァアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!
大地(笑い話になら無いぞ……。このバケモンめ!! これは本格的に1点もやれねぇ……!)
大地(クソッ!! さっきの回から怪しいとは思ってたが、やっぱり入ってやがったか!!)
大地「『ゾーン』に入ってやがる……。もう、アレは止まらない……止められない」
大地「……こうなったら、やるしかねぇぞ、空」
大地「テメェが投げ合いで勝つしかねぇ……。負担を強いることになるが、コッチも枷を外すしか無い」
大地「持ってかれた流れを全部取り返す。 それ以外に余計な事は考えんな。 証明しろ。この場で誰が最強なのかを」
空「あぁ、任せておけよ……」
空「はは……。面白いな!! アレが世代最強か!! いいぜ!! 我慢比べなら負けない!! まだ試合は始まったばかり!! 上等だ!! 萩沼 恒星!! オレが勝ってチームを勝たせてみせる!! ここから先はエンジン全開だッ!!」
─────
ワァアアァァアアァアッッ!!!
蘭「はぁ、はぁ……! やっぱり、もう試合が始まってる!」
モカ「蘭〜。ちょっと早いよ〜。ひぃ〜ちゃんが〜、ついてこれてないよ〜」
巴「おい、ひまり。大丈夫か? もう少しで着くからもう一踏ん張りだぞ!」
ひまり「はぁ、はぁ、はぁ!! う、うん! だ、大丈夫ッ!! そうだよね! あともう一踏ん張り!!」
つぐみ「はは……。それにしても、練習試合とは思えない熱気だね」
巴「あぁ、流石に選抜準優勝した名門ってところだな。球場そのものをグラウンドとして活用してるんだから、強くて当たり前かもしれないけどな」
つぐみ「うん……。それで、今のスコアは?」
羽丘|010 000 ーーー|1
木実|000 010 ーーー|1
七回表 ワンナウトランナー2塁 走者(舘本)
舘本が四球を選択後、結城が進塁打となるセカンドゴロを打ち、迎えたチャンスに本日2打数1安打1HR1三振の4番咲山大地。
つぐみ「す、凄い場面で来ちゃったね……」
モカ「うん〜。ここで〜、さきぃ〜、か〜。コッチの〜ビックチャンス〜だね〜」
蘭「この場面でアイツが打たないっていう光景が思い浮かばないんだけど……」
巴「まぁ、春季大会で8割越えの打率残すような怪物だからな……。ただ相手も普通の相手じゃ無いっていうのがな、この勝負にどういう影響を及ぼすのかだな」
ひまり「すぅ、ふぅ〜……。それで? この状況が試合に影響するの?」
友希那「当たり前じゃ無いの……。この勝負が試合を決定付ける場面になるのは間違いないもの」
蘭「げっ! 湊先輩……」
つぐみ「蘭ちゃん、それは失礼だよ」
モカ「あ〜。リサさんだ〜」
リサ「やっほー☆ モカ達も観戦?」
ひまり「はい! そうなんです! 明後日のライブに向けての練習をしていても良かったんですけど、蘭が咲山君の試合を見た─────「ひまり///!!」」
モカ「蘭〜。顔真っ赤だよぉ〜? どうしたのかな〜? かな〜?」
蘭「モ〜カ〜ッッ!!」
巴「そ、それで彼の成績はどうなんだ? あこ」
あこ「うん、お姉ちゃん!! 確かぁ……」
燐子「2打数1安打でチームの中で唯一の打点を挙げています……。ただ、2打席目は……」
つぐみ「2打席目は?」
紗夜「……オール『変化球』で三振です。しかも、掠りもせずに、完敗でした」
ひまり「う、嘘ッ!? 咲山君が手も足も出ずに三振ですか?! そんな事が……」
友希那「実際、相手投手の萩沼は、2回以降は完璧な投球よ。今の回も攻めた結果の四球一つのみ。球数も100球弱程度。奪三振13の圧倒的な投球ね」
巴「流石は、選抜で準優勝へ導いたドラ1候補の【巨神】て言うところか……。さて、【大樹】と【巨神】の3度目に渡る勝負はどう転ぶのか……」
友希那(勝ちなさい……大地。貴方なら出来るわ)
蘭(……咲山)
燐子(……誰も、成田君のピッチングに言及しないんだ)
因みに、空は調子付いた影響で5回に東からレフトスタンドへのソロを打たれて、失点しなかったルーキーが失点したと会場が湧いたとかなんとか……。
当然、空はめちゃくちゃ悔しがっていました。
成田空 6回 被安打1 四死球0 奪三振15 球数89 失点1 (現状)
─────
大地(今日、3度目の対面……。序盤からエンジン掛かったまま、か……。ああー、やりたくねぇ……)
大地(2打席目は全く手が出なかった。荒れに荒れた縦スライダーの軌道が予想以上に掴みにくい上に、元ある剛球が更にソレを際立たせる……)
大地(それだけでなく、縦スライダーとは違ってシンカー気味に深く沈み込むフォークに、変化量は心許ないが、カウントを稼げる横にスライドするスライダーも唐突に使われると、流石に厳しい……)
大地(……右投手の萩沼さんだけど、別に左打者に弱いっていう訳では無い。基本、膝下のスライダーを決め球に使うが、アウトコースへのフォークも厄介だ)
大地「ふぅ〜……」
杉崎(……悩んでるな。まぁ、そうだろうな……。前の打席は恒星の変化球に全くついて行けずに空振り三振)
杉崎(当然、変化球はチラつくし、元々あるストレートの破壊力だって頭にあるはずだ……。絞り切ろうにも絞り切れないだろう?)
杉崎(一球一球の質が高いだけに、総てをマークしきるのは愚策でしか無い……)
杉崎(初球、コースは関係無い。ストレートだ……。流石のコイツでも初見のオマエのストレートは当てられないはずだ)
萩沼(うん。了解!!)
萩沼「なぁ? 咲山……。君は僕の予想を遥かに超えてくる打者だろ? ここでも、超えてくるのかい? さぁ……!! 行くよッ!!」
萩沼「ハァアッッ!!!」
ゴォォォォオオオォォオォオオッッッ!!!!!
ドゴォォォォオオオオオオォォオオオォンンンゥゥゥッッッ!!!
審判「ットラーイクッッ!!! ワンストライクノーボールッ!!」
《158km/h》
大地(球威が衰えるどころか、増してきてるのか?! 既に怪域を越えてやがる……。これ、本当に打てるのか? 俺如きに打てるボールなのか? 他にも縦スラなんかもあるんだぞ?! こんなもん打つ方法があるんなら、教えてほしいわ!)
ロッ○スカウト「ふむ……(やはり、萩沼は別格か。あの直球の球威と縦変化の大きいスライダーは今現在のプロでも十分に通用する。しかも、192センチの長身は大変魅力的だな……。ガタイも十分な将来性を孕んでいる)」
ロッ○スカウト(あの球を高校に上がったばかりの1年生で打つのは厳しいだろう……。いや、そもそも高校生で打てる者がいるのかすら怪しい)
ロッ○スカウト(しかし、この試合で萩沼から放ったバックスクリーンへの一撃は大変魅惑的だな……。成田 空の影に隠れがちだが、咲山 大地も素材は一級品だ。名前を覚えておいて損は無いはずだ)
ロッ○スカウト(……恐らく、この対決も萩沼の圧倒だが、彼がこの勝負をこれからの糧に出来るかどうかで、評価は変わってくる。楽しみだ)
この時、ある球団のスカウトは、この試合での大地に期待はないと予期した……。
当然、球場全体の空気もそう行ったもので、実際に実力差は明確だった。
もし、大地が『ゾーン』に入っていたところで、萩沼も同じ『ゾーン』なのだ、勝ち筋など一厘も無い。
けれども、彼の勝利を当然の様に待ち望み続けていた少年少女達がいた。
空(お前なら打てるぞ!! 大地!! 勝て! 勝って、ライブに行くんだろ!! ここで男を見せろよ!!)
我妻(お前は、誰よりもバット振ってたんだ!! なら、打てる!! 『天地コンビ』の片割れとして、この逆境を跳ね返せ! 咲山!!)
蘭(勝って! 勝てッ!! 咲山ッ!! ここでアンタが打たなきゃ誰が打つのよ!!)
友希那(貴方なら、打てるわ……! 勝って私達のライブを見にきなさい!! 大地!!)
それぞれの想い。
声に出ていない声援が打席にいる大地に届くはずも無い。
だが、この瞬間だけ……。
それに呼応するように……。
ヒュゴォォォオォォォオッッ!!!
カククッ!!!
ガギィンッッ!!
杉崎(何っ!?)
大地「……」
萩沼(当てられた? 今のコースを? ゾーン? 違う!? なんだこの覇気の無さは!?)
大地(……あ、そうか……。打撃は─────)
大地の前に聳え立つ、高い高い壁は……。
安易に崩れ落ちた……。
その先の道は開かれ、新たな旅路へ向かう。
この瞬間、大地は至ったのだ……。
『ゾーン』では無い……。
杉崎(追い込んでいるのはコッチなんだ!? 何を焦ってるんだ俺は……!? ここは焦らずじっくりと……)
大地(そうだ、打撃は『何も考えなくても』“打てるんだ”)
『無我の極地』……何も感じない無色の領域。必要最低限の情報源すらもカットし、完璧に脳の中をクリーンにした状態。
この状態では、思考能力は軒並み下がるが、本能的な反応速度や、リミッター制御を失くし、身体能力を底上げするという領域。
『ゾーン』が人の100%の力を引き出すモノなら、『無我の極地』は身体の120%を引き出し、その代償として思考能力を奪うという諸刃の剣だ。
萩沼(マジで、予測を超えてきたね!! なら、真っ向勝負しかないでしょ!! スゥさん!!)
萩沼(ここで、逃げてちゃ!! 全国制覇なんて夢のまた夢だ!!)
杉崎(いや!! ここは、外すべき─────萩沼(嫌!!) 畜生!! もう、好きにしろや!! どうにでもなれよ!! ど真ん中にぶち込んでこい!!! お前の最高のボールを投げ込め!!)
萩沼「はは!! 流石はスゥさん!! 分かってくれて嬉しいよ!! 安心して!! 僕は必ず勝つから─────!!!」
萩沼「咲山!! 君という好敵手に出会えて、本当に良かったよ!! これで、この夏は退屈しなさそうだ!! 来いよ!! 甲子園に!!!」
萩沼「だけども、この前哨戦は僕が貰うッッ!!! 喰らえッ!! 高校3年間で鍛え上げた、僕の渾身のボールを─────!!!!!」
萩沼「僕の全部を乗っけて行けぇええええええええッッッッッッ!!!!」
ズッォォォオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!
カッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
大地「……ッッッッッ!!!!!!!!!!!」
ーーーーーーーーーキィイイイイィイィインンンゥゥゥッッ!!!!!
《161km/h》
杉崎「センターッッ!!!!」
─────
観客「おい!! これはセンターの頭を超えるんじゃないか!?」
観客「いや! センターは守備の要である崎野だ!! 奴の守備範囲なら十分に捕球でき─────」
─────
羽丘ベンチ『抜けろぉおおおぉぉおおぉおッッ!!!』
木実ベンチ『捕れぇええぇえええええええッッ!!!』
萩沼(はは……。なんだそりゃ……。僕の最高のボールだぞ? なんで捉えるんだよ? ほんと、成田といい、君達は僕の予測を大きく上回る……)
崎野(待てッ!!! ちょっと、球足速すぎる!!? これは、間に合わな─────!?)
ザンッッ!!!
萩沼(─────完敗だよ)
全員『抜けたぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあ!!! 逆転だぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!』
舘本「〜〜ッ!!!」
笠元「舘本はん生還!!! 咲山は余裕のスタンディングダブルゥゥゥッッ!!! 毎度毎度、いいとこ持って行きやがって!!!! このアホンダラぁぁあ!!!」
秋野「あはは!! 剛の言う通りだね!!!」
空「大地……。やっぱり、オマエはスゴイよ……」
空「オレはずっと思ってたんだ……。オレはオマエに勝ったつもりは無い!!! オレの最強の相棒はオマエだけなんだ!! 胸を張れよ大地ぃいいいい!!!!!!!」
─────
友希那「大地……!!」
蘭「咲山!! やったね!」
─────
萩沼「……」
杉崎「恒星、今どういう気分だ?」
萩沼「……スゥさん。そんな事、聞かなくても分かるでしょう? ─────悔しいさ。間違いなく」
萩沼「完璧な感触だった。現に自己最速で161出したんだ。これ以上ない最高のストレートだったんだ」
萩沼「けど、スゥさんのミットには収まらなかった……。彼は……咲山大地は限界を越えて、僕のボールを打ち返した……」
萩沼「何が悔しいって? 僕自身、その打球に見惚れた事さ……。執念染みた何かを感じたことは何度かあったけど、こんな感じは初めてだったんだ」
萩沼「色が無いのに、何処か熱意を孕んだ打球……。打つという信念一つの本能任せの打撃に!! 僕は負けた!!」
杉崎「そっか……。お疲れさん、ここからはオレらに任せてベンチに下がれ……。アイシングはちゃんとしとけよ」
萩沼「あと、スゥさん……。最後─────ッ」
杉崎「それ以上は言うな! アレは俺の判断だ。何もお前が気をやむ必要はねぇ……。とはいったものの、やっぱり、一度は反省会だな。しっかりこの経験は活かそうぜ! その前に決着はつけといてやるよ」
萩沼「─────うん!」
羽丘|010 000 100|2
木実|000 010 000|1
羽丘バッテリー:成田-咲山
木実バッテリー:萩沼→沢木ー杉崎
備考:羽丘 咲山は決勝タイムリーツーベースを含む3打数2安打1HR2打点
同校 成田→9回 被安打2 四死球1 失点1 被本塁打1 奪三振19個 完投
木実 東→5回裏にレフトスタンドへホームランのみの1安打
同校 萩沼 6回1/3 被安打2 四死球1 失点2 奪三振13
疲労困憊とゾーンのタイムリミットのため降板。
やっと後編に移ります!!
今度こそバンド勢と絡みます!!
……多分。期待せずに待っててね? 明日はバンドリの資料集めしなきゃ!!
ヒロインは何処から選ぶべき2
-
アフグロ
-
それ以外は以前の集計結果から選択します