─────19:26 木更津実業練習グラウンド
我妻「はっ、はっ、はっ……!!」
笠元「おい! 我妻ぁ!! そろそろ上がれや!! メシの時間が終わってまうぞ!! まぁ、何言っても無駄やろうけどな……」
笠元(そりゃあ、今日の試合での成田と咲山の暴れ具合見とったら、同年代としてゴッツイプレッシャーやろうからな……)
我妻「はっ、はっ、はっ……!! (今日の試合……。俺はずっとベンチだった)」
我妻(正直、ブルペンで肩を作るっていう作業をするのすら憚れるくらいに、成田の投球に見惚れてたんだ……!!)
我妻(たしかに、成田は凄いさ! 勝てるビジョンも湧かない……。だって、選抜準優勝校に2安打1失点完投だぞ? 自分があの場に立って、あんな投球ができたか? いや、ボロクソに打ち崩されていたに違いない!!)
我妻(それが悔しい……!! 何より、自分で負けを認めてるのが余計に!! でも、それが俺の現時点での実力だ……!! このチームの中じゃあ、1番のヘボピーって言うことは自覚してる)
我妻(明日の試合……。大阪から来た強豪、桐奥学園に先発を任されたけど、力は足りてない!! このままじゃあ、自分は置いてけぼりだ!!)
我妻「はっ、はっ、はっ……!!! (くそッ!! 俺は何してんだ!? このままだとチームに迷惑掛けちまう!!)」
─────宿舎 食堂
大地「ガツガツガツガツガツガツガツガツ…………!!!!!」
空「相変わらずの食欲だな……大地。ほら、木実の方々が驚いてこっち見てるし、もっと行儀良く食べろ」
大地「あ〜い……モキュモキュモキュモキュモキュ……!!!」
秋野「あはは……。いつも通りのバカ食欲だね……」
村田(オレももう少し食べれる用になろうかな……?)
杉崎「え? え?! 待て待て!! オマエらいつもこんな感じなのか!? はぁ!? 咲山の雰囲気が試合中と全然違ぇ!!! 何コイツ!!? 幼稚化してんの?! 頭大丈夫か!?!? てか、バカ食うじゃねぇか!!! 丼山盛りを15杯目だぞ?! なんで食欲が衰えねぇんだぁあぁああ!!」
結城「ふむ、だが今日はまだマシな方ですよ……。 『幼稚化』も、そろそろ解けるころだ、多少はマシになる筈です」
山野「……ウチの食堂のおばちゃんが喜んでるところ初めて見たわ……!! 普段からバカ盛りで完食できなかったら雷を落としてくる人なのに……!! 咲山 大地……恐るべし!! あのおばちゃんを堕とした!!!」
帯刀「変わってるっていえば、そっちのエースだって……。おろ? おい、萩沼の野郎何処行ったんだ? さっきまで『今日の協奏曲は楽しかったよ……! でも、次は負けない。くふふ……』とか暗い笑み浮かべてたろ?」
杉崎「あぁ、それなら今頃、屋上にいるんじゃね? アイツ、なんかあると必ずそこにいるし、今日はアイツの大好きな星空も綺麗に映ってたしな」
帯刀「ふ〜ん……。なるほどね。そんで、咲山〜!! ちょっとオマエに聞きた─────。おい、成田……。咲山何処行ったんだ?」
空「え? 大地っすか? アイツなら、先輩達の話聞いた後に急に『腹が痛くなったから、屋上でリラックスしてくるわ』って言って、走って行きましたよ! ったく、腹痛ならトイレに行きゃあいいのに……て、どうして顔顰めてんですか? オレ、なんか悪いこと言いましたっけ?」
帯刀「いや、そうだったわ……。オマエって『天然』のアホだったな……」
空「は!? 天然のアホ!? それはオレじゃないっしょ!? どう考えても大地の称号でしょう!?」
秋野「はは、2人ともアホだよ」
空「ヒドッ!? 秋野先輩の笑みをこぼしながらの罵倒はマジで傷つくんでやめて下さいよ!!」
杉崎「……オマエら仲よすぎだろ? ま、いいや。それで帯刀は何を聞きたかったんだ?」
帯刀「あ! そうなんすよねー!! 杉崎さん! 明日の桐奥戦の先発についての意図を本当は咲山の野郎に聞きたかったんですよ」
杉崎「あぁ、例の1年か? 確か、雪村登板の所を、その1年を推薦したんだろ? 咲山が。まぁ、アイツの考えることは分からんけど、単に経験積ませたいだけじゃないのか?」
帯刀「えぇ。俺も最初はそうかもしれないと、思ったんですけど……。よく考えたら、アイツがそれだけの理由で態々、昨年の夏の全国制覇チーム相手に我妻を使うのかなって……」
杉崎「確かにな……。昨年の年よりも間違いなく格落ちしてるとはいえ、西の強豪は伊達じゃ無いからな。特に、あの攻撃力は春時点で既に全国級の破壊力を持つからなー。流石に、1年相手じゃあ相手にもならないかもな」
結城「なんにせよ、我妻の先発は監督も納得して、決まったことだ……。明日はそれを踏まえた上で試合を作ればいいだけだ」
─────屋上
萩沼「……いやぁ〜。相変わらず、絶景だね。この景色は……。まるで旋律を並べた楽譜のように煌びやかだ……。こうして、寝転がってると特に星が『脈動』してる事が分かるんだ……。君も、そうは思わないかい?」
大地「たしかに絶景ですが、俺には星の『脈動』なんて伝わってきませんよ。あるのは、ただの光り輝く宇宙の屑と数々の星ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません」
萩沼「全く、君は釣れないねー。僕に勝ったんだ、もっと喜んで乗ってきてくれてもいいじゃ無いか。それとも、君は何か? シャイなのかい?」
大地「……シャイじゃ無いですよ。ただ、萩沼さんに勝ったとは思えないんですよ。特に、最後の打席は……」
大地「あの場面。俺は『無意識』でスイングした時、あの時は確実に変化球をボールに投げていれば、萩沼さん達の勝ちだった……。けど、敢えての真っ向勝負を仕掛けて来たんですよね? あれ、萩沼さんの独断でしょ? 俺が捕手ならあんな危険なマネはしませんよ」
萩沼「さてね……あの時のことは僕も良くは覚えてないよ(嘘だけど……)」
萩沼「ただ一つだけ言えるとしたら、あのボールは間違いなく、僕の人生で最高最強の直球だったってことさ……。プライドも、記憶も、魂も、願いも、全て乗っけて放った球だった」
萩沼「君は、そんなボールを打ったんだ。もっと胸を張ればいいじゃ無いか」
大地「……」
萩沼「このドラ1候補の最高のストレートを打ち抜いたのは君だけなんだ、謙遜は嫌味でしか無いよ。僕の好敵手は最高だった、それだけだろ?」
大地「そうですか……。そうだと、嬉しいです─────次も勝ちます」
萩沼「はは。1年が生意気だな〜。君達を倒して、僕が……いや、僕達が頂点に立つよきっと……だから、上がってこい」
大地「えぇ。あの場所で待っていてください─────甲子園で!!」
香澄(ね、ねぇねぇ? 有咲!! あの人たち、星見ながら、何か小っ恥ずかしい話をしてるよ!? ねぇ?! ここは出て行くべきかな!?)
有咲(ばっか!! オマエ、この場面で出て行くとか出来るわけねぇーだろ!! そもそも、他校舎の屋上に登ってる時点で不法侵入で取っ捕まえられるわ!!)
りみ(わわわ!! ホンモノの咲山くんだぁ///)
沙綾(ちょ、ちょっと落ち着こうね!!)
たえ(あぁ……。星が綺麗だなぁ〜)
沙綾(なんか、おたえだけ向いてる方向が違う!!?)
─────グラウンド
花音「ふぇぇ……。此処何処ぉ〜?」
我妻「……え? なんで女の子がこんな所にいるんだ?」
我妻(もう真夜中で危ないかもだし、そろそろ上がるつもりだったし、一旦話掛けてみるか? うん、カワイイからって下心で話しかける訳ではないぞ!! うん!!)
我妻「あ、あの? だ、大丈夫っすか?」
花音「ふぇぇ? あ、あの〜……。何方、です、か?」
我妻(グハッ!! か、可愛い、すぎっ!!? これが、咲山が湊先輩に向ける感情なのか!? うん!! よく分かる!! 今までちょっとバカップルめっとか妬んで悪かった!!)
我妻「ぁ、え、えっと……。俺は我妻っす……。我妻 矢来。ちょっと、この学校で合宿しているチームの1年です」
我妻「そ、それで……。貴女は?」///
花音「ふぇえ?! わ、私は、松原、です……。松原、花音です」
─────
我妻「成る程、それで松原さんは道に迷って、間違って校内にいつのまにか侵入してたって事ですね?」
花音「うん。そうなの……。バンドメンバーとホテルに戻るつもりだったんだけど、迷っちゃって。昔から方向音痴で色んな人に迷惑かけてきてて、どうにかしなきゃって思うんだけどね」
花音「でも、中々治らなくて、またこうして、人に迷惑を掛けて……。ゴメンね」
我妻(迷惑か……。悩んでる種は全く別系統なんだけど、少し俺と似てるのかもしれない……)
我妻(きっと、明日の試合は咲山だけじゃなくて、きっと先輩方にも沢山の迷惑を掛ける……。そうなれば、俺を推してくれた咲山の評価だって下がる……。ほんと、嫌だ─────)
花音「……我妻くんは……」
我妻「え?」
花音「我妻くんは、きっと器用な人だよね? なんでも自分で出来ちゃう凄い人……」
我妻(違う……。俺は一人じゃ何もできない弱虫だ。本当に一人で何でもできる凄い奴は、俺みたいにグチグチ考えずに、バカスカホームラン打つ捕手や、常識外れな投球を強豪相手に見せつける投手の方だ……。俺は結局、アイツらを逃げ道に使ってるだけの臆病者さ)
─────
過ぎったのは、空が東に向けて投じた155km/hの瞬間……。
─────
ズバァァァァァァァァァァァァァーーーーンンンンゥゥゥッッッッ!!!
空『シャァァァッッ!!!』
《155km/h》
我妻『……』
─────
過ぎったのは、大地が萩沼から放った逆転決勝点のツーベースヒット……。
─────
グゥォオオオォォォォォオオォッッッッ!!!!
カッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
大地『ッッッッ〜〜!!!!!!』
キィィィィィイィィイィィーーーーーーーーーーーーーンンンンッッ!!!
羽丘ベンチ『抜けたァァアアァァァア!!!!』
我妻『……強ぇ……よ。マジで……』
─────
我妻(同じ1年で才能を開花させてるアイツらと、未だマトモな結果を出せてない俺が同じ土俵なわけがないんだ。なのに、どうしてだ!? なんで、俺を登板させるッ!! こんなんじゃ─────)
花音「けど、背負い込みすぎは良く無いよ?」
我妻「ぁ─────」
花音「君は、強いけど、本当は挫けそうになるぐらい弱いんだよね? 分かるよ、その気持ち……」
花音「でも、笑わなきゃダメだよ。私達のバンドは世界中を笑顔にする為に活動してるの……。勿論、我妻くんも対象だよ」
花音「どんなに押し潰されそうでも、どんなに苦痛を伴っても……笑って過ごすの。迷惑を掛けてもいいの……。その分、笑顔を増やしていくの! そうしたら、みんなが笑ってられる世界でしょう?」
我妻(今日会ったばかりの、俺に何語ってんだか……。コッチは勝負の世界で生きてるんだ……。どっちかが笑って生き残って、片方が涙と辛酸を舐めて苦渋を味わうんだ……。誰もが笑顔になれる世界なんてない)
我妻(でも、そうだな……。笑顔でいる、か……)
─────
空『シャァァァァッッ!!!』
大地『ナイスボールっ!! 空ぁ!!!』
─────
我妻(楽しそう、か……。どんなに苦しい場面でもアイツらは楽しそうだった)
我妻(成田は、今日までヒットを一本も打たれなかったけど、苦しく無いわけじゃなかった……)
我妻(高校野球の9回まで投げるという事に戸惑いがあって、後半は特にボール球が嵩むって苦笑いしながら言ってた)
我妻(咲山は、いきなり4番に抜擢されて困惑してた。中学から3番を任されてた事もあって、誰よりもストイックに責任感を強く持って打席に立ってた……。チャンスで打てなくなりそうな場面もあった……。けど、誰よりもノビノビプレイをしているのも咲山だったな……)
我妻(みんな、何かしらの苦しみを持って生きている。それでも、気高く強かに笑って生きてる─────)
我妻「そうですね……。俺も、そう生きられたらいいと思います……。なんか、凄い元気付けられました! ありがとうございます!!」
我妻「ところで、どうして、さっき出会ったばかりの俺にそんな話をしてくれたんですか?」
花音「ふぇぇ? と、特に考えてなかった、かな? 敢えて言うなら、ほっとけない感じだったからかな? ごめんね? 私もよく分からないや」
我妻「そ、そうっすか///(カワイ過ぎる) でも、これで俺の行く道が定まりました。本当にありがとうございます!!」
花音「うん!! こっちこそ! 笑顔になってくれてありがとう!」
黒服「松原様」シュパッ!!
花音「ふぇえ? あ、黒服さん! 迎えにきてくれたんですか?」
黒服「はい。お嬢様方がホテルの方でお待ちです……おや、そちらの方は……」
花音「えぇと、ここで合宿をしてる学生さんらしいです。迷子になっていた私をここまで送ってくれたんです」
黒服「そうでしたか……。 これはご迷惑をお掛けしました。確か、御名前は……」
我妻「ぁ、えっと……(ヤベェ!! ふつうに出てきたけど、マジで気配なかった!! 怖っ!!)」
花音「我妻君です。我妻 矢来君! だよね?」
我妻「ぁ、はい……。そうです、我妻 矢来です」
黒服「貴方が、明日先発予定の我妻様でございますか……。これは、本当に多大なご迷惑を!!」
花音「え?! 我妻君! 明日、試合で投げるの!? ご、ゴメンね!! 明日は大事な先発なのに、こんな夜遅くまで付き合ってもらって」
我妻「い、いえ!! 特に迷惑とかは無かったですよ!! 寧ろ、体を動かしてないと緊張で投げられないような気がして……(ん? てか、なんでこの黒服の人は俺が明日先発だって知ってんだ? 情報が漏れたわけじゃ無いよな?)」
黒服「そうですか……。ふむ……。松原様、お帰りになるのはもう少し先でも構いませんか?」
花音「ふぇ? は、はい……。別に構いませんが……」
黒服「なら、もう少しだけお待ち下さい。あと少しで、同僚が到着致しますので、彼とお先に帰宅しておいて下さい……。私め、我妻殿に少々のお詫びとして、レクチャーしてから戻りますので」
我妻「はい?」
黒服「それでは、我妻殿……。始めましょうか」
唐突な我妻改造!!
ところで、バンドリ勢……特に花音の口調ってこんな感じなんでしょうか?
正直、手探り状態なので、間違っていたらごめんなさい!!
そして、報告していただけるとありがたいです(やさしく教えてね……?)
それでは、次回は後編2です!
ヒロインは何処から選ぶべき2
-
アフグロ
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それ以外は以前の集計結果から選択します