─────木更津実業 球場グラウンド ブルペン─────
ギュッルォォォォォオオォオォォオオッッッッ!!!!
ズバァァァァーーーーーーンンゥッッ!!!
我妻「よしっ! 今の感覚はよかった!!」
大地「……ヤバイな。マジで見たことの無い球筋してやがる(たった一晩でここまで化けるのか?)」
片矢「どうだ? 咲山。我妻のボールは?」
大地「……驚きました。ここまでの球はとは思いませんでしたよ。間違いなく走ってますし、球威や球速も以前とは比べ物にならないくらい進歩しています」
大地「空も腕が遅れて出てくるので、タイミングが取りづらい投手なんですが、我妻は、天性の『柔軟性』を活かしたフォームで更にタイミングをずらす事が出来ます」
大地「左手の壁で右腕をギリギリまで溜め込んで、そこから足の体重移動を開始し、股関節を回転させる勢いで一気に力を溜めていた右腕を解き放つ!」
我妻「ラァッ!!」
ギュルォォォォォォォオオオッッ!!!
ズパァァァァァァアアンンゥゥッッ!!!
我妻「おぉ、昨日よりしっかりとボールが握れてる……。投げてて気持ちいい」
片矢「そうか。それで、“そのボール”は試合で使い物になるか?」
大地「えぇ。間違いなく使えますよ、このボール」
大地「正直、漫画だけの話だと思ってました。けど、実際に受けてみて、こんなボールを投げれる奴が実在するんだって、冷や水をぶっかけられた気分を味わえるぐらいに衝撃を受けましたよ」
大地「空の直球が『神鎚』なら、我妻のヤツは『魔矢』です」
ズバァァァァーーーンンゥゥッッ!!!
─────
大地「ふぅ……。ったく、捕る方の身にもなってほしいよ。空も我妻も……最近では、雪村先輩もか……人使いが荒いなぁ〜」
球場外の適当なベンチに腰をかけて、手に持っていたスポーツドリンクを一口飲んで一息つく。
マジでやめてほしい。慣れてない軌道を捕球するのは、至極困難なんだ。より一層の神経をすり減らさないと、完璧に捕球出来ない。
しかも、この後に試合なんだ。無駄な体力消費は避けたい。
ま、そんなこと言っても、今のアイツは言う事を聞かないだろうけどな……。
たった一晩で、我妻は『投手』として『化けた』。
持っているものは確かだっただけに、この『目覚め』は嬉しい誤算だった。
元々、球威ある直球が無い我妻は、変化球に頼りがちの傾向があったのだ。
当然、本人もその辺は気にしていたし、改善に改善を重ねて多少なりともマシになった時期が一時期あったが、それでもしっくり来ずに四死球が増えて乱調するケースが多かった。
俺も夏大までに戦力として底上げするために、色々手回しをしてきたが、あまり効果という効果はなく、無意味となる結果が多く見られた。
変化球は充分に手元でキレて、ストレートもそれなりにノビてくる。
コーナーを突くコントロールもあり、組み立ての『楽』な投手でしかなかった。
気持ちの乗った時ほど、ボールの状態を上げてくる花咲川の虎金さん同様の典型的なクラッチピッチャーだという点だけが、読みづらかったけど、基本に忠実な投手だ。
中堅校相手なら1人で任せても構わないというレベルのままだと思っていた。
そう、昨晩までは……。
あの監督に向けて放ったストレート……。
あの一球が『我妻 矢来』を『バケモノ』へと伸し上げた。
この試合を投げさせようと打診したのは俺だが、まさか前日に進化するとは思わなかった。
たしかに、西の強豪である桐奥でも、突然の我妻に困惑して多少は打ちあぐねるとは思っていたし、それを自信に変えて、我妻自身の成長につながると考えてた。けど、その矢先にこれだ。
空といい、雪村先輩といい、ウチの投手陣は嬉しい誤算ばかりを持ってくる。
空も昨晩の我妻の球を見て、新たな危機感を覚えたようで、今日の試合はずっとブルペンで投げ込むらしい。
雪村先輩は、流石に捕手事情のせいで投げ込みは出来ないが、常に準備を怠らずにウォームアップをしてるの事。
たった一人の投手の覚醒が、ウチの投手陣たちの意識を変革させた。
これは夏までの布石だけど、かなり状態は上がってきてる。
これなら、本格的に見えてくるぞ。甲子園が。
不安のあった投手陣が一気に強化されていき、後は打線の繋がりさえなんとか出来れば、ウチはもっと上にいける。それこそ、全国制覇が射程圏内になる。
大地「はは……。こんな事、考えてたら弛んでるって怒られるかな? そういう慢心が負けに繋がるという事はわかってるんだけどさ……」
大地「─────正直、負ける気がしない」
一気にスポーツドリンクを飲み干して、空になったボトルをゴミ箱へ投げ入れる。
綺麗な放物線を描いて、落下運動の後にカコンッという音を立てる。
日菜「あ! いたいた!! おーい!!」
おっと、元気な女の子がいるな……。ん? アレって紗夜先輩じゃね?
でも、なんか雰囲気が全然違うし、よく見たら目元も違うから別人だろう。
こんな公共の場で大はしゃぎするような人でも無いしね。
きっと、誰かと待ち合わせでもしてんだろ? さぁて、俺は俺で桐奥のデータを纏めておかないとなぁ〜。
日菜「むぅ〜!! 無視とはいただけないなぁ〜!! 『るんっ♪』って来ないよ!!」
なんか、独特な子だなぁ〜。こりゃあ、呼ばれてる人も大変だな。
日菜「むむむ……!! え〜いッッ!!! 無視するなー!!!」
大地「ぶべしッッ!!!!」
な、んだと?! あの距離から腰めがけてのストライク送球だと?! なんていう技量!!?
て、違う!! なんで俺に向けてボール投げてんのぉ!!!
体を襲う痛みは徐々に引いていくが、謎が脳を埋め尽くす。
さっきから呼ばれてたの俺!? なんで!? あの子だれッ!!?
日菜「あはは〜!! ようやくこっち向いたね〜! うん! 『るん♪』って来るね!」
大地「こねぇよぉぉおおおぉおぉおお!!!!!」
この子頭おかしい系だ!! 異様に関わりたくねぇ!!!!
日菜「やっぱり、君!! 面白いね!! 私! 日菜!! 君は?」
大地「急に話の絡脈無視して自己紹介始めんの止めろ!! 咲山 大地だコンニャロぉおおぉおおおおぉぉぉおお!!!」
日菜「そんなこと言いながら、ちゃんと名前を教えてくれるんだ〜!! おもしろーい!! 『るんるん♪』来ちゃうよ!!」
大地「もうやだ!! この子!!! 僕、おうち帰るぅぅううぅッッ!!!」
空「おーい! 大地!! そろそろスターティングメンバーを発表するから、監督が戻ってこ─────」
大地「そらぁ〜!!! あの子が僕を苛めるよぉ〜!!!」
空「ギャァァァ!!! 大地が試合始まっても無いのに、『幼稚化』してるぅぅぅううぅううううぅ!!!?」
日菜「あはは!!」
空「笑い事じゃねぇええぇえええぇぇぇえええ!!!」
その後、宥める空によって、場は沈静化された。
あのカオスは二度と経験したく無いと、奥歯をガタガタ言わせていた空から聞かされた時は、本気で申し訳ない気持ちになった……。
あ、去り際に聞いたら、やっぱり『るんるん♪』女は紗夜先輩の双子の妹だった。
なんでも、現役アイドルバンドで活動していて、お姉さん影響でギターを始めたらしい。この球場に来たのは、アイドルとしての活動途中で寄ってきたようだ。……仕事しようね? てか、マネージャーさん!! ちゃんと手綱握って!! お願い!!!
ついでに、俺を呼んだ理由については、花咲川戦のプレーについて教授して欲しかったそうな(第8話参照)……。当然断った。あの時の俺は普通の状態じゃ無いのだ、そう何度もできてたまるかってんだ!!
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羽丘スターティングメンバー 後攻
1.中 秋野咲耶 (左打ち)
2.捕 咲山大地 (左打ち)
3.左 帯刀悠馬 (右打ち)
4.一 結城哲人 (右打ち)C
5.三 村井豪士 (右打ち)
6.二 舘本正志 (右打ち)
7.右 田中次郎 (左打ち)
8.投 我妻矢来 (右打ち)
9.遊 笠元剛 (左打ち)
桐奥スターティングメンバー 先攻
1.一 上田絆 (左打ち)
2.二 重山彼方 (右打ち)
3.右 奏馬裕也 (左打ち)C
4.遊 友坂亮士 (右打ち)
5.左 郡山聖人 (右打ち)
6.中 中山緋色 (左打ち)
7.投 阿旗司 (左打ち)
8.三 坂元洸夜 (右打ち)
9.捕 門田源 (左打ち)
阿旗「おいおい! 相手の先発、スーパールーキーの成田じゃ無いんか!? なんで無名の一年坊主をウチ相手に使っとんねん! 舐めとんちゃうんか!?」
上田「つかっち、煩い!! ぐちぐち言うたって、もうメンバー表は提出されとんねん! 今更、文句言うたって意味ないがな」
奏馬「阿保ぉ。これで調子崩すとか話にならんからな? ちゃんと気ぃ張って投げや」
門田「流石はキャプテンです! いいこと言いました。そういうことですよ司さん! ムラッ気さえなければ全国でも指折りの好投手なんですから、しっかり投げてください!! 頼みますよ」
阿旗「へいへーい」
友坂「完全な生返事じゃねぇか……。本当に頼むぜ? エース」
阿旗「分かっとるわ……! でも、成田が投げてこーへんのやったら、次の第2試合で萩沼と投げ合いたかったわ〜……!! ほんま、やる気無くなるやん!」
坂元「でも、成田も萩沼も昨日は投げ合っとるから、多分、どっちにしろ投げてこーへんかったやろうな」
門田「とりあえず、ボールは低めにください。今日は、成田ではありませんが、ここの打線は怖いですよ。というより、打順を大きく入れ替えてきて、より一層警戒が必要です。特に初回からガンガン得点を重ねていくチームは立ち上がりを攻めてくるだけあって、中々にしぶとい打者が揃ってます」
友坂「咲山が2番か……。コイツが例の【大樹】だろ? 完全にメジャースタイルで攻めてきてるのかよ……」
奏馬「ほんまやな、これは超攻撃型のオーダーや……。1番の強打者を2番において、電光石火で点をもぎ取るスタイルやろ。面倒やな」
門田「はい。それと、その後に続く打者も長打力は然程ではありませんが、確実に次に繋ぐ事ができる帯刀に、プロスカウトからも注目を浴びる打撃センスを持つ主将の結城、最近の試合では打率が低迷気味ですが、そのパワーは侮れない村井といった面子が揃ってます。一つのミスが命取り兼ねないです」
阿旗「そこんとこは、任せときや! オレの『魔球』がそう簡単に打たれてたまるかいな! 【たい焼き】か、【タイツ】か知らんけど、捩伏せたるわ!! わっはっは!!」
奏馬「こいつ、調子のっとったらホンマ痛い目合うぞ……」
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蘭(今日も来てしまった……)
蘭(しかも、今日は皆に黙って来たから一人だし……。なんか、場違いな気がして仕方がないけど……)
蘭の視界に映るのは、相手投手を静かに観察しながら分析をしている大地の姿。
普段の粗暴な性格とは真反対の清冽さに、野性味溢れる猛々しさを両立した野球人としての顔付きに蘭はいつのまにか見惚れてしまう。
蘭(……普段の大地からは考えられないね。けど─────)
やはり感じてしまう『格』というオーラ。
その場にいるだけで、周りの視線を集めてしまうようなものでは無いけれど、確かに知覚するものに圧力をかける威圧感。
野球人として周りを圧倒する才覚を有する大地の所作を一つも見逃すまいと、一挙手一投足を眺める。
同時に感じたのは、彼の危うさ。
何故だか、今にも消え入りそうだと、彼という存在がいとも容易く脆く崩れ去っていく光景が時折、ふと浮かび上がる。
間違いなのは分かっている。首を振り、要らぬ雑念を追い払う。
蘭(よそう。こんな事、考えたって何も無いから……。アイツは、アイツだ……。咲山が『咲山』じゃ無くなる訳がないんだ)
そして、今から始まるであろう試合へと視線を移して、誰にも聞こえないような声で呟いた。
蘭「……頑張って、咲山」
安易な、けれど温もりを含んだ小さな声援。
何故だか、その声援がとても心地よくて、心を安らかにしてくれて─────
─────頰を熱くした。
我妻→次回に能力更新紹介
バンドリキャラの描写って難しいっすね!!
合ってる気がしないと毎回言ってる!!!
ヒロインは何処から選ぶべき2
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アフグロ
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それ以外は以前の集計結果から選択します